起業/会社設立

取締役とは?役割から業務内容、待遇や責任まで徹底解説!

「会社の経営をしてみたい!」
「友人から、会社を立ち上げるから取締役になってくれないかと相談された」

会社役員である取締役が、具体的にどのような職務を行うのかご存知ですか?

いわゆる社長とは異なり、取締役がどんな役職なのか、どんな責任を負うのか、具体的なイメージを抱くことはなかなか難しいですよね。

今回は、会社経営の中心となる取締役がどんな地位であるのか詳しく解説します。

また、取締役が会社に対して負う責任や、具体的な待遇等についても徹底的に解説します。

この記事を読めば、会社の中心としてその運営を任される取締役としての未来が具体的にみえるようになりますよ!

1.取締役とは?

まずは、取締役の法的な性質等について説明していきます。

会社の経営者、と聞いてまずイメージするのは、いわゆる「社長」ですよね。

実は、いわゆる「社長」については会社法上の規定はなく、「代表取締役」が一般的には社長と呼ばれています。

企業によっては「代表取締役(社長)」、「取締役」、「執行役員」などの役職が設けられており、それぞれどのような職務なのかが分かりづらいですよね。

そこで以下からは、取締役の法的な性質に大きな焦点を当て、他の役職との具体的な違いについても紹介します。

(1)取締役の意義

株式会社に関する重要なキーワードとして、「所有と経営の分離」というものがあります。

これは、複雑な経済活動が求められる現代社会で会社を存続させるためには、会社運営は出資者である株主(所有)と、株主によって指名された経営のプロフェッショナルである取締役等(経営)を分離する、というものであり、株式会社というシステム自体がこの理念に基づいてつくられています。

すなわち、取締役とは、基本的には株主によって選任された経営のプロフェッショナルであると言えます。

具体的には、株式会社の成立後は、株主総会が選任し(会社法(以下、法令名略)329条1項)、最初の取締役である設立時取締役は、発起人が選任することになります(38条1項)。

株式会社は、株主が株主総会で取締役を選び、会社の運営・管理を行わせる仕組みをとるため、すべての会社に必須の役職です(295条、296条、326条1項)。

しかし、取締役の役割は、取締役設置会社(2条7号)であるか非取締役設置会社であるかによって異なります。

参考:株主総会と取締役会の違いとは?会社運営に必要な決議事項を総まとめ

#1:取締役会設置会社の場合

取締役会設置会社では、株主総会は3人以上の取締役を選任しなければなりません(329条1項、331条5項)。

そして、選任された複数人の取締役が、全員で取締役会を構成することになります(362条1項)。

各取締役は、取締役会が決定した業務執行をし、取締役会の委任があれば業務執行それ自体を決定することもできます。

取締役会設置会社とは

取締役会設置会社とは、取締役会を置く株式会社または会社法の規定により取締役会を置かなければならない株式会社のことをいいます。
そして、取締役会とは、すべての取締役で組織される機関のことをいい(362条1項)、会社の業務執行の決定を行い、取締役の職務の執行を監督し、代表取締役の選定・解職をその役割としています(同条2項)。

#2:取締役会設置会社の場合

取締役会非設置会社の場合には、選任された取締役が、会社の業務決定をし(348条2項3項)、かつ、業務の執行をします(同条1項)。

また、対外的には、株式会社を代表することとなります(349条1項)。

取締役会非設置会社における取締役とは、会社の業務を執行しつつ会社を代表する独任制の機関であるといえます。

(2)代表取締役とは?

代表取締役とは、取締役の中から代表として選ばれた取締役のことをいいます。

取締役会設置会社では、取締役会が代表取締役を選任します。

一方で、取締役会非設置会社では、各取締役が当然に代表取締役となります。

代表取締役に選任されると、株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有することになります(394条4項)。

たとえば、代表取締役は、会社のために、銀行から融資を受けたり、テナントを借りたり、従業員を雇用したりする権限を有します。

(3)執行役員との違いは?

執行役員とは、会社法に規定がないものの、近年多くの上場企業が置いている会社における上級の従業員のことをいいます。

そのため、執行役員とは、取締役とは異なり、法律の定めとは無関係の会社独自に置かれる地位です。

そして、その役割は、多くの場合会社の独自ルールを記載する定款と呼ばれるものに記載した業務内容を行い、その権限を有することになります。

2.取締役の仕事

ここまでは、取締役や他の役職について、主に法的な意義について紹介してきました。

それでは次に取締役が実際にどのような仕事を行っているのかみていきましょう。

(1)取締役の義務

まず、もっとも注意しなければならないのが、自分が取締役になり、会社経営の中心になったからといって、自分一人の独断で会社のすべての決定をすることができないということです。

ドラマや映画のイメージでは取締役が強大な権限を有していることも多いため、少し驚いた方もいらっしゃるかもしれません。

では、なぜ取締役がすべてを決定できないのか考えていきましょう。

結論を簡単にいえば、会社は、出資等により株式を有する株主のものであって、取締役は、株主に会社経営を委任されたにすぎないからです(先程の「所有と経営の分離」を思い出してください)。

そのため、株主総会等によって決定された事項について、取締役が勝手に独自の判断をすることはできません。

また、取締役会設置会社の場合には、取締役会の決定に従わなければなりません。

そして、取締役は、会社との関係で管理・運営する事務を任された者であるため、会社との間では委任関係(330条、民法643条)となります。

そのため、取締役は、善良な管理者の注意をもって、会社の事務を処理する義務という善管注意義務を負います(民法644条)。

株主総会や取締役会の決定に従うことも善管注意義務に従っているということになります。

また、取締役は、法令・定款ならびに株主総会決議を遵守し、会社のために忠実にその職務を行わなければなりません(355条)。

(2)取締役がやってはいけないこと

取締役としての義務について理解したところで、取締役への就任後、やってはいけないことについてみていきましょう。

取締役がやってはいけないことは、先ほど解説した善管注意義務に違反することと、会社との利益衝突行為の二つに大別することができます。

#1:善管注意義務違反

まずは、善管注意義務違反についてみていきましょう。

善管注意義務とは、善良な管理者の注意をもって、会社の事務を処理する義務のことをいいます。

言い換えれば、経営を任された者として一般的社会的に考えて、どのような注意をし、経営を行えば会社に対し、不測の損害を与えないかという注意をしたかどうかということです。

この善管注意義務は、抽象的であって、理解が難しいと思います。

しかし基本的には、法令や定款、会社の決定を守り、常識的に会社経営を行えば、善管注意義務違反になることはないと考えて良いでしょう。

法令についてはどの会社にもあてはまることですが、会社独自のルールである定款や株主総会・取締役会や決定によって、会社ごとの善管注意義務の内容も変化するため、その点は注意が必要です。

#2:利益衝突行為

次に、会社との利益衝突行為についてみていきましょう。

利益衝突行為については、会社法があらかじめ特別の規定を設けています。

すべての場合について規定が設けられているわけではありませんが、利益衝突行為の中でも、取締役等が自己の利益を図る危険が高い場合については規定があります。

その特別な規定は、競業取引(356条1項1号、419条2項)、利益相反取引(356条1項2号3号、419条2項)、報酬等の決定(361条)です。

競業取引とは、取締役が自己または第三者のために会社の事業の分類に属する取引(競業取引)をいい、これを行うとき、取締役会や株主総会の承認を受けなければならないとしています。

なぜなら、競業事業のために会社のノウハウや顧客の奪い合いが発生し、会社の利益を害する危険が存在するからです。

次に利益相反取引とは、取締役が自己または第三者のために会社と取引するときや、これと同様の危険を有する取引のことをいい、この取引を行う場合にも取締役会や株主総会の承認を必要とします。

たとえば、取締役が別の会社を代表して会社と取引する場合には、不当に価格を低く定めることや高く定めることがこれにあたります。

そして、最後に報酬についてです。

仮に報酬を取締役が自ら決定できると好き勝手な報酬を会社から得ることができます。

そのようなことを防止するために、定款や株主総会の決議によって報酬について決定しなければならないとしています。

報酬を自由に決めることができないことも、会社が株主のものであるということからの結果です。

3.取締役の選任と解任

ここまでは、取締役の意義やその職務内容等について紹介してきました。

次に取締役の選び方と、取締役を辞めさせたい場合の解任の方法についてみていきましょう。

(1)取締役の選任

取締役は、株主総会決議によって選任されます(329条1項、309条1項)。

そして、最低でも総株主の議決権の3分の1を獲得しなければなりません。

大きな会社となり、株主が多くなると取締役にするかしないかで意見が分かれるため、少数派株主の保護制度も存在します。

しかし、スタートアップに際しては、株主総会で選ぶということだけ押さえておけば十分です。

(2)取締役の解任

取締役の解任につき、株主総会は、決議によっていつでも解任することができます(339条1項)。

会社にとって、不利益を与えるような取締役は一刻も早く解任する必要があるため、当然の規定であるともいえます。

そして、解任には理由が必要とされていません。

しかし、正当な理由なしに解任する場合には、取締役は会社に損害賠償を請求することができます(339条2項)。

4.取締役の待遇

「会社役員」といえば、いかにも会社の重鎮で高給取り、と言うイメージがありませんか?

以下からは、実際に働き始めたら会社からどのような待遇が受けられるのかについて、具体的に紹介していきます。

(1)任期

まず、任期は原則として2年とされています(332条1項本文)。

定款または選任の総会決議によって任期を短縮することもできます(332条1項ただし書)。

2年ごとに更新していくと考えておけば十分です。
参考:会社の『定款』とは?記載すべき内容と記載方法を総まとめ

(2)給与

取締役の給与は、役員報酬という形で支払われます。

役員報酬は、会社法の定めに従い、定款や株主総会で決定されます。

では、実際のいくら程度の役員報酬が期待できるのでしょうか。

その会社ごとの業績や報酬に関する規定・決定によるところが大きいですが、多くのベンチャー企業の報酬平均値は、1600万円前後であり、中央値は1500万円前後とされています。

このように金額でみるとかなりの報酬を期待することができ、スタートアップ後の会社業績に応じて、さらなる報酬も期待することができます。

また、スタートアップであれば、役員報酬という形だけでなく、ストックオプションという方法によって報酬を得ることもできます。

役員報酬のみならず、ストックオプションについても理解し、自分にとって適切な方法を検討してみましょう。
参考:ストックオプションとは?新株予約権との違いは?基礎から徹底解説!

(3)福利厚生

結論からいえば、取締役に福利厚生はありません。

福利厚生とは、従業員の生活・仕事の向上・充実を目的とするものです。

そのため、取締役は、従業員を雇う側であるため、原則として福利厚生がありません。

しかし、取締役もまた会社一員であることには変わりがないため、一般の従業員同様に福利厚生を受けることもできます。

この点は、その会社ごとのルールに従うことになります。

ここでもっとも注意しなければならないことが取締役には就業規則の適用がないということです。

就業規則とは、働く時間や給与について定めたものをいいます。

この就業規則は、雇用契約の関係にある従業員にのみ適用され、取締役は委任関係にあるため適用されません。

したがって、取締役は、就業規則に縛られない反面、就業規則による保護を受けることができません。

5.取締役の責任

取締役の責任は、対会社と対第三者に分けられます。

会社との関係では、任務を怠ったときは、株式会社に対し、それによって生じた損害を賠償する責任を負うという任務懈怠責任(423条1項)が規定されています。

他方、第三者に対しては、損害を与えた方法や性質によりますが、多くの場合、損害賠償請求をされてしまいます。

企業での取引で行う金額の多くの場合は個人では支払うことができない多額です。

そのため、このような責任を負わないためには、先ほど解説した取締役の義務等についてしっかり理解しておきましょう。

6.社外取締役とは?

社外取締役とは、株式会社の業務を執行せず、かつ、株式会社並びにその親会社、子会社及び経営陣などとの一定の権利関係を有しない取締役をいいます。

このような社外取締役は、会社の経営陣である取締役や取締役会とは独立した立場で、会社の経営を監督することが期待できます。

以前の日本において、社外取締役の選任はあまりされていませんでした。

また、平成26年会社法改正に際して、上場会社等に社外取締役の選任を義務付けることが検討されましたが、各社の実情に応じた企業統治の選択を妨げるべきでないという反論で改正に至りませんでした。

しかし、東京証券取引所で、上場規則によって、最低1人以上の独立社外取締役を置くことが努力義務とされ(東証上場規則445条の4)、2019年8月1日時点では、97.7%の東証上場会社に社外取締役が設置されていました。

そこで、2019年12月4日に改正会社法が成立し、上場企業に社外取締役の設置が義務付けられました(改正会社第327条の2)。

これによって、社外取締役による企業経営の監督・監視により企業の更なるガバナンス向上が図られることになりました。

7.まとめ

これまでみてきたように取締役は、一般的にイメージする社長に比べて会社の決定等どんなことも行うことができるわけではありません。

しかし、株式会社の経営を任されたプロフェッショナルであり、大きな責任を負う存在であることに変わりありません。

そのため、まずは、取締役が法律上、どのような地位にあるのか、そして、どのような仕事を担当しているのか理解しましょう。

さらにスタートアップ時において今後取締役にどのような業務を任せるか、会社でどのような地位を用意するかは将来的な会社運営にとって考えなければならない事柄です。

そのため、取締役の業務内容について規定する定款等についてもしっかりと考えて作成しなければなりません。

スタートアップの準備はとても大変なものです。

今後の会社運営を見据えて、弁護士や司法書士等の専門家に一度相談し、自分が描く会社でのポジションを検討してみることも良い選択でしょう。

スタートアップドライブでは、代表取締役について等スタートアップ関連記事ついて皆さんの役に立つ知識をこれからも提供していくので、ぜひ定期的にチェックしてみてください!

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