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Vtuberとライブ配信に関連する法律と規制まとめ

「ライブ配信をやってみたいんだけど、そもそもどのようなビジネスモデルがあるの?」
「ライブ配信ビジネスをやるにあたっての法律上の問題点はある?

VTuberやライブ配信の配信者の方や、サービスを展開しようとしている方でこのようにお悩みの方はいませんか?

今回は、VTuberやライブ配信について問題となり得る法律上の争点や、具体的なビジネスモデルについて基礎から紹介しています。

この記事を読めば、上のような悩みはなくなりますよ!

1.VTuberとは?

VTuberとは、Youtubeなどの動画配信サービスにおいて、CGキャラクターを出演させる配信者ユーザーのことです。

Youtubeに投稿するVTuberのことを、特にバーチャルYouTuberと称することもあります。

3DCGで作成されたキャラクターにモーションキャプチャで配信者の動きをリアルタイムで反映させることにより、仮想キャラクターがあたかも本当に動いているかのように見せることができます。

また、ボイスチェンジャーや自動発声ソフトを用いることにより、配信者の情報をほとんど隠したまま配信することも可能です。

VTuberは2017年ごろから日本を中心に流行しはじめ、現在では動画配信サービスの枠にとどまらず、音楽イベントや地上波テレビにも出演し、ゆるキャラに代わる地方創生コンテンツとしても注目を集めています。

2018年には「バーチャルYouTuber / VTuber」がネット流行語大賞を受賞するなど、今後ますます活動の場が広がると考えられます。

VTuberはゲーム実況や「〇〇してみた」系の動画など、既存の動画コンテンツをキャラクターを用いて発信することもあれば、下に述べるライブ配信と組み合わせることにより、あたかも架空のキャラクターと相互コミュニケーションを行うこともあります。

2.ライブ配信とは?

ライブ配信とは、Youtubeなどであらかじめ録画・編集された動画を投稿する場合とは異なり、ライブストリーミングによりリアルタイムで動画を配信することをいいます。

配信者と視聴者が(ほとんど)リアルタイムで相互に通信することができるため、視聴者によるコメントに配信者がその場で応えたり、リクエストに応えたりすることができる点が魅力です。

日本では2007年にニコニコ生放送がサービスを開始してから人気が出始め、近年では配信サービスが多数登場したことにより新たな市場が誕生しました。

特にアジア圏での成長は著しく、中国における市場は2015年から2018年の間に25倍以上に成長しています(1.3億元⇒34.2億元)。

3.配信者の注意すべき法律関係

このように、近年は動画配信の在り方が多様化しています。

特にライブ配信はスマホ1台さえあれば簡単に配信を行うことができるため、10代の若者を中心に気軽に配信が行われています。

しかし、VTuberやライブ配信であっても、コンテンツを配信する情報発信者である以上は、何でも映して良いというわけではありません。

例えば、撮影禁止の場所で配信を行うことや、禁止された方法(ドローンによる撮影など)を用いる場合には、刑事上・民事上の不法行為に抵触する可能性もあります。

VTuberやライブ配信を取り巻く法律関係については、まだ実際に争われたケースも少なく、思わぬところが法的問題に発展する可能性もあります。

例えばVTuberであればCGキャラクターやイラストの著作権や、ライブ配信で有名キャラクターの着ぐるみを着た場合が二次著作物にあたるかなど、注意すべき点はいくつもあります。

今回は、個別具体的に問題となりそうな権利として、以下に4つの権利を紹介します。

(1)肖像権

肖像権は今のところ法律で明記された権利ではありませんが、判例の蓄積により認められてきた権利です。

過去に最高裁は、肖像権について、「個人の私生活の自由の一つとして、何人も、承諾なしに、みだりに容貌・姿態を撮影されない自由を有」する、としています(最判昭44年12月24日)。

つまり、相手の承諾のないままに顔や姿を映すことは、その相手の肖像権を侵害するものとして不法行為にあたる可能性があります。

そのため、街中やライブ会場といった不特定多数の人が集まる場所でライブ配信を行うにあたっては、ある程度離れた距離から撮影を行ったり、イベント開催側であれば前もって撮影を行う旨を周知する等の対策が必要です。

(2)プライバシー権

プライバシー権もまた、判例によって認められてきた権利とされています。

「宴のあと」事件において東京地裁は、以下の要件を充たす事柄が公開された場合には、法的救済の対象となるとしています。(東地判昭和39年9月28日)

プライバシー3要件

➀公開された内容が、私生活上の事実は又は事実らしく受け取られるおそれがあること
➁一般人の感受性を基準にして当該個人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められること
➂一般の人々にいまだ知られていない事柄であること

特に、➀の要件において、「真実らしく受け取られるおそれがあること」と判示された点については注意が必要であり、たとえ冗談で虚偽の情報を流布する場合であっても、聞き手が真実らしく受け取るおそれがある場合には要件を充たします。

これら3つの要件をすべて充たす事柄がその本人の同意なくして公開された場合、民事上・刑事上の責任を追及されるおそれがあります。

したがって、配信を行うにあたり、ゲスト等に関する情報のうち、上の3要件をいずれも充足するような情報については、特に取り扱いに注意しましょう。

(3)パブリシティ権

肖像権やプライバシー権と比べると認知度の低い権利ですが、芸能人やタレントにはパブリシティ権が存在すると裁判例上認められています。

パブリシティ権とは、著名人の肖像権がもつ顧客吸引力(経済的価値)を排他的に支配する権利のことをいいます。

パブリシティ権が侵害されたかどうかは、「もっぱら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするいえる」かどうかによって判断されます。

したがって、たとえばタレントの氏名や肖像を許諾無しで自己のコンテンツを広告するために用いたりすると、パブリシティ権侵害として民事上の不法行為責任を負うおそれがあります。

また、アーティストのライブ会場で承諾なしにライブの様子を配信した場合にも、パブリシティ権の侵害と評価されると考えられます。

(4)著作権

人が創作したものがコンテンツの対象となる場合には、著作権についても注意しなければなりません。

写真や文章、動画などの著作物には、創作者の著作権があり、この著作権者に無断で撮影やライブ配信を行った場合には、著作権の侵害として刑事上・民事上の責任を負うおそれがあります。

例えばライブ配信中に、後ろで流していた地上波番組の音声を拾ってしまった程度の場合は問題ないと考えられますが、そのコンテンツを主要なものとしてそのまま配信するような場合には、著作権侵害として告訴されるおそれがあります。

なお、あらかじめ著作者の承諾を得ていれば問題ないため、他人の著作物をメインコンテンツとして配信する場合には、必ず前もって著作者の承諾を得ておく必要があります。

4.サービス運営者の注意すべき法律関係

以下からは、配信者としてではなく、ライブ配信等のサービス運営者として注意すべき法律関係について説明します。

ライブ配信等の最先端のビジネスモデルについては、法整備が追い付いていないこともあり、既存の類似サービスの関連法令を拡大して解釈するほかありません。

また、法律だけでなく、解釈の指針となるガイドラインや裁判例もほとんど見受けられないため、論者や裁判官によって解釈が異なる可能性もあります。

そのため、具体的にサービスの開始を考えている場合には、ビジネスモデル構築の段階から弁護士等の専門家へ相談することをおすすめします。

(1)ライブ配信サービスのビジネスモデルとは?

そもそも、ライブ配信サービスにおけるビジネスモデルとはどのような形なのでしょうか。

従来の動画配信サービスの基本的な収益構造は広告配信とサブスクリプション課金の2通りでした。

➀広告配信についてはYoutubeの視聴前や途中に挿入される広告が、➁サブスクリプション課金については広告カット等の特典があるYoutubeの有料アカウントなどが典型例です。

この点、ライブ配信サービスにおける画期的な収益モデルが投げ銭モデルです。

投げ銭とは、視聴者が運営会社からデジタルコンテンツ上のアイテム購入し、これを配信者に送ることにより、運営者はそのマージンを、配信者は報酬を得られる仕組みです。

今なお隆盛を誇るサブスクリプションサービスが定量的な課金によってサービスを受けられる仕組みであるのに対し、投げ銭モデルでは課金ゼロでも青天井の課金でも同じサービスを受けられる点に特徴があります。

いわば、オンライン上でのストリートライブに対して通行人が投げ銭をし、場所の所有者が場所代として手数料を徴収するようなイメージといえるでしょう。

(2)資金移動業に抵触しないか

このような投げ銭サービスは、「資金決済に関する法律」にいう「資金移動業」に抵触する可能性があります。

「資金移動業」という言葉からは動画配信サービスとは乖離しているように思われるかもしれませんが、同法によると、資金移動業とは、以下の3つの要件を充たす事業をいいます。

資金移動業の要件

➀銀行以外の企業が行うこと
➁為替取引の業務を行っていること
➂取引額が100万円以下であること

これらのうち、問題となるのは➁にいう「為替取引」の意義です。

ここにいう「為替取引」とは、現金を直接使わずに資金を移動させることを意味します。

ユーザーからの入金に対し、別のユーザーがそのまま現金として出金できるサービスは、現金を直接介さない資金移動ですから、同法にいう資金移動業に該当します。

資金移動業に該当する場合には内閣総理大臣に対する届け出が必要となるなど、厳しい要件がサービス提供者に課されます。

また、マネーロンダリングの防止や取引の安全性を保護するため、ユーザーに対しても本人確認に応じる義務が生じます。

したがって、資金移動業はサービス提供者としても、視聴者(ユーザー)としても、リアルタイム感が求められるライブ配信事業には不向きな形態であるといえるでしょう。

なお、資金移動業として登録の上サービスを行っている例として、LINE PAYが挙げられます。

(3)収納代行(決済代行)業として行う

資金移動業に該当せずに投げ銭サービスを提供するスキームとして、収納代行業としての展開が挙げられます。

収納代行業とは、事業者が売主に代わって買主から売買等の代金を受領するサービスのことをいい、典型例としてはコンビニでの公共料金の支払いが挙げられます。

具体的な流れについては、以下の通りです。

収納代行スキーム

➀売主がサービス事業者に対して代金の代理受領権限を付与
➁買主がサービス事業者に代金を支払った時点で売買契約が成立
➂代理受領した代金から手数料を控除し、売主に支払われる

売主が事業者に代金受領の代理権を授与し、買主が事業主に代金を支払った時点で売買契約が成立しているため、売主と買主との間での金銭の移動はあくまで間接的なものにとどまります。

つまり、収納代行業の場合には事業者が直接現金を使わずに資金を移動させているわけではない点で、資金移動業とは異なると解されています。

収納代行業は資金移動業と比べると登録等の要件が厳しくないため、シェアリングエコノミーやクラウドファンディング、CtoCサービスで多く用いられてきました。

ところが2019529日、金融審議会で収納代行業が資金移動業の規制潜脱の手段として用いられていることが指摘され、今後資金移動業と同様の規制対象とすることが検討されています。

現在収納代行業としてサービスを展開している事業者や、今後このスキームを用いようとしている事業者の方は、今後の動向にも十分注意してください。

(4)前払式支払手段発行業として行う

もう一つの資金移動業に該当せずに投げ銭サービスを提供するスキームとして、前払式支払手段発行業としての展開が挙げられます。

前払式支払手段発行業とは、ユーザーが事業者に入金することによりユーザー自身のアカウント等にポイントなどがチャージされ、そのポイントを支払い手段として用いることができるサービスのことをいいます。

代表的な例としては、SuicaやPASMOといった電子マネーのほか、Kyashなどのサービスもこれにあたります。

資金移動業とは異なり、前払式支払手段発行業を介して取引されるのはあくまでポイント等であるため、資金決済に関する法律における「為替取引」には該当しません。

とはいえ、ユーザーに前もってポイント等を発行して購入してもらう必要があるため、資金決済方上の「前払式支払手段」に該当し、内閣総理大臣へ登録を行う必要があります。

5.SHOWROOM型のビジネスモデル

ここまでは、VTuberやライブ配信における配信者と事業者の注意すべき法律上の問題点について紹介してきました。

これらの内容は抽象的な概念も多く、ここまでの説明ではピンとこなかった方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、ライブ配信サービス事業者の先駆者でもある「SHOWROOMを例に挙げて具体的に説明します。

SHOWROOMは、SHOWROOM株式会社が運営するライブ配信サービスで、会員登録者数160万人と国内最大級の規模を誇ります。

SHOWROOMにおける投げ銭サービスのスキームは以下の通りです。

SHOWROOMのスキーム

➀視聴者がSHOWROOMからポイントを購入
➁視聴者が配信者にアイテムを送る
➂SHOWROOMが、送られたポイントや視聴者数などで配信者を評価
➃SHOWROOMが上の評価に基づき、配信者にポイントを付与

このように、SHOWROOMの場合には一度SHOWROOMによる評価が行われたのちに配信者に対してポイントが付与されるという点で、視聴者の投げたポイントがそのまま配信者に移動されることはありません。

つまり、直接現金を用いて資金を移動させているわけではないため、資金移動業にはあたらず、前払式支払手段発行業として営業が可能となっているのです。

この点を指して、SHOWROOMにおけるシステムは、投げ銭にみえるけれども投げ銭ではないという意味で、「バーチャル投げ銭」と称されることもあります。

6.まとめ

今回はVTuberとライブ配信を取り巻く法律問題について紹介しました。

先ほど述べたように、これらの最新サービスに対する法規制はまだ議論の途中段階にあり、今後新しい規制が設けられたり、運用が変化する可能性も十分にあります。

そのため、配信者やサービス事業者は最新の動向に注意するとともに、必要があればビジネスモデルを変化させる必要もあります。

その意味でもVTuberビジネスに詳しい専門家との連携は欠かせません。

ABOUT ME
石原一樹
2013年社内弁護士としてヤフー株式会社に入社。その後、外資系法律事務所東京オフィスにて勤務し、2017年にスタートアップ・ITベンチャー企業に特化したリーガルサービスを提供するSeven Rich法律事務所(現 FAST法律事務所)を設立する。2022年6月には渥美坂井法律事務所パートナー弁護士に就任。
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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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