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SNS・ネットの誹謗中傷対策完全マニュアル【弁護士への依頼方法から損害賠償請求まで】

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昨今、連日メディアが取り上げているように、度重なる誹謗中傷で芸能人が自殺に追い込まれ大きな波紋を呼ぶなど誹謗中傷問題は深刻な社会問題となりつつあります。
特に、近年の誹謗中傷被害は、SNSやネット掲示板などインターネット上で発生する被害が圧倒的に多く、犯人を特定するだけでも非常に難易度が高いことが特徴です。

また、この記事を読んで下さっている方には、ご自身がネット上の誹謗中傷被害を受けている方も少なからずいらっしゃることでしょう。
この記事は、誹謗中傷の被害を受けた方が一刻も早く事件を解決できるように誹謗中傷に関するあらゆる情報をまとめた「完全版」です。

  • 誹謗中傷とは何か?
  • ご自身に向けられた悪口は誹謗中傷であるといえるのか?
  • 誹謗中傷をした犯人はどのような罰を受ける可能性があるのか?
  • ネットで誹謗中傷を受けたが、犯人が匿名でわからない場合はどうするべきか?
  • 誹謗中傷されて苦しんでいるが、誰に相談するべきか?

この記事は、上記のような誹謗中傷に関するあらゆる疑問にお答えできるコンテンツとして制作しています。

「誹謗中傷被害を受けて苦しんでいる方」「誹謗中傷の法的措置について知りたい方」「友人や親族が誹謗中傷被害を受け相談を受けた方」は、是非この記事を読んで誹謗中傷に関する正しい知識と対処に役立てるための参考にして下さい。

1. 誹謗中傷とは?

1-1. 誹謗中傷の原則

はじめに誹謗中傷の原則について説明します。
誹謗中傷には明確な言葉の意味としての定義が存在し、定義に則った原則があります。
この原則は、ご自身に向けられた悪口や書き込みが誹謗中傷であるかどうか判断するうえで、非常に重要です。

(1)誹謗中傷とは「根拠」のない悪口

ここでは、誹謗中傷の言葉の正確な意味について説明し、誹謗中傷に該当する原則について説明します。

誹謗中傷というと悪口やネット上での悪質な投稿をイメージする方が多いと思いますが、それらが全て誹謗中傷に該当するとは限りません。

実は、「誹謗中傷」とは、「誹謗」と「中傷」のそれぞれ独立した単語が連結した用語であり、「他人を中傷する」などの言葉がよく使われるように、「中傷」という単語単体でも意味を成します。

なお、辞書を引いてそれぞれの単語を調べた場合の正確な定義は以下の通りです。

  • 「誹謗」=そしること。悪口を言うこと。
  • 「中傷」=無実のことを言って他人の名誉を傷つけること。

また、「誹謗中傷」を辞書で引いて調べてみると、

  • 「誹謗中傷」=根拠のない悪口を言って相手を傷つけること。

とされています。

つまり、誹謗中傷」とは「根拠がない」+「相手を傷つける悪口である」という二つの要素で成り立つため、根拠のない悪口は誹謗中傷に該当します。
自分に向けられた悪口や書き込みを見つけた場合、はじめにこの原則を思い出してみましょう。

(2)「根拠」があっても誹謗中傷に該当するケース

「誹謗中傷」の原則は、根拠のない悪口であることを説明しました。
では、根拠があれば、悪口や悪質な投稿であっても「誹謗中傷」には該当しないのでしょうか?

実は、そうではありません。
根拠がある場合でも以下のようなケースは誹謗中傷であるとみなされます。

  • 悪口や投稿の根拠が薄かったり、相手の思い違いである場合。
  • 事実や根拠があったとしても悪口や悪質な書き込みの度合いが過ぎている場合。
  • 事実や根拠があったとしても公然の場で相手の評価を下げる内容である場合。

1つ目は、根拠や理由の有無が曖昧である場合を示しており、具体的には信憑性が定かでない噂話などを素にした悪口や投稿のことです。
このような書き込みは、SNSや掲示板などあらゆる場所で見かけられます。

2つ目は、仮に根拠があったとしても、「アホ」「バカ」などの悪口を発信し続けたり、投稿を執拗に繰り返した場合です。
のちに解説しますが、「アホ」「バカ」「ハゲ」「デブ」などを掲示板やSNSで執拗に投稿した場合、侮辱罪という犯罪としてみなされる場合があります。

3つ目は、公然の場で相手の評価を下げる情報を発信してしまった場合です。
なお、「公然の場」とは、公共の場やレストランなど不特定多数の人間がいる場だけでなく、インターネット上の場も含まれるため注意が必要です。
身の回りでトラブルが発生し、悪口を発信せずにはいられない状況に陥ったとしても、多くの人が集う場やネット上では不用意にトラブル内容や相手方の実名や住所などの個人情報を発信するのは控えましょう。

1-2. 誹謗中傷に該当しない場合

ここまで誹謗中傷の意味や誹謗中傷表現に該当するケースについて説明してきました。
ここからは、誹謗中傷と混同されやすい単語や誹謗中傷に該当しないケースについて説明します。

(1)「批評」「批判」

「批判」「批評」など言葉は「誹謗中傷」と混同されがちな言葉です。
しかし、「批判的意見」や「批評家」などの用語が示す通り、この2つの単語は「誹謗中傷」と本質的に異なります。

辞書を引いてそれぞれの単語を調べると、以下のような意味であるとされています。

  • 「批判」=物事の真偽や善悪を批評し判定すること。
  • 「批評」=物事の善悪・美醜・是非などについて評価し論ずること。

辞書で定義されている通り、「批評」「批判」の目的は、「誹謗中傷」のように相手に悪口を言うことでなく、「評価」や「議論」です。
また、評価や議論を行うためには、根拠や正当な事実が不可欠であるため、これらは誹謗中傷とは全く異なる概念であることがわかります。

(2)文脈的に批判的と判断される

「批判」や「批評」と同様に、文脈的に肯定的、否定的の両面にとれる内容なども誹謗中傷には当たらないとされます。

一つ例を挙げて考えてみましょう。

例えば、「Aというラーメン屋で炎天下のなか、行列に長時間並ぶことになった。店員の手ぎわが悪いんじゃないか」というような書き込みが掲示板あったとします。
一見、この表現は誹謗中傷のように捉えられがちですが、文脈によっては、人気店であるために長時間並ぶ必要があった、という事実に基づく批判的な発言であるという解釈をすることも可能な表現です。

このような肯定・否定の両義に受け取れる表現は、誹謗中傷とみなされる可能性が低いとされています。
しかし、あくまで解釈の問題であり、誹謗中傷とも捉えられる可能性がゼロではないため、誤解を招くような表現は避けた方が賢明です。

2. 誹謗中傷と法律

この章では、実際の具体例をもとに、どのような誹謗中傷表現がどのような法律に抵触するのかについて具体例を挙げていきます。
一つでも該当する事例がある場合、誹謗中傷被害に該当する場合があるため対策を講じることが必要です。
ここからは、具体的にどのような事例がどのような法律に抵触する可能性があり、加害者はどのような制裁を受ける可能性があるのかを誹謗中傷事件で該当しやすい法律を挙げて具体例とともに解説します。

誹謗中傷の被害を受けている可能性がある方は、是非、目を通して自分と重なる例がないかを確認してみてください。

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1-1. 名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、事実を示し、公然と他人の社会的評価を低下させる行為に適用される法律であり、以下が、名誉毀損罪の条文となります。

名誉毀損(刑法230条)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

名誉毀損罪のポイントは、「公然と」「事実を摘示」「名誉を毀損の3つです。

「公然と」とは、前述したインターネット上も含まれる「公然の場」を表します。

次に、「事実を摘示」とありますが、これは真実か嘘かという意味の事実ではありません
ここでの事実とは、「バカ」「ハゲ」「ゴミ」などの漠然とした暴言ではなく、「Aさんは前科がある」「BさんとCさんは不倫している」「Dさんは麻薬常習者だそうだ」などの具体性のある事実に言及しているという意味です。

そして「名誉を毀損」とは、相手の社会的地位を低下させるという意味を示し、「公然の場で具体的な事実を挙げて相手の社会的地位を低下させる行為である」と言い換えることができます。

名誉毀損罪の罰則は、文面の通り「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。
また、被害者側から慰謝料を請求される場合もあり、その額は被害者の立場によって異なりますが、一般人がおおよそ10〜50万円、有名人となると100〜200万程度の慰謝料を加害者は請求される場合があります。

なお、名誉毀損罪は親告罪という種類の犯罪であり、被害者自身が届出をするなど声をあげない限り事態は一切進展しません。
自分が名誉毀損の被害を受けていることがわかった段階で、警察などの公的機関や弁護士にすぐ相談しましょう。

1-2. 名誉毀損の具体例

ここからは、名誉毀損罪にみなされる可能性がある例と、実際に発生した名誉毀損の実例を紹介します。
ネット上で名誉毀損罪として疑われる主な事例は、以下の通りです。

  • ネット掲示板で相手の社会的評価を下げる書き込みを行う行為。
    匿名のユーザーが「Aは麻薬常習者でラリっている現場を見たことがある。公務員だから懲戒免職されるべきだ。」など書き込んだ。
  • SNSで具体的な事例をあげて他人をバカにする行為。
    Twitterに「取引先の営業のBは〇〇大学の出身だ。〇〇大学はFラン大学として有名で、Bはそこの出身だから頭が悪くて使い物にならない」など投稿した。
  • 自分に向けられた根拠のない噂をリツイートで広める行為。
    文章を作成し投稿したわけではないが「プロ野球選手Cは、以前浮気が発覚して女子アナDと別れることになった」という噂をリツイートによって広めた。
  • 過去に犯した前科を晒しあげられ掲示板で晒す行為。
    ネット掲示板に「芸能人Eは、学生の頃、万引きをして窃盗罪で警察に逮捕された」という書き込みを行った。
  • 人にみられたくない写真を勝手に投稿する行為。
    インスタグラムで許可なく同僚の飲み会での恥ずかしい場面の写真を投稿した。
  • SNSで「なりすましアカウント」を作成する行為。
    女子アナウンサーFの偽アカウントを作成し、「昨日の夜は友人Gと都内のクラブで朝まで遊んできた」などありもしない投稿を書き込んだ。

上記のような事例は、全て「公然の場で具体的な事実を挙げて相手の社会的地位を低下させる行為」であって名誉毀損罪として追求できる可能性があり、加害者には刑事罰と慰謝料が課される可能性があります。
また、実際の例でも取り上げますが、Twitterの場合「リツイート」であっても内容次第では、名誉毀損罪に該当する可能性があるため注意が必要です。

また、以下は実際に名誉毀損罪が認められた判決や、書類送検に至った例です。

(1)2ちゃんねるでの名誉毀損で懲役刑

2012年、お笑いコンビ「アンガールズ」の山根良顕さんに対する強姦容疑の告訴状をインターネットの掲示板に掲載したとして、名誉毀損罪に問われた河本順子被告に対し大阪地裁は、懲役1年2月、執行猶予3年の判決を決定しました。

この事件で河本被告は、強姦されたという内容の告訴状の写しをインターネット掲示板「2ちゃんねる」を通じて掲載し、山根さんの名誉を傷つけたとされています。

このケースのように、公然の場で相手の名誉を傷つける可能性のある行為を行った場合、名誉毀損に該当する可能性が高くなります。

アンガールズ山根を中傷、有罪 名誉毀損 大阪地裁

(2)リツイートが名誉毀損とされ損害賠償が発生

続いて紹介するのは、誹謗中傷の判例の中でも、特に多くの注目を集めた「リツイート」が名誉毀損に該当するとされた事件であり、元大阪府知事である橋本徹氏が、自身の名誉を毀損するリツイートが名誉毀損に該当するとして、ジャーナリストの岩上安身氏を訴えた事件です。
Twitterの特徴的機能である「リツイート」ですが、この事件では、コメントなしのリツイートのみであっても誹謗中傷になりうるのかが争点となり、社会的に大きな波紋を呼ぶ事例となりました。

この事件では、2017年10月、府知事時代の橋下氏が幹部職員を自殺に追い込んだなどとする第三者の投稿(元ツイート)について、ジャーナリストの岩上安身氏が、自らのコメントをつけずにリツイートしたことで名誉を傷つけられたとして損害賠償を求めた訴訟であり、岩上氏は大阪地裁から33万円の支払いを求められています。

この判決によって、コメントなくリツイートする場合であっても、元ツイートに相手の社会的評価を低下させる内容が含まれる場合、リツイートの経緯や意図、目的を問わず、名誉毀損罪が成立することが示されたのです。

もしご自身がリツイートによって不名誉な情報を拡散される被害に苦しまれている場合は、このように名誉毀損罪が成立する可能性があります。

橋下氏批判の「リツイート」は名誉毀損 二審も判決支持

(3)デマを書き込んだ加害者が書類送検

2019年、神奈川県の東名高速で2017年に起きたあおり運転事故についてのデマをネット上に書き込まれたとして、デマをネット上に投稿したとして、複数の加害者が書類送検されました。
この事件では、デマを書き込まれた建設会社の社長が、経営する会社が休業したり、精神的苦痛を受けたとして880万円の損害賠償を求める訴えを起こしています。

このように、名誉毀損での被害であっても、相手方の立場や被害状況によっては、相場よりも高額な慰謝料を請求される場合があります。

東名あおり事故でデマ被害、建設会社が投稿した8人提訴

 

名誉毀損罪の事例に該当する方はこちら

2-1. 侮辱罪

侮辱罪は、事実ではない、誹謗中傷による噂話などで相手の名誉を毀損する行為に適応される法律です。

侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

侮辱罪の要件は、名誉毀損罪とよく似ていますが、「事実を摘示しているかどうか」という点が大きな違いです。
具体的には、「バカ」「クズ」「ゴミ」のような悪口、「ハゲ」「チビ」「デブ」など身体的特徴を馬鹿にする発言が該当します。
つまり、侮辱罪とは、「公然の場で言語や動作によって、相手を軽んじたりはずかしめたり、名誉を傷つけたりすること」を示すことです。

また、侮辱罪の刑事罰は、「拘留又は科料」とされています。
「拘留」とは、1日以上30日未満の一定期間、刑務所や拘置所、留置場などに収監されることであり、「科料」とは、1,000円以上1万円未満を納める必要があることです。
また、相手方への損害賠償も10〜30万円が相場となっており、名誉毀損罪よりも罪状そのものは軽いとされています。

また、侮辱罪も名誉毀損罪と同様、親告罪です。
被害者側がアクションを起こさなければ事態が進展することはありません。

2-2. 侮辱罪の具体例

ここからは実際に発生した侮辱罪の実例について紹介します。
世間を大きく騒がせた事件も侮辱罪としての起訴が進められており、数あるネット上の誹謗中傷事件でも該当例が非常に多い罪であるといえます。

  • グループライン上で侮辱的発言を繰り返す行為。
    部長Aが社員のBに対し、会社のグループライン上で「しっかりしねぇか、ボケ」「あたまわりぃんだよ、バカ」などの書き込みを繰り返した。
  • SNSなどの公然の場で他人を罵る行為。
    匿名アカウントのCが、Twitterのコメント欄でユーザーDを「デブ」「ハゲ」「クサい」などと発言し罵った。
  • ネット掲示板のスレで他人を罵倒する行為。
    したらば掲示板で投稿者Dが、スレの仲間であるEに対し「無能」「カス」などと投稿し罵った。
  • 社内のグループチャットで身体的特徴について第三者を罵る行為。
    第一営業部のFが、管理部Gを社内チャットで、「ブス」「ブタ」などと罵倒した。
  • 事実無根の侮辱的発言を公然の場でする行為。
    モデルHが、匿名の投稿者からブログのコメント上で、「整形顔」「鼻をいじっている」などInstagram上のコメントに記載された。

上記のような発言や行為は、全て侮辱罪の可能性があり、加害者は刑事罰を受けたり、賠償金を請求される可能性があります。
以下は、実際の侮辱行為が損害賠償や書類送検に繋がった実例です。

(1)グループライン上での侮辱行為

侮辱罪の1つ目の実例は、学校の友人同士や職場の同僚同士のグループラインで侮辱行為が発生した事例です。

このケースでは、同じ職場に勤務する夫婦と職場関係者の計5名でのグループライン上でメンバーの一人である夫が職場関係者から被害を受けたケースとなります。

被害者はこの事件で、「今年最大の変質者情報がございます!!それは〇〇さん(原告)です。」、「こいつはあり得ないほど馬鹿で汚いことを平気でできる人物なので皆さんお気を付けくださいませ!!」、「うちの主人はこいつの仕事を手伝ったのですが、汚いことを平気でやります!」などの悪質な書き込みをされた事件となります。

なおこの裁判では、名誉感情侵害(侮辱罪)が認められ、一回限りの行為であることや、被告がこれを認めて原告に謝罪の意思を示していることを踏まえて、慰謝料30万円、弁護士費用3万円、合計33万円の損害賠償の支払いが被告に対し命じられています。

このように、グループライン上など厳密には「公然の場」とは言えない場であっても相手の感情を侵害する投稿を行った場合、侮辱罪が適用される場合があります。

名誉感情の侵害(侮辱罪)とは?LINEグループの事例等を解説

(2)Twitterでの侮辱行為により書類送検

2020年12月、誹謗中傷に追い詰められ同年5月に自殺してしまった木村花さんのTwitterに匿名で「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと数回にわたって書き込み、木村さんを侮辱した加害者が侮辱容疑で書類送検されたことがわかりました。

この加害者は、自らの誹謗中傷を名乗り出ましたが、木村さんが亡くなった直後、大半の中傷コメントや関連のツイッターのアカウントが削除されています。
ただ、木村さんは、中傷コメントの画像を保存しており、警視庁が遺族の協力を得て分析していたところ、この加害者の投稿も保存されており、侮辱行為を裏付ける証拠となりました。

生前に木村さんが行った、証拠を保存することは、実は誹謗中傷事件を解決する上で非常に重要です。
今回、木村さんは追い詰められ、結果的に自殺してしまいましたが、中傷コメントを確実に保存することが誹謗中傷問題を解決する非常に重要な鍵となります。
誹謗中傷被害を受けた場合は、必ず証拠を保存しましょう。

「テラハ」木村花さんを侮辱の疑い 20代男「復讐で」

(3)ネット掲示板で侮辱した加害者を特定/書類送検

元AKB48でタレントの川崎希さんは、2020年3月、ブログを更新し、自身と家族をネット上での誹謗中傷し、侮辱罪で書類送検されていた2人について、刑事告訴を取り下げることを発表しました。

川崎は、インターネット上の掲示板に自身や家族に対する悪質な誹謗中傷が書き込まれていることから、19年4月に情報開示請求で発信者を特定し、同年10月に弁護士を通じ、原宿署へ相談していました。

ネット掲示板で匿名の相手から誹謗中傷され苦しんでいる方は非常に多いと思います。
しかし、川崎さんのケースのように、確実な手続きを踏み、犯人を特定できれば、非常に匿名性の高いネット掲示板の加害者にも立ち向かうことができるのです。

川崎希が刑事告訴取り下げ「誹謗中傷には罰」拡散

侮辱罪の事例に該当する方はこちら

3-1. 脅迫罪

脅迫罪とは、「相手を脅迫すること」行為を示し、ネットの掲示板上で行われる「殺害予告」などは脅迫罪に分類されます。

脅迫罪(刑法222条1項)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
(同2項)
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

脅迫罪は、名誉毀損罪や侮辱罪と異なり、親告罪ではないため、被害者による被害届などの提出による申告がなくても、警察は捜査や犯人逮捕に乗り出すことができます。

しかし、現実的には警察は被害者からの申告がない場合、事実上捜査を行わない場合が多いとされています。
主な理由は、インターネットは匿名性が高く、加害者を特定できなければ逮捕や賠償金の請求ができないからです。

なお、脅迫罪には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が伴うとされています。

3-2. 脅迫罪の具体例

ここからは実際に発生した脅迫罪の実例について紹介します。

脅迫というと「強盗」や「脅し」などの事件を連想しがちですが、ネット上での脅迫行為も同様に罪に問われます。

また、脅迫となり得る文言としては、例えば、「死ね」「ナイフでメッタ刺しにして殺す」「家に放火する」「家族の命を狙う」「〇〇(名前)を殺してほしい、レイプしてほしい」などがあります。

具体的には以下のような行為がインターネット上の脅迫罪に該当します。

  • ネット掲示板上での放火予告を行う行為。
    匿名の投稿者Aは、爆サイ上で「明日、地元のラーメン屋Bのオヤジの態度が気に食わないから、明日みせしめに放火する」と投稿した。
  • SNS上で「死ね」「殺す」などと書き込む行為。
    投稿者CがタレントDのTwitterやインスタグラムのコメント欄に「殺してやる」「レイプされろ」などと書き込んだ。
  • 個人メールで「刺し殺す」「家族の命を奪う」などのメッセージを送る行為。
    大学生Eが、大学教授FのTwitterのDM機能を利用して、「単位くれなかったら殺す」「家に放火して嫁や子供を焼き殺す」などのメッセージを送った。

ここまで説明した、「名誉毀損罪」や「侮辱罪」は「公然の場」での誹謗中傷を示していましたが、脅迫罪は「公然の場」でなくても成立する犯罪行為です。
このことから、公然の目に触れないDMや1対1の会話、手紙などでも成立します。

以下は、ブログの書き込みが脅迫容疑として書類送検に繋がった事例です。

(1)ブログでの脅迫行為で書類送検

がん闘病中のタレント、堀ちえみのブログに「死ね」「消えろ」などと誹謗中傷する言葉を何度も書き込んだとして、北海道に住む50代の主婦が2019年6月に脅迫容疑で警視庁から書類送検されました。

調べによると、主婦は堀が舌がんの手術を受けた2月4日の前日の3日に、「死ね消えろ馬鹿みたい」などと投稿。さらに、堀が食道がんの手術を受けた4月16日以降も「死ねば良かったのに」などと書き込んでいたため、堀さんが警察庁に被害届を出していました。

堀ちえみのブログに誹謗中傷「死ね消えろ」、50代主婦が書類送検

 

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4-1. 信用毀損及び業務妨害罪

信用毀損罪・業務妨害罪とは、虚偽の情報を流したり、他人を騙したりすることで他人の信用を毀損する犯罪のことを示します。

信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条/信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

信用毀損罪・業務妨害罪は嘘の情報を流すなどして、信用を損なうような行為や業務を妨害する行為を示します。
これらに該当する罪で注意しなければいけない点は、3年以下の懲役もしくは、50万円以下の罰金と刑事罰が他の誹謗中傷に関連する法律よりも重いことはもちろんですが、損害賠償金が非常に多額になる傾向がある点です。

なぜなら、信用毀損や業務妨害で発生する賠償金は店舗や会社の損失に応じて請求される場合があるためです。

4-2. 信用毀損/業務妨害の具体例

ここからは実際に発生した信用毀損/業務妨害罪の実例について紹介します。
これらの罪は、基本的には法人や事業主に対して課せられる罪ですが、事務所に所属する有名人などを誹謗中傷して訴えられた場合、個人に対する名誉毀損としてでなく、事務所に対する業務妨害とみなされる場合があり、この場合の慰謝料は非常に高額になる可能性があります。

以下は、信用毀損罪・業務妨害罪に該当する可能性がある主な事例です。

  • ネット掲示板で事務所の大物俳優を毀損する行為。
    5ちゃんねるで「大物俳優Aは、スタッフを罵倒し暴行を浴びせることで有名だ」などの書き込みを行った。通常は名誉毀損となる可能性が高いが、その投稿が拡散され俳優Aは舞台を降板する事態などに進展すると、事務所の売上に大きく影響するため、業務妨害としてみなされる場合がある。
  • 飲食店の悪評を比較サイトに投稿する行為。
    食べログ上で客Bが居酒屋Cに対して「居酒屋Cの刺身が腐っていて食えたものではなかった。腹を壊すから絶対行くな」などと投稿した。これも店側の売上が投稿によって激減した場合、名誉毀損ではなく業務妨害とされる場合がある。
  • 店舗の信用を損ねる投稿をSNSに投稿し、触れ回る行為。
    TwitterのユーザーDが、中華料理店Eの料理の写真を「ゲロマズ。クソみてぇな料理で食えたもんじゃない。」とのコメントを付け、さらに拡散希望のタグ付きで投稿した。
  • 予約を入れた店を連絡せずにドタキャンする行為。
    客Eは、12月18日18時から飲食店Fに20人分のコース料理の予約を入れたが、連絡なしにドタキャン。さらに店からの電話にも出なかった。
    この場合、店側から業務妨害として訴えられる可能性がある。

以下は、信用毀損・業務妨害で逮捕や書類送検に至った実例です。

(1)飲食店名挙げ「コロナ」と書き込み 業務妨害容疑で逮捕

2020年4月、新型コロナウイルス感染者がいるかのような虚偽の情報を流し、山形県米沢市の飲食店の業務を妨害したとして、山形県警が30代の容疑者を偽計業務妨害の疑いで逮捕し発表しました。
容疑者は、インターネットの掲示板サイトに米沢市内の飲食店の実名を挙げて「(店が)新型コロナ」などと書き込み、この店の業務を妨害した疑いがあるとされています。

飲食店名挙げ「コロナ」と書き込み 業務妨害容疑で逮捕

業務妨害系の被害で注意しなければいけないネット掲示板は、爆サイ.comです。

爆サイは、「地域密着型」の掲示板である点が特徴であり、掲示板上で話題が地域別に分類されている仕組みとなっています。
そのことから、スレッドでの話題もローカルで県市町村まで絞った話題が多く、特定の個人や企業、店舗などが掲示板上の話題となりがちです。
このような特性を背景に、爆サイ上では、地域の個人や企業、店舗などへの誹謗中傷と疑われるような投稿が目立ちます。

(2)掲示板の誹謗中傷が偽計業務妨害に発展

俳優の西田敏行さんは、一般人が作成したブログに悪質な事実無根の情報を掲載されて、2016年8月に所属事務所が赤坂署に被害届を提出しました。
事務所は、この際ホームページに「刑事、民事の責任追及を進める」などとする告知文を掲示しています。
問題のブログには「西田敏行が違法薬物を使用している」「女性に対し日常的に暴力をふるっている」「海外で現地の女性に大金を支払って暴力を振るっている」などのデマ情報が、報道記事のように紹介されており、この影響で西田の仕事の打ち合わせが一部延期になるなど、事務所の業務に深刻な実害も生じたということです。
2017年7月、赤坂署は偽計業務妨害容疑で中部地方に住む40~60代の男女3人を書類送検しています。

この事件で注意しなければならないポイントは、通常名誉毀損で処理される事案が、事務所業務まで影響が及んだことで業務妨害となった点です。

西田敏行:デマを広げた男女3人が偽計業務妨害容疑で書類送検

業務妨害罪の事例に該当する方はこちら

5-1. プライバシー権の侵害

プライバシー権の侵害は、これまで説明した犯罪とは異なり、懲役や罰金などの刑事罰は課されませんが(基本的にプライバシー権利の侵害のみでは犯罪者にはならない)、損害賠償を支払う対象に該当します。
また、以下はプライバシー権の侵害が成立するための条件です。

  1. 個人情報であること。
  2. 公開されると被害者が不利益を受ける情報であること。
  3. 本人以外に告知されていない情報が侵害されていること。

これら3つの要素が全て揃った上で成立します。

プライバシー権の侵害と名誉毀損の主な違いは、名誉毀損の条件が「相手の社会的地位を下げる」という条件がある一方、プライバシーの侵害に関してはそのような条件がない点です。
そのため、本名・住所など社会的地位に直接的無関係がない場合でも、プライバシーの侵害は成立します。

また、プライバシー情報には、本名・住所・電話番号などだけでなく、身体的特徴や前科なども含まれ、損害賠償金は社会的影響によって異なりますが、一般人の相場が5〜10万円、著名人の場合は50〜1000万円が相場です。

なお、近年社会問題化しているリベンジポルノもプライバシー侵害の一つですが、リベンジポルノに関しては、リベンジポルノ防止法により、懲役や罰金などの刑事罰が課されます。

5-2. プライバシー権侵害の具体例

プライバシー権の侵害の一例としては、匿名掲示板に電話番号や住所、勤務先名などの個人情報を書き込む「身元バレ」と呼ばれる手法があります。
また、「身元バレ」の注意点はプライバシーの侵害が二次被害の引き金になりうる点です。
実際に、5ちゃんねるや爆サイなど匿名掲示板上の企業情報専門スレッドに社員の本名や電話番号などの個人情報が書き込まれることでイタズラ電話などを誘発しトラブルになったケースが実際に存在します。
また、「身元バレ」の被害を被ったことで発生したイタズラ電話などの被害に家族や友人が巻き添えになったり、勤務先に誹謗中傷を信じた人からのクレーム電話による二次被害も想定されます。

プライバシー権の侵害に該当する主な事例は以下の通りです。

  • ネット掲示板に住所や電話番号を書き込む行為。
    ストーカーAが芸能人Bの自宅と電話番号を5ちゃんねるに投稿した。
  • 望まないかたちで本名をSNS上でバラす行為。
    芸人Cが、相方Dに隠してきた本名をTwitter上に無許可で投稿された。
  • 身長・体重などの情報を許可なく投稿する行為。
    モデルEが友人FからInstagram上に写真と共に許可なく「Eは身長〇〇cmで体重〇〇kg!まじうらやまー!」と投稿された場合。
    名誉を毀損しているわけではないが、プライバシーの侵害と判断される可能性がある。
  • ポルノ画像を掲示板に投稿する行為。
    女性Gが、元交際相手Hと別れた直後5ちゃんねる上に裸の写真を投稿された場合。
    このケースでは、プライバシーの侵害以外にもリベンジポルノ防止法によって刑事罰の対象となる可能性もある。
  • 免許やパスポートの写真をSNSに投稿する行為。
    TwitterユーザーIは、友人Jの免許証の写真を無許可でInstagramに投稿した。
    この場合、内容次第では、プライバシーの侵害ではなく名誉毀損になる可能性もある。
  • 有名人が来店したことを従業員がSNSに書き込む行為。
    店員Kは、アイドルグループのメンバーLが自身が勤務する店舗へ来店したとの情報をTwitterに書き込んだ。

このようにプライバシー権の侵害は非常に適応範囲が広いことが特徴です。

また、以下は2000年代初頭のまだインターネットが現在ほど普及していない時代に当時の2ちゃんねるで発生したプライバシー権の侵害として有名な事件です。

(1)2ちゃんねるで発生したプライバシー権の侵害

プライバシー侵害によって被害を被った有名な事例が2000年代に発生した動物病院名誉毀損事件です。
損害賠償等請求事件(動物病院名誉毀損事件)は、2000年代はじめに掲示板「2ちゃんねる」に固有名詞が公開され、名誉毀損の被害を受けたとして動物病院側が2ちゃんねる管理人を訴えました。
つまり、病院名が公開され、プライバシーが犯されたことが引き金となり、名誉毀損事件まで発展してしまったのです。
東京地裁は管理人が原告からの削除要請に応じず、当該書き込みを削除しなかったのは違法として400万円の損害賠償と書き込み削除を命じました。
また、その後2ちゃんねる側が判決内容を不服として行った控訴は棄却されています。

2チャンネル動物病院事件

プライバシー侵害の事例に該当する方はこちら

6. 免責となる場合

免責とは、「罪に問われない」ということを意味します。

例えば、名誉毀損については以下の条件に該当する場合、免責となります。

  • 公共の利害に関わるものか
  • 公益目的となるものか
  • 真実であるかどうか

上の条件に合致する例としては、例えば会社の不正会計を告発する発言や書き込みを行ったケースなどです。
このような発言や書き込みは、公共性、公益性また真実であるとされ免責事項に該当します。
また、真実であるかあきらかになっていない場合であっても、客観性が高い資料に基づいた発言や書き込みは名誉毀損に当たらないとされます。
なお、亡くなった人に対する名誉毀損は内容が虚偽でない場合は名誉毀損に該当しません。

7. 罰則・損害賠償目安一覧

以下では、ここまでまとめた誹謗中傷として該当する犯罪行為をわかりやすく一覧表にしてまとめました。

懲役・罰金の表は「刑事罰」として該当する罰則の目安を表した表です。
刑事罰とは、加害者が国に対する償いとして労働をしたり金銭を納める措置であり、刑事罰に処されると犯罪者として前科人となります。
この措置で加害者は、「刑事責任」を追求されます。

一方、慰謝料のような損害賠償金は、国に対する償いではなく加害者が被害者に対する償いとして金銭を納める措置です。
こちらは、被害者の精神的苦痛や営業上の損失に対して支払われる賠償金であり、加害者側は「民事責任」を追求されます。
なお、賠償金に関しては、訴訟ではなく示談交渉で事件が解決した場合、目安よりも安い金額に収まる傾向がある一方、被害者が思い詰めて自殺してしまった場合などは大きく跳ね上がる可能性があるとされています。

誹謗中傷に伴う罰則の目安

対象 罰則の目安
名誉毀損罪 3年以下の懲役/50万円以下の罰金
侮辱罪 拘留(1日以上30日未満の収監)
科料(1,000円以上1万円未満の納金)
脅迫罪 2年以下の懲役/30万円以下の罰金
信用毀損罪/業務妨害罪 3年以下の懲役/50万円以下の罰金

誹謗中傷に伴う損害賠償金の目安

対象 損害賠償金の目安
名誉毀損(一般人) 10〜50万円前後
名誉毀損(事業主) 50〜100万円前後
名誉毀損(著名人) 100〜200万円前後
侮辱罪 10〜50万円前後
信用毀損・業務妨害
(事業主)
100万円以内
プライバシー侵害
(一般人)
5〜10万円
プライバシー侵害
(著名人)
50〜1000万円

 

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3. 誹謗中傷被害の相談先

誹謗中傷の事例を見て、「自分に該当する」と思った方は、相談先を探さなければいけません。
ご自身が被った被害に応じて適切な相談先を選択しましょう。
相談先は、ご自身の被害状況やどれだけ投稿者を絞りこめているかによって変わりますが、ネットで誹謗中傷被害を受けた場合、全ての人に共通する最も重要なポイントが2つあります。

それは、

  1. 迅速に対応すること。
  2. 証拠を確実に保管すること。

この2つです。

1つ目の重要ポイントは、「迅速な対応の必要性」です。
なぜなら、インターネット上の情報が拡散スピードが非常に早く、対応を迅速に行わなければ、情報の広範囲に渡る拡散や、二次的な被害を招く可能性があるからです。
誹謗中傷の事例の一つとして紹介した、動物病院で発生したプライバシー侵害(身元バレ)が、その後名誉毀損事件に発展してしまった例がその代表例であるといえます。

2つ目の重要なポイントは、証拠を確実に保管することです。
特に、インターネットで被害を受けた場合は、誹謗中傷の内容が記載されている証拠となる箇所をスクリーンショットなどで撮影し確実に保管しましょう。
また、証拠を保管する際は、

  • 誹謗中傷が自分や自分の関係者(家族や交際人)に向けられていることが確実にわかる証拠を保全する。
  • 投稿日や時間を抑えるため、時間が記録されている部分を抑える。
  • 誹謗中傷の証拠となりうる箇所の前後の投稿も保管する。
  • サイトURLを確実に保管する。

これらのポイントを確実に抑えることが重要です。

また、証拠は1秒でも早く保管しましょう。
なぜなら、ネット上での誹謗中傷の証拠となるIPアドレスや日時を保管したログなどのデータは、保管期間が有限であり、時間が経つと証拠そのものが消えてしまう可能性があるからです。

事例でも紹介したように、2020年11月にはテラスハウスの木村花さんへ悪質な書き込みを行った加害者が書類送検されましたが、犯人を特定できた理由の一つが、生前の木村さんが自らに向けられた誹謗中傷に対する証拠を保管していたからです。
このことからも、証拠の保管が誹謗中傷対策でいかに重要であるかがわかります。

また、証拠の保管も重要ですが、誹謗中傷被害を受けてしまった場合、インターネットそのものとの付き合い方を変えてみることも重要です。
投稿の削除、犯人の特定などの対策を行いつつ、誹謗中傷を受けてしまったアカウントからの発信を控えたり、SNSとしばらく距離を置いてみましょう。
被害を現状以上に拡大させないようにするためにも、インターネットそのものと距離を置くことは有効であると考えられます。

相談先1)弁護士

誹謗中傷被害を受けた場合、有効であるとされる一つ目の相談先は弁護士(法律事務所)です。
特に、加害者が匿名である場合や投稿の削除を希望する場合は、弁護士への相談は必須となります。

実は、誹謗中傷に関わる一連の対策(犯人の特定や投稿の削除要請など)は、個人で行うことも可能です。
しかし、そのような一連の手続きには、ITや法律に関する専門的な知識やノウハウ、また煩雑な書類作成を行う必要があります。
さらに、時間経過による被害の拡大や証拠の消失といった取り返しのつかない自体を招く可能性も否めません。

また、インターネット上で誹謗中傷の被害を受けた場合、インターネット関連の分野に強みを持つ弁護士に相談する方法がベストです。

インターネット分野に強みを持つ弁護士を利用することで、安心して誹謗中傷に立ち向かうことができるだけでなく、通常通りの生活を送りながら誹謗中傷被害の処理を進めてもらうことが可能となります。

弁護士を利用する場合のデメリットとして費用面を気にする方も多いかもしれません。
後述する通り、弁護士を利用した際には着手金をはじめとした費用はかかってきてしまいますが、誹謗中傷事件では、弁護士を介した適切な措置を講じることで相手方に慰謝料として損害賠償請求を行うことが可能です。

2020年には、“はるかぜちゃん”こと女優の春名風花さんのように長年誹謗中傷に苦しみましたが、多額の示談金を獲得したケースも大きな話題となりました。
春風さんは、10年もの間SNSを中心とした誹謗中傷に苦しめられましたが、Twitterで誹謗中傷を行った人物を民事訴訟と刑事告訴の両面から追い詰め、315万円もの和解金を獲得し事件を解決しています。

春名風花 中傷相手との苦闘10年…示談成立で「抑止力に」の願い

 

 

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相談先2)警察や公的機関

誹謗中傷の被害を受けた場合でも、脅迫行為の被害などを被り、身の危険を感じた場合などは警察へ相談する方法が適切です。
一方で、警察はその誹謗中傷に事件性がない場合、あまり積極的に動かないことが多いとされています。
インターネット上で起こる犯罪は、法律の整備がまだ未熟であったり、明確な証拠を押さえづらいことが傾向があるからです。

また、警察では、各都道府県にサイバー犯罪相談窓口を設置しているため、身の危険を感じた場合や、証拠と被害の関連性が明確である場合、下記URLからアクセスして相談することも可能です。

都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口

総務省でも違法・有害情報の相談を受け付ける窓口を開設しています。
この窓口は、インターネット上で登録を受け付けており、無料で相談することができるため、誹謗中傷被害を受けた場合の第一段階として、このような窓口を利用するのは有効な手段の一つです。

インターネット違法・有害情報相談センター

また、ネット上での誹謗中傷被害の増加を受け、法務省は2020年12月に相談窓口を案内するためのフローチャートを公開しました。
このフローチャートは、ユーザーのニーズや緊急度に応じた相談先がひと目でわかるように図式化されており、以下の図はフローチャートの一部を表したものです。


なお、フローチャートの続きやより詳しい情報をご覧になりたい方は、以下URLからアクセスしてご確認ください。

ネットで誹謗中傷を受けたらどうしたらいい? 法務省が相談窓口選びのフローチャートを公開

 

相談先3)風評被害対策専門会社

最後に紹介するのは風評被害対策専門会社であり、主に法人が誹謗中傷の事前対策や事後対策に利用する会社です。
法人が誹謗中傷の被害を受けた場合、風評が既に大規模に拡散されてしまっているおり、営業に対するダメージが非常に大きい場合があるため、あらかじめ誹謗中傷の予防策を講じたり、被害拡大の再発防止策を講じる必要がある際、企業は専門会社への依頼を行う場合があります。

誹謗中傷対策の専門会社の具体的なサービスは、爆サイなどを中心にネットの風評自動監視ツール「風評チェッカー」のような24時間不評を監視ツールを用意していたり、不評監視を日額500円のワンコインから請け負うサービスを用意している会社など様々です。
また、サービス範囲は、ネット上の監視、サイトの削除、逆SEO、再発防止策の提案まで多岐に渡ります。

一方で、専門会社による誹謗中傷対策に関するサービスは、内容次第では費用が非常に高額になる傾向があります。
また、弁護士がどれだけ関与しているかで左右されますが、専門会社はあくまで企業であって弁護士ではありません。
弁護士資格を持たない人物や組織が、投稿者の特定や訴訟の手続きなどを代行した場合、非弁行為として罰せられます。
専門会社を利用する際は、費用面やサービス内容に充分注意しましょう。

主な誹謗中傷対策を行う専門会社やサービスの問い合わせ先は以下の通りです。

また、企業が誹謗中傷の被害者となってしまった場合、専門会社へ依頼することで対策を行うことが可能ですが、企業体制を見直し“書かれない会社”にしていく事が最も重要であり、最大の風評被害対策だといわれています。

4. 匿名の犯人を特定する方法

さて、ここまでの解説で「自分は本当に誹謗中傷の被害者であるのか?」「加害者はどのように処分されるのか?」「誰に相談すればよいのか?」などがクリアになってきた方が多いのではないのでしょうか?

ここからは、ネット上で発生する誹謗中傷事件の大半に共通する「加害者が匿名である場合どのようにすればよいのか?」について説明します。
ネット上での誹謗中傷対策で最大のネックかつ最重要であるポイントは、「発信者情報開示請求」と呼ばれる犯人を特定するための手続きであるといえます。
なぜなら、犯人を特定することができてはじめて、法的措置や損害賠償金の請求を講じることができるからです。

なお、既に犯人が特定されている場合は、確実に証拠を抑え、内容証明郵便など配達記録が確実に残る文書などで、本人に対して誹謗中傷を止めるように警告する手段を講じることが一般的です。それでも誹謗中傷が続く場合は、弁護士に依頼し訴訟等に移行することになります。
また、犯人は確実に特定されていることが絶対条件です。
漠然と検討がついている程度でアクションを起こすのは得策ではありません。

発信者情報開示請求のフロー

ここからは、ネット上の匿名の人物を特定するプロセスである「発信者情報開示請求」の具体的なフローを説明します。
発信者情報開示請求は、大きく2段階で構成されており時間と労力を要するプロセスです。
なお、2段階構成の理由としては、たとえ誹謗中傷の加害者であっても個人情報保護の観点から、本人のプライバシーを保証する必要があるためであるとされています。

また、開示請求では一般的に相手の個人情報にたどり着くまでに、半年〜1年もの期間を要する手続きです。
このことから、誹謗中傷対策では、いかにスピードが重視されるかがポイントとなります。

IPアドレスの開示請求 (ステップ1)

発信者情報開示請求のファーストステップは、誹謗中傷が掲載されているサイトの管理者に対するIPアドレスと書き込み日時に関する開示請求です。
サイト管理者とは、ネット掲示板の運営者やTwitterやInstagramなどの運営企業を示します。

この手続きは、被害者本人もしくは弁護士が、誹謗中傷が掲載されているサイトの管理者に対し、IPアドレスと書き込み日時の開示請求を行う手続きです。

なお、手続きには、テレコムサービス協会という団体が発行する「発信者情報開示請求書」という書類が利用されます。

裁判所によるIPアドレス開示決定(開示請求が拒否された場合)

サイト管理者がIPアドレスの開示請求に応じなかった場合、開示請求に応じなかったことを理由とした「発信者開示仮処分の申し立て」という手続きに移行します。

仮処分の申し立ては、「保全事件の申し立て」という書類を利用して行う手続きであり、
書類が受理されると、裁判所の命令によって、サイト管理者からIPアドレスと書き込み日時の情報が本人もしくは弁護士に提出されます。

プロバイダ宛に発信者情報開示請求を実施 (ステップ2)

開示請求もしくは仮処分によって、IPアドレスが開示されると、被害者側は、情報を元にどのインターネットプロバイダ(携帯電話会社)を利用してインターネットへアクセスしているかを調べることができます。

プロバイダが判明したのち、次に行う手続きはプロバイダに対して行う開示請求です。
ここで情報が開示されてはじめて発信者が特定されます。

プロバイダ宛に行う訴訟(開示請求が拒否された場合)

ステップ2の開示請求が受理されると、プロバイダは発信者に対して、個人情報を開示するように通知・確認を行う手続きへ移行しますが、発信者は情報開示を拒否するケース大半であるとされています。
なお、その場合、被害者側の弁護士は、裁判で発信者情報開示請求の訴訟をプロバイダに対して実施する流れとなります。

総務省が投稿者の特定手続き簡略化を検討

上記では、情報開示請求の手続きの流れを解説しましたが、誹謗中傷の被害を受けた多くの方は、開示請求の手間や時間に対して不満を持つと思います。
また、現状の発信者情報開示請求の流れでは、途中で諦めてしまう方も多いことが考えれれるため、ネット上の誹謗中傷被害が一向に解決しません。

そのような状況を受け、総務省は2020年11月、誹謗中傷を受けた被害者が投稿者を特定しやすくするための制度見直しを話し合う有識者会議を開き、新たな裁判手続きの創設を想定した最終案を取りまとめました。

この最終案では、従来の情報開示訴訟より迅速に開示が進むよう被害者側の手続きの負担を減らすことを検討しており、被害者側の手続き簡略化や、発信者の表現の自由を配慮するための案が盛り込まれています。

 

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5. 誹謗中傷対策で発生する費用と弁護士への依頼

さて、前章では、匿名の加害者を特定するための「発信者情報開示請求」の流れを説明しました。
発信者情報開示請求は、半年〜1年もの時間がかかり、被害者のストレスは相当なものに及ぶことが予想されます。
被害者側としては、総務省の改善案に期待したいところです。

この章では、発信者情報開示請求の具体的な費用の目安と、弁護士の選び方のポイントについて解説します。

弁護士費用の目安

ここからは、おおよその弁護士費用の目安を解説します。
事件が長期化すればするほど、どうしても費用が高くなる傾向がありますが、価格だけで弁護士を選択する手法は禁物です。
「投稿の削除さえできればよいのか?」「犯人の特定までを望むのか?」「犯人に損害賠償金を請求するのか?」など、自分の状況に合わせた判断を心掛けましょう。

(1)法律相談料

法律相談料は、弁護士や所属事務所によって様々です。
初回のみ無料で相談を受け付け、2回目以降有料という料金設定で対応する事務所などもあります。相場としては、1回の相談料で5,000〜10,000円程度の事務所が多いようです。
また、面談形式の相談だけでなく、メールやLINEを利用したサポートも併せて行う弁護士もいます。
自分自身の状況にあわせて依頼先を選択する必要があります。

(2)投稿の削除要請を行う場合に費用

誹謗中傷の削除の要請を弁護士を利用して行う場合、削除1件あたりの着手金はおおよそ5万円、削除が成功した場合の着手金も5万円程度が相場とされています。

また削除請求が裁判へ移行してしまった場合、削除1件あたりの着手金は10〜30万円、成功した場合の報酬金も10〜20万円程度の相場であるといわれています。

(3)開示請求費用(投稿者特定)

誹謗中傷の投稿者を特定するために弁護士を利用した場合、1件あたりの着手金はおおよそ20万円程度が相場となります。
また、投稿者の特定に成功した場合、報酬金として1件あたりおおよそ20万円程度が相場であるといわれています。
また、プロバイダによる個人情報開示の通知・確認に投稿者が応じなかった場合、プロバイダに対して訴訟を行うことになります。
その場合の着手金の相場は1件あたり10万円、開示が成功した場合の報酬金は1件あたり20万円程度が相場です。

(4)損害賠償請求を行う場合の費用

損害賠償請求を行い民事訴訟に移行する場合、着手金が20万円程度が相場となり、報酬金は回収した賠償金額の16〜30%が相場となります。
裁判外の交渉によって示談で解決した場合だと着手金は10万円前後、報酬金は示談によって回収した示談金の16〜30%程度が相場であるとされています。

以下の表は誹謗中傷対策を弁護士に依頼した場合のおおよその相場です。

着手金 報酬金
法律相談料 無料/〜10,000円
投稿削除費用 5万円前後 5万円前後
投稿削除費用(裁判へ移行した場合) 10〜30万円 10〜20万円
開示請求費用 20万円前後 20万円前後
開示請求費用(裁判へ移行した場合) 10万円前後 20万円前後
損害賠償請求(示談で解決した場合) 10万円前後 示談金の16〜30%
損害賠償請求(裁判へ移行した場合) 20万円前後 賠償金の16〜30%

 

弁護士を選ぶポイント

最後に説明するのは、誹謗中傷被害を受けた場合のパートナーとなる弁護士の選び方です。

情報開示請求や訴訟などの手続きは、制度上、個人で講じることは可能ですが、専門知識が必要な煩雑な処理や手続きを独力で行うことは事実上非現実的であると言わざるを得ません。
さらに、個人での対策は、弁護士が行うよりも圧倒的に時間がかかるため、事件解決への道もより遠くなります。
一方、弁護士に相談した場合、着手金など金銭的な負担は伴うものの、煩雑な処理や手続きに時間を使う必要はありません。
そして、仮に金銭的負担が多かったとしても、損害賠償請求や示談によってその埋め合わせを図ることが可能です。

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(1)弁護士へ依頼する前に

一度説明しましたが、弁護士への依頼前に被害者は重要な作業を行う必要があります。
それは証拠の保全です。

また、証拠の保全で重要な点は以下の通りです。

  • 誹謗中傷が自分や自分の関係者(家族や交際人)に向けられていることが確実にわかる証拠を保全する。
  • 投稿日や時間を抑えるため、時間が記録されている部分を抑える。
  • 誹謗中傷の証拠となりうる箇所の前後の投稿も保管する。
  • サイトURLを確実に保管する。

(2)相談

本格的な見積もりなどの前に一度法律事務所へ相談する必要があります。
インターネットに「インターネット」「誹謗中傷」「弁護士」などのワードを入れて検索し、インターネット関連に強みを持つ弁護士や弁護士事務所を探すのが良い方法です。
初回相談無料や初回1時間無料相談などを提示している弁護士事務所なども多数存在するため、時間帯や地域など自分自身の状況により適切である弁護士を探しましょう。

(3)見積もり・依頼

費用についての一般的な相場はご紹介した通りですが、弁護士や弁護士事務所に費用は様々です。特に、実績のある弁護士に依頼をする場合などは費用が高くなるケースも考えられます。この段階では、自分の状況や要望にあわせ、様々なケースを想定した上である誹謗中傷事件を解決するために想定されるある程度の金額を想定することが重要です。

(4)着手

サイトや投稿の削除で誹謗中傷の件を終わらせるのか、訴訟まで移行して刑事告訴まで行うかは個人の希望によって様々です。
ただし、裁判まで移行した場合、年単位の時間と多額の費用を費やさなければならない可能性も考えられます。
自分自身の状況や懐事情なども考え担当弁護士とよく相談して解決までの道筋をこの段階で決めていきます。
また、着手金の支払いを分割払いで対応する弁護士事務所などもあるため、そのような手段を検討するのも、コストを分散させる上での一つの方法です。

6. まとめ

この記事では、誹謗中傷の定義や被害の対策方法、具体的なコストなど、「誹謗中傷」という問題に対しての全容をまとめました。

何気なく投稿した記事やツイートは、誹謗中傷をしてしまった人の心理としては単なるストレスのはけ口程度のものかもしれません。
現代社会は、「表現の自由」が保証されている社会ではありますが、その内容が社会問題化してしまったり、被害者が命を断ってしまうなどという事態に発展すると取り返しのつかないことになってしまいます。

一方、被害者側は、万が一誹謗中傷の被害にあった場合、自分自身のケースや状況を考え適切な対応を行う必要があります。

また、普段から他人に失礼のない態度を心掛けることや、企業体制を見直し改善を続けることが最も有効な誹謗中傷の予防策であるといえます。

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ABOUT ME
石原一樹
2013年社内弁護士としてヤフー株式会社に入社。その後、外資系法律事務所東京オフィスにて勤務し、2017年にスタートアップ・ITベンチャー企業に特化したリーガルサービスを提供するSeven Rich法律事務所(現 FAST法律事務所)を設立する。2022年6月には渥美坂井法律事務所パートナー弁護士に就任。