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SNS・ネットの誹謗中傷対策完全マニュアル【弁護士への依頼方法から損害賠償請求まで】

昨今、SNSによる他人への誹謗中傷や、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医療従事者を対象とした心ない投稿をする人に関するニュースなど「誹謗中傷」というワードについて毎日のようにメディアでの報道が行われています。

特に、恋愛リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さんがSNSによる誹謗中傷で自殺し亡くなってしまったという事件は、芸能界を中心に大きな波紋を呼びました。木村さんの死亡後、テラスハウスは放送休止となっています。

2020年8月6日 木村花さんの母、響子さんのインタビューについての記事

木村さんように誹謗中傷の被害を受け、追い込まれ自殺に至ってしまうようなケースがある一方、“はるかぜちゃん”こと女優の春名風花さんのように長年誹謗中傷に苦しみましたが、多額の示談金を獲得したケースも大きな話題となりました。
春風さんは、10年もの間SNSを中心とした誹謗中傷に苦しめられましたが、Twitterで誹謗中傷を行った人物を民事訴訟と刑事告訴の両面から追い詰め、315万円もの和解金を獲得し事件を解決しています。

2020年7月26日 春名風花さんの示談成立に関する記事

このようにワードとして「誹謗中傷」は、頻繁に耳にする言葉である一方、どのような行為が誹謗中傷にあたるのか?また、誹謗中傷による被害を受けてしまった場合はどのように対応すれば良いのか?などの知識はあまり知られていないように思われます。

今回は、「誹謗中傷」の定義や、「誹謗中傷」に関わる法律、「誹謗中傷」への対応方法などをまとめて紹介します。

1. 誹謗中傷とは?

①-1 「誹謗中傷」という言葉の意味

はじめに、毎日のように耳にする「誹謗中傷」という言葉の意味を説明します。
頻繁に聞くワードであり、なんとなく意味や雰囲気は分かるワードですが、「誹謗中傷」とは、元々「誹謗」と「中傷」という2つの独立した単語でした。

辞書では、

  • 「誹謗」=そしること。悪口を言うこと。
  • 「中傷」=無実のことを言って他人の名誉を傷つけること。

と定義されています。

そして、

  • 「誹謗中傷」=根拠のない悪口を言って相手を傷つけること。

とされています。

つまり、普段よく耳にする誹謗中傷とは「根拠がない」+「相手を傷つける悪口である」という二つの要素で成り立っており、この定義は後述する「誹謗中傷になる」「誹謗中傷にならない」の判断を行う上で非常に重要です。

(1)「批評」「批判」と「誹謗中傷」の違い

「批判」、「批評」などの言葉も「誹謗中傷」と混同されがちな言葉ですが、このような言葉の意味を定義すると「誹謗中傷」とは全く異なる言葉であることがわかります。

辞書では、

  • 「批判」=物事の真偽や善悪を批評し判定すること。
  • 「批評」=物事の善悪・美醜・是非などについて評価し論ずること。

と定義されており、どちらの概念も事実や根拠が存在することが前提となっています。

(2)「誹謗中傷」を英語で表現すると

誹謗中傷は、英語で、Libel」、「Slanderなどの単語で表現されます。

話し言葉での誹謗中傷はLibel、書き言葉での誹謗中傷はSlanderと一般的には使い分けがされています。

誹謗中傷の意味

・根拠がない悪口であること。
・根拠があったとしても度を越した悪口や相手の社会的地位を下げるとみなされるもの。

①-2 誹謗中傷に該当するケースとは?

(1)誹謗中傷に該当するケース

誹謗中傷とみなされるか、みなされないかの判断を行う場合は、前述した単語の意味を理解していることが非常に重要です。

誹謗中傷=根拠のない悪口を言って相手を傷つけること。と定義されていました。

この「根拠のない」という点が誹謗中傷の判断する上では大変重要です。

つまり、発言や文章の内容が、正当な理由や根拠のない悪口や嫌がらせで、他人の名誉を毀損するものであれば、誹謗中傷であるといえます。
また、注意しなければいけない点は、発信者自身が「正義感」や「正当性」に基づいた発言であると考えていても、根拠が薄かったり、思い違いだったりする場合は、誹謗中傷に該当してしまう点です。

さらに、ネット上のSNSや掲示板サイトなどで、常軌を逸した回数の悪口を発信した場合も誹謗中傷であるとみなされてしまいます。
「アホ」「バカ」という書き込みを繰り返し行った場合も誹謗中傷と判断されるため注意が必要です。

(2)誹謗中傷に該当しないケース

誹謗中傷の判断基準として「根拠の有無」が非常に重要である点を説明しました。

この判断基準を逆に考えると、同じ悪口であっても、根拠があり、批判や反対意見として正当とみなされた場合は誹謗中傷にならないということになります。
さらに、文脈的に肯定的、否定的の両面にとれる内容なども誹謗中傷には当たらないとされます。

例えば、「Aというラーメン屋で炎天下のなか、行列に長時間並ぶことになった。店員の手ぎわが悪いんじゃないか」というような投稿があったとします。
この発言は、店員に対する誹謗中傷と捉えることができる一方、人気店であるために長時間並ぶ必要があった、という事実に基づく批判的な発言であるという解釈をすることも可能です。
このような場合は、誹謗中傷には当たらない発言であると考えられます。

(3)「根拠」があっても誹謗中傷に該当するケース

誹謗中傷かどうかの判断を行う上で、「根拠の有無」が重要であることを説明しましたが、根拠のある事実であったとしても「公然の場(インターネットも含む)」で「相手の評価を下げるための発言や書き込み」を行った場合も誹謗中傷にあたる可能性があります。

例えば、近所の人とトラブルが起きてしまった場合、トラブルの中身は事実であったとしても、実名などのプライバシー情報や、度を越した回数の悪口を他の住民に対して触れ回った場合は誹謗中傷であると判断されてしまう場合があります。

また、お店の接客態度などに不満があった場合、その店が常にそのような接客を行っているように言いふらしたり、Twitterなどでそのことについてしつこく呟いた場合、店の評価を下げる目的で行った誹謗中傷であると判断される可能性があると考えられます。

2. 誹謗中傷と法律

次に誹謗中傷に関わる法律の説明や、法的措置についての解説を行います。
被害者は誹謗中傷に対して投稿の削除要請を行うだけでなく、法的措置を講じ、相手方を訴えることで訴訟を起こすことができます。

②-1 民事上の責任と刑事上の責任

インターネット上で誹謗中傷の被害にあった場合、法的には民事上の責任と刑事上の責任のいずれも追及できる可能性があります。 これらはそれぞれの定義が明確に分かれており、 両者の関係は完全に独立しているため、両方または一方のみを追求することも可能です。

  • 民事=訴えた側の原告も訴えられた側の被告はどちらも個人もしくは法人(私人)
  • 刑事=原告は個人もしくは法人である一方、訴えた側の被告は国(の代理である検察官)

②-2 親告罪とは?

前述した通り、誹謗中傷の被害にあった場合、民事・刑事の両面から加害者を追及できる可能性があります。

この際注意しなければならない点は、誹謗中傷に関連する刑事責任を追求する際に適応される法律の一部は親告罪であるという点です。
親告罪は「被害を受けました」という被害届などを警察に対して提出する必要がある種類の犯罪のことです。
被害届が提出された後、警察は届出によって申告された内容に応じて捜査や犯人の逮捕などの措置を執行します。
親告罪では警察へ被害届などを出すことが前提されています。
そのため、誹謗中傷の被害を受けていたとしても、被害者本人が声をあげなければ対応できない仕組みとなっています。

②-3 誹謗中傷に関わる民事上の責任

誹謗中傷に関わる民事上の責任として代表的なものはプライバシー権の侵害に関する法律です。
プライバシー権に関しては刑法による条文がないため、社会的信用を失ったことに対する書き込みの削除や、損害賠償など民事訴訟を起こすことで対応する形になります。
一般的にプライバシー情報というと本名や電話番号、勤務先などが挙げられますが、前科や犯罪歴、病歴、身体的特徴、指紋などもプライバシー情報であり、本人が望まない形で多数の人間へむけて公開された場合は誹謗中傷となり、情報公開の差し止めや損害賠償請求など民事訴訟の対象となります。

また、ネット上での殺害予告など本来は脅迫罪が適応されるような犯罪であっても、実際は、親告罪と同様に被害届を警察に提出しなければ迅速に解決しないケースが多いものもあります。
そこで、このようなケースでは、刑事上の責任ではなく民事上の責任を追求することで、殺害予告があった事による経済的被害(警備費用)などを犯人に対して損害賠償として請求する形で対応することがあります。

②-4 誹謗中傷に関わる刑事上の責任

誹謗中傷に関わる刑事上の責任を追求する法律は主に以下の法律が該当します。

  • 侮辱罪(刑法231条)
  • 名誉毀損(刑法230条)
  • 信用毀損罪業務妨害罪(刑法233条/信用毀損及び業務妨害)
  • 脅迫罪(222条1項、同2項)

この中で侮辱罪と名誉毀損は親告罪です。
そのため、被害者が被害届などを提出して申告を行わない限り警察は動きません。
また、親告罪は告訴期間が決まっており、「犯人を知った日」から6ヵ月以内に刑事告訴を行う必要があります。

さらに名誉毀損罪の公訴事項は3年とされてます。
公訴時効とは、犯罪が終了してから一定期間が経過すると検察官が起訴できなくなるというものです。

例えばA氏がB氏に対して名誉毀損にあたる書き込みを掲示板へ行い、1ヵ月経過した後で管理人によって削除されたとします。
B氏は書き込みが行われた4年後に書き込みがあった事実を知り、6ヶ月以内に刑事告訴を行いました。
しかし、「管理人がA氏の書き込みを削除した段階で犯罪が終了した」と判断された場合、公訴時効が成立することで検察はA氏を起訴することができません。
これが公訴時効の仕組みです。

また、近年問題として頻繁に報道されているリベンジポルノ(別れた恋人や離婚した妻などの裸体をネット上に晒すこと)などの犯罪は、名誉毀損やリベンジポルノ防止法など刑事訴訟の対象となると同時に、民事訴訟の損害賠償の対象ともなります。

誹謗中傷に関する法律についての詳細をこれから説明します。

(1)名誉毀損罪

名誉毀損罪は、インターネット上で行われる誹謗中傷の中でも、事実を示し、公然と他人の社会的評価を低下させる行為に適用されます。

以下が、名誉毀損罪の条文です。

名誉毀損(刑法230条)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

名誉毀損罪で注意しなければいけない点は、自分自身が直接SNSや掲示板に名誉毀損にあたる投稿をしなかった場合であっても、公然の場で名誉毀損にあたる発言をしてしまった場合に適応されてしまう点です。

例えば、友人同士の会話で他人の名誉毀損にあたる内容をレストランなどで話してしまった場合も名誉毀損罪が適応される可能性が高いとされます。
なぜなら、レストランは不特定多数の人が存在する公然の場であり、その話題を耳にした第三者がその内容をネット上に拡散させてしまうリスクが発生するからです。

ただし、名誉毀損罪は親告罪です。
話題となってしまった人が被害届を提出するなどの措置を行わない限り、警察の捜査対象とはなりません。

(2)侮辱罪

侮辱罪は、事実ではない、誹謗中傷による噂話などで相手の名誉を毀損する行為に適応される法律です。

侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

先に説明した名誉毀損罪と侮辱罪の大きな違いは「内容の真偽」の有無です。
名誉毀損罪は、事実ベースでの名誉毀損であるため、名誉毀損されている内容を確かめることができます。(犯罪歴、身体的特徴を毀損するなど)
一方、侮辱罪は噂話など具体的事実に基づかない名誉毀損について適応されます。

例) 名誉毀損罪
「A課長が部下の女性と不倫している現場を見かけた」という発言をレストランで話す。
「B氏には犯罪歴がある」という書き込みをネット上の掲示板で行う。

例)侮辱罪
「C営業部の社員は無能だらけだ」という話をを駅の喫茶店で話す。
「D部長は、部下にセクハラばかりしているらしい」という噂話をSNSに投稿する。

このように、名誉毀損罪も、侮辱罪も特定の個人や団体を公然の場で社会的地位を低下させる発言をしている点に変わりはありませんが、名誉毀損罪が具体的事実を取り上げていて、侮辱罪が具体的事実に基づいていない点がこの二つの法律の大きな違いです。

また、侮辱罪も親告罪であるため、被害届など提出などの申告なしに捜査や犯人の逮捕を行うことはできません。

(3)脅迫罪

脅迫罪とは、「相手を脅迫すること」行為を示し、ネットの掲示板上で行われる「殺害予告」などは脅迫罪に分類されます。

脅迫罪(刑法222条1項)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
(同2項)
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

脅迫罪は、匿名の人物であっても実在する人物に対し殺害予告などを行った場合には成立する刑事措置です。また、親告罪ではないため、被害者による被害届などの提出による申告がなくても、警察は捜査や犯人逮捕に乗り出すことができます。

しかし、現実的には警察は被害者からの申告がない場合、事実上捜査を行わない場合が多いとされています。
これにはインターネットの匿名性が影響しています。
書き込みなどから犯人特定を行う場合には、情報開示請求を行わなければなりません。
また、加害者を特定できなければ逮捕や賠償金の請求はできないのです。

(4)信用毀損及び業務妨害罪

信用毀損罪とは、虚偽の情報を流したり、他人を騙したりすることで他人の信用を毀損する犯罪のことを示します。

信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条/信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

信用毀損罪とは、虚偽の内容を書き込むことや触れ回るなどして、不特定多数の人間に対して風説の流布したような場合に適用される犯罪です。

例えば、「あの店の料理が安いのは賞味期限切れの食材を使っているからだ」などの情報を流布した場合は、店舗に対して誹謗中傷行為を行い、社会的信用を低下させたとして罰せられます。
また、店舗に予約を入れておきながらキャンセルの電話を入れずに「ドタキャン」する行為や他人の名前をつかって偽の予約を何度も入れるといった行為は業務妨害罪として懲罰の対象となります。

②-5 誹謗中傷であっても免責となる場合

免責とは、「罪に問われない」ということを意味します。

例えば、名誉毀損については以下の条件に該当する場合、免責となります。

  • 公共の利害に関わるものか
  • 公益目的となるものか
  • 真実であるかどうか

上の条件に合致する例としては、例えば会社の不正会計を告発する発言や書き込みを行ったケースなどです。
このような発言や書き込みは、公共性、公益性また真実であるとされ免責事項に該当します。
また、真実であるかあきらかになっていない場合であっても、客観性が高い資料に基づいた発言や書き込みは名誉毀損に当たらないとされます。
なお、亡くなった人に対する名誉毀損は内容が虚偽でない場合は名誉毀損に該当しません。

3. 誹謗中傷と損害賠償金

誹謗中傷の被害によって追求できる民事上の責任や刑事上の責任について解説しましたが、被害者側は、誹謗中傷で被った被害や抵触した法律に応じて損害賠償金を請求することができます。

誹謗中傷対策を行う際に、被害者側には投稿を削除したり、犯人を特定するために費用が発生します。(詳しい費用については後述します)
しかし、被害者側は、犯人から損害賠償金を慰謝料として回収できる可能性があり、賠償金によって、誹謗中傷対策に費やした費用の埋め合わせを図ることができます。
損害賠償金の目安は、名誉毀損罪、侮辱罪信用毀損・業務妨害、プライバシーの侵害など犯罪の種類によって相場が異なります。

また、弁護士へ依頼し損害賠償請求を行うことで、相手方にプレッシャーを与える効果が期待できるため、裁判外での示談金の支払いなどによる早期解決の可能性が高まります。

③-1 民事上の責任に伴う賠償金

(1)プライバシー侵害の損害賠償金

プライバシー侵害は、

  1. 個人情報であること。
  2. 公開されると被害者が不利益を受ける情報であること。
  3. 本人以外に告知されていない情報が侵害されていること。

という3つの要素が全て揃った上で成立します。

このような案件には著名人であれば隠し子などの情報が暴露された場合などが該当し、一般人であれば犯罪歴やリベンジポルノの公開などがプライバシー侵害として該当します。

損害賠償金は社会的影響によって異なり、一般人の相場が5〜10万円、著名人の場合は50〜1000万円が相場となり、こちらも示談で解決した場合は金額が低くなる傾向があります。

③-2 刑事上の責任に伴う賠償金

(1)名誉毀損罪の損害賠償金

名誉毀損での損害賠償金は一般人の場合は10〜50万円程度が相場であるといわれています。ただし、被害者が追い詰められ、自殺をしてしまった場合などは高額な賠償金が科されます。

事業者などの法人が名誉毀損の被害を受けた場合、売上に対するダメージも損害賠償費用として加味されるため、補償を含めて50〜100万円程度の賠償金が科されます。しかし、示談によって解決した場合は、その額は損害賠償金と比較して半額程度になることもあります。

また、芸能人などの著名人が被害を受けた場合の損害賠償金は、その影響の大きさによりより高額になり場合によっては数百万円もの損害賠償金が発生する可能性があります。
被害者は賠償金とは別に、判決結果によっては弁護士費用などを加害者負担として回収することも可能です。

(2)侮辱罪の損害賠償金

侮辱罪が適用された場合の損害賠償金は、名誉毀損と比べてやや低めとなる傾向があり、10〜30万円程度が賠償金の目安であるとされ、示談で解決した場合はさらに低めの相場となります。
ただし、被害者が自殺などをしてしまった場合、賠償金の額は遥かに高くなります。

(3)信用毀損・業務妨害の損害賠償金

不特定多数の人間に対して風説の流布し、信用を低下させたり、業務を妨害した場合の損害賠償金は100万円以内となるのが相場の目安です。
名誉毀損の場合は「精神的苦痛」への賠償として損害賠償金が支払われますが、事業主の場合は「社会的評価や営業上の利益の低下」に対する賠償として損害倍書金が科される仕組みとなっています。
また、他の事例と同様に示談で解決した場合は、相場は低くなる傾向があります。

以下の表はそれぞれの損害賠償金の目安についてまとめた表です。

対象 損害賠償金の目安
プライバシー侵害(一般人) 5〜10万円
プライバシー侵害(著名人) 50〜1000万円
名誉毀損(一般人) 10〜50万円前後
名誉毀損(事業主) 50〜100万円前後
名誉毀損(著名人) 100〜200万円前後
侮辱罪 10〜50万円前後
信用毀損・業務妨害(事業主) 100万円以内

 

4 誹謗中傷への具体的な対策と相談先

誹謗中傷対策を行う上で最も重要なポイントは迅速かつスピード感を持って対応にあたることです。
インターネットを利用した誹謗中傷は発信元の特定が難しく、拡散のスピード早く広範囲であることなどが対策を困難としています。
このようなネット上における誹謗中傷へ対応するためには、情報が広範囲に拡散したり二次的な被害へ繋がる前に迅速に対応することが求められます。
掲示板やSNSに書き込まれた誹謗中傷の削除や、誹謗中傷の証拠となる情報の開示は対応が早ければ早いほど有利であり、遅ければ遅いほど不利になる特性をもちます。
また、インターネット上のおける誹謗中傷の証拠となるIPアドレスや日時を保管したログなどのデータは保管期間が有限であり時間が経つと証拠そのものが消えてしまうため迅速な対応が必須です。

④-1 個人で行うことができる誹謗中傷対策

自分自身が誹謗中傷の被害者になってしまった場合の対策について説明します。
もし誹謗中傷の被害を受けてしまったら、個人で対応できる対策は2つあります。

1つ目は、インターネットそのものとの付き合い方を変えてみることです。
例えば、誹謗中傷を受けてしまったアカウントからの発信を控えたり、SNSとしばらく距離をおいてみることなどがこの対策における代表的な例です。
被害を現状以上に拡大させないようにするためにも、このような対策は有効であると考えられます。

2つ目は、サイト管理者などに通報し、誹謗中傷に関する投稿の削除依頼を行うことです。
この方法を自身で行うメリットは、弁護士費用などがかからないため、低コストで誹謗中傷に立ち向かうことができる点です。
一方で、この方法にはITや法律に関する専門的な知識が必要なだけでなく、書類作成など煩雑な手続きが求められます。

インターネット上において誹謗中傷の証拠となるIPアドレスや日時を保管したログなどのデータは保管期間が書き込みから数ヶ月程度です。
時間が経ってしまうとログなどの重要な証拠そのものが消えてしまう可能性があり、取り返しのつかない事態となってしまうため、個人で誹謗中傷の削除要請を行う場合は、時間にも注意を払って対応する必要があります。

④-2 弁護士に依頼して行う誹謗中傷対策

前述したように、誹謗中傷の被害を被ってしまった場合、個人での対処することは不可能ではありませんが、ITや法律に関する専門的な知識はもちろんのこと、手続きに関わる煩雑な書類作成を行う必要があります。
また、最大の難点は、時間経過が被害の拡大や証拠の消失といった取り返しのつかない自体を招いてしまう点です。

そこで、一般的にはインターネット上で誹謗中傷の被害を受けた場合、インターネット関連の分野に強みを持つ弁護士に相談する方法がベストであるとされます。

弁護士を利用することで、削除要請や手続き書類の作成など誹謗中傷に関わる一連の手続きを代行してもらうことが可能であるため、通常通りの生活を送りながら誹謗中傷被害の処理を進めてもらうことができます。
また、ネット上で発生した誹謗中傷の最大のネックは時間との競争という点ですが、インターネット関連に強みを持つ弁護士へ依頼することで迅速な対応が可能となります。

デメリットとして、着手金をはじめとした費用はかかってきてしまいますが、誹謗中傷の被害に関しては、弁護士へ依頼し、損害賠償金請求の手続きを行うことで、相手方に賠償金慰謝料としてを支払わせることも可能です。

このような観点から、トータルで考えた場合、誹謗中傷を受けた場合は弁護士へ依頼する方法が最も得策であるといえます。

④-3 その他の誹謗中傷対策の相談先

誹謗中傷の被害を受けた場合の対策として、最も一般的な手段は弁護士へ相談・依頼ですが、公的機関へ相談する方法や、企業などは不評被害対策を行う専門会社へ依頼することで誹謗中傷の対策を行うこともできます。

(1)警察や公的機関へ相談する

警察へ相談を行う場合、一番大きなメリットはお金がかからずに相談ができることです。
一方で、警察はその誹謗中傷に事件性がない場合、あまり積極的に動かないことが多いとされています。
インターネット上で起こる犯罪は、法律の整備がまだ未熟であることや、明確な証拠を押さえづらいことが傾向があるからです。

ただし、SNSなどのインターネットを介しての誹謗中傷の被害を被り、かつ証拠と被害の因果関係が明らかな場合、各都道府県に設置されている警察庁のサイバー犯罪相談窓口に相談するのは有効な手段の一つであるといえます。

 

都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口

また、総務省においても違法・有害情報の相談を受け付ける窓口を開設しています。
この窓口は、インターネット上で登録を受け付けており、無料で相談することができます。万が一誹謗中傷の被害を受けてしまった場合、はじめに相談する窓口としてこのような窓口を利用するのは手段の一つです。

インターネット違法・有害情報相談センター

(2)風評被害対策専門会社へ相談する

企業などの法人が誹謗中傷の被害を被ってしまった場合は、専門会社への依頼するケースもあります。
なぜなら、法人が被害を受けてしまった場合、風評が既に大規模に拡散されてしまっているケースや、再発防止策を講じなければならない場合が多いからです。
単にサイトや投稿を削除したとしても、法人が被害者である場合、それだけでは根本的な解決であるとはいえないことが多く、現状の対策と再発防止策を併せて行う必要があります。

このような専門会社は、誹謗中傷対策として、爆サイなどを中心にネットの風評自動監視ツール「風評チェッカー」のような24時間不評を監視ツールを用意していたり、不評監視を日額500円のワンコインから請け負うサービスを用意している会社など様々です。
サービス範囲は、ネット上の監視、サイトの削除、逆SEO、再発防止策の提案まで多岐に渡ります。

ただし、専門会社による誹謗中傷対策に関するサービスは、サービス領域が広い分、費用が高額になる傾向があります。

主な誹謗中傷対策を行う専門会社やサービスの問い合わせ先は以下の通りです。

企業が誹謗中傷の被害者となってしまった場合、専門会社へ依頼することで対策を行うことが可能ですが、企業体制を見直し“書かれない会社”にしていく事が最も重要であり、最大の風評被害対策だといわれています。

5 誹謗中傷対策のフロー

ケースバイケースで異なりますが、誹謗中傷に対応する措置としては、状況によって大きく2つに対応策が分かれます。

1つ目が、誹謗中傷を行っている相手の検討がついている場合です。
この際、注意しなければならないのは、しっかりとした証拠を抑えることです。
漠然と検討がついている程度でアクションを起こすのは得策とは言えません。
証拠を抑えたあとは、簡易書留などの配達記録が確実にもこる文書などで、誹謗中傷をおこなっている本人に対して誹謗中傷を止めるように伝えることがベストな方法であるといえます。

2つ目が、誹謗中傷を行った相手がわからない場合です。
このようなケースでは、SNSや掲示板を運営している管理者に対して削除要請を行う必要があります。
また、誹謗中傷の書き込みを行ったアカウントを特定するために、「発信者情報開示請求」を行うこともできます。

「配達記録の残る形で誹謗中傷を行った相手に誹謗中傷を止めるようにとの手紙を送付する」、「サイト管理者へ投稿の削除要請を行う」などいくつか誹謗中傷への対策について説明しましたが、どうしても誹謗中傷が収まらない場合は法的措置を講じざるを得ないという形になります。

⑤-1 実名で誹謗中傷が行われている場合

発信者情報開示請求は、匿名で誹謗中傷の書き込みなどが行われた場合に講じられる措置です。
実名を公開してSNSや掲示板で誹謗中傷が行われている場合は、直接誹謗中傷を行う本人に対して、被害者もしくは弁護士から直接連絡を取り、投稿の削除などを要請します。
その後、相手方が削除を行わなかったり、誹謗中傷を継続する場合は裁判へ以降します。

⑤-2 発信者情報開示請求(発信者が匿名の場合)

インターネット上で匿名での誹謗中傷の書き込みが行われている場合、人物を特定する必要がありますがこの特定プロセスを「発信者情報開示請求」と呼びます。
発信者開示請求は、本人が自ら行うか、もしくは弁護士に依頼して行う必要があり、弁護士資格を持たない企業や人物がこの手続きを代行すると弁護士法で禁止されている「非弁行為」として罰せられます。なぜなら、発信者情報開示請求は訴訟や示談行為の手続きを含むからです。

発信者情報開示請求の流れ

  1. IPアドレスの開示請求(仮処分)<1回目の開示請求>
    はじめに、被害者本人もしくは弁護士が、誹謗中傷が掲載されているサイトの管理者に対し、IPアドレスと書き込み日時の開示請求を行います。
    手続きには、テレコムサービス協会という団体が発行する「発信者情報開示請求書」という書類が利用されます。
    また、サイト管理者が開示請求に応じなかった場合、発信者開示仮処分の申し立てを行います。仮処分の申し立ては、「保全事件の申し立て」という書類を利用して行われます。
  2. 裁判所によるIPアドレス開示決定
    裁判所によるIPアドレスの開示請求仮処分が実施されると、裁判所の仮処分命令によって、サイト管理者からIPアドレスと書き込み日時の情報が本人もしくは弁護士に提出されます。
  3. 開示されたIPアドレスからどのプロバイダ経由で接続が行われたか調査
    IPアドレスが開示されると、その情報を元にどのインターネットプロバイダ(携帯電話会社など)を利用してインターネットへアクセスしているかを調べることができます。
  4. プロバイダ宛に発信者情報開示請求を実施<2回目の実施>
    プロバイダを判明させた後、次に行う手続きはプロバイダに対して発信者を特定するための情報開示請求です。
    プロバイダは発信者に対して、個人情報を開示するように通知・確認を行います。
    しかし、通常は拒否されるケースがほとんどです。
    その場合は、裁判でプロバイダに対し発信者情報開示請求の訴訟を行います。

6 誹謗中傷対策で発生する費用と弁護士への依頼

⑥-1 個人で対策を行う場合の費用

以下の表は誹謗中傷対策を個人で行う場合に発生する費用をまとめたものです。

手続き 費用
サイト管理者へのIPアドレスの開示請求(テレコムサービス協会の発信者情報開示請求書を利用) 封筒代、書留郵便料金など
サイト管理者に対する発信者開示仮処分の申し立て 仮処分命令の申し立て時
→収入印紙(2,000円)、プロバイダへの送達用切手(1,082円)
仮処分命令の申し立てが容認された場合
→仮処分命令に必要な担保金(東京都の相場で30万円)
プロバイダに対して行う発信者情報開示請求 通信費(メールで行う)
発信者情報開示請求訴訟を行う場合 裁判における手数料(プロバイダ1社あたり13,000円)

個人で誹謗中傷対策を行う場合、弁護士へ依頼するよりも費用を抑えることはできますが、手続きがスムーズに進まず、仮処分や訴訟に移行してしまった場合は一定の費用がかかることがこの表からわかります。

⑥-2 誹謗中傷対策を弁護士へ依頼する場合

誹謗中傷対策は、早期対応、早期解決が非常に重要になります。
また、仮に裁判へ移行した場合、解決に要する時間は年単位に及び、時間的コスト、金銭的コストそして精神力を消費する戦いが見込まれます。
個人で誹謗中傷対策を講じる場合、着手金などの負担がないためコストは抑えられますが、
煩雑な処理や手続き、そしてプロバイダのログが数ヶ月で消えてしまうという時間的なプレッシャーに追われます。
一方、弁護士に相談した場合、着手金など金銭的な負担は伴うものの、煩雑な処理や手続きに時間を使う必要はなくなります。
また、仮に金銭的負担が多かったとしても、損害賠償請求や示談によってその埋め合わせを図ることは充分に可能です。
相談費用も、初回の相談については無料で対応している事務所なども多くあるため、インターネット関連に強い弁護士を探して相談することで誹謗中傷の早期解決につなげることができます。

弁護士への依頼手順

これから弁護士への依頼手順の流れを説明しますが、その前に、まず重要な作業を行います。
それは、誹謗中傷の証拠を保全することです。
特に、インターネット上の情報はすぐに削除されてしまうおそれがあるため、書き込みを見つけた場合には直ちに保全を行うようにしましょう。被害を受けたとしても証拠がなければその後の手続きを行うことができないからです。
証拠の保全を行う場合は、証拠となる画面の印刷やスクリーンショットでの保存がベストな方法です。
その際、投稿先のURLと記録した時間が保存されるように設定する必要があります。また、問題となる投稿だけでなく、掲示板やSNSであれば、前後の投稿も同時に保存することがポイントです。

弁護士へ誹謗中傷に関する相談を行う手順は以下の通りです。

  1. 相談
    本格的な見積もりなどの前に一度法律事務所へ相談する必要があります。
    インターネットに「インターネット」「誹謗中傷」「弁護士」などのワードを入れて検索し、インターネット関連に強みを持つ弁護士や弁護士事務所を探すのが良い方法です。
    初回相談無料や初回1時間無料相談などを提示している弁護士事務所なども多数存在するため、時間帯や地域など自分自身の状況により適切である弁護士を探しましょう。
  2. 見積もり・依頼
    費用についての一般的な相場はご紹介した通りですが、弁護士や弁護士事務所に費用は様々です。特に、実績のある弁護士に依頼をする場合などは費用が高くなるケースも考えられます。この段階では、自分の状況や要望にあわせ、様々なケースを想定した上である誹謗中傷事件を解決するために想定されるある程度の金額を想定することが重要です。
  3. 着手
    サイトや投稿の削除で誹謗中傷の件を終わらせるのか、訴訟まで移行して刑事告訴まで行うかは個人の希望によって様々です。
    ただし、裁判まで移行した場合、年単位の時間と多額の費用を費やさなければならない可能性も考えられます。
    自分自身の状況や懐事情なども考え担当弁護士とよく相談して解決までの道筋をこの段階で決めていきます。
    また、着手金の支払いを分割払いで対応する弁護士事務所などもあるため、そのような手段を検討するのも、コストを分散させる上での一つの方法です。

⑥-3 弁護士へ依頼して対策を行う場合の費用

次に、弁護士に誹謗中傷対策を依頼した場合に発生する費用とその内訳、相場について説明します。

(1)法律相談料

法律相談料は、弁護士や所属事務所によって様々です。
初回のみ無料で相談を受け付け、2回目以降有料という料金設定で対応する事務所などもあります。相場としては、1回の相談料で5,000〜10,000円程度の事務所が多いようです。
また、面談形式の相談だけでなく、メールやLINEを利用したサポートも併せて行う弁護士もいます。
自分自身の状況にあわせて依頼先を選択する必要があります。

(2)投稿の削除要請を行う場合に費用

誹謗中傷の削除の要請を弁護士を利用して行う場合、削除1件あたりの着手金はおおよそ5万円、削除が成功した場合の着手金も5万円程度が相場とされています。

また削除請求が裁判へ移行してしまった場合、削除1件あたりの着手金は10〜30万円、成功した場合の報酬金も10〜20万円程度の相場であるといわれています。

(3)開示請求費用(投稿者特定)

誹謗中傷の投稿者を特定するために弁護士を利用した場合、1件あたりの着手金はおおよそ20万円程度が相場となります。
また、投稿者の特定に成功した場合、報酬金として1件あたりおおよそ20万円程度が相場であるといわれています。
また、プロバイダによる個人情報開示の通知・確認に投稿者が応じなかった場合、プロバイダに対して訴訟を行うことになります。
その場合の着手金の相場は1件あたり10万円、開示が成功した場合の報酬金は1件あたり20万円程度が相場です。

(4)損害賠償請求を行う場合の費用

損害賠償請求を行い民事訴訟に移行する場合、着手金が20万円程度が相場となり、報酬金は回収した賠償金額の16〜30%が相場となります。
裁判外の交渉によって示談で解決した場合だと着手金は10万円前後、報酬金は示談によって回収した示談金の16〜30%程度が相場であるとされています。

以下の表は誹謗中傷対策を弁護士に依頼した場合のおおよその相場です。

着手金 報酬金
法律相談料 無料/〜10,000円
投稿削除費用 5万円前後 5万円前後
投稿削除費用(裁判へ移行した場合) 10〜30万円 10〜20万円
開示請求費用 20万円前後 20万円前後
開示請求費用(裁判へ移行した場合) 10万円前後 20万円前後
損害賠償請求(示談で解決した場合) 10万円前後 示談金の16〜30%
損害賠償請求(裁判へ移行した場合) 20万円前後 賠償金の16〜30%

 

7. 誹謗中傷とインターネット社会

最近では、ネット上での誹謗中傷が頻繁に取り上げられますが、ネット上での発言は匿名性が高く、発言者の特定が困難な場合であるという特徴があります。
さらに、情報発信の手段としてSNSや掲示板、質問箱など様々な経路があるため、発信源の特定も困難であるとされています。
現在、ネット上での誹謗中傷の被害は以下の2つの「場」を中心に多く発生しています。

  • 掲示板
    5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)、爆サイなどのネット掲示板では、個人名や携帯電話番号を書き込む(晒し上げ)行為や、晒し上げの対象者を中傷する行為などが誹謗中傷行為に該当します。
    また、特定の業界や企業スレッドで個人名を出しクレームや悪口を書き込むことも誹謗中
    傷行為の一つとしてみなされます。
  • SNS
    インスタグラム、LINE、Twitter、FacebookのなどのSNSでは、他人に対して誹謗中傷となる書き込みを行うことや、誹謗中傷発言を興味本位で拡散することなどが誹謗中傷行為に該当します。
    特にツイッターで注意しなければいけないのがリツイート機能です。自分自身が作成した誹謗中傷の書き込みでなくても、それを拡散したことで罪に問われる可能性があります。

インターネット上では、投稿をした人物が、誹謗中傷の被害者と全く面識がないだけでなく、事実も確認せずに軽い気持ちで投稿した内容がSNSや掲示板による影響で拡大してしまうケースも多々存在するため大きな社会問題となっています。

⑦-1 ネット上で発生する誹謗中傷の特徴が反映されている事例

(1)誹謗中傷×二次的被害

誤解や思い込みによって発信された誹謗中傷によって、罪のない人が被害を被る場合もあります。
例えば、ある交通事故の加害者と同性の人物が、加害者であると誤解された上にネット上にデマを流され、誹謗中傷を受ける事件なども発生しています。
またこのようなケースでは被害が本人にとどまらず、勤務先の情報などが匿名掲示板上に流出し、勤務先に誹謗中傷電話がかかり続けるなどの二次的な被害にも繋がる可能性があります。
以下は、このような誹謗中傷事件の参考となる記事です。

デマ被害者、書き込んだ8人を提訴へ 東名あおり事故

(2)誹謗中傷×プライバシー侵害

インターネットを使った誹謗中傷の手段の一つとして、匿名掲示板に電話番号や住所、勤務先名などの個人情報を書き込みプライバシーを侵害する「身元バレ」と呼ばれる手法があります。
実際に、5ちゃんねるや爆サイなど匿名掲示板上の企業情報専門スレッドに社員の本名や電話番号などの個人情報が書き込まれることでイタズラ電話などを誘発しトラブルになったケースが実際に存在します。
また、「身元バレ」の被害を被ったことで発生したイタズラ電話などの被害に家族や友人が巻き添えになったり、勤務先に誹謗中傷を信じた人からのクレーム電話が掛かってきたりして業務に支障を来す場合もあります。

プライバシー侵害によって被害を被った有名な事例が2000年代に発生した動物病院名誉毀損事件です。
損害賠償等請求事件(動物病院名誉毀損事件)は、2000年代はじめに掲示板「2ちゃんねる」に固有名詞が公開され、名誉毀損の被害を受けたとして動物病院側が2ちゃんねる管理人を訴えた事件です。
東京地裁は管理人が原告からの削除要請に応じず、当該書き込みを削除しなかったのは違法として400万円の損害賠償と書き込み削除を命じました。
また、その後2ちゃんねる側が判決内容を不服として行った控訴は棄却されています。

動物病院名誉毀損事件に関する参考記事

(3)誹謗中傷×長期化

この事例は、お笑いタレントのスマイリーキクチさんが、1989年に起きた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯人の一人だという“ネットデマ”が広がった事件です。
スマイリーさんは、「誰かがイタズラで2ちゃんねるに僕の本名である菊池聡という名前を書き込んだ。そこから“スマイリーキクチは足立区出身で、犯人と年齢が一緒だ。犯人はではないか”というデマがスタートしたと証言しています。
また、2008年にオフィシャルブログを開設したところ、そこにも誹謗中傷が殺到し、その後スマイリーさんは刑事告訴に踏み切りますが、2009年、誹謗中傷した人物を一斉摘発するも、全員不起訴となりました。
被害は現在も続いており、完全な解決には至っていません。

インターネット上で拡散された情報は、SNSや掲示板はもちろん、さらにそれを見た人同士の会話など様々な伝達経路で拡散します。そのため、発生元が誹謗中傷について投稿を削除し、情報の発信が停止したとしても、拡散経路すべてにその事実が伝わるとは限りません。
また、発信元の情報に訂正や取り消しがあった場合も、その事実を知らない人が情報を拡散し続けるリスクは依然として存在します。
このように、ネット上で一度拡散されてしまった情報を完全に消去することは非常に困難です。

スマイリーキクチさんの誹謗中傷事件に関する記事

⑦-2 ネット上の誹謗中傷が検挙につながった事例

ネット上で発生する誹謗中傷は解決が困難であるという側面を持つ一方、被害者が事件の解決に尽力し、実際に犯人が特定され検挙に至った事例もあります。
以下は、有名人がネット上での誹謗中傷の被害を受け、それを告発し、検挙につながった実例です。

(1)タレント・実業家の川崎希さんの事例

元AKB48のメンバーでタレント・実業家の川崎希さんは、数年前からネットの匿名掲示板などで、自身や家族に対する悪質な嫌がらせを受けていました。
川崎さんは、2019年10月3日に本人のブログで、虚偽の無銭飲食や窃盗のクレーム連絡を本人の行ったレストランや店舗に対し入れられていたことや、妊娠発表後に「嘘つくな」「流産しろ」といったメッセージが毎日届いていたことなどを告白しています。
川崎さんは弁護士に依頼して裁判所を通じ、誹謗中傷の書き込みについて発信者情報開示請求の手続きを経て、名前と住所を特定した上で刑事告訴を行いました。
その後、女性2人が侮辱罪で書類送検されています。

川崎希さんの誹謗中傷被害に関する記事

 

(2)タレント堀ちえみさんの事例

がん闘病中の堀ちえみさんは、2019年2月、舌がんの手術を受けた前日に自身のブログのコメント欄に「死ね消えろ馬鹿みたい」と書き込まれ、食道がんの手術を受けた4月以降には「癌なのにあちこちでたたかれて笑えるわ 次はどんな病気?(笑)」「死ねば良かったのに」などと数ヶ月にわたって何度も誹謗中傷のコメントが投稿されるという被害を受けました。
堀さんの関係者は警視庁に被害届を提出し、同年6月、誹謗中傷のコメントを書き込んだ北海道在住の50代主婦が脅迫容疑で書類送検されています。

堀ちえみさんの誹謗中傷被害に関する記事

 

(3)俳優 西田敏行さんの事例

西田さんは、一般人が作成したブログ(まとめサイト)に悪質な事実無根の情報を掲載されて、2016年8月に所属事務所が赤坂署に被害届を提出しました。
事務所はホームページに「刑事、民事の責任追及を進める」などとする告知文を掲示しました。
問題のブログには「西田敏行が違法薬物を使用している」「女性に対し日常的に暴力をふるっている」「海外で現地の女性に大金を支払って暴力を振るっている」などのデマ情報が、報道記事のように紹介されており、この影響で西田の仕事の打ち合わせが一部延期になるなど、事務所の業務に深刻な実害も生じたということです。
2017年7月、赤坂署は偽計業務妨害容疑で中部地方に住む40~60代の男女3人を書類送検しています。

西田敏行さんの誹謗中傷に関する記事

⑦-3 その他近年話題となった誹謗中傷関連の実例

  • ともさかりえさんに対する誹謗中傷
    高校時代、ドラマ『金田一』シリーズに出演していた当時、共演していた堂本剛さんのファンからカミソリを送りつけられたり、偽の手紙をばら撒かれるなどの被害に遭遇しました。
  • いしだ壱成さんとその妻飯村貴子さんへの中傷
    2018年にTwitterを中心とした2人への中傷が続き、事務所は悪質な場合は法的措置をとると警告を行っています。その後、いしださんは自身のTwitterを閉鎖しました。
  • 白鳥百合子さんの降板
    「仮面ライダー電王」に出演していた白鳥さんは、誹謗中傷が原因で途中降板を余儀なくされています。
  • 梅宮アンナさんに対する誹謗中傷
    梅宮さんは、Instagramを経由した誹謗中傷により、度々抗議してきたものの、中傷が止むことはなく、娘からのアドバイスでSNSから距離を置くことを決意しました。
  • 韓国における誹謗中傷の社会問題化
    韓国では、誹謗中傷が社会問題化しています。
    元KARAで歌手のク・ハラさんや、ガールズグループf(x)の元メンバーだったソルリさんは悪質コメントに苦しみ自殺に追い込まれています。
    韓国では、一部のネットユーザーによる悪質コメントが芸能人たちを苦しめ、死に追いやるとして、「テックル・テロ」「悪プル怪物」、またキーボードを叩く指で人を殺すと言う意味合いから「ソンカラク(指)殺人」などと表現されています。

8. まとめ

この記事では、誹謗中傷の定義や被害の対策方法、具体的なコストなど、「誹謗中傷」という問題に対しての全容をまとめました。

何気なく投稿した記事やツイートは、誹謗中傷をしてしまった人の心理としては単なるストレスのはけ口程度のものかもしれません。
現代社会は、「表現の自由」が保証されている社会ではありますが、その内容が社会問題化してしまったり、被害者が命を断ってしまうなどという事態に発展すると取り返しのつかないことになってしまいます。

一方、被害者側は、万が一誹謗中傷の被害にあった場合、自分自身のケースや状況を考え適切な対応を行う必要があります。

また、普段から他人に失礼のない態度を心掛けることや、企業体制を見直し改善を続けることが最も有効な誹謗中傷の予防策であるといえます。

 

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石原一樹
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Seven Rich法律事務所 代表弁護士弁理士