「株式会社を設立したいけど、監査って一体何種類あるの?」
「そもそも監査の対象は何?」
とお悩みの方はいませんか?
監査には複数の種類があり、また、会計や財務諸表との関連性も深いため、調べてみてもなかなか理解することが難しいと思います。
そこで、今回は監査について出来るだけ平易な表現を用いて、監査の種類や必要性などについてわかりやすく説明していきます!
この記事を読めば、監査に関する基礎的な知識がすべて身につきますよ!
目次
1.監査とは
監査とは、ざっくりと言ってしまえば、財務諸表が適切か、業務が適切かどうかということを確かめ、場合によっては忠告することです。
そもそも、財務諸表は様々なステークホルダー(利害関係者)に影響を与えるのでその利害を調整する必要があります。
ステークホルダー(利害関係者)とはお互いの利害が影響しあう人のことを指しますが、その代表例として株式会社では経営者、株主、債権者がいます。
原則として所有と経営が分離する株式会社では、経営者は株主の信託によって選任されているにすぎないため、自らの経営手腕の成果を株主にアピールしなければ取締役を解任されてしまうかもしれません。
したがって、経営者は自らの手腕によって利潤を生みだしていることをアピールするために、財務諸表では利益が多く出ているようにみせることを好みます。
そして株主もまた、財務諸表上での利益が多く出ていることを好みます。
というのも、株主は出資した見返りとして配当を要求しますが、その配当は会計によって計算された財務諸表の利益から株式保有数に応じて支払われるからです。
その一方で、銀行やその企業と取引をして売掛金などを持っている企業などの債権者たちは、自らの債権を確実に回収するべく、利益が株主に分配されることを好みません。
さらに、財務諸表は株式市場における投資家の意向や、就職希望者の判断基準など、多くの人々に影響力をもちます。
このように、財務諸表をめぐって様々な利害関係がありますが、これらそれぞれの用途に応じて財務諸表の数字をいじりまわして、いくつもの財務諸表を別々に作成するのでは”真実”の数値とは言えません。
そこで、会計基準を遵守すること(財務諸表を作成する上で、これを「真実性の原則」といいます)、財務諸表は1つだけしか作成しないこと(「単一性の原則」)等によって利害を調整する役割を会計は担います。
このように、ステークホルダーの利害を調整し社会的に信頼を得るうえで監査は重要となります。
2.監査の種類
ここまでみてきたように、監査の目的は、会社が会計基準を遵守した財務諸表を作成するよう監視し、ステークホルダーの利害関係を調整することにあります。
監査には大きく3つの種類があり、外部監査、内部監査、監査役監査があります。
以下、それぞれについて説明していきます。
(1)外部監査
外部監査とは監査を受ける企業の外部の組織、つまり第三者が会計監査を行うことです。
この第三者とは一般に、監査法人や独立した会計士が行い、主に社外のステークホルダー(利害関係者)の保護に努めます。
(2)内部監査
内部監査とは外部監査とは反対に、監査をする企業内部の者が会計監査と業務監査(会計監査以外の監査)をすることを指します。
企業内部で企業内部の部署からは独立した立場で法令や社内規定を遵守しているかを監査します。
昨今では監査だけに留まらず、経営戦略を展開、顧客満足度を扱うなど担う役割が拡大されつつあります。
(3)監査役監査
監査役監査とは、法により設置が義務付けられている監査役により行われる会計監査と業務監査です。
株主総会により選ばれた監査役は監査役”会”として組織され、取締役および代表取締役の業務執行を監査します。
3.外部監査とは
先述の3種の監査についてさらに詳しく述べていきます。
まずは外部監査について説明しますが、概要の項では①どの種類の会社で、②誰が、③何を対象に監査するのかにご注目ください。
(1)概要
外部監査が義務付けられているのは①金融商品取引法においては「上場企業」および会社法第2条6号に規定される「大会社」で、②株主総会によって選ばれた「監査法人または公認会計士」によって、③財務諸表の重要な数字について細かく確認されます。
上場企業とは、株式証券取引所において一定の条件を満たし審査を通った区分において株式が公開されている企業のことです。
また、大会社とは会社法第2条6号の定めるところ、資本金5億円以上、または負債200億円以上の会社を指します。
監査法人や公認会計士は財務諸表を監査し、対価として報酬を受け取ります。
例えば、財務諸表に計上されている現金預金の額と実際に口座にある額が同一であるかを確認するためにメインバンクの発行する残高証明との照合を行ったり、隠し口座がないかの確認を行ったりします。
場合によっては、取引先相手の資料を確認なども行います。
(2)目的
外部監査の目的はざっくりと言いますと、生徒(企業)が自己採点した答案(財務諸表)を先生(監査法人または会計士)が丸付けを行うイメージです。
そもそも財務諸表にステークホルダーの利害を調整する機能(利害調整機能)があることには1.監査とはの項でも触れましたが、その様々なステークホルダーの中でも、外部監査では特に企業外部のステークホルダーに重きを置きます。
企業外部の組織である監査法人や公認会計士は、第三者として公正な立場からその企業の財務諸表が”真実”を表していることを担保します(ここでいう真実とはもちろん絶対的な意味ではなく、会計基準を遵守しているという意味:真実性の原則です)。
これによって、外部監査により証券市場における投資者たちは、公開されている財務諸表を信用することができ、また取引先の相手は安心して掛による売買を行う等のことができます。
(3)必要性
外部監査の必要性を考えるにあたり、「もしも、外部監査がなかったらどうなるか?」を考えてみてください。
その場合、自己採点した答案(外部監査されていない財務諸表)だけが公開されることになります。
すると、株式・証券取引所では投資家たちは自分の資産がより効率的に扱われ、多くの配当が期待できる会社に自らの資産を預けたいと思っていますが、自己採点の答案では信用できません。
効率的な経営をしていると思わせるために数値に誤謬があるかもしれないだけでなく、本当は利益が出ていないのに利益を出しているように見せるといった不正があるかもしれないからです。
これらのことを回避するためにも外部監査は必要不可欠です。
(4)総括
外部監査のキーワードは「外部の利害関係を調整するための監査」です。
外部の利害関係を調整するためなので、外部監査が必要となるのは株式の公開されていない非公開会社ではなく、株式が公開されている上場会社で、そして、社会への影響が強い、つまりCSR(企業の社会的責任)が大きい大会社が対象となります。
というのも、大会社の定義は資本金あるいは負債の大きい会社のことで、多くの資本を集めるためにはより多くの株式を発行し投資を募る必要があり、負債の大きい会社はそれだけ多くのお金を銀行等から借りているので負債を銀行が回収できるかどうかは、その銀行の盛衰にもかかわる可能性が考えられるからです。
また、外部監査の企業外部の方が財務諸表を信用できるように、第三者であり中立的な立場をとる企業外部の監査法人や公認会計士が監査をします。
4.内部監査とは
次に外部監査と対義な内部監査について説明します。
前の項と同様に、概要の項では①どの種類の会社で、②誰が、③何を対象に監査するのかにご注目ください。
(1)概要
内部監査とは法的な義務ではなく企業が①自主的に行うもので、②主に経営陣によって選ばれ、③「内部監査は、原則として組織体およびその集団に係るガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連するすべての経営諸活動を対象範囲」(一般社団法人日本内部監査協会 『内部監査基準』)とします。
ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールとはざっくりと説明しますとコンプライアンス(法令順守)のことですが、企業内部の規則、たとえば経営理念や定款に記載されている事項を遵守しているかも含みます。
(2)目的
内部監査の目的は、学校に例でいうと、学級委員長(内部監査の人)が他の同輩生徒(従業員)に対して小うるさい、そんなイメージです。
言うことを聞かなければ先生(監査法人または会計士)に怒られるかもしれませんが、おとなしく従えば先生に怒られる前に襟を正せます。
会社の社会的な信用を確保するために、合法で効率的に業務を行えるよう、身内同士で評価、忠告、支援を行う目的があります。
(3)必要性
『内部監査基準』によりますと必要性は以下のように説明されます。
組織体が、その経営目標を効果的に達成し、かつ存続するためには、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールを確立し、選択した方針に沿って、これらを効率的に推進し、組織体に所属する人々の規律保持と士気の高揚を促すとともに、社会的な信頼性を確保することが望まれる。内部監査は、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールの妥当性と有効性とを評価し、改善に貢献する。経営環境の変化に迅速に適応するように、必要に応じて、組織体の発展にとって最も有効な改善策を助言・勧告するとともに、その実現を支援する。
(引用元既出:『内部監査基準』)
言い換えますと、社会的信用のためにだけでなく、経営環境の変化に迅速に対応するためにも内部監査は必要ということです。
(4)総括
学級委員長の喩えがしっくりとこない方もいるかもしれませんので、改めて換言してまとめます。
会社は、変化する社会に対応すべく、設立当初の経営理念の変革を強いられることがあります。
しかし、時間の経過とともに企業自ら、当初の経営理念から外れた行動をとってしまうかもしれませんし、時の経過によって法令も改正されて以前までは合法だったことが違法となっている可能性があります。
そのような事態に対応するために、内部監査を行い、社会的な問題となる前に企業自ら修正を促進させます。
このように自分で自分を正していく行為であり、自主的に行われる監査が、内部監査といえるでしょう。
5.監査役監査
最後に監査役監査、監査役によって行われる監査です。
これもまた前項と同様に概要の項では①どの種類の会社で、②誰が、③何を対象に監査するのかにご注目ください。
(1)概要
監査役監査とは①原則監査役の設置が義務付けられている株式会社において(非公開株式会社の場合は監査役の設置は任意)②監査役が③企業内部の日常での取引の記帳が正しく行われているか及び一定期間のまとまった財務諸表の「会計監査」と取締役(経営者)が適法に経営しているかの「業務監査」を対象に監査します。
株式会社は、国家とも類似したコーポレートガバナンス(企業統治)を行っています。
国家は国権を立法、司法、行政と三権分立させお互いをお互いが監視する、チェックアンドバランス(抑制と均衡)によって保たれています。
共同体である以上、国家という単位から企業という単位に代わっても、そこではガバナンス(統治)が行われています。
例えば、株式会社が監査役会設置会社の形態をとる場合、株主という民衆が株主総会という投票で取締役会や監査役会という議員たちを選びます。
そして選ばれた取締役会(≒国会)は代表取締役という内閣を選任します。
(2)目的
監査役監査の目的は、学校の例では、投票で選ばれ人たちによる生徒会(監査役会)メンバー(監査役)が、校長先生(経営者/取締役)にたいして学校生活(経営活動)に関して口出しできるイメージです。
監査役は経営に関する人らからは独立していますが、コーポレートガバナンス(企業統治)の1つの制度として機能しており、先述の通りに「会計監査」と「業務監査」を対象に監査する目的で設置され監査しています。
また、ガバナンスの特性から監査役監査は報告書としてまとめ株主総会で提出、さらに監査役は取締役会に出席し、必要であれば意見を述べることが義務付けられてもいます。
また、取締役が違法行為を発見した場合には、それを止めるよう請求し取締役に対する報告請求および調査などの権限なども有しており、チェックアンドバランス(抑制と均衡)の働きも持っています。
(3)必要性
監査役監査は内部監査と似ていますが、コーポレートガバナンス(企業統治)の一部ですので、先述のように取締役会に対する調査権限を保有しているなど健全な経営をするために欠かせない機能を持っているといえるでしょう。
また内部監査は取締役によって選任されるのに対し、監査役は株主総会によって選任される点も重要です。
内部監査をする人たちは取締役によって選任されている、つまりは内部監査の上司は取締役で、取締役の意に沿わない場合解雇されてしまいかねず、監査において取締役の顔色を伺う可能性があります。
ですが、監査役は株主によって選任されている点において、明確に経営をしている取締役とは独立しており、自らの良心によって職務を遂行できます。
内部監査が時代への適応を主眼においているのであれば、監査役監査はより法令及び定款等の遵守を主眼としているといえます。
(4)総括
「民主主義の細かい仕組みなんて忘れてしまったよ!」、「生徒会なんてうちの学校にはなかった!」、「喩えがへたくそだぞ!」という方のためにも、別表現でまとめます。
監査役監査は取締役(経営陣)と対立している監査役による監査です。
互いにお互いを意識し、にらみ合っていて、そして双方とも株主によって選任されている点で、対等の権力を保持している力関係といえます。
この力関係の仕組みによって監査役監査は会計監査と業務監査を、取締役の下で行われる内部監査よりも厳格に会計監査・業務監査を行えます。
6.まとめ
企業が自己採点しているのが監査前の財務諸表ですが、自己採点では不正が行われてしまう可能性があるため、公に発表する前に他人に採点してもらう必要があり、この第三者にまるつけをしてもらう行為を監査といいます。
監査には代表的に外部監査、内部監査、監査役監査があり、外部監査は外部の利害関係者に対してのアカウンタビリティ(説明責任)を担保するために、内部監査は自らを時代に適応させるために、監査役監査は問題となる前に事前に法令順守を目的としたものです。
会計監査には会計に関する専門的な知識は不可欠であり、業務に関するコンプライアンス(法令順守)には専門的な法の知識が必要です。
グレーな経営をしていては社会的な問題となりかねず、信用を失う危険性があります。
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