会社法

会社の『定款』とは?記載すべき内容と記載方法を総まとめ

いざ、「会社を作ろう!」と思い立ったとしても、会社を設立するには多くのことをしなければなりません。

会社の設立について規定する会社法を読んでみても、実際にどのようなことをしなければならないのか分からないかと思います。

今回は、会社を設立するにあたって、必要不可欠となる「定款」(ていかん)がどのようなものか、そして、「定款」に記載する事項について解説していきます。

また、定款に記載した事業目的等の事項に違反してしまうとどうなってしまうのでしょうかについても解説します。

この記事を読めば、定款に記載すべき内容を抑えることができますよ!

1.そもそも定款とは?

定款とは、株式会社の組織・運営に関する基本的事項を定めた自主規範(会社おける自主的ルール)をいいます。

つまり、定款はその会社における基本となる会社内ルールです。

そして、そのルールがなければ会社とはいえず、すべての会社に作成が会社法上義務付けられています。

この定款は、株式会社の設立を企画する者(会社法上、発起人(ほっきにん)と呼びます)が作成しなければなりません(会社法(以下法令名略)26条1項)。

この発起人が作る最初の定款を原始定款と呼びます。

原則として、定款は書面によって作成する必要がありますが、インターネット等の電磁的記録によって作成することも許されています(26条、会社法規則224条)。

ネット上にも定款のひな形は多数存在し、それに沿って作成することもできます。

しかし、これから解説するようにその会社にとって適切な定款を作成しなければ、会社設立後予期せぬ問題が生じることが考えられます。

そのため、しっかりと定款にどのようなことを記載し、どのような注意しなければならないのか理解し、作成にあたりましょう。

それでは、実際にその内容について解説します。

2.定款に記載する事項

定款に記載する事項といっても、会社設立に必須の事項もあれば、効力の観点等から記載しなければならないものもあります。

それらの事項はこれから解説する3つに分けることができます。

(1)絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならず、記載しなければ定款自体が無効となる事項をいいます。

定款が無効となってしまえば、定款が不存在ということになり、会社の設立自体が無効となってしまうことになります。

そこで記載漏れがあれば会社の設立が危ぶまれ、最も注意が必要な絶対的記載事項の内容について詳しく見ていきましょう。

#1:目的

この「目的」(27条1号)とは、会社を設立する目的等のことをいうのではなく、株式会社で営む事業の内容のことをいいます。

事業の内容といってもこれから始める仕事を実際にどのように記載すべきか悩むことが多いと思います。

また、悩んだ末に実際にこれから始める会社の仕事内容と異なる記載をしてしまった場合、事業目的の範囲外の事業を行ったとして不利益が生じる場合もあります。

そこで、この目的については後ほどさらに詳しく紹介します。

#2:商号

「商号」(同条2号)とは、社名、すなわち会社の名前のことをいいます。

ここで注意しなければならないことは、まず、「株式会社」という文字を含むものであることです(6条2項)。

次に、他の会社であると誤解されるような会社名にすることも禁止されています(同条3項、978条1号も参照)。

例えば、自動車の販売業を営む会社を設立する場合に「株式会社豊田自動車」などの名称を用いることはできません。

#3:本店の所在地

「本店の所在地」(27条3号)とは、簡単にいえば、本社の住所のことをいいます。

この所在地が、設立登記の場所となったり(49条)、会社で問題が起こり裁判となった場合の管轄場所を決める等の基準となり、また、各種書類等の設置場所になります。

多くの会社は、この所在地を自宅兼事務所や賃貸店舗します。また、近年バーチャルオフィスを所在地とする会社も増えています。

しかし、安易にバーチャルオフィスを本店の所在地にすると銀行で法人口座を作る際に拒否されることがあります。

設立時にオフィスを借りる余力がない場合には、代表取締役や発起人などの自宅住所を用いることもあります。

#4:設立に際して出資される財産の価格またはその最低額

出資とは、株式会社に対して金銭その他の財産を拠出し、それと引き換えに会社から株式の交付を受けることをいいます。

そして、発起人が定款を作成すると、次に出資による株主の確定および会社財産の形成が行われます(32条~37条)。

そのため、会社設立の際の会社財産存在を示すために必要とされます。

#5:発起人の氏名または名称、および住所

「発起人」とは、株式会社の設立を企画する者をいいます。

そのため、会社を作る人の氏名等を記載することとなります。

#6:株式会社が発行することができる株式の総数

株式会社が発行することができる株式の総数を発行可能株式総数といいます。

これについては、株式会社の設立の時までに発起人全員の同意によって定めを設ければよいことになっています(37条1項)。

(2)相対的記載事項

相対的記載事項とは、定款で定めなくてもよいが定めることもできる事項であって、かつ、定款の定めがなければ効力を生じない事項のことをいいます。

つまり、定款に記載しなければ効力がない事項ではあるものの会社設立に必須とはいえない事項のことです。

例えば、株式譲渡制限(107条1項1号)の場合、譲渡制限に関する規定を設けなくとも定款として成立こそしますが、規定を置かなければ株式に譲渡制限を設けることはできません。

(3)任意的記載事項

任意的記載事項とは、定款に記載しなくてもよいが記載してもよく、かつ、定款以外の何らかの方法によっても定めることができる事項をいいます。

つまり、定款に記載する以外の方法によっても効力が生じ、会社設立に必須ともいえない事項のことをいいます。

会社の組織・運営に関する事項の多くは法律の規定に違反しない限り、これにあたります。

たとえば、定時株主総会(296条1項参照)の招集時期、会社法に定めのない役職(社長、会長、専務等)、事業年度をいつからいつまでにするか等があります。

3.事業目的とは?

事業目的とは、さきほど解説した絶対的記載事項の「目的」にあたるものです。

多くの人は、この事業内容をいかに記載すべきか悩むことが多いと思いますが、安易に記載し、その事業目的の範囲外の事業を行ってしまうと目的違反となります。

そのため、設立にあたって、どのような事業を今後行っていくのか明確なビジョンが必要とされます。

また、設立を目指す会社がどのような内容の事業を行うのか曖昧であると、銀行等から融資を受ける際の査定に響く可能性もあるため注意が必要です。

また、実際上は、複数の事業を列挙し、最後に「その他これに附帯する事業」を営むと記載し、活動の幅を広げることが可能となるように記載する場合もあります。

では、仮に定款に記載した目的に反する事業を行った場合、いかなる不利益があるのでしょうか。

結論から言えば、仮に定款に記載した事業目的違反をしたとしても、刑事罰や行政罰を受けることはありません。

しかし、会社が事業目的に違反する行為を行った場合、民法によってその行為が無効とされます。

そのため、会社の事業として行ったつもりでも定款に記載したこと以外を行ってしまえば、それによって得た利益がすべて不当利得として返還しなければならないことになる場合があります。

そして、会社の事業としてではなく、民法上無効となってしまった行為をした者の行為となるため、その者が返還しなければならないことになります。

自己の財産から会社の事業等の大きな取引額の返還を求められてしまえば多大な損害となるため、事業目的の記載は定款内でも注意しなければならない記載事項であるといえます。

4.発行可能株式総数はどのくらいにすべきか?

株式会社を設立し、株式を発行しようとしても、会社は定款に記載した発行可能株式総数の範囲しか株式を発行することができません。

そのため、あらかじめ定款に記載する発行可能株式総数を多めに記載するということも考えられます。

しかし、相対的記載事項である株式譲渡制限が定款に記載されていない場合、発行可能株式総数は発行済株式の総数の4倍を超えてはならないという4倍ルールが存在します(37条3項。113条3項)。

この規定は、既存株主の持株比率を低下させることに対して一定の限度を設けるものです。

例えば、設立時の株式数が500株だとすると、発行可能株式総数は2000株以下でなくてはならないことになります。

そのため、設立後に株式を発行することを考えれば、会社に見合わない過剰な発行可能株式総数を定款に記載すべきではありません。

過剰な総数の記載をすべきではないですが、やはり、今後事業を拡大することを考えれば、株式発行が制限されないように多めに設定し、記載するべきでしょう。

5.定款作成で注意すべき点

ここまで、様々なことを解説してきましたが、ここで再度定款を作成するにあたって注意しなければならない点を確認していきましょう。

まず、会社設立が脅かされる絶対的記載事項を過不足なく記載することです。

そして、前述の通り、各記載事項ごとに注意する点がありますが、特に注意が必要な事項は、「目的」と「発行可能株式総数」であるといえます。

なぜなら、目的違反は、財産上多大な損害を与える恐れがあるほか、一度契約が無効等になってしまえば相手方は二度と契約をしてくれないでしょう。

そのため、財産的損害以外にも今後の会社取引における信頼が損なわれ、それ以降の事業活動に見えない損害を与え続けることになってしまいます。

また、「発行可能株式総数」については、事業拡大等を見据えて、会社設立時の財産状況等を相談しながらどの程度の総数を記載するか考える必要があります。

6.まとめ

今回解説した通り、会社を設立するにあたって定款が必須となり、その作成には悩む箇所ばかりあり、作成までに多くの時間を要することとなります。

また、今回で記載内容とその方法について理解していただけたとしても絶対的記載事項の他、会社にとって適切な定款作成のために、相対的記載事項や任意的記載事項についても記載する必要があります。

仮に一度会社に合わない定款を作成してしまうと変更には法律上の手続きが必要となり、とても煩雑な手順を踏まなければなりません。

そこで、定款の作成にあたっては弁護士や司法書士といった専門家に相談しながら行うことをお勧めします。

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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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