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ストックオプションとは?新株予約権との違いは?基礎から徹底解説!

「ストックオプションの発行方法は?」
「そもそもストックオプションって?どんなメリットがあるの?」

国内外を問わず、ストックオプションを発行するスタートアップ企業が増加しています。

そこで、従業員に対する報酬としてストックオプションの発行を検討している経営者の方も多いのではないでしょうか?

しかし、よく似た概念に新株予約権があったり、税制との関係など、ストックオプションの理解は難しいですよね。

今回は、ストックオプションについて、制度の概要から実際の発行方法まで、基礎から具体的に解説しています。

この記事を読めば、ストックオプションに関する基礎的な知識がすべて身につきますよ!

1.ストックオプションとは?

まずはストックオプション制度の概要について紹介します。

ストックオプションのメリットやデメリット、税制上の扱いなどを理解するためにも、しっかりと基本を押さえるようにしましょう。

(1)制度の概要

ストックオプションとは、会社の業績に応じて報酬額が変動する業績連動型報酬の一種で、役員や従業員が自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利のことをいいます。

本来、株価は市場取引等によって変化する相対的なものですが、ストックオプションであれば、あらかじめ定められた期間内にあらじめ定められた価格で株式を購入できる、という点に特徴があります。

例えば、ある企業の株価が1株1万円のとき、発行後5年以内であれば自社株を1万円で購入できるというストックオプションを発行したとします。

その後の業績の好調により株価が上昇し、3年後にその企業の市場株価が2万円にまで上昇したとしても、ストックオプションの行使によって自社株を1万円で購入することができます。

そうすると、ストックオプションを付与された役員等は、市場価格と購入価格の差額である1万円を1株あたりの売却益として得られることになります。

また逆に、業績悪化により株価が5千円に落ち込んだとしても、ストックオプションを行使しなければ株を購入したことにはならないため、その役員等が損をすることもありません。

したがって、ストックオプションを付与された役員や従業員としては、ストックオプションの行使可能期間内になるべくその会社の株価を上げるべく業務に取り組むことになります。

(2)新株予約権との違い

ストックオプションとともによく用いられる言葉として、新株予約権があります。

新株予約権は「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受ける権利をいう」(会社法2条21号)と定義されています。

その新株予約権のうち、企業が役員や従業員等に報酬として発行するものが特にストックオプションと呼ばれています。

すなわち、新株予約権とストックオプションは別個の概念ではなく、ストックオプションは新株予約権に包含されているということができます。

ストックオプションは新株予約権の一種であることから、後述するように、ストックオプションも税法上は新株予約権税制の適用を受けます。

そのほかの種類株式の概要については、こちらの記事もご覧ください。

スタートアップが知っておくべき種類株の知識を総まとめ

2.ストックオプションのメリットとデメリット

ストックオプションの導入メリットおよびデメリットは、会社の上場・非上場の別や成長モデルの違いによって異なります。

今回は、上場や大型のM&Aなどを目指すスタートアップ企業やベンチャー企業を想定し、ストックオプションのメリットおよびデメリットを紹介します。

ストックオプションの導入にあたっては、これらのポイントを押さえ、しっかりとリスクにも備えられるようにしましょう。

(1)メリット

一般に、スタートアップ企業は売上高が少なく、役員や従業員に対して十分な給与を支払うことも簡単ではありません。

そこで、既に在籍している役員や従業員に対し、報酬の一環としてストックオプションを交付することで、人材の流出を防ぐことができます。

また、ストックオプション制度のある会社ということであれば、将来的な成長可能性を対外的にアピールすることにも繋がるため、社外から優秀な人材を確保することも可能です。

ストックオプションの交付を受けた側としても、会社の業績が向上するほど株価が上昇し、ストックオプション行使のインセンティブが大きくなることから、モチベーションをもって業務に取り組むことができます。

このように、ストックオプションの発行によって、役員や従業員と会社との間で、株主価値・企業価値の向上という価値観の合一を図ることが可能です。

(2)デメリット

経済状況次第では、企業価値の向上が見込めず、同時にストックオプション行使のインセンティブ向上もみられない環境となる場合もあります。

そうすると、上に述べたメリットがうまく働かず、役員や従業員のモラルが低下する恐れがあります。

また、ストックオプション交付の基準が曖昧である場合にも、不公平感からモチベーションの低下が生じる可能性もあります。

さらに、大幅な株価上昇等があった場合にストックオプションを行使し、大きな売却益を得た役員等は、そのまま会社を退職してしまうという人材流出の危険性があります。

3.ストックオプションの種類

ここまでは、ストックオプションの制度概要や、導入にかかるメリット・デメリットについて紹介してきました。

ストックオプションには、以下に紹介する3つの種類があります。

実際にストックオプションの発行を考えている方は、これらのストックオプションのうちどれらが最も適しているのかを見極めるようにしましょう。

(1)通常型

通常型ストックオプションとは、行使価格を発行時の価格以上に設定し、権利行使時に株価が上昇していれば、その差額を利益として得られるというものです。

ストックオプションとしては最も基本的な形といえます。

(2)有償型

有償型ストックオプションでは、権利付与時の株価で新株予約権を発行します(この時、将来新株を購入しなければならないという条件もつけます)。

行使時に株価が上昇していれば、その差額が利益となるものです。

有償型ストックオプションの場合、権利行使時の株価が発行時よりも低下している場合には、役員等のモチベーションはかえって低下してしまうおそれがあります。

(3)株式報酬型

株式報酬型ストックオプションとは、行使価格を1円に設定し、権利行使によって報酬が得られるとするもので、1円ストックオプションとも呼ばれます。

主に退職金の代用として用いられるケースが多いようです。

4.ストックオプションの導入方法

ストックオプションの発行にあたっては、会社法その他の法令に定められた手続きを確実に履行しなければなりません。

ストックオプションも新株予約権の一種であり、既存株主の利害を害する恐れがあるため、厳格な手続きが法定されています。

今回は、ストックオプションの導入方法について、簡単に紹介していきます。

(1)募集事項の決定と通知

ストックオプションを導入しようとする企業は、まずその内容について決定しなければなりません(会社法238条1項)。

募集事項として定めなければならない事項は、以下の通りです。

募集事項

・募集する新株予約権の内容と数量

・無償発行か否か

・払込金額または算定方法

・割当日

・払込期日

これらの内容を決定する機関は、会社法上の公開会社か非公開会社かによて異なります。

公開会社(譲渡制限のない株式を1株でも発行している会社)の場合、決定機関は原則として取締役会となります(同法240条1項)。

非公開会社(定款で全ての株式に対して譲渡制限が設けられている会社)の場合、原則として株主総会決議が必要です(同法238条2項、309条2項)。

取締役会決議や株主総会決議の具体的な方法等については、こちらの記事もご覧ください。

株主総会と取締役会の違いとは?会社運営に決議事項を総まとめ

(2)総額引受方式による手続

ストックオプションは、通常の新株予約権の場合とは異なり、割り当てられる対象者が具体的に決まっていることが一般的です。

そのため、新株予約権の発行の際に求められる申込み(同法242条)と割当て(同法243条)の手続きを要さず、総額引受け(同法244条)が行われます。

この場合には、会社とストックオプション付与対象者との間で契約を締結し、ストックオプションの内容について定めておきます。

(3)新株予約権原簿作成・新株予約権の登記

ストックオプションを発行したら、新株予約権原簿と新株予約権の登記を行う必要があります。

新株予約権原簿とは、新株予約権を取得した者の氏名や住所、数量などを記載するものです。

また、新株予約権は登記事項であるため、割当て日から2週間以内に登記手続きを行わなければなりません。

登記簿には、新株予約権の数や行使機関などを記載する必要があります。

(4)税務署へ調書の提出

後ほど詳しく述べますが、ストックオプションには税制優遇措置があります。

この優遇を得られる税制適格ストックオプションを発行する場合には、本社所在地を管轄する税務署に対し、発行した日の翌年の1月31日までに調書を提出する必要があります。

調書の提出を怠ると、たとえ税制適格の要件を満たしていても税制優遇措置の適用を受けることができなくなるため、特に注意が必要です。

5.ストックオプションと税制

ストックオプションを導入するにあたっては、税制について注意する必要があります。

税法上は、金銭ではなく株式を給与として給付する場合あっても課税対象となり、新株予約権の一種であるストックオプションも例外ではありません。

ストックオプションの交付を受けた者が得た利益に対する課税方法は、以下の2つです。

・経済的利益に対する課税

・株式を売却した場合の譲渡益課税

以下、それぞについて解説します。

(1)経済的利益に対する課税

まず、ストックオプション行使によって得られた経済的利益に対する課税があります。

これは、ストックオプションの行使によって取得時の株価よりも安価で株式を取得した場合に、両者の間の価格差が経済的利益として課税の対象となるものです。

この経済的利益は、税制上、ストックオプションの権利行使者の給与所得として捉えられています。

したがって、一般の給与所得と同様に、①所得税、②住民税の2種類の課税対象となります。

ただし、①所得税については、新規事業法による認定会社によって交付されたストックオプションを行使し株式を取得した場合には、所得税が免除されるケースもあるため注意が必要です。

(2)譲渡益課税

次に、ストックオプションを行使して取得した株式を、株価の上昇後に他人に売却した場合に課される譲渡益課税があります。

この場合、原則として、①20%(住民税は6%)の税率による申告分離課税を行い、②株式等にかかる課税譲渡所得金額に20%(住民税は6%)を掛けた額で所得税額を決定します。

なお、一定の上場株式の場合における譲渡益課税については、上とは異なる譲渡課税方法もあります。

6.ストックオプションの税制優遇措置

税制優遇措置が設定されているものを「税制非適格ストックオプション」、税制優遇措置がさなれるものを「税制適格ストックオプション」と呼びます。

ストックオプションが税制適格か否かによって、権利行使者が実際に手にすることができる金額は大きく異なってくるため、税制適格に関する知識を必ず抑えておく必要があります。

(1)税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションとは、税制上の優遇措置がなされていないストックオプションのことです。

ストックオプションは税制非適格である場合には、先ほど述べた所得税と譲渡益課税のふたつが課されることになります。

この場合、売却が遅れると権利行使にかかる所得税のみが課税されることとなってしまい、支払いが難しくなることも考えられます。

(2)税制適格ストックオプション

ストックオプションが税制適格に該当する場合、ストックオプションの権利を行使した段階では課税されることはありません。

この場合には、株式譲渡時における売却価格と権利行使価格との差額が譲渡所得となり、課税対象となります。

譲渡所得は、最大で55%の累進課税である所得税とは異なり、一律20%に設定されているため、ストックオプションが税制適格であるか否かによって課税額に大きな違いが生じます。

ただし、税制優遇措置を受けるためには、以下の要件を全て充す必要があるため、注意しなければなりません。

税制適格の要件

・付与対象者が、自社または関連会社の取締役または従業員であること(監査役は不可)

・所有株式数が、発行済み株式の1/3を超えないこと

・権利行使期間が、付与決議日の2年後から10年後であること

・権利行使価額が、契約締結時の株価と同じまたは行使価格が上回ること

・権利行使価額が、年間で1,200万円を超えないこと

・譲渡制限がかけられていること

・発行が無償で行われていること

・株式の交付が会社法に違反しないこと

・株式の保管・管理について、証券会社等と契約していること

・法定調書や権利者の書面の提出などの事務手続を行っていること

このように、税制適格となるための要件は非常に厳しいものであり、スタートアップ企業の場合には、ストックオプション付与対象者の保有株式が多くなっているなど、税制適格とならない場合もあります。

たとえば創業者のような大口株主で、権利行使金額の年間合計額が1,200万円を超えてしまう場合には税制非適格となり、最大で約55%の累進課税の対象となってしまいます。

税制適格ストックオプションを発行しようと考えている場合には、税理士や弁護士などの専門家と相談したうえ、要件を満たしているかをしっかりと確認しましょう。

7.まとめ

今回はストックオプションについて、制度の概要や税制優遇措置を取り上げて紹介しました。

制度自体が難解で、特に税制適格に関する部分は専門的知識も必要とされるため、ハードルが高く感じられたかもしれません。

また、制度設計についても、今回は触れていない法律・会計上の処理に関する知識が必要とされます。

しかし、上手にストックオプション制度を用いることができれば、社内の一体化とモチベーションアップを図ることも可能です。

専門家の意見も取り入れつつ、上手に制度を利用できるようにしましょう。

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