スタートアップが最初に迎える試練の一つに、法人を設立したら必要な各種手続きがあります。これらの手続きについては、基本的には、一覧表やチェックリストがもらえるわけでもなく、役所等から事前にお知らせ連絡がもらえるわけでもありません。もちろん親切な税理士や司法書士が近くにいれば教えてもらうことは可能ですが、自身で設立登記をした場合は、これらの手続きも自身で行う必要があります。
そこで、本記事では、必要になる手続きを一覧にし、総まとめにしてみました。
電子で届出できることもありますが、基本的には各所に届出書を取りに行き、窓口に郵送または提出が必要になります。
一般的には、以下の4つの関係先に対して届出等の手続きが必要です。もちろん、人材派遣業や不動産業など特別な許認可が必要な事業をする場合には別途必要な手続きが増えますので要注意です。
◆税務署関係
◆役所関係
◆雇用関係(労働基準監督署)
◆雇用関係(年金事務所)
以下、順番に細かくみていきます。
1.税務関係:税務署に出す書類
法人を設立すると、毎年定款で定めた事業年度ごとに決算申告が必要になります。決算申告するためには、決算申告しますよ、という趣旨でも納税先の税務署へ届出をすることになります。
法人設立届出書
会社を設立したらまずはこの届出書を提出します。
添付書類: 登記簿謄本定款の写し、設立時の貸借対照表、株主名簿の写し、現物出資があるときは出資者の氏名・出資金額等を記載した書類
※会社設立から2か月以内に届出が必要です。
個人事業の開廃業届出書
個人事業主から法人になる場合は、個人事業主の廃業届も提出します。
※開業・廃業の事実があった日から1か月以内
法人税の青色申告の承認申請書
法人税の確定申告書、中間申告書等を青色申告書によって提出することの承認を受けようとする場合の手続です。青色申告の場合には、以下のような特典が受けられます(詳細は国税庁サイトへ)。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 貸倒引当金
- 純損失の繰越しと繰戻し
※設立から3か月以内、設立から3か月以内に事業年度が変わる場合は事業年度内に提出が必要です。
給与支払事務所等の開設届出書
※最初の給与支払い日までに届出が必要です。
棚卸資産の評価方法の届出書
※最初の確定申告まで(最初の決算日から2か月または3か月)に届出が必要です。
減価償却資産の償却方法の届出書
※最初の確定申告まで(最初の決算日から2か月または3か月)に届出が必要です。
2.役所に出す書類
法人設立届出書
法人を設立すると、国に納める税金のほか都道府県に対しても地方住民税である法人事業税を納める必要があります。この手続きが、都道府県に対する法人設立届出書です。都道府県に対する法人設立届出書は、当該都道府県で法人を新たに設立し事業を開始した際に、その事業所が所在する都道府県税事務所に対し届出をします。
書類は、地域により記載事項や様式に違いがあるので、法人の所在地の都道府県税事務所の窓口等で確認してください。ちなみに、東京都の場合は、東京都主税局になります。
法人設立届出書という名称は通称であり、各都道府県で本手続きの名称が異なっている場合があります。例えば、東京の届出書の正式名称は、「事業開始等申告書」と言います。
また、新たに都道府県内に支店等を設置した場合は、法人設立・設置届出書(法人設立届出書と同一の様式)を、会社設立の日から15日以内や1か月以内に提出する必要があります。例えば東京都の場合は、設置後15日以内に届出書を提出する必要があります。
3.雇用関係:労働基準監督署に出す書類
会社が従業員を雇用するときに提出する書類関係です。従業員を雇用すると様々な手続きが発生するので要注意です。
適用事業報告
労働基準法の適用を受ける事務所となったときに提出する書類です。すなわち、社員を雇用するにいたったときに提出します。
就業規則届
常時10人以上の従業員を使用するようになったら、就業規則を作って提出します。
添付書類:労働者の代表の意見書を添付します。
労働保険関係成立届
※労働保険関係が成立した日の翌日から10日以内に提出が必要です。
労働保険概算保険料申告書
時間外労働・休日労働に関する協定届
法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)をさせる場合や法定休日に労働させる場合には、あらかじめ、労使協定(「36(さぶろく)協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
雇用保険被保険者資格取得届
労被保険者となった日の属する月の翌月10日までに提出が必要です。
雇用保険の事業所設置の届出
添付書類:履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、事業所の賃貸借契約書労働者名簿賃金台帳出勤簿、タイムカード
4.雇用関係(年金事務所)
新規適用届
次の事項に該当する場合、厚生年金保険及び健康保険の加入は、法律で義務づけられています。会社を設立したら通常は手続きが必要です。
(1)法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの
(2)常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所
※ただし、5人以上の個人事業所であってもサービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は、その限りではありません。
添付書類: 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)、事業所の賃貸借契約書労働者名簿賃金台帳出勤簿、タイムカード、厚生年金保険被保険者証(年金手帳)、保険料納付誓約書、口座振替依頼書
※適用の事実が発生した日から5日以内に提出が必要なので注意が必要です。
被保険者資格取得届
健康保険や厚生年金保険に加入する従業員が出たら提出します。
※被保険者の資格を取得した日(入社日)から5日以内に提出が必要なので注意が必要です。
健康保険被扶養者(異動)届
被保険者に扶養者がいる場合は速やかにこの届出を提出します。
添付書類: 被扶養者となる者の収入状況を示す書類、同居用件が必要な場合は住民票等
国民年金3号被保険者資格取得届
通常、健康保険被扶養者(異動)届と同時に提出します。
5.まとめ
以上のように、会社を設立したら終わり、ではなく事業を始めるにあたっては各所に手続きが必要になります。それもかなり膨大な量があり、専門家であっても横断的に把握することは容易ではありません。
事業をスムーズに開始するためにも漏れなく、かつ迅速に手続きは完了しておきましょう。