新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業活動の縮小を余儀なくされた事業者の方も多くおられることと思います。
この記事では、厚生労働省による雇用調整助成金について、制度概要や申請の方法などをわかりやすく解説しています。
申請期間等は今度も変更される可能性があるため、この記事をブックマークして定期的にチェックするようにしてください。
目次
1.雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金とは、景気悪化等に伴う労働者の失業防止のため、厚生労働省が事業主に対して給付する助成金の一種です。
一時的に休業等(休業および教育訓練)または出向を行なって労働者の雇用の維持を図る場合に、休業手当や賃金などの一部が助成されるほか、教育訓練を実施した場合には教育訓練費が加算されます。
今回の新型コロナウイルス感染症による景気悪化に対応すべく、申請時期の拡大などの特例措置が実施されることとなりました。
具体的な特例措置についての内容については、以下から詳しく解説していきます。
2.制度概要
特例措置により、緊急対応期間中においては、雇用調整助成金の申請期間、給付対象、給付条件等が大きく変更されています。
本年4月1日から6月30日までの「緊急対応期間」は、以下からの説明でも頻出しますので、しっかりと覚えるようにして下さい。
(1)申請期間
通常、雇用調整助成金の申請は1ヶ月ごとに行わなければなりませんが、緊急対応期間中は複数月をまとめて申請することも可能です。
また、通常時の申請は、支給申請をする前に労働者の休業や職業訓練の予定を提出しなければなりませんでした。
しかし今回は事業主にとっても緊急の事態であることから、休業予定等の計画書の提出は、実際に休業が実施された後でもよいことになりました。
ただし、この計画書の提出は緊急対応期間終了(本年6月30日まで)に行う必要があることから、なるべく早めに計画書を作成するように心がけましょう。
ゴールデンウィーク期間中(5月2日〜6日)であっても全国のハローワークで相談・申請の受付が行われています。
(2)支給対象
特例措置における雇用調整助成金の支給対象は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(全業種)です。
ここには、個人事業主・風俗関連事業者・事業所設立後1年未満の事業主も含まれます。
「新型コロナウイルス感染症の影響」としては、以下のような例が想定されています。
・取引先が新型コロナウイルス感染症の影響を受けて事業活動を縮小した結果、受注量が減ったために事業活動が縮小した場合。
・国や自治体等からの市民活動の自粛要請の影響により、外出等が自粛され客数が減ったために事業活動が縮小した場合。
・行政からの営業自粛要請を受け、自主的に休業を行い、事業活動が縮小した場合。
・風評被害により観光客の予約のキャンセルが相次ぎ、これに伴い客数が減り、事業活動が縮小した場合。
(3)支給基準
助成金の支給要件として、生産指標という基準が設けられています。
生産指標は、生産高または出荷高を確認できる「月次損益計算書」、「総勘定元帳」、「生産月報」などの書類をもとに算出されます。
この生産指標に基づく支給要件は、従来の「3ヶ月で10%以上低下」から、緊急対応期間中は「1ヶ月5%以上低下」へと引き下げられています。
(4)助成率
雇用調整助成金による助成率は、中小企業が4/5、大企業は2/3と変更されています。
また、解雇を伴わない場合の助成率については、中小企業で9/10、大企業で3/4とさらに引き上げられています。
小規模事業者等を対象とする場合、助成率をさらに引き上げるという方針が厚生労働省が示したとされているため、公式にアナウンスがあれば本ページも更新します。
なお、厚生労働省にいう中小企業の定義は以下の通りです。
卸売業:従業員100人以下または資本金1億円以下
小売業(含飲食店):従業員50人以下または資本金5,000万円以下
サービス業:従業員100人以下または資本金5,000万円以下
その他の業種:従業員300人以下または資本金3億円以下
※上記に該当しない場合には大企業と分類される。
5月1日更新:助成率が引き上げられました。
厳しい状況の中にあっても、事業主の皆様に、雇用を維持していただくため、雇用調整助成金について申請書類の簡素化や助成率の引上げ等を実施してきましたが、さらに休業手当を支払うことが厳しい企業においても、労働基準法上の基準(60%)を超える高率の休業手当が支払われ、また、休業等要請を受けた場合にも労働者の雇用の維持と生活の安定が図られるよう、解雇等を行わず雇用を維持する中小企業に対し、
(1) 都道府県知事からの休業等の要請を受けた場合は、一定の要件(※)のもとで、休業手当全体の助成率を100%にするとともに、
(2) 要請を受けていなくても、休業手当について60%を超えて支給する場合には、その部分に係る助成率を100%にすることとしました。(令和2年4月8日以降の休業等に遡及して適用します。)
本特例措置の詳細については、5月上旬頃を目途に発表しますので、お問い合わせは、もうしばらくお待ちください。
(5)助成金額
具体的な助成金額は、以下の式をもとに計算されます。
支給額=平均支給額×休業手当等支払率×助成率
※平均支給額:直近の3ヶ月間(給与の締結日がある場合は直前の締切日から3ヶ月)の給与を、その3ヶ月の日数で割った賃金。
※休業手当等支払率:各事業者が定め、労働局に提出済みの就労規則に定められているもの。多くは平均賃金の60%以上とされる。
※ただし、1日あたりの支給額は8,330円です。
この計算式をもとに、小売業(中小企業)が解雇を伴わずに休業する場合で、平均支給額が30万円(休業手当支払率60%)の営業社員ひとりあたりの支給額を計算してみます。
支給額=30万円×60%×9/10=16万2千円
この場合には、休業手当等支払率(18万円)との差額である1万8千円を事業者が負担すればよいことになります。
5月3日追記:共同通信の報道によると、金額の上乗せ(遡及あり)が検討されているそうです。
西村康稔経済再生担当相は3日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大で業績悪化した企業が従業員を休ませた場合に支給する「雇用調整助成金」を上乗せする方向で検討していると明らかにした。現在の従業員1人当たり日額上限8330円を引き上げる。3日の民放の番組では、安倍晋三首相から検討の指示があったとし、実現すれば「さかのぼって措置する」と述べた。
https://this.kiji.is/629512151065494625
(6)支給限度日数
現在のところ、支給限度日数は1年間で100日間、3年間で150日間に加え、緊急対応期間(令和2年4月1日から同年6月30日まで)の日数も含まれます。
3.申請から支給までの流れ
申請から支給までの大まかな流れは上の画像の通りです。
申請から支給までの期間については、原則1ヶ月とされています。
5月1日更新:原則2週間以内の支給へと変更されました。
4.申請に必要な書類
実際に雇用調整給付金を申請するにあたり、必要な書類は以下の通りです。
休業の開始が令和2年4月1日以降であるのか、それ以前から休業を行なっていたかで書式が異なるため注意してください。
また、書式は厚労省のWebサイトからダウンロードすることができます。
具体的な記載方法等については、厚労省作成のこちらの資料に詳しくまとめられています。
5.雇用調整助成金に関する相談窓口
雇用調整助成金に関する相談窓口は、労働局・ハローワーク・支給申請窓口の三種類あります。
窓口は大変混雑することが予想されますので、時間に余裕をもって申請を行うようにしましょう。
6.その他の支援制度について
新型コロナウイルス感染症に関連する支援制度は、雇用調整助成金の他にも多数あります。
有給休暇取得支援助成金や、地方自治体などによる融資・貸付などの情報については、以下の記事に詳しくまとめてありますので、こちらも併せてご覧ください。
新型コロナ対策関連で利用できる制度融資まとめ【簡易チェック機能付き】
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