人事・労務

近年急増!?業務委託契約の基礎知識、雇用契約との違い、メリット・デメリットを徹底解説!

近年、働き方の変化により旧来の「正社員」「アルバイト」とは、異なる契約体系で働く方も多くなりました。
代表的な例が近年急増中のフリーランスです。

最近では、複数の企業と業務委託契約を締結し、在宅ワークメインで活動する方もかなり多く存在すると思います。
業務委託契約を利用することで、企業は、正社員やアルバイトに仕事を任せるよりもコストが安く済ませることができる一方、業務を受託する側の個人は、会社や時間に縛られない自由な働き方が可能になります。
特に、コロナ禍では、在宅勤務やテレワークなどが推奨されるようになったため、このような働き方改革はより身近なものになったのではないでしょうか。

今回この記事では、業務委託契約に関する基礎的な知識や雇用契約との違い、業務委託のメリットやデメリットを詳しく解説します。

1. 業務委託契約とは?

はじめに、業務委託契約とは、一体どのような契約であるかについて解説します。
「業務委託契約」という名称は、頻繁に耳にするワードですが、法律上「業務委託契約」そのものが定義されているわけではありません。

では、法律上、業務委託契約はどのように定義されているのでしょうか?

企業から業務を依頼され、依頼された業務を行うことで報酬を得る行為として、法律上、定義されているものは以下の3つです。

  1. 請負
  2. 委任(準委任)
  3. 雇用

業務委託契約では、上記3つの労働契約のうち「請負」と「委任(準委任)」が該当します。
逆に、雇用契約を会社と交わした正社員やアルバイトは、基本的に「雇用」であると理解しましょう。

(1)雇用契約と業務委託契約

はじめに、業務委託契約を理解する上で非常に重要である、雇用契約と業務委託契約との違いについて説明します。

両契約の最大の違いは、労働法による保護の有無です。
企業側から依頼を受け、業務委託契約を締結し、業務を受託した人は「労働者」には該当しません。
そのため、労働法の規制の対象外となり、労働や賃金、保険に関する規制によって保護されないため、残業という概念もなければ突然の賃下げや解雇もあり得るのです。
つまり、業務委託契約で働く場合、働き方や報酬に関する契約内容は、基本的に全て受託者側の自己責任となります。
一方、企業が社員と雇用契約を締結した場合、労働や賃金、保険に関する規制によって労働者の生活を保証し、保護しなければなりません。

(2)請負と委任(準委任)

ここからは、業務委託契約として該当する「請負」と「委任(準委任)」の2つの契約の違いについて説明します。

まず「請負」についてです。
請負とは、業務に対する成果物を完成させることで報酬を受ける契約のことを示します。
つまり、請負契約では、依頼者から依頼された業務を成果物として提出する対価として報酬を得ることが前提となるのです。

例えば、業務委託契約を締結したWeb記事のライターが「1文字あたり3円」「1レポートあたり10,000円」などの契約で業務を行っている場合や、セミナー講師が「1コマ20,000円」などの契約で業務を遂行する契約である場合、企業と受託者は「請負契約」を締結していることになります。

次に「委任(準委任)」について説明します。
委任とは、業務を行うことで報酬を受けるが、成果物を完成させる責任を負わない契約のことを示します。
つまり、依頼された業務に関する成果物を提出しなくても契約で決められた報酬を得ることができるのです。

委任契約の代表例は、会社役員、弁護士などです。
「普通の社員と会社役員は何が違うのか?」と考える際には、この点は非常に重要なポイントであり、会社役員は会社側と委任契約を締結しているという点が他の社員との大きな違いであるといえます。
つまり、会社役員とは、ビジネスのプロとして会社から経営を依頼されている立場なのです。

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また、委任と準委任の違いは、業務内容に法的行為が伴うか否かです。
弁護士や公認会計士などの士業が行う業務は委任であり、コンサルタントなど法律行為に該当しない業務を依頼された場合は準委任となります。

(3)業務委託契約の注意点

業務委託契約を締結する上での主な注意点に関して説明します。

業務委託契約を締結する場合、最も注意しなければならない点は、業務委託であるか雇用であるかは実態によって判断されるという点です。

業務委託契約の主な特徴として、労働者としての契約ではなく、個人事業主と同様であるため、労働法が適用される範囲外であるという点について説明しました。
しかし、同じ業務委託契約を交わしていても、休日や余剰時間の副業として業務を行う人ももいる一方で、正社員と同様に10時から19時の8時間労働を基本に働く人もいます。

この場合、前者の余剰時間の副業として働いている場合は問題ないかもしれませんが、後者のように雇用契約を交わした社員と同様の基準で働く人の場合、「業務委託契約」の書面を交わしていたとしても、企業に雇われた労働者として判断されます。

このように、雇用契約を交わした社員と同等の条件で働く場合、書面上は業務委託契約であっても労働法による保護を受けることができるため、仕事中に怪我をした場合などは労災の補償対象として給付を受けることが可能です。

2. 業務委託契約のメリット・デメリット

ここからは依頼者である会社側と、依頼を受ける受託者側の双方のメリットやデメリットについて解説します。
双方のメリットやデメリットを充分に理解し、人材採用の際には適切な契約の使い分けを心がけましょう。

(1)業務委託契約のメリット

はじめに業務を依頼する会社側のメリットから説明します。
業務委託契約によってを採用した場合に考えられる企業側の主なメリットは以下の通りです。

  1. 専門的な人材登用が可能。
  2. 人的リソースの最適化が可能。
  3. コストがかかりにくい。
  4. 契約の打ち切りが容易である

企業側が業務委託契約を利用する上では、まず専門的な人材登用が可能であるというメリットが挙げられます。
特に、コンサルタントや士業、会社役員などと委任契約を締結する際には、このメリットが非常に大きいといえるでしょう。
専門的な人材を社内で育成するには多額の費用や時間を費やしてしまうため、業務委託の利用は有効な手段の一つです。

また、業務委託契約は雇用契約と異なり、期間やプロジェクトに応じたスポットでの採用やが可能です。
また、契約期間終了と同時に契約を打ち切ることもできます。
なお、業務委託は雇用と異なり、保険や最低賃金に関する保証の必要がありません。

次に、業務委託者として業務委託を受ける側のメリットについて紹介します。
以下が、業務委託を受ける側の主なメリットです。

  1. 得意分野を生かせる。
  2. 働き方の自由度が高い。

業務委託を受ける受託者側の1つ目のメリットは、自分の得意分野を生かすことができる点です。
コンサルタントや士業など、専門分野の領域へ強みを持つ方は、委任契約によって自分自身の能力を最大限に発揮することができるため、やりがいを感じながら仕事を遂行できるでしょう。

また、雇用契約で縛られているわけではないので、フリーランスのように時間や場所に縛られない働き方が可能です。
パソコンとWi-Fiさえあれば自由に働けるような環境に憧れを持つ方は少なくないのではないでしょうか?

(2)業務委託契約のデメリット

業務委託契約は、使い方次第では、依頼者側、受託者側双方にメリットがある制度です。
その一方、良いことばかりではなく、デメリットも存在します。

企業側のデメリットを紹介します。

  1. 報酬が高額になる可能性がある。
  2. 自社内で知識やノウハウが蓄積されない。

企業側が業務委託契約を活用する場合のデメリットは、特に、専門家としてコンサルタントや役員を登用する場合に該当します。
専門家の報酬は、往々にして高額になる傾向があるからです。
また、委任契約の場合、自社で専門家を育成するわけではないため、自社内に知識やノウハウを蓄積することが難しくなります。
そのため、業務委託契約が解消された結果、これまで解決できていた問題が解決できなくなるなどのリスクがあります。

続いて紹介するのは、受託者側のデメリットです。

  1. 労働法が適用されない。
  2. 確定申告などの申告を自ら行わなければならない。
  3. キャリア形成に不利な可能性がある。

業務委託契約で働く側の主要なデメリットは、雇用契約ではないため、労働法が適用されないことに起因するものが中心です。
さらに、業務委託契約の受託者は、個人事業主と同様の扱いであるため、確定申告などは企業が代行するわけではなく、自分自身で処理しなければなりません。
また、業務委託契約の状態で長年仕事を続けてしまうと、雇用契約に比べ就職や転職のシーンにおいて、不利に働く傾向があるとされています。

3. まとめ

今回、この記事では、業務委託契約についての基本的な知識や、業務を依頼する側、受ける側双方のメリットやデメリットについて解説しました。
基本的なメリットやデメリットを確実に理解し、業務委託契約を利用する際は、要件を充分考慮し、雇用契約との適切な使い分けが必要です。

また、業務契約書を発行する際には、弁護士などの専門家へ作成やレビューを依頼し、間違いの無いよう充分に注意しましょう。

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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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