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【注目事例掲載】「投資ラウンド」の4段階を事例を交えてわかりやすく解説!!

 

経営者や投資家の方、スタートアップ企業やベンチャーキャピタルで仕事をしている方にとっては、自社や取引先、競合企業の「資金調達」は非常に気になるトピックです。

企業が資金調達を行う際は、新規の事業を立ち上げる場合、自社の事業を大きく拡大させる場合、上場に向けて本格的な準備を行う場合などが挙げられます。
このことから、資金調達の目的や調達額を分析することで、「企業がどのフェーズであるのか?」、「どのような戦略を策定したのか?」などを推し量ることが可能です。

今回、この記事では企業が行う資金調達の「投資ラウンド」について解説し、企業がどのフェーズでどれぐらいの金額をどのような投資家から何を目的に調達するのかをわかりやすく解説していきます。

資金調達に関わる基本的な用語

今回は、資金調達を基本的な4つの段階に分け、最新の具体例を交えつつわかりやすく解説していきます。

企業の成長フェーズに合わせた資金調達について分析する場合、「投資ラウンド」というワードに対する理解が必要になります。

投資ラウンドは、未上場の企業に対しては、基本的に4段階であるとされており、企業の成長段階ごとに、

  1. シードラウンド
  2. シリーズA
  3. シリーズB
  4. シリーズC

の4つに分けられています。

例えば、2020年10月、物流業務プラットフォーム事業を運営するベンチャー企業であるオープンロジ約17.5億円の資金調達を実施しましたが、その際発表された記事の見出しは以下のような見出しとなりました。

物流業務プラットフォームの「オープンロジ」が約17.5億円のシリーズC調達、人材採用強化

この場合、投資ラウンドや基本的なラウンド毎の概要を理解していると、この見出しを見ただけで、オープンロジが現在どの成長フェーズでこれからどのような方向性で事業戦略を策定していくのかをある程度予想することができるのです。

このことから、特に未上場の成長企業の情報を収集したり分析する際は、「投資ラウンド」の基本を理解しているだけで、より深く効率的な分析をすることが可能となります。

① シードラウンド

シードラウンドの概要

シードラウンドとは、事業をスタートさせる際の直前直後の段階であり、創業や数名の従業員がプロトタイプの作成や、商品・サービスの本格的な公開を目指して日々奮闘しているような段階が当てはまります。

この場合、必要となる資金は、会社設立費用、人件費、開発費用などの商品やサービスを作るための必要最低限の資金であり、調達資金はそのような費用に充当されるケースが多くなります。

このフェーズにおける出資元は、銀行などの金融機関、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタルなどですが、親族や知人などが出資するケースも多いようです。

また、調達額の相場は一概には言えませんが、1億円未満までのケースが多いとされており、4つの段階では最も低い相場となります。

シードラウンドの事例

2020年9月、プロeスポーツチーム「REJECT」運営を運営するCYLOOKが、シードラウンドにおいて、2019年12月からこれまでに累計5000万円の資金調達を実施したと発表しました。
引受先はEast Ventures、iFund、ほか個人投資家とされており、調達した資金は、選手のサポート体制やブランディングの強化、事業拡大に利用する予定であると発表しています。

プロeスポーツチーム「REJECT」運営のCYLOOKが総額5000万円を調達

 

2020年10月、個人ECをノーコードでアプリ化できる「Appify」(アッピファイ)提供のAppify Technologiesは、シードラウンドにおいて、総額約2億円の資金調達を実施したと発表しました。
引受先はEast Ventures、グリーベンチャーズ、エンジェル投資家とされています。

また、Appifyは、今回調達した資金をもとに、プラットフォーム連携拡大・開発、エンジニアを中心とした人材の採用を進めると発表しました。

個人ECのノーコードによるアプリ化サービス提供のAppify Technologiesが2億円を調達

 

② シリーズA

シリーズAの概要

シードラウンドを経て、サービスを本格的に公開し、顧客も徐々に増えて来ました。
しかし、まだまだサービスの認知度は高いわけではなく、投資コストが回収できていないため、財務状況を見ると黒字化まではまだ遠い道のりであるのが現状です。

この状況を打破するために行う資金調達が、第2フェーズである「シリーズA」です。
この段階では、多くの企業の悩みは「資金不足」であるため、なんとか経営を起動に乗せるために、人材採用や設備投資などに調達資金を使うことが多いとされています。
シリーズAにおける出資元は、ベンチャーキャピタルや個人投資家などとされていますが、この段階では、特にVCの動きに注目が集まることが多いとされます。

また、資金調達の相場は企業によってまちまちですが、シリーズAの段階で10億円ほど調達する企業も中には存在するようです。

シリーズAの事例

2020年10月、フィンランドのヘルシンキに本社を置くアプリマネジメントのスタートアップAppFollow(アップフォロー)がシリーズAラウンドで500万ドル(約5億2200万円)調達したと発表されました。
リードしたのはスペイン、バルセロナのNauta Capital、他に既存投資家のVendep CapitalとRTP Globalとされています。
また、調達した資金は米国、ヨーロッパでの存在感の強化、営業とマーケティング部門への幹部採用、プラットフォームを多様化することに使用する予定です。

アプリのユーザー・競合分析のスタートアップAppFollowがシリーズAで5.2億円を調達

 

2020年9月、サービスや製品について企業と利用者がオンライン上で対話できるサービス「commmune(コミューン)」を運営するコミューンは、4億5000万円を調達し、シリーズAにでの累計調達金額は5億円となりました。
引受先は、DNXベンチャーズ、UBベンチャーズとされています。
調達した資金は、開発や顧客対応のための人材採用、サービスを強化にあてられ、現在10人程度の社員を今後2年で50人に拡大する計画です。

コミューン、4億5000万円調達 人材採用でサービス強化

 

③ シリーズB

シリーズBの概要

資金不足に悩んでいたシリーズAを乗り越え、事業が軌道に乗り出した段階で、企業はシリーズBの資金調達のフェーズに達します。

このフェーズは、従業員の数もある程度増え、収益も増えていく段階の企業が多いため、市場における認知度もある程度獲得している企業が多くなるフェーズであるともいえます。

また、企業によっては、サービスの機能拡張や上場を見据えた準備などもこの段階で行います。

シリーズB段階では、数十億の資金調達を実施する企業なども出てくるため、メディアでも注目される傾向が強くなります。
そのため、シリーズBの資金調達の目的は、積極的な人材登用や設備投資、マーケティングの強化などを目的とした資金調達が多いとされます。

シリーズBの事例

民間月着陸船の月面投入を目指しているスタートアップのひとつ、ispace(アイスペース)は、2020年8月、シリーズBラウンドで30億円を調達しました。
この調達資金は、2022年と2023年に計画している打ち上げまでに商用着陸船の開発資金の継続にあてられる予定です。

月着陸船開発のispaceが30億円調達、新着陸船プラットフォームを公開

 

2020年9月、AIを搭載したフィットネスコーチングアプリを開発するFreeletics(フリーレティックス)が、シリーズBの資金調達を2500万ドル(約26億円)としました。
このラウンドをリードしたのは、米国を拠点とするJAZZ Venture PartnersとCauseway Media Partnersで、石油・ガス事業などを手掛けるKKCGグループの支援も受けている企業です。
また、調達した資金は、新技術の開発、グローバル展開のさらなる拡大、新事業の垂直展開のために投下される。

AI搭載のフィットネスアプリ開発するドイツ拠点のFreeleticsが約26億円を調達、身体と精神の健康をAIがコーチング

 

④ シリーズC

シリーズCの概要

シリーズCは、スタートアップにおける投資ラウンドでは最終フェーズとなります。

企業には、このフェーズで安定的な経営や、黒字化が求められ、ベンチャーキャピタルから出資を受けている企業であれば、IPOやM&Aなどの打診や本格的な準備が始まります。

そのため、このフェーズでは、赤字の企業に関しては経営の黒字化や安定化、事業の加速化、さらに上場やM&Aを見据えた資金調達となり、調達額も膨大な額になるケースが多いとされます。

シリーズCの事例

2020年7月、シンガポールを拠点とし、クライアントのマーケティング意思決定を支援するソフトウェアを開発するスタートアップのInsider(インサイダー)は、シリーズCで3200万ドル(約34億円)を調達しました。
このラウンドはRiverwood Capitalがリードし、Sequoia India、Wamda、Endeavour Catalystが参加したとされます。

この企業が提供するシステムは、Singapore Airlines(シンガポール航空)、Marks and Spencer(マークスアンドスペンサー)、Virgin(バージン)、Uniqlo(ユニクロ)、Samsung(サムスン)、Estée Lauder(エスティローダー)など800を超えるブランドが利用しており、調達資金は米国進出の他、販売・マーケティング、研究開発チームのエンジニア採用、プラットフォームへの新機能追加のために使われる予定です。

ユニクロも利用するマーケティングSaaSであるシンガポールのInsiderが34億円を獲得し米国進出へ

 

物流業務プラットフォーム「オープンロジ」を展開するオープンロジは2020年10月、シリーズC資金調達の第1回クローズを完了し、総額約17.5億円資金調達を発表しました。

引受先は、シニフィアンKID、新生ベンチャーパートナーズ1号投資事業有限責任組合、住友商事、Logistics Innovation Fund投資事業有限責任組合(セイノーホールディングスがアンカーLP)、ペガサス・テック・ベンチャーズ(双日CVC)、千葉道場2号 投資事業有限責任組合であり、主な借入先は、あおぞら企業投資、商工組合中央金庫、日本政策金融公庫、みずほ銀行、りそな銀行です。

今回ラウンドを受けた累計調達金額は約27.5億円であり、引き続きその他投資家からも資金調達を進め、2020年12月末に同ラウンドを完了する予定であるとしています。

調達した資金は、ソフトウェアエンジニアを中心とした人材採用、プロダクト開発に充当する予定で、物流業界内外からも広く人材を募り組織基盤の強化に取り組むと発表しました。

物流業務プラットフォームの「オープンロジ」が約17.5億円のシリーズC調達、人材採用強化

まとめ

以下の表は、今回この記事で説明した投資ラウンドの主な特徴を表した表です。

シード シリーズA シリーズB シリーズC
フェーズ 創業直前直後 サービス公開後 会社拡大期 IPO,M&A準備期
目的 初期費用の充当 資金不足の解消 サービス拡大/
マーケティング
上場,M&A
準備費用
出資者 VC,エンジェル
知人など
VC,個人投資家 VC,投資会社 VC,投資会社
目安金額 500万〜5億円 5億〜10億 10億〜50億 50億〜100億

以上が、投資ラウンドに関する基礎的な概要です。

今回は、企業の成長段階に合わせ、フェーズ毎に解説を行いましたが、実際は資金調達の段階はバラバラであり、シードラウンドからシリーズCにかけて順調に段階を踏む企業はむしろ希少です。

また、調達額に関しては、市場やトレンド、業界の影響も受けるため、初期段階から莫大な額の資金調達を行う企業なども存在するため、正確な相場を判断することは極めて難しいのが実態であるといえます。

さらに、出資元のVCなどを選ぶ際なども慎重な対応が必要であるため、資金調達に関しては、深い知識や経験、リスクなどに対する深い見識を持つ専門家の力が不可欠です。

この記事では、「投資ラウンド」に関する基礎的な知識について解説しましたが、下記URLの記事では、資本政策やVCなどについてより専門的な解説がなされています。
少し上級者向けの内容になりますが、興味のある方は、是非ご覧ください!

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