一般法務・契約書

芸能事務所と所属タレントとの契約で定めておくべきこと

吉本興業で問題となった芸能事務所と所属タレントとの契約書の締結している、していない問題や、契約を締結しているとして、どういった内容がさだめられているのか、また、今後、どういう内容を定めておくべきなのか、など整理してみたいと思います。

あくまで一例ですので、実態に合わせることが重要であることは言うまでもありません。

1.芸能マネジメント契約とは

芸能マネジメント契約とは、タレントがタレント活動するにあたって、所属している事務所(エージェント)がどのような業務を行いタレントとして売っていくのかを決めておく契約です。

マネジメント業務内容

マネジメント業務には、様々な業務が想定されます。一例として、

  • 芸能活動に係わる企画・立案業務
  • 広告・プロモーション業務
  • 媒体への出演交渉業務
  • 契約書類の作成・締結業務
  • その他これらに付随する一切の業務

といった業務があげられるでしょうか。タレントからすれば、こういった業務をお願いすることで、自身のタレント活動に専念することができるといえます。

これまで、芸能界といわれる業界は、コネクション(コネといわれます)が重要な世界であり、コネがある人がテレビ局や制作会社と交渉することでタレント起用が決定することがある、ともいわれてきました。そのため、有名事務所に所属することはいわばタレントにとっては芸能界を上り詰める試金石にもなりえるものでした。

最近では個人事務所なども増えてきてはいますが、コネが重視されることは今も根強いと思います。

あとは、スキルアップのためのトレーニングや研修なども用意してくれるのか、も業務内容として考えても良いかもしれません。

マネジメント業務の範囲

独占契約なのか非独占契約なのかが一番重要なポイントです。

独占契約になると所属事務所以外から仕事を受けることが原則としてできなくなります。そのほかにも制限がかかるようになります。

  • 本契約と同種または類似の内容の契約を第三者と締結してはならない
  • 乙の事前の書面による承諾なく、乙が指定する以外の商品またはサービス等について、宣伝、広告、投稿・配信等を行ってはならない
  • SNSでの投稿その他の活動を行う場合には、すべて乙の承諾のもと、乙を通じて行う

所属事務所がちゃんといい仕事をたくさん確保してきてくれるのであれば不満が生じることもないでしょうが、吉本問題にもあったように、報酬が少ない、仕事がない、などタレント側に不満が生じるとタレントとしては他から、または直接仕事を受けたくなるようになってしまいます。

人によってはアルバイトで生計を立てている、というタレントもいるようです。

雇用契約との違い

所属事務所によっては、タレントを社員として雇用契約を締結してタレント活動をさせている場合もあります。その場合は、所属事務所の指揮命令に従って労務を提供することになり、基本的には業務指示である限り、拒否することができません。

他方、上記のようなマネジメント契約であれば、タレントも一個人事業主として独立の事業主と扱うため、所属事務所とは本来的に対等な関係であるはずです。つまり、嫌な仕事は断ることもできるし、契約を締結する段階で(SNSは自分で運用する、インスタでのスポンサー案件やコラボ商品企画などは自分で行う、など)業務の範囲も定めておくことができます。

雇用契約であれば、最低賃金法や労働基準法に守られた世界である程度安定した報酬を受け取ることできるメリットがありますが、個人事業主としての契約だと完全歩合に近いことが多いのも相違点としての特徴です。

2.報酬の定め方

いうまでもなく、マネジメント契約において最も重要な条項は報酬の決め方です。

事務所によって定め方は多種多様だと思いますが、一般的には

  • 売上の●●%
  • 利益の●●%
  • 最低報酬●●万円とそれを超えた金額の●●%

などと定められることが多いように思います。

吉本問題の時には、事務所がいくらもらっていて、タレントが何%もらえるのかわからない、ブラックボックスになっているケースもあると聞きました。ここできちんと定めておくことで、お互いに不満が生じない設計をすることができるでしょう。

3.いわゆる闇営業について

吉本問題でニュースになった発端として、一部のタレントが事務所を通さずに直接営業をして報酬を受け取る行為=闇営業をしたことが話題になりました。

これは独占契約をしている場合に問題となりうるわけですが、吉本興業が独占契約を締結していたかどうかは契約書がないので明確ではありません。また、インスタグラムでのスポンサー投稿などについてはタレントに直接連絡が来ることもあるようなので、マネジメント契約において定めておかなければその業務を所属事務所を通すべきなのか否かを瞬時に判断することができないと思います。

このような問題を防ぐためにも契約書を締結しておくことが重要であることは明白でしょう。もちろん、契約書を締結しないことで適宜協議しながら決定するんだ、という関係性を重視したいという意向もあるでしょう。それであればそういう決定をします、ということを契約書に明記しておくことで協議のテーブルにつくことはできるようになります。

4.まとめ

最近はYouTuberやVtuberなど、単純な芸能タレントというよりも一般人が芸能人になりやすくなってきています。もちろんそれに合わせてYouTuberやVtuber専門の事務所などがでてきています。

所属事務所もタレントもお互いがハッピーになれる仕組みを一緒に考えて、それを契約書に落とし込む作業が重要と思います。

5.おまけ

参考までに、本記事を見ていただいた方に契約書のサンプルを公開したいと思います。

うまく活用していただければ幸いです。

この記事の監修専門家
石原一樹
石原一樹
Seven Rich法律事務所 代表弁護士弁理士