一般法務/契約書

反社チェックって具体的に何をすればいいの?!反社チェックの方法から反社条項まで総まとめ

「反社チェック」とはよく耳にしますが、具体的場面に遭遇しない限り、どういう場面で問題になり得るのか、「チェック」とは具体的に何をするのか、他に事前にやっておくべきことは何があるのか等について調べる機会も少ないと思います。

銀行をはじめとする金融機関にいる方には馴染みがあると思いますが、スタートアップ・ベンチャー企業においてはむしろ馴染みがないと思います。

今回は、そんなスタートアップ企業のために「反社チェック」について総まとめしてみます。

1.反社(反社会的勢力)とは何か

まず、反社とは反社会的勢力のことをいいます。

そして、反社会的勢力とは暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人のことを指します。(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議申合せ―企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針より)

例えば、典型的な反社会的勢力として、暴力団が頭にうかぶと思います。しかし、暴力団のみならず、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等などの団体もこれに含まれます。

この点で、「反社会的勢力」の定義は、曖昧なようでかなり広いです。

2.なぜ反社チェックをしないといけないのか

契約の相手方が反社会的勢力か否か見極める、いわゆる反社チェックも、リスク管理の中で特に注目される分野です。

スタートアップにとっても、投資家や金融機関から求められることもあると思いますし、上場準備にあたっては必須の手続きになります。

2004年以降、全国各地で施行された暴力団排除条例の影響もあり、暴力団や総会屋、詐欺グループなどの反社会的組織の資金源を絶つ動きは加速しています。

当然、これら反社への利益供与を遮断するためにも、契約段階での口座開設や取引前のチェック・排除が必須になる。企業にとってもコーポレートガバナンスの強化やコンプライアンス・社会的責任、ステークホルダーの説明責任などの観点で、反社チェックはますます重要度が高まっています。

(1)義務ではない!?

もっとも反社チェックをすることを法的に義務付けられているわけではありません。

―本指針は、あらゆる企業を対象として、反社会的勢力による被害を防止するための基本 的な理念や具体的な対応を定めたものであり、法的拘束力はない。 したがって、本指針の内容を完全に実施しなかったからといって、直ちに、罰則等の何らかの不利益が、与えられるものではない。また、中小企業や零細企業においては、これらの内容を忠実に実施することは困難を伴うため、適宜、企業規模に応じて、指針の5つ の基本原則を中心とした適切な対応をすることが大切である。 なお、法的拘束力はないが、本指針策定後、例えば、取締役の善管注意義務の判断に際して、民事訴訟等の場において、本指針が参考にされることなどはあり得るものと考えている―(例えば、東証一部上場のミシン等製造販売会社の取締役に対する損害賠償請求訴訟 における最高裁判決(平成18年4月10日)が参考となる)。

ここに記載されている最高裁判決は、いわゆる「蛇の目ミシン工業事件」で、上場企業の取締役に反社会的勢力の不当な要求への対応義務が認められています。

つまり、反社チェックをしなければならない義務はありませんが、反社会的勢力排除条項を契約書に盛り込んでいないと、取締役の善管注意義務(会社法330条、民法644条)違反に該当する恐れがあるため、盛り込むべきです

(2)政府指針

まず第一に、政府指針です。平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議申合せ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の中に、「反社会的勢力による被害を防止するための基本原則」が定められています。

この中で、「取引を含めた一切の関係遮断」について、以下のように記載されています。

反社会的勢力が取引先や株主となって、不当要求を行う場合の被害を防止するため、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入するとともに、可能な範囲で自社株の取引状況を確認する。
取引先の審査や株主の属性判断等を行うことにより、反社会的勢力による被害を防止するため、反社会的勢力の情報を集約したデータベースを構築する。同データベースは、暴力追放運動推進センターや他企業等の情報を活用して逐次更新する。

要は、契約に反社条項(暴排条項)を入れ、情報を集めながら反社勢力のデータベースを自社で構築する、この2点が具体的アクションアイテムとされています。

政府指針は法令ではなく単なる指針であり、拘束力はないとされますが、政府としては、内部統制システム構築を行うべき取締役の善管注意義務の判断基準として、裁判所によって参考される可能性について述べています(「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針の解説」P1)

なお、法的拘束力はないが、本指針策定後、例えば、取締役の善管注意義務の判断に際して、民事訴訟等の場において、本指針が参考にされることなどはあり得るものと考えている(例えば、東証一部上場のミシン等製造販売会社の取締役に対する損害賠償請求訴訟における最高裁判決(平成18410日)が参考となる)。

(3)各都道府県の暴力団排除条例

次に条例です。各都道府県は、2009年〜2011年にかけて一斉に暴力団排除条例を制定しました。そこでは、企業に対して、以下の対応を求めています。

  • 契約締結時の暴力団関係者であるか否かの確認
  • 契約書への暴力団排除条項設置
  • 暴力団関係者への利益供与禁止

たとえば、東京都暴力団排除条例(平成23年3月18日条例第五四号)第18条には、以下の定めがあります。

(事業者の契約時における措置)
第十八条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
2
 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。
二 工事における事業に係る契約の相手方と下請負人との契約等当該事業に係る契約に関連する契約(以下この条において「関連契約」という。)の当事者又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約の相手方に対し、当該関連契約の解除その他の必要な措置を講ずるよう求めることができること。
三 前号の規定により必要な措置を講ずるよう求めたにもかかわらず、当該事業に係る契約の相手方が正当な理由なくこれを拒否した場合には、当該事業者は当該事業に係る契約を解除することができること。

ここでは手法論は述べられていませんが、反社チェックの実施と 解除権を備えた反社条項の設定努力義務 が明記されています。

罰則はなく努力義務とはいえ、怠った場合には、政府指針同様に取締役の善管注意義務違反が問われる材料になるものと考えられています。

(4)金融庁の監督指針

特に金融機関に対しては、政府方針を受け、金融庁が2008年に「反社会的勢力による被害の防止」に関する規定を、「主要行等向けの総合的な監督指針」という文書の中に設けています。

そこでは、政府指針では言及されていない 一元的な管理体制の構築 が求められているのが特徴です。

III -3-1-4-2
(2)
反社会的勢力対応部署による一元的な管理態勢の構築
反社会的勢力との関係を遮断するための対応を総括する部署(以下「反社会的勢力対応部署」という。)を整備し、反社会的勢力による被害を防止するための一元的な管理態勢が構築され、機能しているか。

4)証券取引所の新規上場審査基準

まだスタートアップ・ベンチャーだからと反社チェックを行わない会社もありますが、むしろその段階からはじめておかないと、いざ上場というときに反社勢力との関わりが発見されて手遅れになります。

東京証券取引所の「上場審査等に関するガイドライン」には以下のような定めがあり、社内体制の構築・運用実態については必ず確認されることになります。

(3) 新規上場申請者の企業グループが反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備し、当該関与の防止に努めていること及びその実態が公益又は投資者保護の観点から適当と認められること。

(6)企業としての取引の安全性確保

最後に、企業の自衛という目的です。企業を守るのは、最終的には契約書ではなく、契約の相手方との信頼関係だからです。

上記政府指針や条例の有無にかかわらず、契約を締結する前に 取引の相手方がそもそも信頼に足る企業・人物か をチェックすることは、企業としての取引の安全性確保のための前提となります。

3.反社対策として何をする必要があるのか

(1)契約書への記載

事前にできる対策としてはずばり、反社会的勢力排除条項を契約書に盛り込まなければならない、とされてます。

銀行やゴルフ場では反社会的勢力ではないことの誓約書に署名を求められます。

一般的には以下のような条項を使用します。

第●条(反社会的勢力の排除)

1.甲および乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
(1)自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋もしくはこれらに準ずる者またはその構成員(以下、総称して「反社会的勢力」という)ではないこと
(2)自らの役員(取締役、執行役、執行役員、監査役またはこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと
(3)反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと
(4)自らまたは第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと
ア 相手方に対する脅迫的な言動または暴力を用いる行為
イ 偽計または威力を用いて相手方の業務を妨害し、または信用を毀損する行為

2.甲または乙の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。
前項(1)または(2)の確約に反する表明をしたことが判明した場合
前項(3)の確約に反し契約をしたことが判明した場合
前項(4)の確約に反した行為をした場合

3.前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、相手方の被った損害を賠償するものとする。

4.第2項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。

その他、例えば、大阪府警察HPには以下のような例文が掲載されています。

(暴力団等反社会的勢力の排除)

第●条 乙は、甲に対し、本件契約時において、乙(乙が法人の場合は、代表者、役員又 は実質的に経営を支配する者。)が暴力団、暴力団員、暴力団関係企業、総会屋、社会運 動標ぼうゴロ、政治運動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力(以下「暴 力団等反社会的勢力」という。)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当 しないことを確約する。

 2 乙は、甲が前項の該当性の判断のために調査を要すると判断した場合、その調査に協 力し、これに必要と判断する資料を提出しなければならない。 (契約の解除等)

 第●条 甲は、乙が暴力団等反社会的勢力に属すると判明した場合、催告をすることなく、 本件契約を解除することができる。

 2 甲が、前項の規定により、個別契約を解除した場合には、甲はこれによる乙の損害を 賠償する責を負わない。

 3 第1項の規定により甲が本契約を解除した場合には、乙は甲に対し違約金として金● ●円を払う。

https://www.police.pref.osaka.lg.jp/seikatsu/boryokudan/1/6859.html

ただ、契約書に記載があるからといってそれだけでは十分とはいえません。

(2)事前チェック

実際に取引先が反社かどうかをチェックするのには、帝国データバンクや東京商工リサーチといったデータベースを活用する方法が一般的です。上場企業では、取引先をスクリーニングすることや余震審査も兼ねて使われていることが多いです。

その他、日経テレコンといった、過去の新聞や記事情報から検索するサービスもありますので、そういったサービスを使ってチェックすることも可能です。

ただし、いずれの方法も100%確実とはいえないので、掲載されていてもされていなくても過度に信用しすぎるのも危険です。

4.相手方が反社会的勢力かどうかを見分ける手法

反社条項を契約書に盛り込んだら完了、というわけではありません。

実際に契約を締結する相手が反社かどうかチェックする必要があります。

公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター(略名:暴追都民センター)

https://boutsui-tokyo.com/aboutus/add/

ここでは上述の相談依頼書に記載し免許センターの6階に電話を掛け、予約することで対応してくれ、暴追都民センターから警視庁に契約の相手方が反社会的勢力か否か照会を掛けてくれます。

またここでは経験豊かな警察官OBや民事介入暴力専門弁護士などが、相談料無料かつ、秘密厳守で相談にのってくれます

このようにして暴追都民センターを通じて、契約の相手方が反社会的勢力か否かを確認するのが、現状では一番安全で確実といえる方法であると考えます。

≪相手方が反社会的勢力だと判明した際には≫

もし取引先が反社の可能性があると判断した場合には、必ず、上司や社内に弁護士がいる場合には相談し、一人で抱え込まず社会人としてのマナーとして、報告・連絡・相談を守りましょう。

また、上記の暴追都民センターや警察署でも反社会的勢力に関する、さまざまな相談を無料で受け付けているので、専門家に相談してみるのも一つの手立てであります。

5.まとめ

いかかでしたでしょうか、もはや知らなかったじゃ済まされない反社チェックの実務をご紹介しました。

これから起業する方も、上場を目指すスタートアップ企業のみなさんも、コンプライアンス担当の方も参考にしてみてください。

もし、少しでも気になる点があれば、上述した暴追都民センターにお問合せしてみる、専門家に相談してみる、などしてみましょう。

参考文献

(犯罪対策閣僚会議)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hanzai/index.html

この記事の執筆・監修専門家
石原一樹
石原一樹
Seven Rich法律事務所 代表弁護士弁理士
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