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【上場企業決算分析】ラクスルの最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

 

ラクスル株式会社は、2009年に創業したBtoB向けのシェアリングプラットフォームサービスを運営する企業です。

印刷サービスのマッチングからスタートし、現在では広告や物流など複数領域に事業を拡大しています。
なお、ラクスルは、2018年5月に東証マザーズへ上場し、同年8月に東証1部への市場変更を行いました。

① ラクスルの決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

第7期 第8期 第9期 第10期 第11期
決算年月 20年7月(実績) 19年7月(実績) 前年比 20年7月(計画) 計画比
売上高 (百万円) 21,494 17,168 +25.2% 20,800〜21,200 +3.3%
売上総利益(百万円) 4,928 3,944 4,650〜4,850 +6.0%
営業利益(百万円) △244 143 △360〜△260
経常利益(百万円) △368 130 △490〜△410
当期純利益(百万円) △494 69 △620〜△540

 

①-2 売上・営業利益の推移

以下の図は、5期にわたるラクスルの売上高、営業利益の推移をグラフ化したものです。2020年7月期の通期の売上高は214.9億円、営業利益は△1.6となりました。

ラクスル の営業利益

 

①-3 経営指標

第11期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:214.9億円(前年比+25.2%
  • 経常利益:△3.7億円
  • 当期純利益:△4.9億円
第10期 第11期
決算年月 2019年7月
2020年7月
売上高(千円) 17,168,658 21,494,598
経常利益(千円) 130,243 △368,429
当期純利益(千円) 69,598 △494,135
純資産額(千円) 6,809,770 6,801,528
総資産額(千円) 9,246,306 19,379,817
自己資本比率 73.6% 34.5%
営業キャッシュフロー(千円) 11,810 △126,238
投資キャッシュフロー(千円) △266,422 △283,651
財務キャッシュフロー(千円) △206,765 9,956,425
現金・現金同等物の期末残高(千円) 5,904,840 15,451,377
従業員数 262人 304人

 

4Q業績ハイライト (2020年7月期)

以下は、2020年7月期の業績を4Qに分けた指標です。
今年度は、広告費のコントロールなどに成功した一方、経営指標は、新型コロナウイルスの影響による顧客環境の悪化によって停滞気味の推移となりました。

2020年7月期
1Q
2020年7月期
2Q
2020年7月期
3Q
2020年7月期
4Q
売上高(百万円) 5,353 5,792 5,451 4,896
粗利益(百万円) 1,170 1,245 1,216 1,296
販管費(百万円) 1,213 1,445 1,368 1,059
営業利益(百万円) △43 △200 △152 237
従業員数 290人 303人 315人 313人

 

経営指標(過去5年分)

過去5期の数値を見ると、2018年の上場までは赤字計上を続けていましたが、上場を境に黒字転換に成功していることがわかります。
しかしながら、第11期は新型コロナウイルスの影響や、オフィス移転に伴う特別損失を計上した影響で赤字での計上となりました。

第7期 第8期 第9期 第10期 第11期
決算年月 2016年7月 2017年7月 2018年7月 2019年7月
2020年7月
売上高(千円) 5,082,189 7,675,055 11,174,249 17,168,658 21,494,598
経常利益(千円) △1,438,737 △1,163,101 43,242 130,243 △368,429
当期純利益(千円) △1,448,470 △1,175,411 15,459 69,598 △494,135
資本金(千円) 2,920,556 100,000 1,926,045 1,958,453 2,152,347
発行済株式総数 216720 241,720 27,548,600 27,805,200 28,270,090
純資産額(千円) 2,135,041 3,009,629 6,675,797 6,809,770 6,801,528
総資産額(千円) 3,535,257 4,869,763 8,758,342 9,246,306 19,379,817
自己資本比率 60.4% 61.8% 76.2% 73.6% 34.5%
従業員数 64人 118人 180人 262人 304人

 

② ラクスルの事業内容

②-1 ラクスルとは?

ラクスルは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」という企業ビジョンを掲げ、デジタル化が進んでいない伝統的な業界にインターネットを用いて新しい仕組みを創り、既存のビジネス慣習に変化を与えることを推進するビジネスを展開している企業です。

ラクスルの事業は、企業同士をマッチングするプラットフォームサービスとして運営されており、各事業セグメントは以下の通りです。

  1. 印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」
  2. 広告のプラットフォーム「ノバセル」
  3. 物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

「ラクスル」

「ラクスル」は、インターネットを使って全国の顧客から印刷の注文を集め、印刷機の非稼働時間を使って印刷をする仕組みを提供し、ユーザーの効率化を目指したラクスルの主軸となる事業セグメントです。

 

このビジネスでラクスルは、印刷機の稼働が余っている業者と印刷物を発注するユーザーをインターネット上でマッチングさせることで、提携印刷会社の印刷機の稼働率の向上を図り、経営支援を行う形での事業展開を実施しています。


また、「ラクスル」では、印刷サービスだけでなく、チラシを配布する業者と提携を組み、チラシのデザインや新聞折込・ポスティングまでをトータルで行う集客支援サービスが展開されています。
このサービスは、ウェブサイト上で、オンラインの地図上からチラシを配布したい地域と配布希望日を選択すると、自動的に配布枚数と料金が算出され注文することが可能となるサービスです。
これにより、これまで予算が足りず新聞折込やポスティングを使えなかった中小企業や個人事業主であっても、折込広告やポスティングができるようになるため、マーケティング活動を強化することが可能になります。


ラクスルのビジネスの特徴は、商品の仕入販売に関して、店舗・営業所・印刷工場を保有せず、顧客からの受注機能、受注商品の提携印刷会社への発注機能、コールセンターによる顧客サポート機能のみを保有している点です。
また、受発注管理のほぼ全てをインターネットによって行われており、商品・仕様・納期に応じて予め設定した価格で顧客に印刷物や配布サービスが展開されています。

 

ラクスルの事業系統図

 

 

「ノバセル」

「ノバセル」は、顧客が小ロットからテレビCMの枠や動画を購入できる広告プラットフォームサービスを運営する事業セグメントです。
「ラクスル」の集客支援サービスを利用するような広告予算を持っている顧客に対し、低コストで手軽にテレビCMを購入できるサービスとして提供が行われています。

テレビCMは、国内では最も多くの人々に情報を届けることが可能な広告手法である一方、多くの企業にとっては、価格帯の高さから導入のハードルが非常に高い広告手段です。

「ノバセル」事業では、地方局や広告代理店と連携し1県、1エリアの放映、あるいは特定番組のテレビ放映枠をピンポイントで1枠から購入可能なサービスとして提供されており、従来はテレビCMに縁がなかった企業も手軽にテレビCMを利用できるサービスとして提供されています。
またテレビ広告だけでなく、自社で保有するノウハウや、広告制作会社のネットワークを活用し、費用対効果の高い動画の制作サービスも併せて提供しています。

また、これまでテレビCMへの広告宣伝投資を実施して事業成長を実現してきたノウハウを活用し、科学的な分析で「効果の視える化」をサポートするための「ノバセルアナリティクス」というシステムの提供も行っており、これはテレビCMの放映後のサイト訪問数やアプリダウンロード数をクリエイティブや番組毎に測定し、従来「視聴率」という指標でしか計測できなかったテレビCM放映による効果を、WEB広告のように検証可能とするサービスです。

ノバセルの事業セグメント

 

「ハコベル」

「ハコベル」は、インターネットを利用して運送業界の効率化を目指した物流のプラットフォームサービスを運営する事業セグメントです。

顧客がパソコンやスマートフォンから「ハコベル」のウェブサイトを通じて依頼すると、その情報が「ハコベル」に登録したドライバーのパソコンやスマートフォンに届き、その情報を見て、条件が合うドライバーが依頼時間にトラックで向かい、荷物を積み、配送先に届けるサービスとなります。このサービスの目的は、インターネットを使って各運送会社の非稼動時間を有効活用し、低価格な配送サービスの仕組みの実現することです。
また、「ハコベル」は、単にマッチングを図るだけでなく、サービス利用後に、顧客がドライバーを評価する仕組みを設け、優良ドライバーのみをネットワーク化することで、高品質のサービスを提供していく方針で運営されています。

「ハコベル」では、荷主とドライバー間のやり取りをウェブサイトやスマートフォンのアプリで行うことで、これまで電話やFAXを使い紙や表計算ソフトで管理していたものをデジタル化し、手間を大幅に削減できることで運送会社やドライバーの生産性が向上させ、誤配送などのミス防止にも注力されています。

なお、料金については、まず顧客からラクスルへ利用代金が支払われ、ラクスルから運送会社へは事前に合意した配送委託代金を支払われるフローでの運営が行われています。
さらに、原則として車種と配送距離によって決まる明瞭な料金体系としており、いつでも簡単に予約申し込みができ、配送状況をリアルタイムで確認することができるようなシステム設計となっています。

 

ハコベルのビジネスモデル

 

②-3 売上構成比

ラクスルの売上構成比に着目していきます。
ラクスルは、印刷関連のマッチングサービスである「ラクスル」を基軸とした売上構成となっており、新型コロナウイルスの影響を受けるまで、全体の収益は概ね右肩上がりで推移していました。
また、かつては「ラクスル」ほぼ一本で売上を計上していましたが、2019年7月期のあたりからは、「ハコベル」、「ノバセル」などその他の事業も存在感を見せてきたことがわかります。

ラクスルの売上構成比

 

③ ラクスルの主要KPIとその数値推移

③-1 累計登録ユーザー数の推移

以下の図は、ラクスルの基軸サービスである「ラクスル」の累計登録ユーザー数の推移であり、この指標は「ラクスル」部門が抱える顧客数の推移を示しています。
売上が新型コロナウイルスの影響を受ける一方で、「ラクスル」のユーザー数は増加を続け、特に2018年頃からは、ユーザー数が急激に増加し続けていることがわかります。

ラクスルの累計登録数の推移

③-2 「ラクスル」の売上と利益率

以下の図は、上の図と同様、「ラクスル」部門の主要な経営指標の数値を示した図です。
2018年の上場前までは、「ラクスル」セグメント単体であっても赤字運営がなされていましたが、その後黒字転換に成功しました。
また、2020年7月期4Qは、他のタームと比較して、売上総利益に対するセグメント利益の利益率が上昇しており、この推移から、「ラクスル」がコロナ禍での広告費のコントロールに成功していることが推測できます。

 

ラクスルの営業利益率

 

④ ラクスルのコスト構造

④-1 ラクスルの販管費内訳

以下の図は、ラクスル全社でのコスト構造を示した図です。
かつては、対売上比率40%以上のコストを販管費に費やしていましたが、現在は20%前半で推移しています。
また、ラクスルのコスト構造は、広告費の動きが販管比率を大きく左右するコスト構造であるといえます。

ラクスルのコスト構造

④-2 ラクスルの広告費の推移

以下のグラフは、ラクスルの広告費にフォーカスして、広告宣伝比率の推移を表した図です。
かつては、売上に対して広告費用を30%近く費やしていましたが、現在では10%以下の広告比率で推移しています。
また、2020年7月期は4.0%と極端に広告費が抑えられており、この数値は、広告費用のコントロールが収益性の改善に寄与している証拠であると考えることができそうです。

ラクスルの広告宣伝費

⑤ ラクスルの投資領域

⑤-1 ソウルドアウトとの業務提携

2020年7月、ラクスルは中小・ベンチャー企業の成長支援をインターネット領域で行うソウルドアウト株式会社と業務提携を行いました。
この業務提携は、ソウルドアウトが提供するデジタルマーケティング施策に、ラクスルの運用型テレビCM「ノバセル」を掛け合わせることで、より専門性が高く、成果を追求するマーケティングサポートを目的とした提携となります。

ラクスル株式会社と業務提携 ~デジタル広告とテレビCMの統合プランニングで 企業のマーケティング活動を総合的に支援~

⑤-2 ペライチの株式取得

2020年9月、ラクスルは、「誰でも・カンタンに・素早く」ホームページを制作できるSaaS『ペライチ』を運営する株式会社ペライチの株式を取得し、これと同時にペライチはラクスルから4.9億円の資金調達を実施しました。
なお、この提携は、ラクスル、ペライチの双方の顧客である中小企業を相互にサポートすることを目的とする提携であるとされています。

ホームページ制作SaaSを運営する株式会社ペライチ、ラクスル株式会社から4.9億円の資金調達を実施

⑥ ラクスルの株価・時価総額推移

以下の図は、ラクスルの株価の変化を表したグラフです。

ラクスルの株価推移

ラクスルの2020年11月6日時点の株価は5,230円、時価総額は1479.1です。

⑦ ラクスルの会社情報

ラクスルの基本情報を紹介します。
市場は東証1部で、決算月は毎年7月となります。

ラクスルの基本情報

会社名 ラクスル株式会社
設立日 2009年9月1日
市場 東証1部
証券コード 4384
業種 情報・通信業
決算期 7月
ホームページアドレス http://corp.raksul.com/
発行済株式総数 28,281,190(株)
普通株式数 28,281,190(株)
資本金 2,152(百万円)  (2020/7現在)
1単元の株式数 100(株)
従業員数 304人
平均年齢 33.2 歳
平均年収 5,313,206 円

ラクスルの沿革

ラクスルは、2009年にTectonics株式会社として設立され、業務領域を拡大し、2018年5月にマザーズへ上場同年8月には東証1部への市場変更を行いました。

2009年9月 印刷の新しい発注の仕組み作りを目的としてTectonics株式会社を設立
2010年1月 社名をラクスル株式会社に変更
2010年4月 印刷通販の価格比較サービスサイト「印刷比較.com」の運営を開始
2010年8月 業務拡張のため本社を東京都港区海岸へ移転
2010年9月 「印刷比較.com」を「ラクスル」に名称変更・サイトリニューアル
2011年3月 業務拡張のため本社を東京都港区田町へ移転
2011年11月 「ラクスル」をサイトリニューアル
2011年12月 業務拡張のため本社を東京都港区芝浦へ移転
2013年3月 印刷のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」を開始
2013年11月 業務拡張のため本社を東京都港区虎ノ門へ移転
2014年6月 テレビCMの放送を開始
2015年3月 広告のプラットフォームとして集客支援(広告)サービスの提供を開始
2015年10月 海外展開のため100%子会社としてRAKSUL INTERNATIONAL PTE. LTD.をシンガポールに設立
2015年11月 業務拡張のため本社を東京都品川区上大崎へ移転
2015年12月 物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を開始
2017年4月 京都事業所を開設
2017年7月 ヤマトホールディングス株式会社との資本提携を実施
2018年5月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2019年8月 東京証券取引所市場第一部へ市場変更
2019年11月 RAKSUL INTERNATIONAL PTE. LTD.を清算
2020年4月 広告のプラットフォーム「ノバセル」を開始
2020年6月 開発拠点として100%子会社RAKSUL VIETNAM COMPANY LIMITED をベトナムに設立
2020年7月 開発拠点として100%子会社RAKSUL INDIA PRIVATE LIMITED をインドに設立

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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