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【新規上場企業分析】 ヤプリのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

ヤプリの概要

ヤプリの基本情報

はじめに、株式会社ヤプリの基本情報を紹介します。
上場予定日は2020年12月22日、市場はマザーズ、想定時価総額は345.2です。

会社名 株式会社ヤプリ
設立日 2013年2月14日
上場日 2020年12月22日(承認日:2020年11月13日)
市場 マザーズ
証券コード 4168
業種 情報・通信業
決算期 12月
ホームページアドレス https://yappli.co.jp/
発行済株式総数 11,313,600 株(2020 年 11 月 13 日現在)
上場時発行済株式総数 11,663,600 株
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 350,000 株
想定価格 2,960円
想定時価総額 345.2億円(※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金 1,472,402 千円(2020 年 11 月 13 日現在)
1単元の株式数 100 株
監査人 有限責任 あずさ監査法人
主幹事証券会社 みずほ証券
引受幹事証券会社 大和証券
野村證券
SBI証券
マネックス証券

ヤプリの沿革

ヤプリは、2013年に東京都でファストメディア株式会社として創業した企業です。
その後、事業を拡大し、2017年には現在の社名へ商号を変更しました。

2013年2月 東京都港区南青山において資本金5,000千円でファストメディア株式会社を設立
アプリ運営プラットフォーム「Yappliシステム」をリリース
2014年5月 東京都港区六本木へ本社を移転
2015年4月 アジア初開催のイベント「SLUSH ASIA」のスタートアップのピッチコンテストにて準優勝(国内参加スタートアップとしては1位)
2015年9月 アジア最大級のスタートアップ・テクノロジーメディア「Tech in Asia」にて「Amazon Web Services 賞」を受賞
2015年10月 東京都港区赤坂(DAIWA赤坂ビル)へ本社を移転
2016年6月 プライバシーマーク認証取得
2017年4月 社名を株式会社ヤプリに変更
2018年1月 東京都港区赤坂(国際新赤坂ビル)へ本社を移転
大阪府大阪市北区梅田に大阪支社を開設
2018年10月 有限責任監査法人トーマツが発表した、テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション業界 の急成長企業のランキング第8回「デロイト 日本テクノロジー Fast50」において50位中7位を 受賞
2019年3月 GMO TECH株式会社が提供する「GMOアップカプセル」事業を譲受
2019年6月 東京都港区六本木(住友不動産六本木グランドタワー)へ本社を移転  
福岡県福岡市中央区大名に福岡支社を開設
2019年11月 Forbes JAPANが発表した「日本版CLOUD TOP10」において5位、「日本の起業家ランキング 2020」において当社代表取締役の庵原保文が7位で選出

ヤプリの事業内容

ヤプリは、「Mobile Tech for All~モバイルテクノロジーで世の中をもっと便利に、もっと楽しく~」という経営理念の下、アプリ開発技術がなくてもノーコード(プログラミング不要)で全ての要素を最初から開発運用を可能とするクラウド型のアプリ運営プラットフォームを運営しています。

以下は、ヤプリの事業系統を表した図です。

ヤプリの事業系統図

① ヤプリの機能 

Yappliシステムは、ノーコードでありながら、通常のプログラミングによって開発されたシステムに見劣りしないシステムを開発できる機能を有します。
また、ポイントカード機能、アプリ内課金機能、認証機能など40以上の機能を搭載しており、プログラミングの知識がないユーザーでも簡単に本格的なアプリ開発が可能です。

通常web開発やアプリ開発は、iOSとAndroidの2つの異なるプログラミング言語を用いてエンジニアやデザイナーが企業からの依頼を受けて開発していたため、費用はもちろん膨大なコミュニケーションコストが発生していました。
そのような背景から、ヤプリはweb開発やアプリ開発のシーンにおいて、個人や法人ができるだけ低コストで開発ができるようなノーコードによるアプリ運営プラットフォームを展開しています。


Yappliシステムは1アプリ(iOS及びAndroidの両方を含む)1契約としており、主な収入源は、システム導入時の初期費用として計上される「初期制作収入」、Yappliシステム利用料として毎月計上されるする「月額利用料」となります。
なお、「月額利用料」は、基本料金と有料オプション機能などの利用で加算される追加料金によって構成されており、2020年9月末時点でYappliシステムの契約アプリ件数は527件、累計アプリダウンロード数は約65百万ダウンロードとなっています。

② ヤプリの特徴

Yappliシステムの最大の特徴は、企業におけるアプリ開発、運用の多くの課題を解決するため、SaaS型のアプリ開発プラットフォームを提供しており、クラウドを経由してノーコードで開発・運用・分析に関わる機能をワンストップで提供する点となります。

SaaSとは、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略称であり、利用者がソフトウェアを直接インストールして利用するのではなく、 インターネット上のクラウド経由で利用するサービスであり、顧客管理だけでなく、金融、EC、不動産など様々な領域で利用されているシステムです。

また、SaaS型のシステムは、月や年などの期間をベースとした定額課金によって一定の収益を計上するストック型と呼ばれる仕組みによって運営されるため、安定的な収益を獲得する上で有効な手法とされています。

ノーコードによるスピード開発

Yappliシステムを利用すると、顧客企業にとって専属の開発技術者は基本的に不要となり、技術の知識がなくてもノーコードで幅広いデザインのiOSとAndoroidのネイティブアプリをスピード開発することが可能です。

また、この特徴は、エンジニア採用の市場は競争が激化しており、インターネット事業を主軸としない企業による開発組織の構築は難易度が高い今日の状況における強みであるといえます。

利便性の高い管理画面

通常のアプリ開発では、アプリの開発と併せてシステム運用を委託するのが一般的であり、アプリ開発後の運用に関しても多大な費用と人的コストを要します。
一方、Yappliシステムは管理画面を通じて直観的な操作で更新作業が実施でき、作業を即時確認できるプレビューやタイマー、バックアップ機能などを搭載しており、機能やデザイン変更、アプリストア申請管理までの全てを実現することが可能なシステムとして設計されています。

顧客情報に基づくプッシュ通知機能

ネイティブアプリのプッシュ通知はWebにはない特有な機能であり、利用者とのコミュニケーションでエンゲージメントを醸成し、優良顧客を創出するために効果を発揮します。

このシステムでは、性別や誕生日などのユーザー属性情報、GPS位置情報によるエリア情報、アプリ起動日やクーポン利用などによる行動データなど顧客システムと連携した会員情報などの組み合わせによるユーザーセグメントに基づくプッシュ配信が可能となります。

アプリを活用したデータ分析

Yappliシステムのユーザーは、アプリ内の行動やアクション、流入経路などが可視化されたダッシュボードで素早いPDCAサイクルを運用することが可能です。
また、その他にもGoogleアナリティクスやAppsFlyerを用いたデータ分析や、DMP(インター ネット上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォーム)などとのデータ統合を行うことも可能となるように設計されています。

カスタマーサポート

Yappliシステムでは、400社以上の導入実績で培ってきたノウハウから、年間200回以上の機能改善や、アプリ運用の効果につながる新機能の搭載、最新OSに対応する為のアップデートなどもクラウド上自動で対応しているため、速やかなアップデートが可能であり、
常に最新のモバ イルテクノロジーにアクセスすることができます。
また、リリース後の課題分析やダウンロード施策など顧客企業の成長支援にも注力されており、顧客企業へのレクチャー会やセミナーを通して成功事例やネイティブアプリ運用のノウ ハウが提供されている点も特徴となります。

有価証券報告書情報

経営指標(過去2期分)

第7期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:17.2億円(前年比+68.4%)
  • 経常利益:△8.0億円
  • 当期純利益:△7.9億円
第6期 第7期
決算年月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 1,021,809 1,721,107
経常利益(千円) △162,492 △798,928
当期純利益(千円) △205,671 △789,757
純資産額(千円) 289,342 929,997
総資産額(千円) 482,566 1,922,432
自己資本比率 60.0% 48.3%
営業キャッシュフロー(千円) △228,778 △698,539
投資キャッシュフロー(千円) △30,175 △602,788
財務キャッシュフロー(千円) △83,334 2,115,082
現金・現金同等物の期末残高(千円) 220,903 1,034,658
従業員数 88人 152人

 

経営指標(過去5期分)

過去5期の業績を見ると、売上高は、約21倍と急速に成長しています。

一方、利益については、5期の間は終始赤字であり、赤字額も増加の傾向を辿っています。

この原因の一つとして考えられるのは、ヤプリが展開しているサービスがSaaS型であるという点です。
同様のSaaS型のサービスを展開する代表的な企業として、クラウド会計ソフトの「freee」、名刺管理ツールの「Sansan」が挙げられますが、SaaS型サービスは、セールス・マーケティングに多額のコストを費やす傾向があり、この2社も収益化まで比較的長い期間を要しています。

なお、ヤプリでは、第7期は、主に人員増加に伴う人件費増加、本社オフィス移転に伴う賃借料の増加に加え、積極的に広告宣伝を実施したことから、販売費及び一般管理費が1,716,186千円(前年度比961,330千円増)となった旨の報告を行いました。

第3期 第4期 第5期 第6期 第7期
決算年月 2015年12月 2016年12月 2017年12月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 81,746 244,588 599,059 1,021,809 1,721,107
経常利益(千円) △16,142 △155,671 △63,718 △162,492 △798,928
当期純利益(千円) △16,432 △157,009 △73,874 △205,671 △789,757
資本金(千円) 185,950 185,950 383,140 383,140 1,097,402
発行済株式総数 31,550 31,550 33,741 33,741 36,462
純資産額(千円) 331,517 174,507 495,013 289,342 929,997
総資産額(千円) 343,795 220,735 721,964 482,566 1,922,432
自己資本比率 96.4 79.1 68.6 60.0% 48.3%
従業員数 9人 27人 51人 88人 152人

 

ヤプリは、2019年6月、複数のファンドや金融機関から約30億円の資金調達を実施しました。
また、調達した資金は、主にプラットフォームの拡大に必要なプロダクト開発と人材の採用、マーケティング活動への投資に活用するとしており、累計調達総額は約40億円とされています。

ヤプリ、総額30億円の資金調達を実施

株主構成

上位10位までの主要な株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
庵原 保文 2,348,100 18.72% 180日間
佐野 将史 2,348,100 18.72% 180日間
YJ1号投資事業組合 2,102,400 16.76% 180日間
Eight Roads Ventures Japan Ⅱ L.P. 1,133,700 9.04%
グロービス4号ファンド投資事業有限責任組合 1,112,700 8.87% 180日間
黒田 真澄 828,900 6.61% 180日間
原田 智法 750,000 5.98%
Globis Fund Ⅳ, L.P. 667,200 5.32% 180日間
Salesforce.com, inc. 420,000 3.35%
テクノロジーベンチャーズ4号投資事業有限責任組合 180,000 1.43% 180日間

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は2,960円、吸収金額(調達額)は 164.9億円と予想されています。

仮条件 未発表
公募・売出価格 未発表
想定価格 2,960 円
初値
公募株数 350,000 株
売出株数 4,495,400 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 726,600 株
吸収金額(調達額) 164.9 億円 (※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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