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【新規上場企業分析】トヨクモのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

概要

基本情報

はじめにトヨクモ株式会社の基本情報を紹介します。 上場予定日は2020年9月24日、市場はマザーズ、想定時価総額は90.0億円です。

会社名 トヨクモ株式会社
設立日 2010年8月2日
上場予定日 2020年9月24日(承認日:2020年8月19日)
市場 マザーズ
証券コード 4058
業種 情報・通信業
決算期 12月
ホームページアドレス https://toyokumo.co.jp/
発行済株式総数 4,702,000 株(2020 年 8 月 19 日現在)
上場時発行済株式総数 5,002,000 株
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 300,000 株
想定価格 1,800円
想定時価総額 90.0億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金 57,300 千円(2020年8月19日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 PwCあらた有限責任監査法人
主幹事証券会社 いちよし証券
引受幹事証券会社 大和証券
SMBC日興証券
岩井コスモ証券
SBI証券
極東証券
東洋証券
マネックス証券

沿革

トヨクモは2010年8月、東京都において、クラウドサービスなどの新たなサービスを展開することを目的に、サイボウズ株式会社の100%子会社であるサイボウズスタートアップス株式会社として設立されました。

2014年3月に、 マネジメントバイアウトによってサイボウズから独立し、2019年7月には、サイボウズ株式会社から独立した経営体制であることをより明確にするため、「トヨクモ株式会社」に商号を変更しました。

2010年8月 東京都文京区において、サイボウズ株式会社がクラウドサービス等の新たなサービスを展開す ることを目的に、100%子会社としてサイボウズスタートアップス株式会社を設立
2011年12月 災害時に簡単に情報共有できるように設計したシンプルなクラウドサービス「安否確認サービ ス」提供開始
2012年7月 サイボウズ株式会社の業務アプリ構築クラウドサービス「kintone(キントーン)」と連携するWebフォーム作成サービス「フォームクリエイター」提供開始
2014年3月 マネジメントバイアウトにより、サイボウズ株式会社の連結範囲外となり、独立した経営体制へ移行
2014年4月 「kintone」に登録されたデータを利用して帳票印刷をするためのサービス「プリントクリエイ ター」提供開始
2014年9月 「kintone」に登録されたデータを、外部に公開するための連携サービス「kViewer」提供開始
2014年11月 「kintone」に登録したデータが消えてしまった際に備えて、データ保全をするためのサービス 「kBackup」提供開始
2015年4月 本社を東京都港区芝に移転
2015年9月 情報マネジメントシステム(ISO/IEC 27001)の認証(登録番号 ISA-IS-0127)を取得
2016年3月 「kintone」で電子帳簿を保存するために必要なタイムスタンプを付与するサービス「タイムス タンプ for kintone」提供開始
2016年12月 災害時に従業員等の安否確認をスマートフォンのアプリやパソコンから行うクラウドサービス 「安否確認サービス2」提供開始
2017年1月 本社を東京都品川区西五反田に移転
2017年7月 「kintone」と連携するWebフォーム作成サービス「フォームクリエイター」の上位サービスと して、「フォームクリエイター」では実現できなかった機能を可能にしたサービス「フォーム ブリッジ」提供開始
2018年1月 「kintone」と連携するメール送信サービス「kMailer」提供開始
2019年7月 サイボウズスタートアップス株式会社をトヨクモ株式会社に商号変更
2020年3月 「kintone」内のデータを収集・計算するサービス「データコレクト」提供開始

事業内容

トヨクモは、「情報サービスをとおして、世界の豊かな社会生活の実現に貢献する」ことを企業理念とし、法人向けクラウドサービスの開発・販売を行っております。

サービスのコンセプトは、簡単な操作、シンプルな機能と分かりやすいデザインで、日常的にパソコンやスマートフォンを利用していないIT初心者の方にも、安心して利用できるサービスを提供することです。

トヨクモの事業は、「法人向けクラウドサービス事業」の単一のセグメントです。

主に2つのサービスによって事業が展開されており、緊急時に簡単に情報共有できるように設計したシンプルなクラウドサービス「安否確認サービス」の開発・販売、サイボウズの業務アプリケーション構築サービス「kintone」と連携するサービスである「kintone連携サービス」の開発・販売が主な業務となります。

トヨクモが提供する主なサービスと事業系統図は以下の通りです。

  1. 「安否確認サービス」の開発・販売
  2. 「kintone連携サービス」の開発・販売

  トヨクモ事業系統図

① 安否確認サービス

企業には自然災害や異常気象等による災害が発生した際に、混乱を最小限に留め、顧客サービスを継続的に提供するための対応策が求められます。

トヨクモの提供する「安否確認サービス」は、そのような災害時に従業員等の安否確認を携帯電話、スマートフォンやパソコンで行うクラウドサービスです。
このサービスは、災害発生時の被害状況を正確に把握し、 従業員等への指示を迅速に行うための機能を備えているだけでなく、社内ネットワークの障害時の緊急連絡用としても活用できるサービスとなっています。

「安否確認サービス」に備わっている主な機能は、以下の通りです。

機能 概要
安否確認機能 地震や津波、その他の大災害時の発生時に、予め登録された連絡先に一斉送信する機能であり、大災害時にも連絡を取ることが可能。
情報集計機能 危機管理責任者やマネージャーの役割に設定したユーザーは、連絡状況を一覧表でこの機能によって確認することが可能。 また、全社集計、部署別集計、地域別集計の確認もできる。
対策指示機能 災害時に必要である、最適なメンバーと対策を議論する機能(メッセージ)、途中経過を知らせる機能(掲示板)、結果を連絡する機能(一斉送信)の3つの異なるコミュニケーション機能が利用可能。
事前準備機能 ユーザー情報や地域、部署情報は、この機能に備わるCSVファイルで一括登録が可能。

 

② 「kintone」連携サービス

「kintone」は、サイボウズ株式会社の提供するクラウドサービスであり、売上管理や顧客管理など、業務に必要なアプリケーションを作成できるツールです。
「kintone」は、プログラミンができないユーザーであっても、アプリケーションの設計や各種運用設定が可能な設計となっています。
このように、様々な用途で利用できる「kintone」ですが、基本機能のみでは実現できないこともあります。

トヨクモは、「kintone」に連携するサービスを提供することで「kintone」をより便利に活用することを支援する形でサービス提供を行っています。
また、サービスを利用する顧客は、トヨクモ経由で「kintone」のライセンスを購入することにより支払いをトヨクモに一本化することも可能です。

トヨクモの「kintone連携サービス」に備わる主なサービスは以下の通りです。

サービス名 概要
プリントクリエイター 「kintone」に登録されたデータを利用して見積書、請求書等の帳票印刷をするためのサービス
フォームブリッジ アンケートフォーム・申込みフォームを作成し、kintoneに直接データ登録ができるwebフォーム作成サービス
kBackup 「kintone」に登録したデータが消えてしまった際に備えて、データバックアップするためのサービス
kViewer 「kintone」に登録されたデータを、外部に公開するためのサービス
kMailer 「kintone」に登録されたデータを引用しながら、メールの送信ができるサービス
タイムスタンプfor kintone 「kintone」に登録されたPDFや画像ファイルをタイムスタンプ(データの存在照明や改ざんがないことの証明が可能な技術)付きのPDFファイルに変換するサービス
データコレクト 「kintone」内のデータを収集・計算するサービス

 

③ トヨクモのビジネスモデルの特徴

トヨクモがビジネスの根幹として据えるクラウドとは、従来ハードウェアとしてデータの保存などに使用されるサーバーをインターネット上の「クラウド」というサーバーを利用することによって保存することを可能にしたシステムです。

「クラウド」が存在することで、クラウドシステムのユーザーはサーバーがなくてもインターネット環境さえあればいつでも保存しているデータにアクセスすることができます。
また、クラウドを利用することでサーバーやソフトウェアを導入する必要がなくなるため、ユーザーはデータの保存や管理を低コストでの運用が可能です。

トヨクモのクラウドサービスは、顧客の申込みから利用までオンラインで完結することができます。
また、このサービスは、顧客が「簡単」「便利」に使えることにフォーカスされており、顧客が短期間で使いこなせるようになることを目指しています。
サービスの導入時も、電話やホームページ経由での導入が可能であり、個別にカスタマイズを行わないため、サポートの負担も少ないことが特徴です。
このように営業やカスタマーサポートに極力コストを割かず、効率的な事業運営を行うことで、安価なサービスの提供が可能となっています。

トヨクモのクラウドサービスは、利用期間に応じて料金が発生するビジネスモデルであり、有償契約数の増加により、継続的に収益が積み上がるストック型ビジネスです。 ストック型ビジネスとは、月額使用料などを経常的に獲得するビジネスモデルのことを意味します。

以下は、トヨクモが提供するサービスの有料ユーザーの推移を表した表です。

  安否確認サービス(件) kintone連携サービス(件)
2014年12月末日 187 138
2015年12月末日 307 420
2016年12月末日 485 792
2017年12月末日 667 1,298
2018年12月末日 1,061 1,985
2019年12月末日 1,491 2,998
2020年6月末日 1,789 3,448

 

有価証券報告書情報

経営指標(過去2期分)

10期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:7.6億円(前年比+57.7%)
  • 経常利益:1億円(前年比△39.4%)
  • 当期純利益:0.7億円(前年比+29.3%)
第9期 第10期
決算年月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 482,595 761,226
経常利益(千円) 137,231 98,464
当期純利益(千円) 91,585 72,220
純資産額(千円) 290,666 375,887
総資産額(千円) 507,688 692,451
自己資本比率 57.3% 54.3%
営業キャッシュフロー(千円) 210,721 179,869
投資キャッシュフロー(千円) △3,757 △8,473
財務キャッシュフロー(千円) 13,000
現金・現金同等物の期末残高(千円) 427,040 611,437
従業員数 18 28

経営指標(過去5期分)

5期の業績を見ると、売上高は4年で6倍近く増加しています。 一方で、利益に関しては赤字の状態が続いています。
また、経常利益も3倍ほどの成長をみせており、直近の5年間は黒字経営を続けていることがわかります。

第6期 第7期 第8期 第9期 第10期
決算年月 2015年12月 2016年12月 2017年12月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 128,981 230,128 271,497 482,595 761,226
経常利益(千円) 31,389 55,932 5,440 137,231 98,464
当期純利益(千円) 31,099 50,424 41,341 91,585 72,220
資本金(千円) 50,000 50,000 50,800 50,800 57,300
発行済株式総数 4,200 4,200 4,264 4,264 4,702
純資産額(千円) 105,716 156,140 199,081 290,666 375,887
総資産額(千円) 114,398 184,257 323,060 507,688 692,451
自己資本比率(%) 92.4 84.7 61.6 57.3 54.3
従業員数(人) 3 9 12 18 28

株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
株式会社ナノバンク 2,448,000 47.4 90日間
サイボウズ株式会社 600,000 11.63 90日間
インキュベイトファンド2号 投資事業有限責任組合 350,000 6.78
田里 友彦 330,000 6.4 90日間
山本 裕次 300,000 5.8 90日間
落合 雄一 290,000 5.6 90日間
株式会社サムライキャピタル 150,000 2.9
石井 和彦 130,000 2.5 90日間
木下 正則 100,000 1.94 90日間
三浦 拳 64,000 1.2 90日間

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は1,800円、吸収金額(調達額)は9.9億円と予想されています。

仮条件 未発表
公募・売出価格 未発表
想定価格 1,800円
初値
公募株数 300,000 株
売出株数 200,000 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 50,000 株
吸収金額(調達額) 9.9億円
(※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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