ファイナンス

【新規上場企業分析】Speee(スピー)のIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

Speeeの概要

 

Speeeの基本情報

まずはSpeeeの基本情報を紹介します。
上場日は2020年7月10日、市場はJASDAQスタンダード、想定時価総額は221.5億円です。

会社名 株式会社Speee(すぴー)
設立日 2007年11月29日
上場日 2020年7月10日(承認日:2020年6月10日)
市場 JASDAQ スタンダード
証券コード 4499
業種 情報・通信業
決算期 9月
ホームページアドレス https://speee.jp/
発行済株式総数 8,900,000株(2020年6月10日現在)
上場時発行済株式総数 9,755,600株
※公募分を含む
※新株予約権の権利行使により増加する可能性あり
公募株数 855,600株
想定価格 2,270円
想定時価総額 221.5億円
(※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金 36,640,000円(2020年6月10日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 有限責任 あずさ監査法人
主幹事証券会社 野村證券
引受幹事証券会社 SBI証券
みずほ証券
楽天証券
SMBC日興証券
大和証券
マネックス証券
藍澤證券
いちよし証券

Speeeの沿革

Speeeは2017年11月29日に、モバイルSEO専業のWebマーケティング企業として設立されました。
データドリブンな事業開発アプローチで連続的に新規事業を創出し、子会社も設立して多角的に事業展開しています。

2007年11月 モバイルSEO(現Webアナリティクス)事業の運営を目的として、東京都渋谷区道玄坂に株式会社Speee(資本金999万円)を設立
2008年3月 本社を東京都品川区西五反田に移転
2009年9月 本社を東京都港区六本木に移転
2012年5月 ポイントメディア事業を行う国内子会社株式会社LikeIt(旧商号株式会社Splay)を設立
2013年10月 DSPを中心としたデジタル広告のトレーディングデスク事業を開始
2014年1月 中古不動産売却におけるマッチングサービス「イエウール」を開始
2014年4月 エンタメ系メディア事業を行う国内子会社株式会社Laughyを設立
ヘルスケア事業を行う国内子会社ザイエンス株式会社を設立
2014年11月 美容系メディア事業を行う国内子会社BPM株式会社を設立
2015年3月 統合アド運用プラットフォーム「VOYAGER」をリリース
2015年10月 ネイティブアド事業を開始
デジタルマーケティングの総合支援プラットフォーム「Markeship」をリリース
美容系メディア事業を行う国内子会社株式会社Jennyを設立
2015年12月 外装リフォームにおけるマッチングサービス「ヌリカエ」を開始
2016年4月 ネイティブアド配信プラットフォーム「UZOU」をリリース
2016年10月 国内子会社株式会社Laughyが国内子会社株式会社LikeItを吸収合併
2016年12月 美容系SNS事業を行う国内子会社株式会社Vicolleを設立
2017年1月 インドネシア共和国に現地求職メディア運営事業を行う海外子会社PT.SPEEE RECRUITMENT NUSANTARAを設立
2017年12月 国内子会社株式会社Laughyの事業を譲渡
国内子会社株式会社Vicolleの事業を譲渡 
2018年3月 ブロックチェーン技術を基盤としたデータプラットフォーム事業を行う国内子会社株式会社Datachainを設立
BPM株式会社が株式会社Jenny及び株式会社Vicolleを吸収合併
2018年9月 株式会社Laughy及びBPM株式会社を吸収合併
2018年10月 データインテグレート手法と予測分析技術を活用したマーケティング支援サービス「PAAM」を開始
2018年11月 中古不動産売却に関するメディア事業を行う株式会社Velocity(旧株式会社ウェブスキー)を子会社化
リフォーム関連領域におけるマッチングサービス「ナコウド」を開始
2019年8月 スマートヘルスケア事業を行う国内子会社株式会社ThinQ Healthcareを設立
2019年9月 国内子会社ザイエンス株式会社の事業を譲渡
2019年10月 ザイエンス株式会社を吸収合併

Speeeの事業内容

Speeeは「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションのもと、テクノロジーを活かしながら既存のビジネスを柔軟に組み合わせ、新しいサービスを生み出すデータドリブンな事業開発アプローチで、様々な事業を展開しています。 

事業セグメントは以下4つに区分しており、主要事業のビジネスモデルは図の通りです。

  1. MarTech(マーテック)事業
  2. X-Tech(クロステック)事業
  3. Data Platform(データプラットフォーム)事業
  4. その他

①MarTech事業

人々の消費活動の複雑化に伴ったマーケティング活動は高難易度化を背景に、Speeeでは自社で蓄積したデータと世の中に散在するデータや解法を収集・整理し、活用方法を紡ぎ出すことで顧客企業の成果最大化を目指していなます。
MarTech事業では、データ分析を元にしたマーケティングソリューションサービスを提供する他、データを活用したマーケティング施策のオペレーション代行等を行っています。

①-1 コンサルティングサービス

「Webアナリティクス」、「トレーディングデスク」、2018年10月より事業開始した「PAAM」を主要なサービス内容としており、首都圏を中心に293社の顧客に利用されています(2020年5月末現在)。

  • Webアナリティクス
    • Google等の検索エンジンを通じてユーザーの来訪数や購入数等を向上させるために顧客のWebサイトの掲載内容や構造を改良することを目的としたコンサルティング(SEO)
    • 顧客ごとに毎月一定額の報酬で契約
  • トレーディングデスク
    • 運用型広告を中心とするプロモーション手法を通じ、顧客のWebサイトへの集客を適切に行うための課題抽出、戦略立案から広告の運用までを一貫して実施
    • 広告の出稿量に比例した報酬を得ている
  • PAAM(Predictive AnalyticsAnd Marketing、パーム)
    • 散在している顧客の社内外のデータを収集・統合・可視化するとともに、広告の費用対効果の最適化を始めとするマーケティングへの利活用の方法を提案している
    • データの統合及び予測分析の技術を活用し、マーケティングの戦略策定から実行までを一貫してデータに基づいて実施できる環境の構築を支援

①-2 プロダクト

マーケティングテクノロジーや広告テクノロジーに関するプロダクトを複数提供しています。

  • ネイティブアド配信プラットフォーム「UZOU(ウゾウ)」
    • 「UZOU」はネイティブ広告を扱うアドネットワークで、198社の広告主・642の媒体に利用されている(2020年5月末現在)。
    • 特徴は「人工知能を活用したユーザー・媒体・広告のマッチング 」と「 媒体のデザインを損ねない広告フォーマット」。
    • 媒体に掲載された記事の内容や来訪ユーザーの属性を考慮して顧客の広告を表示し、それらの対価として広告主から広告出稿量に比例した収入を得ている。
  • 集客データの分析・マーケティング施策の統合管理を可能にする「Markeship」
  • 広告配信データの運用管理ツール「Voyager」

本セグメントの特徴・強み

・データ収集/分析力 
・顧客の事業に本質的に貢献できるコンサルティング力
・マーケティングノウハウ

②X-Tech事業

X-Tech事業では、産業としての歴史が長い領域に対して、バリューチェーンの生産性に影響を及ぼしている課題を特定した上で、テクノロジーを活用した新たなソリューションを提供しています。
主力サービスは中古不動産売却におけるマッチングサービス「イエウール」と、外壁リフォームにおけるマッチングサービス「ヌリカエ」です。
いずれの市場においても、集客支援メディアとして参入後、ツールの提供等を通じて価値提供の幅を拡大する方針を採っています。

  • イエウール
    • 不動産一括見積もりサイト「イエウール」の運営を通じて、不動産の売却を検討するユーザー(個人)を、複数の不動産業者に紹介
    • その後、不動産業者がユーザーに連絡を取り、売却見積価格の提示・売却の提案等を行う
    • 物件などの条件に適合する複数の不動産業者の見積価格を一度に比較できることがユーザーにとってのメリット
    • 不動産業者にとっては、売却を検討しているユーザーの情報を入手できることがメリット
    • 「ユーザーの紹介」1件ごとにその対価として不動産業者から報酬を得てい
  • ヌリカエ
    • 外壁塗装一括見積サイト「ヌリカエ」の運営を通じて、住宅の外壁塗装工事を検討するユーザー(個人)を、ユーザーから居住地域や物件に関する情報を受け取り、さらに電話で希望条件等を詳しく聞いた上で、条件に適合する外壁塗装業者に紹介
    • その後、外壁塗装業者がユーザーに連絡を取り、見積価格の提示・提案等を行う
    • ユーザーにとっては複数の業者の見積価格を一度に比較できることがメリット
    • 外壁塗装業者にとっては外壁塗装を検討しているユーザーの情報を入手できることがメリット
    • 紹介の対価として、「ユーザーの紹介」及び「紹介したユーザーの成約」ごとに報酬を外壁塗装業者から得ている

本セグメントの特徴・強み

・顧客基盤の充実と集客数の多さ 
・サービスを成長させるための体制
・成約率向上への注力 

③Data Platform事業

世界にはデータが溢れているデータにおいて、「重要なデータは共有されず、データを活用しきれていない」という課題を解決するための事業です。
子会社の「Datachain」では、重要なデータに関して、全ての取引履歴について第三者による検証が可能であり、意図しない相手へのデータ流出を防ぎつつ、中央管理者を介さずに当事者間でデータ流通が完結する取引形態を実現することで、ブロックチェーン技術とトークンエコノミーによってデータ流通を革新することを目指しています

先日以下のプレスリリースにて、トヨタファイナンシャルサービスと共同で、自動車の二次流通市場における車両価値の算出や車両の所有権移転の際に、ブロックチェーン技術を用いたデータ連携を活用することの有用性を検証したと発表しました。

Datachainとトヨタファイナンシャルサービス、ブロックチェーンを活用した車両の「価値証明」と「所有権移転」に係る実証実験を実施

本セグメントの特徴・強み

・ブロックチェーン技術の研究開発
・パートナー企業との価値創出

④その他

上記の事業の他、海外事業やヘルスケア事業を行っています。

  • インドネシア共和国におけるHR(人材)関連サービス「Job-Like」
    • インドネシア共和国において、企業の求人広告を制作・掲載し、それを求職者である一般ユーザーへ情報提供を行うWebサービス「Job-Like」を運営
  • ThinQ Healthcare事業
    • 従業員のヘルスケア領域に対して、テクノロジーを活用したサービスの運営 

有価証券報告書情報

連結の経営指標(過去2期分)

12期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:74.2億円(前年比+3.6%)
  • 経常利益:1.9億円(前年比+14.5%)
  • 当期純利益:0.2億円(前年比−90.4%)
第11期 第12期
決算年月 2018年9月 2019年9月
売上高(千円) 7,165,064 7,420,781
経常利益(千円) 165,254 189,956
当期純利益(千円) 226,495 21,853
純資産額(千円) 884,688 918,742
総資産額(千円) 3,403,439 3,286,587
自己資本比率 26.0% 27.9%
営業キャッシュフロー(千円) 485,976 △192,148
投資キャッシュフロー(千円) 72,001 △152,238
財務キャッシュフロー(千円) △65,916 54,212
現金・現金同等物の期末残高(千円) 1,866,417 1,576,435
従業員数 272人 295人

単体の経営指標(過去5期分)

5期の業績を見ると、売上高は4年で2倍以上になっています。
第10期で赤字になっていますが、そこでの投資を第11期・12期でしっかりと利益に変えています。

第8期 第9期 第10期 第11期 第12期
決算年月 2015年9月 2016年9月 2017年9月 2018年9月 2019年9月
売上高(千円) 3,648,949 5,666,438 5,737,701 7,156,993 7,361,503
経常利益(千円) 417,298 367,456 △287,580 388,437 301,384
当期純利益(千円) 252,683 73,290 △397,995 149,827 38,077
資本金(千円) 13,015 13,015 13,015 24,940 30,940
発行済株式総数 1,450 1,450 1,450 1,702 8,710,000
純資産額(千円) 1,035,241 1,111,951 710,563 885,355 935,559
総資産額(千円) 2,546,164 3,209,052 2,756,067 3,360,326 3,490,005
自己資本比率 40.7% 34.7% 25.8% 26.3% 26.8%
従業員数 186人 259人 247人 238人 263人

セグメント別業績

第12期のセグメント別経営成績は表の通りです。
売上構成比は以下の通りで、MarTech事業とX-Tech事業がメイン事業となっています。

  • MarTech事業:65.6%
  • X-Tech事業:33.8%
  • Data Platform事業:0.2%
  • その他:0.4%
指標 全体 MarTech事業 X-Tech事業 DataPlatform
事業
その他
売上高(千円) 7,420,781 4,871,359 2,509,529 11,000 28,892
売上高前年同期比 +3.6% +0.3% +9.1% +229.0%
営業利益(千円) 198,503 1,385,616 333,060 -257,996 -195,935
営業利益前年同期比 -3.3% -4.3% +6.4%
経常利益(千円) 189,956        
当期純利益(千円) 21,853        

株主構成

最近のWebベンチャーでは珍しく、ベンチャーキャピタルなどから資金調達を一切行わず、自己資本でIPOまで経営してきています。
株主は主に経営陣です。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
大塚 英樹 2,895,000 29.91% 90日
久田 哲史 2,610,000 26.96% 90日
株式会社Print 2,510,000 25.93% 90日
渡邉 昌司 805,000 8.32% 90日
安田 智之 730,000 7.54% 90日
松嶋 良治 75,000 0.77%  
株式会社バルーン 55,000 0.57% 90日

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は2270円、吸収金額(調達額)は25.5億円と予想されています。

 

仮条件 2,520円~2,880円
公募・売出価格 2,880円
想定価格 2,270円
初値
公募株数 855,600株
売出株数 120,000株
オーバーアロットメントによる売出し株数 146,300株
吸収金額(調達額) 25.5億円
(※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
ブロックを追加