ファイナンス

【新規上場企業分析】Nextone(ネクストーン)のIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

Nextone(ネクストーン)の概要

Nextoneの基本情報

はじめに株式会社Nextoneの基本情報を紹介します。
上場日は2020年3月30日、市場はマザーズ、想定時価総額は57.9億円、上場時の時価総額は51.1億円でした。

会社名 株式会社 NexTone(ねくすとーん)
設立日 2000年9月29日
上場日 2020年3月30日(承認日:2020年2月25日)
市場 マザーズ
証券コード 7094
業種 サービス業
決算期 3月
ホームページアドレス https://www.nex-tone.co.jp/
発行済株式総数 2,704,000 株(2020年2月25日現在)
上場時発行済株式総数 3,079,000 株 
※公募分を含む。 
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 375,000 株
想定価格 1,880円
想定時価総額 57.9億円(※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 1,660円
上場時時価総額 51.1億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 330.4億円(2020年8月27日現在) 
資本金 1,113,000千円 (2020年2月25日現在) 
1単元の株式数 100 株
監査人 有限責任監査法人トーマツ
主幹事証券会社 SMBC日興証券
引受幹事証券会社 岡三証券
東海東京証券
SBI証券
マネックス証券

Nextoneの沿革

株式会社Nextoneは、2000年にイーライセンスとして東京都でタートしました。
音楽分野をメインとした著作権に関わる業務を行い著作権者のマネジメント業務を中心に運営しています。
また、Nextoneは、2020年3月に東証マザーズへ上場しました。

2000年9月 著作権管理事業を主たる目的とし、東京都港区南麻布3丁目にイーライセンス設立
2000年11月 旧“著作権仲介業務法”を廃法とし、“著作権等管理事業法”が国会で成立
2000年12月 著作権管理事業を主たる目的とし、JRC(資本金1,200万円、2016年2月1日付でイーライセンス と合併し消滅)設立
2001年9月 イーライセンスが100%子会社として代表出版及び管理代行を目的とした音楽出版社、株式会社エム シージェイピー(以下「MCJP」)設立
2001年10月 イーライセンスが“著作権等管理事業法”施行に伴い、民間管理事業者届出第1号として申請(受 理No.01005)(音楽著作権における支分権「録音権等」及び利用形態「インタラクティブ配信」の管理に限定)
JRCが“著作権等管理事業法”施行に伴い、著作権等管理事業者として届出(受理No.01011)(音楽著作権における支分権「録音権等」及び利用形態「インタラクティブ配信」の管理に限定)
2002年4月 複数管理事業者による著作権管理事業開始
イーライセンスが一般社団法人日本レコード協会と録音権を中心とした包括契約締結
2003年4月 MCJPが著作権と著作隣接権(原盤権)のワンストップサービス実施のため、DD(デジタルコン テンツディストリビューション)業務開始
2003年7月 イーライセンスがネットワーク音楽著作権連絡協議会とインタラクティブ配信(ストリーム配信) に関する包括契約締結(管理事業者間の按分処理実施)
2005年4月 イーライセンスが私的録音補償金について、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)経由で徴収開始(2003年4月1日に遡及し適用)
2005年9月 JRCがiTunes Music Store にて、日本人アーティスト・楽曲では初めてとなる「日本発全世界同 時配信」のコーディネート及び配信業務を開始
2006年4月 イーライセンスが複数管理事業開始後、民間管理事業者初の放送等新規支分権管理に参入
2006年7月 DD業務をMCJPからイーライセンスに移管し、DD業務を本格稼働
2006年10月 イーライセンスが日本放送協会及び日本民間放送連盟と放送に関する包括契約合意、放送/有線放送に関する利用許諾開始
2007年2月 JRCが100%子会社として株式会社JRCラボラトリーズ(2016年2月のイーライセンスとJRC の合併により株式会社NexToneラボラトリーズに商号変更、2018年4月に当社が吸収合併)設立
2007年4月 イーライセンスが出版権等・貸与権・業務用通信カラオケの管理開始
2009年7月 イーライセンスが著作権等管理事業法に定める非一任管理(録音・出版の商品化利用及び広告目的 利用)開始
2011年7月 イーライセンスが100%子会社として株式会社イーライセンスシステムズ(現:株式会社NexTone システムズ)設立
2012年1月 イーライセンスがレンタル用包括ビデオグラムの利用許諾開始
2012年4月 イーライセンスがキャスティング事業を開始
2012年10月 イーライセンスがインタラクティブ配信(ゲーム)の利用許諾開始
2013年9月 イーライセンスが主に東南アジアにおける著作権等管理事業を行うことを目的とするOne Asia Music Inc.(当初持株比率74.0%、2019年4月に保有株式の一部を譲渡し現在は10.0%に減少)を 台湾・台北に設立
2014年4月 イーライセンスが一般社団法人音楽電子事業協会と包括契約を締結し、業務用通信カラオケの利用許諾開始
2014年6月 イーライセンスがYouTubeにおけるコンテンツマネージメントサービス(ユーザー投稿動画のマネタイズと監視パトロールサービス)を開始
2015年3月 エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社(現:エイベックス株式会社、以下「エイベ ックス」)の100%子会社であるエイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社(以下「AMP)がイーライセンス発行済株式の16.8%を既存株主から取得し、エイベックスがイーライセン スを持分法適用関連会社化
2015年9月 AMPがイーライセンスの株式を追加取得し持株比率を34.4%とするとともに、JRCの発行済株式の46.6%を取得し、エイベックスがJRCを持分法適用関連会社化
2016年2月 イーライセンス(存続会社)とJRC(消滅会社)が合併、事業統合し株式会社NexTone発足
2016年5月 本店所在地を東京都渋谷区広尾一丁目1番39号 恵比寿プライムスクエアタワー20Fに移転
2017年4月 当社で著作権管理を行っている著作物の「著作権使用料分配実績上位3作品」の著作者及び音楽出 版社を表彰する「NexTone Award(ネクストーン・アワード)」を創設 (第1回”Gold Medal”受賞曲:スピッツ『渚』)
著作権管理事業において「イーライセンス事業本部」「JRC事業本部」の二事業本部を「事業本部」に統合
2017年8月 YouTubeにおける管理著作物の利用に関して「データエクスチェンジ機能に基づく利用許諾契約」 を、世界中の著作権等管理事業者の中でも最初期のタイミングでGoogle社と締結
2018年4月 100%子会社である株式会社NexToneラボラトリーズを吸収合併
2020年3月 東証マザーズへ上場

Nextoneの事業内容

Nextoneは、「権利者に選ばれ、利用者から支持される著作権管理事業者となる」を経営理念に掲げ、著作権や著作物利用に関するマネジメントを行う業務を運営する企業です。
音楽分野を中心とした、著作権の権利を持つ権利者と著作物を使用する使用者の間に立ち、著作権使用料の徴収や、その他権利者のバックアップを行うことがNextoneの主な業務です。

事業セグメントは、以下の3つに分類されており、主要な事業系統図は以下の通りです。

  1. 著作権等管理事業
  2. キャスティング事業
  3. その他 ネクストーン 事業系統

① 著作権等管理事業

著作権等管理事業は、著作権者と使用者の間に立ち、著作権者の代理人として著作権に関わる使用料の徴収や、著作権者の事業のサポートを行う事業セグメントです。

このセグメントの業務「著作権管理業務」「デジタルコンテンツディストリビューション業務」に分割されており、それぞれ著作権者のサポートを行う事業として機能しています。

  • 著作権管理業務
    著作権管理業務では、著作権者から委託を受けた音楽著作物の利用許諾の手続き代行や著作物使用料の徴収・分配業務などが行われています。
    著作権を保有する著作権者は、自ら著作権の管理を行う権利を保有していますが、自身で著作物の管理を行うことは煩雑な手続きが必要であり非効率であるといえます。
    そのため、一般的には、音楽分野において、著作権者は、著作権管理事業者に作品の登録・管理の代行を依頼します。
     また、著作権の利用者も、著作権を使用する際に、その都度、著作権者から使用許諾を得ることは、大変困難な作業です。
    一方で、著作権管理事業者が集中して著作物を管理した場合、一定の手続きと支払いを行うだけで自由に作品を利用できます。
    このようにNextoneは、著作権者、使用者双方がより公正かつ効率的に著作権を利用できるようにするための窓口としての業務をになっています。
  • デジタルコンテンツディストリビューション業務
    デジタルコンテンツディストリビューション業務は、著作権者の作品を、国内外の音楽配信プラットフォーム(YouTubeやSpotify、Apple musicなど)へ供給する事業です。
    この業務によって、著作権者は世界中の音楽や映像配信サービスへ手間なく作品を提供するだけでなく、世界中のユーザーに作品を提供することができるため、より多くの収益獲得につなげることができます。

② キャスティング事業

キャスティング事業は、キャスティング・コンサルティングとして、アーティスト稼働やライブへのユーザー招待、楽曲タイアップなどにおける音楽コンテンツの権利処理を行い著作権者などの活動をサポートする事業です。
例えば、企業がテレビCMなどでアーティストに楽曲提供やライブ出演を依頼する場合、楽曲の利用に関しての権利処理を行う必要があります。その際、アーティストに代わって楽曲の権利処理を行ったり、企業に対する企画提案を行う事業などがキャスティング事業の業務に該当します。
著作権者は、Nextoneに権利処理を依頼することで、煩雑な権利処理などの業務を自ら行う必要がなくなり、企業側はNextoneが著作権者との間に介在することでスムーズに企画を進めることができます。

③ その他事業

その他事業は、印税契約管理、許諾・配信管理、印税計算や関係権利者への分配など業務に特化したシステム開発をはじめとした、著作権業務に関わる作業を効率化させるための業務を行う事業セグメントです。
著作権業務に関わるデータ処理や計算などの作業は膨大であり、そのような業務を効率化させるため、このセグメントでは新たなシステムの開発が行われています。

有価証券報告書情報

連結の経営指標(過去3期分)

20期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:43.5億円(前年比+34.1%)
  • 経常利益:3.0億円(前年比+58.5%)
  • 当期純利益:1.9億円(前年比+47.8%)
第18期 第19期 第20期
決算年月 2018年3月 2019年3月 2020年3月 
売上高(百万円) 2,331 3,239 4,345
経常利益(百万円) 103 186 295
当期純利益(百万円) 61 129 191
純資産額(百万円) 1,209 1,343 2,120
総資産額(百万円) 2,645 3,135 4,246
自己資本比率 45.7% 42.7% 49.9%
営業キャッシュフロー(百万円) 295 530 927
投資キャッシュフロー(百万円) △157 △86 △231
財務キャッシュフロー(百万円) 321 △15 586
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 1,602 2,031 3,313
従業員数 57人 62人 63人

 

経営指標(過去5期分)

5期の業績を見ると、売上、利益とも右肩上がりの数値を計上しています。
特に、第16期にはマイナスであった純利益は第20期には1.9億円のプラスとなっています。
また、Nextoneは、2020年1月15日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っており、第20期の発行済株式総数は大幅に増加しています。

第16期 第17期 第18期 第19期 第20期
決算年月 2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月 2020年3月
売上高(千円) 1,172,755 1,604,432 2,331,899 3,239,801 4,345,481
経常利益(千円) 46,643 36,085 103,467 186,254 295,228
当期純利益(千円) △153,230 41,676 61,283 129,593 191,488
資本金(千円) 603,012 659,262 819,762 819,762 1,113,012
発行済株式総数 10,630 11,380 13,520 13,520 3,079,000
純資産額(千円) 638,939 793,115 1,209,269 1,343,632 2,120,821
総資産額(千円) 1,280,316 1,598,135 2,645,587 3,135,846 4,246,891
自己資本比率 49.9% 49.6% 45.7% 42.7% 49.9%
従業員数 35人 47人 57人 62人 63人

※第18期以降は連結の指標の数値を掲載しています。

セグメント別業績

第20期のセグメント別の売上実績は表の通りです。
売上構成比は以下の通りで、著作権等管理事業が全体の売上のほぼ9割を占めており、売上の伸長率も高くなっています。
一方で、キャスティング事業とその他事業は売上、利益とも落ち込んでいますが、全体としては前年比で増収増益となっています。

  • 著作権等管理事業:87.0%
  • キャスティング事業:10.6%
  • その他事業:2.4%
指標 全体 著作権等管理事業 キャスティング
事業
その他事業
売上高(百万円) 4,345 3,782 459 103
売上高前年同期比 134.1% 145.6% 94.3% 67.3%
営業利益(百万円) 305 688 36 17
営業利益前年同期比 167.5% 136.2% 50.7% 41.5%
経常利益(百万円) 295
当期純利益(百万円) 191

上場時の株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
エイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社 790,400 26.48 180日間
株式会社フェイス 300,000 10.05 180日間
株式会社アミューズ 300,000 10.05 180日間
株式会社JRCホールディングス 257,600 8.63 180日間
三野 明洋 246,200 8.25 180日間
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント 132,000 4.42 180日間
株式会社創通 118,000 3.95 180日間
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ 100,000 3.35 180日間
株式会社コーエーテクモゲームス 90,000 3.01 180日間
株式会社インターネットイニシアティブ 70,000 2.34

上場時(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

公募価格は1,700円、吸収金額(調達額)は18.1億円とされています。
また初値は、1,660円となりました。

仮条件 1,500円 ~ 1,700円
公募・売出価格 1,700円
想定価格 1,880円
初値 1,660円(公募価格比-2.4%)
公募株数 375,000 株
売出株数 550,700 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 138,800 株
吸収金額(調達額) 18.1億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
ブロックを追加