スタートアップ

スタートアップ企業が融資を受けるためには?おすすめの機関を紹介!

「会社を立ち上げたいけど、資金がない!」
「せっかく創業したのに、資金繰りが厳しい

スタートアップ企業の経営者の方で、このようにお悩みの方はいませんか?

創業段階やスタートアップ段階では、過去の信用実績に乏しいため、銀行へ行ってもなかなか融資をしてもらえませんよね。

近年はビジネスの多様化もあり、少ない資金で起業できるようになりましたが、事業を継続するためには会社の体力である資金が不可欠です。

そこで今回は、スタートアップ企業が融資(デッドファイナンス)を受ける方法やポイント、さらに融資以外の資金調達方法についても紹介します。

この記事を読んで、事業を軌道に乗せられるように危機を乗り切りましょう!

1.資金調達の基礎知識

まずは、企業における資金調達についての基礎知識をおさらいしましょう。

今回は、会社形態が株式会社であることを前提に話を進めます。

資金調達の方法は、大きく分けると①アセットファイナンス、②デットファイナンス、③エクイティファイナンス、の3種類に分類されます。

スタートアップにおける資本政策については、こちらの記事もご覧ください。

資金調達する前に絶対知っておくべき!スタートアップの資本政策のイロハ

(1)アセットファイナンス

アセットファイナンスとは、会社の保有する有形・無形の資産(Asset)を売却するなどの方法によって資金を調達する方法です。

例えば在庫を売却したり、債権を回収するなどの方法が挙げられます。

とはいえ、スタートアップ企業がこうした資産を保有しているケースは少ないため、デットファイナンスやエクイティファイナンスが用いられることがほとんどです。

(2)デットファイナンス

デットファイナンスとは、銀行からの借入や社債発行など、言わば借金(Debt)によって資金を調達する方法です。

これから起業する段階であっても信用さえ獲得することができれば資金調達できるため、最もスタートアップに向いた資金調達方法であるといえます。

また、株式を発行する場合とは異なり経営の独立性を保つことができるため、意思決定のスピード感を保つことができます。

今回の記事では、このデットファイナンスについて深く掘り下げて紹介していきます。

(3)エクイティファイナンス

エクイティファイナンスとは、株式の発行によって資金調達を行う方法です。

具体的には、第三者割当増資や新株予約権の発行、ベンチャーキャピタルからの出資などが挙げられます。

株式発行による資金調達という点では、株式会社制度が予定している本来の資金調達方法ともいうべき方法です。

第三者割当増資に関する詳細はこちらの記事で紹介しています。

ただし、スタートアップ期では株式の買い手を探すことが困難であるため、今回は簡単に触れる程度に留めます。

2.スタートアップは融資を受けづらい?

ここまでは、会社における資金調達方法について概観してきました。

スタートアップにおいて、最もハードルの低い資金調達方法は融資などのデットファイナンスです。

しかし融資をする側の銀行としては、過去の実績や信用に乏しいスタートアップには貸し渋りをせざるをえず、融資をする場合でも、融資額が低かったり高い金利を設定することがあります。

そのため、従来はなるべく創業者個人の自己資金のみをもって創業することが望ましいと考えられてきました。

しかし現在では、スタートアップ向けの融資制度が多数登場しており、資金調達のハードルは格段に下がったといえるでしょう。

3.スタートアップ向けの融資制度

それでは以下からは、スタートアップ向けの融資制度を具体的に紹介していきます。

先ほど述べたように、民間銀行はベンチャー企業に対する融資に消極的であることが多く、また、比較的金利が高いため、今回は政府系・自治体系の公的金融機関に絞って紹介します。

日本政策金融公庫と信用保証協会が取り扱う創業融資制度の場合、平成28年度には約26千企業に対して融資が実施されるなど、非常に積極的な融資が行われています。

こうした公的金融機関では、基本的には無担保で小口からの融資に対応してくれる場合が多いため、まずはこれらの機関へのご相談をおすすめします。

(1)日本政策金融公庫

日本政策金融公庫(日本公庫)とは、中小企業や個人事業主への支援を中心に行う政府系金融機関であり、国が100%出資しています。

政府系であることから比較的金利が安く、近年では若者・女性・シニアなど、起業家の特性に応じた様々な融資制度が準備されているため、ニーズに合った融資が可能です。

「新規開業資金」では、新規開業時や開業後7年程度までの企業を対象に、最大7,200万円までの融資を受けることができます。

「新創業融資」では、実績よりも事業の将来性が高く評価される点に特徴があります。

創業に必要な事業資金が最大3,000万円まで融資されるほか、担保や保証人が原則不要である点も嬉しいポイントです。

さらに、申し込みから1ヶ月程度、最短で2週間での融資が行われるという、スピード感の求められるスタートアップ企業にはうってつけの制度といえます。

一人で不安だ、という方は、専門家に相談してみるのがよいでしょう。税理士や会計士が金融機関の紹介をしてくれたり、サポートをしてくれたりしますので頼ってみてもよいかもしれません。

創業融資の支援を専門にしているところもあったりするので実績があると安心材料にもなります。

(2)自治体による融資

各都道府県や市区町村などの自治体によって、制度融資が設けられていることがあります。

実際に融資を行うのは金融機関ですが、自治体が窓口となり、利息の一部を補助するため、民間機関よりも金利の低い日本政策金融公庫よりもさらに低い金利(1%など)で融資が行われます。

一方、自治体・信用保証協会・金融機関など、仲介する期間が複数にのぼることから、申し込みから融資までには3ヶ月程度の時間がかかることがあります。

そのため、これから起業しようとしている場合など、比較的時間的猶予のある場合に適しているといえるでしょう。

非常に低金利で融資を受けられる制度ではありますが、その一方で経営者の連帯保証や、融資額に応じた自己資金を有することを求められる場合があり、制度は自治体によって様々です。

基本的には、会社の本店所在地として登記されている場所の自治体が管轄を有しているため、一度役所等へ問い合わせてみてはいかがでしょうか。

4.融資を受ける際の審査基準

ここまでは企業が資本調達を行う方法について、公的金融機関による融資を紹介してきました。

金融機関は、融資の可否や融資額を決定するための審査を行います。

以下からは、審査の際に対象となる3つの主な基準について紹介します。

先に述べたように、公的金融機関の場合には金利が低く、担保も不要である場合が多いことから、民間機関と比べると審査が厳しくなる傾向にあります。

また、面接が必要な場合があるなど、人的な要素にも審査が及ぶ点にも注意しておきましょう。

(1)自己資金

どれほど事業に展望のある場合であっても、自己資本比率が少なすぎる場合には審査で落とされる可能性があります。

求められる自己資本比率は事業内容や融資希望額によっても異なりますが、おおむね融資希望額の3割程度の自己資本は用意しておくと良いでしょう。

インターネットで検索すると、一時的に他の金融機関から借入をして自己資本の増加を行う「見せ金」を推奨しているサイトも散見されますが、出所不明の収入は明らかに不自然であり、かえって印象が悪くなります。

また、会社設立時の見せ金は法令で禁止されているため、絶対にやめましょう。

なお、親族や配偶者の預金や贈与を自己資金として申告することも可能です。

(2)経験信用

すでに起業後のスタートアップ企業であれば、過去の取引実績など企業自体の経験・信用も審査されます。

これから起業する場合には、発起人等のその事業分野での就業経験や、過去の起業経験の有無なども審査の対象です。

また、経営者個人の信用も審査されるため、過去に借入を焦げ付かせたり税金の滞納があったりする場合には融資を受けることが難しくなります。

通常、個人の預金通帳は過去6ヶ月分、借入焦げ付きなどの情報は過去5年間分を遡って審査されるため、一度審査に落ちた方は少し時間を開けて再度申請してみると良いでしょう。

(3)事業計画と返済能力

申請した事業で返済可能な利益が得られるのか、事業計画は適切に作成されているか、という観点からの審査が行われます。

融資の申請にあたっては事業計画書を提出する必要がありますが、納税予定額や取引見積なども詳しく審査されるため、不安な方は事前に税理士などの専門家へ作成を依頼しておくと良いでしょう。

また、事業の説明を面接で求められることがあります。

この際にあまりにも自信なさげに説明をしたり、担当者への態度が悪かったりすると、たとえ事業計画が素晴らしくても審査落ちしてしまうおそれがあります。

申請者は他にもたくさんいるなかで、「自分こそは成功するんだ!」という強い意気込みを伝える気持ちを心がけましょう。

スタートアップ企業の税理士選びのポイントについては、こちらでも紹介しています。

スタートアップ・起業家必見!税理士の正しい選び方のポイントと付き合い方

5.融資を受ける際の注意点2つ

ここまでは、スタートアップにおすすめな融資制度や借入の際のポイントなどを紹介してきました。

融資とは言わば借金であるため、返済が滞ると倒産という事態にもなりかねません。

実際に借入を行う際には以下の2つの点に十分注意しましょう。

(1)借入額と返済期限

融資を受けるにあたっては、適正な借入額と返済期限を設定するようにしましょう。

借入を行うと、当然、翌月から利息つきで返済をしなければなりません。

そのため、これから新商品を開発しようとする段階や、一定の研究期間を要するようなビジネスモデルの場合には、特に注意が必要です。

したがって、融資はあくまで資金調達の補助手段として捉え、なるべく融資に依存しないビジネスモデルを確立するようにしましょう。

(2)担保や保証人

通常、企業が借入を行う際には何らかの担保を供する必要があります。

一般の企業であれば、保有する土地や建物に抵当権を設定したりしますが、こうした資産を持たないスタートアップ企業の場合、これら物的担保を提供することは難しいと思います。

そのため、スタートアップ企業が融資を受ける場合には、保証人をつける人的担保が採用される場合があります。

しかし、例えば連帯保証人の場合では債務者よりも先に連帯保証人に対して返済の請求ができる(民法452条〜454条)など、保証契約は非常に複雑です。

したがって、保証人をつける場合にはその制度についてしっかりと理解するとともに、必ず専門家へ相談することをおすすめします。

保証人が見つからない場合には信用保証協会などの機関保証を用いることもできます。

6.融資以外の資金調達方法

最後に、金融機関等による融資以外の資金調達方法を3つ紹介します。

会社の資金調達にはいくつかの種類があることは最初にお伝えしましたが、近年ではクラウドファンディングなど、スタートアップならではの方法も登場しています。

これらの手段を組み合わせて資金を調達し、資本基盤を盤石なものにしていきましょう。

(1)ベンチャーキャピタルなどの出資

ここにいう出資とは、ベンチャーキャピタルなどから資金を調達する代わりに、見返りとして株式を発行することをいいます。

融資とは異なり、原則として返済の必要がなく、担保や保証人をつけなくとも数億円単位での出資を受けられる場合もあります。

一方、出資者としては、いずれ会社が大きくなったのちに株式を売却することによって利益を出すことを目的としているため、株主としての権利として経営への口出しをしてくる場合があります。

そのため、どのくらいの株式を発行するのか、売却価格はいくらにするのか等、高度な経営判断が求められるケースが多く、完全に自力で交渉等をすることはおすすめできません。

出資のスタンダードとなりつつある第三者割当増資については、こちらでも詳しく解説しています!

スタートアップ資金調達のデファクトスタンダードである第三者割当増資の総まとめ

(2)補助金や助成金

国や地方自治体がスタートアップ向けの補助金や助成金制度を整備していることがあります。

融資の場合とは異なり、これらの制度では原則として返済がなく、株式を交付する必要もありません。

実施自治体によって制度の内容は大きく異なりますが、一般的には公募機関が決まっている上、申請には手間と時間がかかります。

とはいえ融資や出資に比べると企業の負担が小さいため、本店所在地の自治体へ一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。

(3)クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネット上の仲介サイトを通じ、ビジネスやサービスのアイデアに出資を求めることができるサービスです。

出資の見返りとして、実際に完成したプロダクトを出資者に届ける「購入型」と、匿名組合契約を締結して契約期間中の利益の一部を配分する「投資型」があります。

一般的なクラウドファンディングのイメージとしては前者の購入型だと思いますが、この場合には継続的なビジネスモデルよりも、単発的な商品開発やアイデアの実現に向いているといえます。

購入型の場合、出資者がそのままユーザーとなるため開発段階から市場ニーズを把握できるとともに、資金と顧客を同時に獲得することができます。

クラウドファンディングは一定期間内に目的金額(または人数)が集まらなかった場合には一切資金を受け取ることができないため、すでにサービスをスタートしている場合などに経営のあてにすることには危険が伴います。

7.まとめ

この記事ではスタートアップが融資を受ける方法や、その他の資金調達方法などについて紹介しました。

今回は公的金融機関に絞って紹介しましたが、現在は民間金融機関でもスタートアップ向けの低金利・無担保の融資制度が多く作られています。

また、こうした金融機関や投資機関を紹介してくれるマッチング企業も多数登場しており、以前と比べるとスタートアップの資金調達手段は格段に増えています。

これらの機関を利用し、創業期を乗り越えていきましょう。

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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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