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【上場企業決算分析】フィードフォース(Feedforce)の最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

株式会社フィードフォースは、「データフィード」という仕組みを利用し、顧客企業の広告運用をサポートする事業や、広告運用ツールの提供を企業向けに行うBtoB企業です。

2006年に東京都で創業し、2019年にマザーズへ上場しました。
また、2020年にはリスティング広告事業を主軸として行うアナグラム株式会社を子会社化しています。

①フィードフォースの決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年5月(実績) 19年5月(実績) 前年比 20年5月(計画) 計画比
売上高 1,526 700 +118.0% 989 +54.3%
売上総利益 1,002 415 +141.4%
営業利益 415 45 +822.2 235 +76.6%
経常利益 371 34 991.2%
当期純利益 257 43 +497.7 161 +59.6%

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、5期にわたるフィードフォースの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年5月期の通期の売上高は15.3億円、営業利益は4.2億円であり、営業利益率は27.2%です。

営業利益率推移

※2020年5月期のみ連結の業績指標となります。

①-3 連結の経営指標

2020年5月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:15.3億円(前年比+118.0%
  • 経常利益:3.7億円(前年比+991.2%)
  • 当期純利益:1.6億円(前年比+279.1%)
決算年月 2019年5月期
2020年5月期
売上高(百万円) 700 1,526
経常利益(百万円) 34 371
当期純利益(百万円) 43 163
純資産額(百万円) 97 1,829
総資産額(百万円) 470 5,219
自己資本比率 20.7% 18.3%
営業キャッシュフロー(百万円) △8 424
投資キャッシュフロー(百万円) △7 △232
財務キャッシュフロー(百万円) 11 1,811
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 180 2,183

※2020年5月期は連結の業績指標となります。

4Q業績ハイライト (2020年5月期)

以下は、2020年5月期の業績を4Qに分けた指標です。
アナグラム株式会社を連結子会社化した影響で2Q目と3Q目の間に全ての指標が大きく増加しています。

期間 2020年5月期
1Q
2020年5月期
2Q
2020年5月期
3Q
2020年5月期
4Q
売上高(百万円) 217 227 474 607
粗利益(百万円) 134 144 318 407
販管費(百万円) 101 97 176 210
営業利益(百万円) 32 45 140 197
従業員数 79 129

※2020年5月期3Q,4Qは連結の指標です。

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は4.6倍の増加をしています。
一方、利益に関しては、2018年5月期まで赤字であったものの、2019年5月期からは黒字に転じていることがわかります。

決算年月(百万円) 2016年5月 2017年5月 2018年5月 2019年5月 2020年5月
売上高 332 486 562 700 1,526
経常利益 -72 -31 -28 34 371
当期純利益 -42 -32 -28 43 163
純資産額 83 54 97 1,829
総資産額 422 345 470 5,219
自己資本比率 19.67% 15.65% 20.64% 18.34%

※2020年5月期のみ連結の業績指標となります。

②フィードフォースの事業内容

②-1 フィードフォースとは?

フィードフォースは「「働く」を豊かにする。」をミッションとして掲げ、広告運用のビジネスを中心に事業を展開しています。

事業セグメントとしては、対企業向けにインターネット上での広告運用の提案や改善を行う「プロフェッショナルサービス事業」、企業がより効果的かつ効率的に広告運用を行うことができるようなツールを提供する「SaaS事業」の2軸で展開されています。

プロフェッショナルサービス事業では、広告主が持つデータを広告へ反映させることや、広告主がより効果的に広告を運用できるように適切な媒体へ広告を流すことなどに焦点が当てられています。

一方、SaaS事業は顧客企業にシステムを提供することで、企業が自分自身でより効率的に広告の運用改善や運用管理ができるようにすることに焦点を当てたサービスです。

サービスを図式化した表は以下の通りです。
フィードフォースのビジネスモデル

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

前述の通り、フィードフォースの事業を2つに大別すると、プロフェッショナルサービス事業とSaaS事業に分けられます。
顧客企業の広告の運用代行や改善を行う事業がプロフェッショナルサービス事業に分類され、顧客に広告運用システムを提供する事業がSaaS事業に分類されます。
以下で、それぞれのセグメントについての詳細を説明します。

プロフェッショナルサービス事業

プロフェッショナルサービス事業では、企業の広告運用をサポートする事業です。
このような、広告の運用代行や運用改善を行う会社は多数存在しますが、フィードフォースのプロフェッショナルサービス事業で特徴的な点は、「データフィード」という仕組みを採用している点です。
「データフィード」とは、インターネット上で、広告主の商品データなどの更新データを受信先であるニュースメディアや比較サイト、検索エンジンなどへ定期的に送受信する仕組みです。
この仕組みを採用することで、広告主はメディアや検索エンジンへ、自社の在庫状況などをデータとして反映させた広告を効果的に運用することが可能です。
データフィード広告

  • ANAGRAMS
    2020年1月にフィードフォースがグループ会社化したアナグラムが手掛ける広告サービスです。
    検索エンジンによって検索された検索ワードと連動する「リスティング広告」とSNSを媒体とする「SNS広告」の運用代行を行っています。
    また、広告運用代行で蓄積した知見やノウハウを生かし、企業のマーケティング支援なども行います。アナグラム
  • feedmatic
    feedmaticは、企業のダイナミック広告によるマーケティングをサポートする事業です。
    ダイナミック広告は、ユーザーのインターネット上の閲覧状況に応じて広告が自動生成されるタイプの広告であり、ユーザーの興味・関心を反映した広告を効率よく、効果的に配信することができます。
  • DE PLUS
    DE PLUSは、データフィールド広告の運用を企業に代わって代行するサービスです。
    前述した通り、データフィールド広告は企業の商品データを定期的に受信し、そのデータに基づいた広告を配信します。
    その際、商品データが反映された広告を効果的、効率的にユーザーへ届けるためには、広告を適切なメディアや検索エンジンに配信する必要があります。
    このように、データフィールド広告を適切な媒体へ振り分けるための運用管理の代行をDE PLUSでは行っています。DF PLUS

SaaS事業

SaaS事業は、企業が広告運用を行う上で使用するシステムの提供を行う事業です。

  • EC Booster
    EC Boosterは、EC企業向けに商品の広告効果を高めることを目的としたサービスです。このシステムを利用することでEC企業は自社のECシステムをGoogleへ繋ぎ込み、自動的にGoogle上でショッピング広告を運用できます。
    Googleは、現在世界最大の検索エンジンであり、莫大な数のユーザーが利用している検索エンジンです。
    EC Boosterは、Googleの莫大なユーザー規模へ着目し、Googleの検索結果から直接企業のECサイトへ誘導することを可能としたサービスとなっています。
    EC Boosterを導入することで、EC企業は、自社の商品への関心度合いが高いGoogleユーザーを効果的にECサイトまで誘導することができます。
  • df plus.io
    df plus.ioは、データフィード広告のパフォーマンスを高めるための統合管理ツールです。
    このツールを利用することで、エンジニアや外注企業が行うような高度なデータフィード広告の運用管理を、専門的な知識がない担当者でも運用することができます。
  • social plus
    social plusは、検索エンジンやSNSなどのアカウントを活用したソーシャルログイン機能を利用して効果的な広告配信を可能としたサービスです。
    例えば、企業が運営するLINEなどを友達追加すると、定期的に広告やクーポンなどが配信されます。
    また、送付されたデータにアクセスして、LINE経由で商品の注文をしたり、送付されたクーポンは多くのユーザーに利用されています。
    そして、そのようなサービスはsocial plusのようなシステムで運用されているのです。
    フィードフォースのsocial plusの企業顧客も、LINEとの連携のためにsocial plusを利用する顧客が多く、広告費用を削減や売上アップのために多くの企業で導入されています。

②-3 売上構成比/サービス別売上の比較

売上の構成比に着目して、2019年5月期4Qから2020年5月期のクォーター別の売上高を見ていきます。
売上を構成するセグメントについては前述した通りです。
2020年5月期3Q目からアナグラム株式会社をグループ化した影響で全体の売上が大きく伸長しています。

セグメント別の売上

 

※2020年5月期3Qと4Qは連結の指標です。

また、以下の図は2019年5月期におけるサービス別の売上と2020年5月期サービス別の売上を比較したグラフです。
Df PLUS以外のサービスの売上は前期と比較して上昇傾向にあります。
なお、Anagramsは2019年5月期の時点では連結子会社化されていなかったため、2020年5月期の指標のみ示しています。

 

セグメント別の推移 フィードフォース
※2020年5月期は連結の指標です。

③フィードフォースの主要KPIとその数値推移

③-1 サービス別利用者数の推移

以下のグラフは、過去4年にわたるフィードフォースのサービス利用者数をサービス別に表したグラフです。
2018年5月期からサービスの提供が開始されているEC Boosterは、2020年5月期現在、最も多くの顧客数を持つサービスです。
また、上で示した売上構成比やセグメント別の売上を示したグラフと比較すると、顧客件数と売上高は比例せず、2020年5月期に顧客数が4番目のAnagramsが、売上構成では最も高い売上比率です。逆に、最も多くの顧客数を持つEC Boosterは、主要サービスの中で最も低い売上比率となっています。

 

件数の推移
※2020年5月期は連結の指標です。

③-2 新型コロナウイルス感染症拡大の影響

以下の図は、新型コロナウイルスの直近の影響と2021年5月期の見通しを示している図です。広告出稿を中心に大きな影響が出ているものの、21年下半期には従来の水準まで回復するという予測がなされています。

コロナウイルスの影響

 

④フィードフォースのコスト構造

④-1 フィードフォースの販売管理費

以下の図は、フィードフォースの販売管理費の内訳を示したグラフです。
コストの部分でも、2020年5月期3Qにアナグラムを子会社化した影響が顕著に現れています。

フィードフォース コスト構造

 

④-2 フィードフォースの営業利益の推移

以下の図は、フィードフォースの営業利益の推移と粗利益、販管費の関係性を表したグラフです。
アナグラムの子会社化を境目に全ての指標が増加しています。
ただし、粗利益や営業利益の増加と比較すると、販管費の増加が緩やかです。
このことから、アナグラムの子会社化は、比較的低コストで大幅な収益の増加に繋がったことが推測できます。

フィードフォースの営利、粗利、販管費

※2020年5月期3Q,4Qは連結の指標です。

⑤フィードフォースの投資領域

⑤-1 アナグラム株式会社の連結子会社化

フィードフォースは、2020年1月にインターネット広告分野におけるサービス領域と顧客拡大を目的にアナグラムを連結子会社化しました。
前述した通り、アナグラムはリスティング広告をコアバリューとしており、フィードフォースのコアバリューであるデータフィード広告と技術やノウハウを共有することでより幅広いサービスを顧客へ提供することができます。
また、アナグラムの子会社化により、フィードフォースの売上や利益の数値は2020年5月期3Q目を境に大幅な増加を見せています。
以下が、アナグラムの連結子会社化に関する記事の詳細です。
2020年1月のアナグラム連結子会社化に関する記事

 

アナグラムの連結子会社化

 

⑤-2 今後の事業への先行投資

フィードフォースは、EC支援とDX(デジタルトランスフォーメーション)事業の強化を打ち出しています。
EC支援の領域では、既存のSaaS事業で提供しているサービスをShopifyと連携させる予定です。また、D2C分野において、既存のSaaS事業サービスとは別に新サービスを立ち上げる方針を打ち出しています。
一方、DX支援事業の強化としては、既存の広告運用サービスにセールスフォースやGoogleアナリティクスなどのデータを組み合わせ、効果的な広告運用だけでなく企業がよりデータ資産として管理・運用できるようなサービスの開発を目指しています。
DXとは、企業がデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革させ競争上の優位性を確立するという意味です。
2021年5月期には、EC領域とDX領域へ5000万円規模の投資を行う予定であることを表明しています。

フィードフォースの投資領域

 

⑥フィードフォースの株価・時価総額推移

以下の図は、フィードフォースの株価の変化を表したグラフです。

フィードフォース株価

フィードフォースの2020年8月3日時点の株価は4,125円、時価総額は232.6億円です。
2020年5月期の通期の営業利益4.2億円に対して55.4倍という評価を受けている計算となります。

⑦フィードフォースの会社情報

まずはフィードフォースの基本情報を紹介します。
市場はマザーズで、決算月は毎年5月です。

フィードフォースの基本情報

会社名 株式会社フィードフォース
設立日 2006年3月23日
市場 マザーズ
証券コード 7068
業種 サービス業
決算期 5月
ホームページアドレス https://www.feedforce.jp/
発行済株式総数 5,638,600(株)
普通株式数 5,638,600(株)
資本金 44,800,000円(2020年5月現在)
1単元の株式数 100(株)
従業員数 73人
平均年齢 31.2歳
平均年収 5,464,000 円

 

フィードフォースの沿革

フィードフォースは2006年3月に東京都で設立され、2019年7月にマザーズへの上場を果たしました。

2006年3月 会社設立(東京都千代田区麹町)
RSS統合管理ツール 「RSS Suite」リリース
2008年7月 SEO集客ソリューション 「Contents Feeder」リリース
2012年4月 「ソーシャルPLUS」リリース
2012年10月 「DF PLUS」リリース
2014年11月 「Feedmatic」をリリース
2016年8月 「ソーシャルPLUS」LINE連携スタート
2016年12月 「dfplus.io」リリース
2018年3月 「EC Booster」リリース
2019年7月 東証マザーズ上場
2019年11月 株式会社unknown関連会社化
2020年1月 アナグラム株式会社グループジョイン

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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