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注目される「東京プロマーケット」(通称プロマ)上場について徹底解剖

東京プロマーケットをご存じでしょうか。日本の株式市場には、東証1部、マザーズやJASDAQなどの市場がありますが、東京プロマーケットは、これらの株式市場とはどう違うのでしょうか。以下では、東京プロマーケットについて、詳しくみていきましょう。

1.東京プロマーケットとは

東京証券取引所が運営する「プロ向け市場制度」

東京プロマーケットの母体であったTOKYO AIM は、2008年の改正金融商品取引法により導入された「プロ向け市場制度」に基づき、東京証券取引所とロンドン証券取引所の共同出資により2009年に創設されました。

東京プロマーケットは、TOKYO AIMの市場コンセプトを継承し、2012年からは東京証券取引所が運営を行っている市場です。

いわゆる「プロ投資家」のみの市場

東京プロマーケットが他の株式市場と異なる点は、市場で直接買付けが可能な投資家が「特定投資家等」に限られているという点でしょう。東京プロマーケットは、「特定取引所金融商品市場(いわゆる「プロ向け市場」)」のうち、株券等の市場になっています。そのため、「特定投資家等(いわゆる「プロ投資家」)」を除く、一般投資家の買付けが禁止されています。(ただし、一般投資家が株式の「売却」をすることは可能です。)

ここで、「特定投資家等」とは、何でしょうか。

「特定投資家等」は、特定投資家と一定の非居住者に分類されます。さらに、特定投資家は、法令によって特定投資家として定義される者と、一定の条件を満たした上で、証券会社に届け出ることで特定投資家に移行することのできる投資家(いわゆる「みなし」特定投資家)に分類されています。

具体的に、「特定投資家」は、金融機関や国、日本銀行などが該当し、みなし特定投資家には、上場企業などが該当します。

2.新規上場するには

J-Adviser 制度による手続き

次に、東京プロマーケットに新規上場するためには、どういった手続きが必要となるのでしょうか。

一番の特徴は、上場基準に「数値基準がない」という点でしょう。これが、他の株式市場とは大きく異なる点です。

東京プロマーケットは、ロンドン証券取引所の開設する AIM 市場の制度を参考とする「J-Adviser 制度」を採用しています。J-Adviser 制度とは、一定の資格要件を満たし、資格を認証したJ-Adviserに対して、東京証券取引所が業務を委託するという制度です。

J-Adviser=主幹事証券

J-Adviserとはどのような主体なのでしょうか。

2020年6月現在、野村証券などの証券会社や日本M&Aセンター、宝印刷など、合計11社が存在しています。この11社と契約することで上場への手続きを進めることができます。

(J-Adviser一覧)
https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/02-01.html

新規上場は、その会社が契約している J-Adviserを通して行われます。具体的には、会社が上場適格性を有しているかどうかについて、J-Adviser があらかじめ調査・確認を行った上で、J-Adviser による「上場適格性に係る申請書」と会社による「有価証券新規上場申請書」などの新規上場申請書類を、J-Adviser を通して東京証券取引所に提出します。

上場申請が受け付けられると、その旨が公表され、原則として上場申請から10営業日後に上場を承認するという流れになっています。

3.東京プロマーケットのメリットとデメリット

プロマ上場のメリット

株式上場には多くのメリットがありますが、東京プロマーケットに上場するメリットは何でしょうか。

大きくは3つあげられます。

  1. 上場までの準備期間が短い
  2. コストも抑えられる
  3. 上場企業としての信用が得られる

①上場までの準備期間が短い

東証やマザーズなどの株式市場での上場には、一般的に3年はかかると言われています。これは、上場審査にあたって2期分の監査証明が必要となるためです。しかし、東京プロマーケットにはそのような基準がなく、形式要件などの数値基準もないため、上場までの準備期間が短くなることがメリットとなります。

②コストも抑えられる

上場準備期間中は、監査法人との契約や主幹事証券会社との契約、専門の弁護士への依頼など巻き込む関係者が増えることでコストが増大します。一般的には数億円かかるともいわれます。

他方、東京プロマーケットであれば、準備期間が短い分、上記専門家などに依頼する期間が短くなるため、相対的に上場にかかるコストも抑えることが可能となります。

③上場企業としての信用が得られる

また、なんと言っても、上場することの最大のメリットは信用を得られることでしょう。

上場することで会社の信用が上がり、ビジネスが加速したり、会社の内部体制を整えたりすることができるというメリットもあります。さらに、東京プロマーケットへの上場をマザーズやJASDAQなど他の株式上場への準備ととらえることもできるでしょう。

実際、東京プロマーケットに上場していた株式会社global bridge HOLDINGは、後にマザーズへ上場しており、株式会社歯愛メディカルは、JASDAQへの上場を果たしています。

プロマ上場のデメリット

一方、東京プロマーケットにおけるデメリットはどういった点にあるのでしょうか。

やはり、プロ投資家のみが参加できる市場ということがあげられます。投資家が制限されているため、市場の流動性が低く、資金の流動性が下がることがデメリットとなりえるでしょう。

4.東京プロマーケットにおける資金調達

上記のように、東京プロマーケットはプロ投資家の市場のため、他の株式市場に比べると流動性が低いと言われています。

しかし、実際には、東京プロマーケット上場企業の多くは、上場の前後に会社関係者、取引先、個人投資家を含むベンチャーキャピタルなどに対する第三者割当増資によって資金調達を行っています。

上場というイベントにより、第三者割当増資による資金調達が活性化するという側面があるといえるでしょう。

また、東京プロマーケットに上場可能な有価証券は、普通株式だけでなく、種類株式、新株予約権、信託受益証券など様々な形態が可能となっています。

種類株式発行により、剰余金の配当などに関する優先株式や議決権制限株式などを発行することが可能になります。また新株予約権は、将来行使することにより株式の交付を受けることができる権利ですが、新株予約権を発行することにより、借入に頼らない資金調達をすることが可能となるでしょう。

最近では、Restricted Stockなどといわれる譲渡制限株式を活用することで役員や従業員へのインセンティブプランとして機能させることもできるようになります。

5.最近の上場事例

最後に、東京プロマーケットには実際にどのような会社が上場しているのでしょうか。最近の事例をみていきましょう。

株式会社Kips

2019年9月に上場した会社に、株式会社Kipsがあります。この会社は、株式会社インディペンデンツが社名変更した会社で、自己資本での直接投資や投資ファンドへの出資を行うことにより、ベンチャー企業を支援する事業を行っています。

株式会社エージェント

2020年4月に上場した会社に、株式会社エージェントがあります。エージェントは、2004年に設立された総合人材サービスの会社です。主な事業領域は3つあり、アウトソーシング・人材派遣サービスを行うプロダクション事業領域、個人の教育研修・就業支援・人材紹介サービスを行うキャリア事業領域、個人事業主やフリーランスによる代行サービスを行うパートナー事業領域となっています。

C channel株式会社

2020年5月に上場した会社にC channelがあります。C channelは、アパレルなどの販売を行うEC事業を中心に、動画メディアなどのメディア事業も行う会社です。C channelの筆頭株主はソフトバンクで、その他VC(ベンチャーキャピタル)などから、上場前より多額の資金調達を行ってきました。このように、多額の資金調達を行ってきたスタートアップ企業が東京プロマーケットへ上場することは異例であるため、注目されています。

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