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意匠法とは|条文の内容や解釈をわかりやすい言葉に直して解説!

意匠法について知りたいけれど、条文の内容が複雑すぎてついていけない人はいませんか?

意匠法は全部で77条まであり、どれも内容がとっつきにくいものばかりです。

ネットで条文や言葉の意味を調べてもさらに意味がわからない…そんなあなたのために、この記事では弁護士監修のもと、意匠法の条文の内容をわかりやすい言葉に直して解説しています。

意匠法の条文を理解したいけど出来ずにいる方は是非読んでくださいね。

意匠権について

それでは実際に、意匠法の内容の中で、特に重要(覚えておいた方がいい)なものについて説明していきます。

法律の条文はそのままだと非常に読みにくいうえに内容をイメージしにくいので、弁護士監修のもと、わかりやすい文章に置き換えて説明しておきます。

第1条:意匠法が作られた目的

条文には「意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与するため」とあります。

つまりこれは、「デザイン及びデザイナーの権利を保護することで、応援し、産業の発展を目指すため」といったような意味になります。

すぐれたデザイナーがいたとしても、その作品を誰かが真似して作品を出したりしてしまうと、そのデザイナーの収入が減ってしまったり、その分野で成功を収めたりするのが難しくなります。

これは、周りまわって、最終的には日本の産業の衰退にも繋がってきます。デザイナーやその作品を保護し、応援することで日本の産業を盛り上げる、これが意匠権が作られた目的です。

第2条:意匠の定義

「意匠にあてはまるものはどんなものか?」に関する条文です。

  • 物品の形状
  • 物品の模様・色彩
  • 画像
  • 建築物

上記にあてはまるもので、「視覚を通じて美観を起こさせるもの」が該当するようです。デザインに関する権利という点で、「著作権」とよく混同されます。

  • 著作権→絵や音楽など芸術に関する1点物
  • 意匠権→車や家電、部品などの工業利用が可能なもの

登録が認められるには他にいくつかの条件がありますので、この後説明していきます。

第3条:意匠登録が認められるための要件

意匠として認められるために必要な要件が記載されているので一つずつ説明していきます。条文としては、「以下に当てはまるものでなければ、登録を認めますよ」というような表現になっています。内容は以下の通り。

  1. 出願前に国内外で有名になってしまった意匠
  2. 出願間に国内外で本やネットを通じて皆が利用できるようになった意匠
  3.  ①②に類似する意匠

つまり、すでに公然に知られてしまったり、利用が可能になってしまったものに関しては意匠登録することができません。

第6条:意匠登録の出願方法

第6条では意匠の出願方法について記載されています。具体的には、以下のものを特許庁長官に提出しなければなりません。

意匠登録願には、【意匠登録出願人と住所】【意匠を創作した者の氏名と住所】【意匠に係る物品】【図面】を添付する必要があります。

その他、出願の種類によっては記載事項が変わってくるので注意が必要になります。

第8条:組物の意匠

2つ以上の物品を同時に使用することが想定される物のことを「組物」といいます。組物全体として統一感がある場合には、「1つの意匠」として登録が認められます。

例えばですが、斬新な布団と枕のセットがあったとします。これを布団と枕セットで一つの意匠として登録を認めることになります(経済産業省令で定める組物の意匠に該当する必要があります)

必ずしも組物として認められるわけではないので、認められなかった場合には分割して一品づつ出願していくことになります。

第10条:関連意匠

すでに出願している意匠に似ている意匠に関しては、「関連意匠」として登録を受けることができます。関連する意匠を合わせて登録することで、類似品を他社に作られてしまわないようにします。

意匠の出願人は、「①自己の意匠登録出願に係る意匠」または「②すでに登録されている意匠の中から選択した1つの意匠」については類似する意匠として登録を受けることができます。その他の条件は以下の通りです。

  1. 元となる意匠の出願日以降であること
  2. 元となる意匠の出願日から10年経過日前である場合

第14条:秘密意匠

意匠の出願には、登録の日から3年以内の期間であれば、その意匠が登録されているという事実を秘密にすることができます。

例えば、発売日が未定の製品でも、意匠登録をしておかなければ他社が先に似たようなものを発売してしまうかもしれません。しかし、意匠登録をしてしまえばその内容が公開されてしまいます。

「意匠登録もしつつ、その内容を世間に知られたくない」そんなニーズを満たすために秘密意匠は存在しています。

第16・17・18条:審査について

第16条

意匠登録の出願があった場合、特許庁長官は、審査官にその内容を審査させなければいけません。

第17条

また、審査官は下記に当てはまる場合には出願の内容について拒絶をしなければなりません。

  • すでにみんなが知っている意匠である場合
  • 公序良俗に反する場合
  • 他人の業務に係る、もしくは混同してしまいそうな意匠の場合
  • 先に他の人が出願してしまった意匠の場合
  • 条約の規定により意匠登録を出来ない場合
  • 意匠法第7条の要件を満たしていない場合
  • 出願人が登録を受ける権利を有して以内場合

第18条

審査官は、出願について、拒絶の理由を発見しない場合には、登録をすべきという査定をしなければなりません。

第21条:存続期間について

意匠権の存続期間についてです。意匠権は登録出願の日から25年で消失します。関連意匠についても、元となる意匠が出願された日から25年を持って終了します。

第23条:意匠権の効力について

意匠権を持つ者は、業務として意匠登録をする、またはこれに類似する意匠の実施をする権利を独占することができます。

ただし、その意匠権について、「専用実施権者」など、意匠権者と同等に近い権利を持つものが、意匠の実施を専有する範囲においては、この限りではありません。

専用実施権とは特許法77条で定められており、特許権を持つのとほぼ変わらないような強い権利を持っている状態になります。

第24条:登録意匠の範囲について

登録意匠の範囲についての説明です。

意匠の範囲は出願書や添付書類に記された図面や見本などによって発表されたデザインに基づいて定めなければなりません。

登録する意匠とそれ以外の意匠が似ているかどうかの判断は、購入者やファンの感覚(需要者)に基づいて行います。

第28条:通常実施権について

先ほど、「専用実施権者」について触れましたが、こちらは通常実施権者に関する条文です。

意匠の権利を持つ者は、他人に「通常実施権」を許諾することが出来ます。

通常実施権者は、業務としてその意匠、またはこれに類似する意匠を実施する権利を持ちます。専用実施権者との違いは、特許庁への登録の有無や、権利を侵害された場合の差し止め請求などを行える権利の有無の違いなどがあります。

権利侵害について

以降では、意匠権を侵害された場合の法律に関する条文を解説していきます。

第37条:差し止め請求

意匠権者、専用実施権者(通常実施権者を除く)は、自身が持つ権利を侵害された場合、または侵害するおそれがある者に対して、それをやめるように請求することができます。

権利者は、権利を侵害するのに使われた物品・建築物・画像・データを記録した媒体などの廃棄や、製造に利用した設備の廃棄など、権利侵害を予防するのに必要な行為を請求することができます。

第39条:損害額の計算方法

意匠権者・または専用実施権者が、故意または過失ににより自身の権利を侵害した者に対し損害賠償を請求する場合、その者が該当する物品を他人に売る・譲るなどした場合は、以下で説明するものの合計を、損害額として計算することができます。

→意匠権侵害がなければ販売できた物品の数量の額に、侵害者が売る・渡すなどした物品の数量のうち、権利者の実績に応じた数量を超えない数量を乗じた部分

※侵害額の計算方法は他にもいくつかありますが、条文が長く、読んでもわかりにくい部分が多いです。気になる人はこちらから確認してみましょう。

登録料について

続いて、登録料に関する条文を読み解いていきます。

第42条:登録料について

意匠権の登録を受ける者、また、すでに登録を受けている者は、登録料として期間満了まで、毎年1件ごとに、以下の料金を支払わなければなりません。

  • 1年~3年→8,500円
  • 4年~25年→16,900円

登録料の納付は、特許印紙を使って行います。ただし、経済産業省令で定める場合には、現金で納めることができます。

第43条:登録料の納付期限

最初の1年分の登録料は、意匠登録をすべきという査定が出てから30日以内に納めなければなりません。2年後以降の登録料は、前年のうちに納付しなければなりません。

審判について

次に、意匠登録に関する審判についての条文を説明します。

第46条:審査の内容に対する不服申し立て

登録審査で「拒絶すべき」との査定を受けた場合、その査定に不服がある場合、3か月以外であれば拒絶査定の審判を申し立てることができます。

審判を申し立てるものがやむを得ない事情で期限内に申し立てができないとき、そのやむを得ない事情がなくなってから14日以内で、その期間の経過後6月以内にその請求をすることが出来ます。

第47条:補正却下決定不服審判の申し立て

審査に関して、却下を決定を受けた場合、その決定に納得が出来ない場合、3ヶ月以内であれば補正却下不服審判を請求することができます。ただし、新たな意匠登録出願をした場合はこれに限りません。

罰則について

最後に、侵害などを行った場合の罰則についての条文を解説していきます。

第69条:侵害の罪

意匠権者・専用実施権者の権利を侵害・または侵害したとみなされる行為を行った者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処します。

第77条:書類や提出物の提出を拒否した場合

証拠やその保全に関し、この法律の規定により特許庁または裁判所から書類や提出物の提出や提示を求めらられたにも関わらず、正当な理由なくその命令に従わなかった場合には10万円以下の科料に処します。

まとめ

いかがでしたか?意匠法の条文の中でも覚えておいた方がいいものを、弁護士監修のもと、できるだけわかりやすい言葉に直して解説しました。

条文を読んでみたらなんとなくお分かりかと思いますが、意匠法は非常に多岐に渡り、慣れていない人には難しいことばかりです。

意匠の出願や他社とのトラブル、その他の疑問やお困りごとがあるときは弁護士に相談しましょう。ダラダラと困り続けてしまうくらいなら、専門家のサポートを受けてすぐに解決してしまいましょう。

ABOUT ME
浜北 和真
2017年から法律ライティングをはじめ、2019年から「スタートアップドライブ」「債務整理note」をはじめとした複数の法律メディアでコンテンツディレクターとしてコラム制作を監修。主に離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意分野。制作・監修コラムはゆうに3000を超える。
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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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