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薬機法の広告基準とは?景品表示法や健康増進法についても解説!

「薬機法って何?」
「広告への規制は?どんな表現ならセーフなの?」

美容や健康に関するサービスに携わっていて、薬機法という言葉を聞いたことはありませんか?

法律自体は検索すればすぐに出てきますが、実際にどのような表現や広告が規制の対象となるのか判断が難しいですよね。

そこで今回は、健康食品等のサービスに関わる人に向けて、薬機法の概要と、具体的な規制内容について紹介しています。

また薬機法以外にも、広告規制に関する景品表示法や健康増進法などにも言及します。

この記事を読めば、法規制をクリアしつつ訴求力のある表現を書けるようになりますよ!

1.薬機法とは?

まずは、薬機法の概要について紹介します。

薬機法(正式には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)は、日本における医薬品や医薬部外品、化粧品等(以下、「医薬品等」と表現します。)の製品に関する運用などを定めた法律です。

2014年に改正されるまでは「薬事法」の名称が用いられていたため、現在もこの名称で呼ぶ人も多く見受けられます。

薬機法第一条には、法律の制定目的について以下のように述べられています。

目的:1条

この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

薬機法の規制対象となる医薬品等については、誤った情報が広がってしまうと人の身体や健康に甚大な被害をもたらす恐れがあります。

そこで薬機法では、医薬品等の製造・販売に関する規制のみならず、広告等における表現についても規制を及ぼしています。

内容については後ほど細かく紹介しますが、虚偽又は誇大な広告を記述・流布した場合には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその両方が課されるおそれがあります(薬機法661項・854号)。

そのため、医薬品等に関する広告等を作成する場合には、薬機法の規制に十分注意し、法令違反を行わないように気をつけなければなりません。

なお、薬機法に違反した事業者等に対して行政措置としての課徴金制度を導入する議論が国会で行われていますが、本稿執筆時点では改正の決定はなされていません。

とはいえ、薬機法や関連法令による表現の規制が今後も厳しくなることは予想されるため、早い段階からしっかりと規制内容を押さえておきましょう。

2.薬機法の規制対象分類

次に、薬機法の規制対象となる「医薬品等」について、具体的な規制対象を紹介します。

薬機法は第2条に定義規定が置かれており、それによると、薬機法の規制対象となる品目のうち、一般事業者が気をつけたい品目は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器の4種です。

それでは、それぞれの具体的な定義について確認しましょう。

医薬品:2条1項

日本薬局方に収められている物
人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具(歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラムを含む)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く)
人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く)

医薬部外品:2条2項

本文次に掲げることが目的とされており、かつ、人体に対する作用が緩和な物であって機械器具等でないもの。
吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
あせも、ただれ等の防止
脱毛の防止、育毛又は除毛
人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみ等の駆除又は防止

化粧品:2条3項

この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。
ただし、これらの使用目的のほかに、第1項第2号又は第3号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

医療機器:2条4項本文

人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等

医療機器の専門メーカー等を除けば、一般事業者が注意すべき規制対象はこれらの4品目です。

ここで注意すべきこととして、取扱業者の多い健康食品や健康美容器具は、直接的な薬機法の規制対象として定義が掲げられているわけではないということです。

しかし、サプリメントなどの健康食品であっても、「疾病」や「身体の構造又は機能」を効能・効果として謳うと、これらを「目的」とした物となって薬機法上の「医薬品」とみなされ、薬機法による規制の対象となってしまいます(2条1項1~3号)。

すなわち、健康食品が医薬品の定義に該当するような内容の広告を行った場合や、医薬品ではないのに医薬品であるかのように誤信させる広告を行った場合、薬機法違反となります。

たとえば、お茶の広告として「内臓脂肪を燃やす」と表記することは、「身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」と認められるため薬機法上の医薬品となり(2条1項3号)、厚生労働省等の審査を受けていない場合は広告を行うことができません(68条)。

このように、薬機法の直接的な規制対象ではない健康食品や健康美容器具についても、広告の内容によっては間接的に薬機法の規制対象に置かれるということになります。

3.広告における規制内容

ここまでは、薬機法の概要と規制対象について紹介してきました。

以下からは、薬機法における広告規制について、実際にどのような規制が行われているのかについて説明していきます。

薬機法における主な規制内容は、以下の三種類です。

  • 虚偽・誇大広告等の禁止(66条)
  • 特定疾病用医薬品の広告の制限(67条)
  • 承認前医薬品等の広告の禁止(68条)

それぞれの内容は以下の通りです。

虚偽・誇大広告等の禁止(66条)の概要

○ 医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止。
○ 医師等が保証したと誤解を与えるおそれのある記事の広告・記述・流布の禁止。
○ 堕胎暗示、わいせつ文書・図画の使用禁止。

特定疾病用医薬品の広告の制限(67条)の概要

○ 使用に当たって、高度な専門性が要求される、がん、肉腫及び白血病の医薬品の医薬関係者以外の一般人を対象とする広告の制限。

承認前医薬品等の広告の禁止(68条)の概要

承認(又は認証)前の医薬品又は医療機器について、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告の禁止。

これらを内容とする広告を行った場合には懲役刑や罰金刑といった刑罰を科されるおそれがあります。

なお、何をもって「広告」と呼ぶのかについて薬機法は規定していませんが、政府により次の3要件を満たすものとされています(平成10年9月29日医薬監第148号)。

  1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態にあること

この3要件を充たした「広告」は、上に述べた薬機法による広告規制の対象となります。

4.広告に関する他の規制

以上みてきたように、薬機法の定義規定に抵触せず(「疾病」や「身体の構造又は機能」を効能・効果として謳わない)、広告3要件にも該当しないということであれば、薬機法上の広告規制を受けることはありません。

しかし、健康食品等の広告に関する規制は薬機法だけではありません。

ここでは特に、医薬品等適正広告基準、景品表示法、健康増進法について紹介します。

(1)医薬品等適正広告基準

広告規制の解釈基準として、厚生労働省が「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日薬生発0929第4号 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)を発表しており、こちらにも注意しなければなりません。

この基準では以下のように詳細な基準が定められており、薬機法よりもさらに多岐に亘る規制となっています。

  • 虚偽、誇大なおそれのある広告の禁止
  • 医薬品等の過量商品又は乱用助長を促すおそれのある広告の禁止
  • 医療用医薬品等の一般人向け広告の禁止
  • 他社製品のひぼう広告の制限
  • 医薬関係者等の推せん表現の禁止
  • 医薬品等の品位の保持

広告基準の全文と解説ははこちらからご覧いただけます。

(2)景品表示法

景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、「一般消費者の自主的かつ合理的な選択を守り、利益を保護する」こと、すなわち、消費者保護のために事業者に対して広告等の適正化を図ることを目的としています。

なお、ここにいう「表示」とはチラシなどの印刷物に限定されず、商品パッケージや口頭での接客など、およそ消費者の接する表示一切を指します。

景品表示法で禁止される不当表示は、以下の3種です。

  • 優良誤認表示(5条1項)
  • 有利誤認表示(5条2項)
  • その他誤認されるおそれのある表示(5条3項)

優良誤認表示とは、品質や安全性などについて実際よりもより良く誇張する表現のことです。

景品表示法に違反した場合、行政処分として「措置命令」または「課徴金納付命令」を受けるおそれがあります。

(3)健康増進法

サプリメントなどの食品を販売する場合には、健康増進法にも注意しなければなりません。

広告等との関係で問題となるのは、主に以下の条文です。

誇大表示の禁止:31条1項

何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

ここにいう「健康の保持増進の効果」とは、例えば「疲労回復」や「便秘改善」などの表示のことです。

これらの表現が著しく事実に反する場合や著しく人を誤認させると認められる表示をし、消費者庁等からの勧告を受け、勧告に係る措置を取らない場合には、6月以下の懲役又は100万円以下の罰則が課せられます(36条の2)。

5.規制に抵触する表現の具体例

ここまでは、薬機法や広告基準等、広告に関する法令等の規制の概要を説明してきました。

以下からは、広告等でよく見られる表現が、これらの規制のもとでどのような制限を受けるのかを具体例を挙げながら紹介します。

(1)薬機法および広告基準上問題となる表示例

承認前医薬品等の広告の禁止(薬機法68条)

「血圧が下がった」
「理想のバストに近づきます」

これらの表現は、疾病の治療効果を暗示したり、身体組織機能の増強・促進を目的とした表現であり、医薬品的な効能効果に該当するため、薬機法による規制を受けます。

承認前医薬品等の広告の禁止(薬機法68条)

「中国では古来より不老長寿の生薬として珍重されてきた」

このような表現も、疾病の治療または予防を目的とした効果効能を述べるものであり、起源や由来の説明によって効果効能を暗示するものであることから、同様に薬機法による規制を受けます。

(2)景品表示法および健康増進法上問題となる表示例

不当表示(景品表示法5条1項)

実際は原産地が中国であるにもかかわらず「フランス製」と表記

実際は原産地が中国であるのに、パッケージにエッフェル塔の写真を用い、「フランスからの香り」などのコピーを載せており、全体としてフランス製であることを想起

写真や挿絵などを用いて、全体的な印象で一般消費者に誤認を与える表現も不当表示とみなされます。

有利誤認表示(景品表示法5条2項)

常に「期間限定」と表示している

「初回限定のみ50%割引」と表示しているのに、相当期間にわたって定価で販売した実績がない

このように、価格やアフターサービスなどのメリットについて商品を実際よりも“お得”に見せる表現は、有利誤認表示として景品表示法違反となるおそれがあります。

アンケートやモニター調査(健康増進法31条1項)

「◯%の人が効果を実感!」

広告等にアンケートやモニター調査の結果を表示することが、直ちに虚偽誇大表示等に該当するわけではありません。

ただし、実際に行われたアンケートの内容が「本商品を購入したことに満足していますか」であるのに、アンケート結果として「◯%の人が効果を実感した」と表示するなど、調査条件を適切に表示しない場合は、虚偽誇大表示として是正勧告を受ける可能性があります。

なお、アンケート表示などに「個人の感想です」と併記する例がよくみられますが、近年消費者庁はこれらの表現に対して取締りを強化しており、このような表現が併記されたとしても虚偽誇大表示にあたるか否かの判断に影響を及ぼさないとしています。

最上級またはこれに類する表現(健康増進法31条1項)

「最高のダイエットサプリ!」

「絶対に痩せられる」

「日本一の品質」

本来、健康の保持増進の効果は、個々人の健康状態等に大きく依存するため、他社製品等に対する優位性を立証することは非常に困難です。

したがって、これらの最上級の表現を用いた表現は虚偽誇大表示にあたるおそれがあります。

健康食品に関する景品表示法および健康増進法における規制具体例については、消費者庁のまとめたこちらの資料もご覧ください。

6.まとめ

今回は美容や健康に関するサービスを行う際に知っておきたい薬機法等の表示規制について紹介しました。

規制法令が多く、また、その判断も非常に難しいため、あらかじめしっかりと内容を確認しておく必要があります。

また、これらの規制は省庁内における通達等によって運用が変わったり、法改正の頻度も高いことから、最新の動向には常に注意するようにしましょう。


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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