東海ソフト株式会社は、1970年に創業した独立系の受託型ソフトウェアメーカーです。
大手自動車メーカーや、大手機械メーカー、官公庁などを中心とした顧客に向けてソフトウェアを開発し提供しています。
2019年2月に東証二部/名証二部への上場を果たし、2020年2月に東証一部/名証一部への市場変更を行っています。
目次
①東海ソフトの決算データ
①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益
決算年月(百万円) | 20年5月(実績) | 19年5月(実績) | 前年比 | 20年5月(計画) | 計画比 |
売上高 | 6,730 | 6,306 | +6.7% | 6,550 | +2.7% |
売上総利益 | 1,500 | 1,378 | +8.9% | – | – |
営業利益 | 509 | 452 | +12.6% | 456 | +11.6% |
経常利益 | 493 | 416 | +18.5% | 460 | +7.2% |
当期純利益 | 377 | 272 | +38.6% | 293 | +28.7% |
①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移
以下の図は、5期にわたる東海ソフトの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年5月期の通期の売上高は67.3億円、営業利益は5.1億円であり、営業利益率は7.6%です。
①-3 経営指標
2020年5月期の通期業績は以下の通りです。
- 売上高:67.3億円(前年比+6.7%)
- 経常利益:4.9億円(前年比+18.5%)
- 当期純利益:3.8億円(前年比+38.6%)
決算年月 | 2019年5月期 |
2020年5月期 |
売上高(百万円) | 6,306 | 6,730 |
経常利益(百万円) | 416 | 493 |
当期純利益(百万円) | 272 | 377 |
純資産額(百万円) | 2,788 | 3,469 |
総資産額(百万円) | 4,768 | 5,487 |
自己資本比率 | 58.5% | 63.2% |
営業キャッシュフロー(百万円) | 371 | 427 |
投資キャッシュフロー(百万円) | △53 | △663 |
財務キャッシュフロー(百万円) | 925 | 185 |
現金・現金同等物の期末残高(百万円) | 2,288 | 2,237 |
4Q業績ハイライト (2020年5月期)
以下は、2020年5月期の業績を4Qに分けた指標です。
期を通しておおよそ横ばいの数値ですが、4Qの売上高が最も高くなっている一方で、営業利益は最も低くなっているため、売上の上昇が必ずしも営業利益と連動していないことがわかります。
期間 | 2020年5月期 1Q |
2020年5月期 2Q |
2020年5月期 3Q |
2020年5月期 4Q |
売上高(百万円) | 1,549 | 1,786 | 1,585 | 1,810 |
粗利益(百万円) | – | – | – | – |
販管費(百万円) | – | – | – | – |
営業利益(百万円) | 113 | 161 | 127 | 108 |
経営指標(過去5年分)
5期の間に売上高は1.2倍の増加をしています。
一方、利益に関しても、5期の間に1.6倍の増加を見せており売上、利益とも右肩上がりで増加していることが読み取れます。
決算年月(百万円) | 2016年5月 | 2017年5月 | 2018年5月 | 2019年5月 | 2020年5月 |
売上高 | 5,407 | 5,450 | 5,790 | 6,306 | 6,730 |
経常利益 | 308 | 219 | 309 | 416 | 493 |
当期純利益 | 234 | 156 | 221 | 272 | 377 |
純資産額 | – | 1,333 | 1,531 | 2,788 | 3,469 |
総資産額 | – | 2,908 | 3,270 | 4,768 | 5,487 |
自己資本比率 | – | 45.8% | 46.8% | 58.5% | 63.2% |
②東海ソフトの事業内容
②-1 東海ソフトとは?
東海ソフトは「東海ソフトはお客様のテーマ、課題、問題に対し柔軟に対応します。」を経営理念として掲げ、大手メーカーや金融機関向けに生産管理システムや組込システムのソフトウェアを提供する企業です。
現在、ソフトウェア技術はコンピューターだけでなく、自動車や機械製品などあらゆるプロダクトに利用されています。
このようなプロダクトを正常に稼働させたり、システムを安全に制御するためにはソフトウェアによるコントロールが不可欠だからです。
東海ソフトは、自動車メーカーや機械メーカー向けに、ソフトウェアを開発し提供する事業を行っています。
また、自動車や機械の稼働を稼働させるためだけでなく、工場やオフィスなどの生産管理においてもIT技術が導入されています。
例えば、工場などで生産管理の場の状態を「見える化」して業務効率を高めることや、IT技術によって管理者のマネジメント業務を効率化させる際にもソフトウェア技術が導入されます。
東海ソフトは、前述した機械に組込むタイプのソフトウェアだけでなく、工場やオフィスなどの生産管理のためのソフトウェアを開発し、大手メーカーの工場や官公庁などへの提供を行っています。
②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル
東海ソフトは、機械や自動車に搭載するタイプのソフトウェアや生産現場の業務マネジメントを行うタイプのソフトウェアなど多様なタイプのソフトウェアを企業向けに提供しています。
また、事業セグメントは、ソフトウェアの用途別に以下の3つに分類されています。
- 自動車や機械に組込むソフトウェアを開発・提供を行う「組込み関連事業」
- 製造や物流現場の生産管理に使用されるソフトウェアを開発・提供を行う「製造・流通及び業務システム関連事業」
- 金融機関や官公庁の情報システムなどを管理・保護するためのソフトウェアの開発・提供を行う「金融・公共関連事業」
以下で、各セグメントの詳細について説明します。
組込み関連事業
組込み関連事業は、自動車や産業機器へ搭載するためのソフトウェアを開発するセグメントです。
このセグメントは、自動車のナビやランプをコントロールするソフトウェアを開発する「車載関連開発」と、自動販売機や工作機械の温度や稼働をコントロールするソフトウェアを開発する「民生・産業機器関連開発」に2分されています。
- 2020年5月期は「車載関連開発」がセグメントの約6割の売上を占める部門となっています。また、この部門の約76%の売上はトヨタグループから受注された売上です。
- 「民生・産業機器関連開発」はセグメントの約4割の売上を占める部門です。この部門の約68%の売上は富士電機から受注しています。
製造・流通及び業務システム関連事業
製造・流通及び業務システム関連事業は、製造工場や物流事業所向けに、現場の生産管理を行ったり、生産性を向上させるためにデータを「見える化」させるソフトウェアの開発を行うセグメントです。
事業の目的別に「製造・流通システム関連開発」の部門と、「業務システム関連開発」の部門に2分されており、2020年5月期は年間で176社と取引を行っています。
東海ソフトは現場管理や製造管理を行うためのソフトウェアを多数開発しています。
主なソフトウェアの機能は、原価や品質を管理したり、工場におけるシステムの稼働状況を数値によって「見える化」するソフトウェアなどです。
金融・公共関連事業
金融・公共関連事業はIT技術を利用し、金融機関や官公庁の情報管理や業務効率化を目的としたソフトウェアを開発・提供するセグメントです。
2020年5月期は、官公庁や自治体などの公共事業者向けのソフトウェアのみが受注されており、セグメントの売上の100%を占めます。
また、このセグメントで開発されたソフトウェアは、全て日立グループによって購入されており、日立グループのSIerが取り扱うソフトウェアです。
SIerとは、ソフトウェアやハードウェアを一括受注しシステム開発を請負う事業者のことを示し、東海ソフトによって基盤が開発されたソフトウェアは、日立グループのSIerを経由し公共事業者へ届けられます。
②-3 売上構成比/セグメント別売上の見通し
以下のグラフは、東海ソフトの2020年5月期の売上構成を表したグラフです。
全体の売上の約半数は、「製造・流通及び業務システム関連事業」のセグメントによって占められており、約4割は「組込み関連事業」によって占められているため、東海ソフトにとってはこの2つのセグメントが売上の中核を担う事業であることがわかります。
また、以下の図は2018年5月期から2020年5月期までのセグメント別の売上推移を表したグラフです。
「製造・流通及び業務システム関連事業」は3期の間に単独で7億円以上売上を増加させています。
③東海ソフトの主要KPIとその数値推移
③-1 再生回数と期末チャンネル数
以下のグラフは、2020年5月期(実績)と2021年5月期(計画)の経営指標を比較した図です。
折れ線グラフは実績と計画を比較した際の上昇率を表しており、経常利益と純利益は今期の実績と比較して3%以上の上昇を経営目標としています。
③-2 売上総利益と原価率
以下の図は、2018年5月期から2020年5月期までのセグメント別の売上総利益を示したグラフです。「金融・公共関連事業」のみ2020年5月期に数値を落としています。
売上総利益の合計の数値は右肩上がりであり、2018年5月期に80%であった原価率は2020年5月期までに77.7%まで下落しています。
④東海ソフトのコスト構造
④-1 東海ソフトの販売管理費
以下の図は、東海ソフトの原価率及び販売管理費の内訳を示したグラフです。
2018年5月期から売上高の上昇に連動するように数値が上昇していますが、どの期も一般管理費と比較して5倍以上の売上原価となっています。
④-2 東海ソフトの営業利益の推移
以下の図は、東海ソフトのクウォーター毎の営業利益の推移と粗利益、販管費の関係性を表したグラフです。
第2Qが最も営業利益の高いタームとなっていますが、数値に着目すると、粗利益が相対的に下落している一方、販管費が大幅に減少していたタームであることがわかります。
このような数値から、販管費をコントロールすることで、営業利益に大きな影響を与えるビジネスモデルであることが推測できます。
⑤東海ソフトの投資領域
⑤-1 ネクスティエレクトロニクスからの資金調達
東海ソフトは2018年7月に車載ソフトウェア事業を手掛ける豊田通商グループの株式会社ネスティエレクトロニクスから出資を受けました。
ネスティエレクトロニクスは2004年から車載ソフトウェア事業に参入し、近年は次世代自動運転車に対応したソフトウェア開発に注力している企業です。
自動車用のソフトウェアを長年手がけてきた東海ソフト提携することで、技術開発力の向上と競争力を強化することが出資の目的です。
2018年7月のネスティエレクトロニクスからの出資に関する記事
⑤-2 IPOと市場変更
東海ソフトは2019年2月に東証二部と名証二部へ上場しました。
上場当時の初値は2,872円であり、公募価格1,500円に対して+1,372円の値を記録しています。
新規上場から1年後、2020年2月に東海ソフトは、前年の東証二部と名証二部から、東証一部と名証一部への市場変更を行いました。
一部へ市場変更した際の詳細資料のURLは以下の通りです。
⑥東海ソフトの株価・時価総額推移
以下の図は、東海ソフトの株価の推移を表したグラフです。
東海ソフトの2020年7月27日時点の株価は1,231円、時価総額は60.4億円です。
2020年5月期の通期の営業利益5.1億円に対して11.8倍という評価を受けている計算となります。
⑦東海ソフトの会社情報
まずは東海ソフトの基本情報を紹介します。
市場は東証一部/名証一部で、決算月は毎年5月です。
東海ソフトの基本情報
会社名 | 東海ソフト株式会社 |
---|---|
設立日 | 1970年8月28日 |
市場 | 東証一部/名証一部 |
証券コード | 4430 |
業種 | 情報・通信業 |
決算期 | 5月 |
ホームページアドレス | http://www.tokai-soft.co.jp/ |
発行済株式総数 | 4,920,300株(2020年5月現在) |
普通株式数 | 4,920,300株 |
資本金 | 826,000,000円(2020年5月現在) |
1単元の株式数 | 100株 |
従業員数 | 509 人(2020年5月現在) |
平均年齢 | 35.4歳 |
平均年収 | 5,542,863 円 |
東海ソフトの沿革
東海ソフトは1970年5月に名古屋市設立され、2019年2月に東証二部/名証二部への上場を果たしました。
さらに2020年2月には、東証一部/名証一部への市場変更を行っています。
1970年5月 | ソフトウェア開発を目的として名古屋市に東海ソフト株式会社を設立。 |
1978年5月 | 東京支店開設。 |
1980年12月 | 特注インターフェースの自社製作を開始。 |
1983年8月 | C-Stationを発表。ハードウェアの自社製作と販売を開始。 |
1987年12月 | システムインテグレーション事業を強化。 |
1988年6月 | 第一次中期計画を開始。 |
1989年7月 | 静岡事業所開設。 |
1992年10月 | 品質管理サポート・プロダクトM-SHADOWを発表。 |
1995年6月 | 情報処理振興事業協会(IPA)の委託開発で、NetAttachを開発・販売。 |
1996年6月 | コンピュータ・ネットワーク事業を強化。 |
1996年11月 | 法人向けインターネット・プロバイダー(TS-NET)のサービス開始。 |
1997年6月 | 関西支店開設。 |
1998年8月 | サーバレス分散オブジェクト開発支援ツールPubwayを発表。 デジタル文書化サポート・プロダクトOfficecapを発表。 |
1998年12月 | ASP事業のサービス開始。 |
1999年5月 | 医療用症例画像データベース管理Medicapixを発表。 |
2000年9月 | 設備保全スケジュールを管理する「設備管理プロダクト」を発表。 |
2000年10月 | 汎用ドキュメント管理PDM Officecap V3.0を発表。 |
2001年5月 | 本社を現在地に移転。 |
2001年10月 | 三重支店開設。 |
2001年11月 | 横浜事業所開設。 |
2001年12月 | 中国(蘇州)に宏智科技有限公司を設立。 |
2002年4月 | 登記書類自動作成ソフト SUPER筆頭を販売開始。 |
2004年6月 | 横浜事業所を支店に拡大。 |
2005年8月 | 地域新生コンソーシアム研究開発事業へ参加。 |
2007年5月 | 東京支店にてISO27001認証取得。 |
2009年5月 | 本社、横浜支店にてISO27001認証取得。 |
2011年2月 | 横浜支店を東京支店へ統合。 |
2011年3月 | 東京支店にてISO9001認証取得。 |
2014年11月 | 東京支店を現在地に移転。 |
2016年6月 | 宏智科技(蘇州)有限公司との資本関係を解消。 |
2016年8月 | 車載ソフトウェア標準化団体AUTOSAR Associate Partnerへ加盟。 |
2018年1月 | プライバシーマーク認定取得。 |
2018年7月 | 株式会社ネクスティエレクトロニクスとの業務資本提携。 |
2019年2月 | 大阪支店を現在地に移転。 |
2019年2月 | 東京証券取引所市場第二部及び名古屋証券取引所市場第二部への上場。 |
2020年2月 | 東京証券取引所市場第一部及び名古屋証券取引所市場第一部指定。 |