M&A

M&A成功の鍵を握る!?シナジー効果の意味や種類を解説します!

早速ですが、シナジー効果という言葉はご存じでしょうか?

特にM&Aの話題でよく耳にするかと思いますが、いまいちイメージが湧かないですよね。

実はこのシナジー効果こそ、M&Aの成立を左右する大きな判断材料になりうるのです。

シナジー効果はM&Aのみならず、様々な場面で登場する言葉ですので、ここで押さえておきましょう!

今回は、シナジー効果という言葉を初めて聞いたという方にもご理解頂けるよう、基本的なところから解説します。

この記事を読めば、シナジー効果の基礎的な知識が身につきますよ!

1.シナジー効果とは

「シナジー効果」の「シナジー」は英語の「synergy」からきており、直訳すると「相乗効果」「相乗作用」「共同作用」などになります。

M&Aなどによって組織や企業、人や部分などが共同する事で、各々の力の和の合計を、和によって生じる効果が上回ることを意味しています。

つまり、それぞれが力を合わせた結果、単純な合計よりも+α高い力を発揮できるという効果の事を指します。

ビジネスにおいて具体的に言えば、企業がM&Aや経営多角化戦略を行う際に、経営資源の有効活用や異なる事業を組み合わせることにより、単なる利益の合計だけでなく大きな付加価値を生み出す効果が、シナジー効果です。

もともとシナジーは薬学や生理学、生物学分野において用いられていた専門用語です。

現在では、経営学における、販売・設備・技術などの機能を二重三重に活用することにより、利益が相乗的に生み出される効果という意味でも使われるようになりました。

2.シナジー効果が求められる理由

シナジー効果が求められる理由は、企業価値の向上と競争力の強化にあります。

企業価値が向上すると、資金調達や人材確保が容易になり、経営の安定につながります。

M&Aや事業提携の際に、シナジー効果を存分に発揮させれば、自社の競争力を強化でき、競合他社との競争を優位に進められるとともに、企業の持続的な成長にもつながるでしょう。

経済がグローバル化し、ビジネス課題が多様化する中で先々の企業の方向性を見出し、新たな事業を手掛けることは、日本の株式市場において好材料と判断されます。

経営多角化戦略を打ち出し、積極的にM&Aを行う企業は、株価が高くなる傾向にありますので、そういう意味でも企業価値の向上が見込めると言えるでしょう。

また、競争力の強化は、言うまでもなく多くの経営者たちが求めていることでしょう。

競合他社に対する競争力を持っていなければ、市場では生き残れないからです。

消費者や市場ニーズが多様化する中で、企業がひとつの事業を続けることが難しくなってきており、また、技術革新による破壊的イノベーションにより、経営資源を集中させていた市場が奪われる危険性があります。

そこで昨今、企業は自社が持つ競争力を高めるためにもシナジー効果が期待できる経営多角化戦略やM&Aを積極的に取り組む傾向にあります。

さらに、シナジー効果によって、リスクを回避しながら売り上げを増加させることも可能です。

通常、売り上げを増加させるためには新規事業を立ち上げるという戦略をとりますが、その場合に成功するかどうかはわからないというリスクがあります。

しかしながら、戦略的にM&Aを行い、シナジー効果を発生させることができれば、新規事業を立ち上げるよりも少ないリスクで新しい分野に参入することができます。

3. シナジー効果の種類

ここまでは、シナジー効果について、言葉の意味とその必要性について確認してきました。

ここからは具体的にシナジー効果の内容を見ていきましょう!

経営学でシナジー効果を説明する場合、シナジーが生み出される対象によって効果の種類が分類されることがあります。

シナジー効果の種類には、言い方は様々ですが、大きく分けて「事業シナジー」「財務シナジー」「信用力シナジー」があり、その中でもさらに効果を分けることができます。

(1) 事業シナジー

事業シナジーとは、事業の推進に対するシナジー効果のことです。

複数の事業者が合同することにより実現し、得られる効果は、「コスト削減」「スケールメリット」の2つに分類できます。

#1:コスト削減効果

コスト削減効果とは、買い手企業と対象会社が連携することで、トータルコストを下げることができるというシナジー効果です。

この効果は組織シナジーと呼ばれることもあります。

中小企業M&Aで多い例ですが、M&A対象会社の本部機能を大幅に縮小し、必要な分は買い手企業が請け負うという場合がこれにあたります。

対象会社の本部費を大幅削減でき、これだけで利益を増やすことが可能になります。

#2:スケールメリット

スケールメリット効果とは、合同で生産・発注等を行うことで1回の生産量を多くして、1商品にかかる費用が減り、純利益が増える効果です。

大量発注により仕入れ単価を下げること等もこれに該当します。

これらは、規模の経済・規模の優位性ともいいます。

業種や職種を問わず、多様な経営環境に当てはめることができるため、ビジネスのあらゆるシーンで使用されます。

(2)財務シナジーとは?

財務シナジーとは、企業の保有するキャッシュや税金に対するシナジー効果のことで、M&Aにおいてその効果が得られます。

得られる効果は、「余剰資金活用」「節税効果」の2つです。

#1:余剰資金活用

余剰資金活用効果とは、企業のM&Aにて合併や買収を行い、余剰資金を有効活用することです。

上場企業の場合、使い道の定まっていない余剰資金を持っている場合があります。

将来有望なベンチャー企業に資本参加したり、優秀な人材を確保したりするために資金を使えば、将来的にそれが何倍にもなって返ってくる可能性があります。

財務基盤が不安定な対象会社が、資金余力が潤沢な買い手企業の傘下に入ることで、増資などにより資金余力が改善し、無用な借入金利息などを発生させないことができるという意味合いも含みます。

中小企業M&Aでは意識されることの多いシナジー効果です。

#2:節税効果

節税効果とは、企業のM&Aにおいて、繰越欠損金などの債務を受け継いである程度の節税効果を見込むことです。

たとえば、買収先の企業に過去の繰越欠損金が積み上がっている場合、その欠損金を自社に計上すると、黒字であれば利益額を圧縮できます。

つまり、課税の対象となる金額を小さくできるため、節税効果が得られるのです。

#3:信用力シナジー

M&A対象会社が著名な大企業の傘下に入ることで、高いブランド力を手に入れ、営業のみならずリクルートや仕入先開拓などでメリットを生むシナジー効果です。

M&Aを公表するだけで、ある程度効果が出るのですが、その効果の規模を事前に予想しておくのが難しいシナジー効果でもあります。

特に、リクルート面に関して、複数の事業者が合同して必要な人材を獲得し、技術やノウハウを取り込んで業績をアップさせ、競争力を強化させることができます。

M&Aにおいては、優秀な人材を獲得できるため、人事面での活性化を図ることができます。
そのためには、自社もしくは買収先でどのような人材が必要なのか、正確な把握が必要です。

4.アナジー効果

ここまではシナジー効果の意義や、その具体的な効果について紹介してきました。

ここまでをみると、M&Aによってシナジー効果が発生し、メリットだらけに思えるかもしれません。

しかし実際には、M&Aによってかえって不利益が発生してしまう場合もあります。

以下からは、シナジー効果とは逆の効果をもたらすアナジー効果について紹介します。

(1)アナジー効果とは

「シナジー」の反対語として「アナジー」という言葉があります。

企業同士の連携などは、必ずしも成功するわけではありません。

企業同士が相乗効果を狙って提携や統合などをした結果、双方にデメリットが目立ち価値が減少してしまうことをアナジー効果と呼びます。

2つの事業の価値がそれぞれ100とすると、協働や統合によって価値が200以上になる場合がシナジー、180または150などに減ってしまう状態がアナジー効果です。

このように、アナジー効果とは相互マイナス効果のことを意味しており、ほかには「マイナスシナジー」「ネガティブシナジー」「負のシナジー」「ディスシナジー」などと表現することもあります。

大手A社の傘下に入ってしまうことで、そのライバル会社であるB社との取引がなくなってしまったり、大手傘下というだけで家賃の値上げ交渉を受けたり、行政支援が制限されたりすることなどがその例です。

企業における事業部門の協働や統合の場合においても、同一の評価基準で異なる事業を評価して弊害を招いたり、本社部門による各事業の統制により意思決定のスピードが落ちたりする場合もアナジーといえるでしょう。

(2)アナジー効果が発生する原因

シナジー効果を求めて行動した結果、逆にデメリットが発生してしまうのには理由があります。

コストが想定外に嵩んでしまった等の会計上の理由だけでなく、新規事業の方向性の違いや経営者同士の思想の違いが理由として挙げられます。

事業の方向性が異なると、会社は統合できても顧客に対するアプローチは統合できず、ノウハウを活かすことができません。

この場合、+αの利益は見込めないでしょう。

また、経営者同士の思想に違いがあると、経営方針が統一できず不安定になります。

それは、優秀な人材や、重要な顧客が流出してしまう事につながってしまい、ひいては企業全体の競争力低下へと繋がってしまいます。

(3)ピュアカンパニー化[番外編]

ピュアカンパニー化とは、規模拡大で膨張した多角化企業で生じていたアナジーを解消するために、本来の姿である特定の分野に限定した専業企業に戻そうという動きのことです。

例えば、複数のメーカーから電子機器の生産を受注するEMS企業や、総合電機メーカーから分離した半導体専業メーカーなどです。

総合化によってシナジーを追い求めるのではなく、逆の方向に経営のかじを切ってアナジーの解消を狙ったこうした動きが現在注目されています。

これまで規模拡大で膨張を続けてきた多角化企業を、競争力のあるコア事業に絞り込んで事業構造を変化させると同時にバリュー・チェーン(価値連鎖)の短縮化などを目的として、ピュアカンパニー化が一気に進みました。

5.シナジー効果が発生した事例

ここまでは、シナジー効果によって得られるメリットや、その逆の効果が生じてしまうアナジー効果について紹介してきました。

最後に、実際にM&Aによってシナジー効果が発生した事例を4つ紹介します。

近年では事業形態や企業規模を問わずM&Aが活発化しており、ニュースなどでもそのシナジー効果予想についても触れられることが多いため、しっかりとアンテナを張っておくようにしましょう。

(1)ソフトバンク(日本テレコムとボーダフォンのM&A)

2001年にブロードバンド通信に参入したソフトバンクは、2004年7月に日本テレコム(JT)を買収しました。

他社に送れて業界に参入したソフトバンクは、このM&Aによって法人顧客の取り込みに成功しています。

また、通信の設備はそれまで持っていたものと合わせて活用することで、トータルでのコスト削減を達成しています。

これは事業シナジー効果が得られた結果と言えます。

さらに、同年にホークス球団を買収しプロ野球の球団を持ったことにより、国内での知名度を向上させることができました。

これにより、信用力シナジー効果が発生します。

このように、ソフトバンクの成長は、まさにM&Aの成功の足跡ともいうことができます。

(2)JT(海外たばこ関連企業のM&A)

かつて、JT(日本たばこ産業)は日本企業でありながら、売上の半分以上を海外に依存していました。

禁煙化の波によって、日本のたばこ市場は縮小傾向にあり、1996年にピークを迎えたのち2014年には半分ほどにまで落ち込んでいます。

これを補うためJTは企業の買収を繰り返し行いました。

1999年に米国RJRナビスコの米国外たばこ事業を買収し、2007年に英国のたばこ大手ギャラハーを買収し、2015年に米国で当時たばこ業界2位だったレイノルズの一部事業を買収しています。

その後もフィリピンやインドネシア、ロシアのたばこメーカーを買収しました。

国内市場が縮小を続けるなか、JTは積極的にM&Aを足がかりに海外市場へ進出を行うことによってたばこ事業を維持することができています。

それは事業シナジー効果・財務シナジー効果が得られたことが要因の1つになっているかと思われます。

(3)日本電産(関連事業会社のM&A)

日本電産は、企業成長の原動力としてM&Aを戦略的に活用している企業です。

日本電産のWEBサイトにも、「当社のM&Aは、『回るもの、動くもの』に特化し、技術・販路を育てあげるために要する『時間を買う』という考え方に基づき行っています。」と掲げられています。

日本電産は、これまでに国内海外を問わず50社を超える会社をM&Aによって統合しており、「世界No.1の総合モーターメーカー」というキャッチフレーズ通り、M&Aの対象はモーターのメーカーで徹底しています。

日本電産はこうした形で事業シナジー効果と財務シナジー効果を獲得しています。

(4)カシオ(リプレックス社のM&A)

カシオは、カメラや計算機の開発・製造を行っている会社です。

一方、リプレックス社は写真機能に関するアプリケーションの開発を専門に行っている会社です。

カシオは、2013年にリプレックス社の株式をすべて取得し、買収を行いました。

カシオはカメラのハード面については専門的な知識と技術を持っていますが、デジタルカメラのソフト面については他社のデジタルカメラに比べて遅れている状態でした。

デジタルカメラについて、ハード面はカシオが持っている知識や技術を使い、ソフト面はリプレックス社が持っていた技術を使って最新のデジタルカメラの開発を行いました。

その結果、最先端のデジタルカメラの開発に成功し、利益増加に貢献しています。

シナジー効果を利用し、新規事業の開拓に成功した例といえるでしょう。

6.まとめ

今回は、M&Aをする上では欠かせないシナジー効果について紹介しました。

M&Aの際にはこのシナジー効果をあるとを前提として検討が進みます。

単に複数の会社が1つなる事だけが目的ではなく、1つになる事で生まれるメリットが必要とされているからです。

経営統合によるコスト削減はある程度予測しやすい一方、新規事業に参入するためのリスク軽減としてM&Aを行う際は、売り手企業の伸びしろまで含めて判断しなくてはならない為、予測は難しくなります。

また、シナジー効果は必ずしも発生するわけではなく、アナジー効果を生んでしまう可能性があることもお伝えしました。

売り手企業と買い手企業の双方が目指す利益についてすり合わせる事と、実行のタイミングが重要となってきます。

このように、M&A成功の鍵となるシナジー効果の予測には専門性が必要となることから、M&Aの実行にあたっては、早い段階から専門家へ相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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