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【上場企業決算分析】メルカリの最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

 

株式会社メルカリは、2013年に事業をスタートさせたフリマアプリ「メルカリ」を中心に事業展開を行う企業です。
現在は、米国でのフリマアプリ事業やスマホ決済サービス「メルペイ」の事業運営も行っています。
またメルカリは、2018年にマザーズへ上場しました。

① 決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年6月(実績) 19年6月(実績) 前年比 20年6月(計画) 計画比
売上高 76,275 51,683 +47.6%
売上総利益 55,613 38,818 +43.3%
営業利益 △19,308   △12,149
経常利益   △19,391   △12,171
当期純利益   △22,772   △13,764

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、4期にわたるメルカリの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年6月期の通期の売上高は762.8億円、営業利益は193.1億円であり、営業利益率は△25.3%です。

メルカリの営業利益率推移

 

①-3 連結の経営指標

2020年6月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:762.8億円(前年比+47.6%
  • 経常利益:△193.1億円
  • 当期純利益:△227.7億円
決算年月 2019年6月期
2020年6月期
売上高(百万円) 51,683 76,275
経常利益(百万円) △12,171 △19,391
当期純利益(百万円) △13,764 △22,772
純資産額(百万円) 50,936 35,368
総資産額(百万円) 163,685 198,014
自己資本比率 17.6 31.1
営業キャッシュフロー(百万円) △7,289 12,533
投資キャッシュフロー(百万円) △2,805 △2,653
財務キャッシュフロー(百万円) 32,200 465
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 130,774 141,008

 

4Q業績ハイライト (2020年6月期)

以下は、2020年6月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上高は期末に向けて増加傾向です。
一方、営業利益は3Qまで赤字続きでしたが4Qに黒字転換しています。

期間 2020年6月期
1Q
2020年6月期
2Q
2020年6月期
3Q
2020年6月期
4Q
売上高(億円) 145 184 203 229
粗利益
販管費
営業利益(億円) △70 △68 △63 9
従業員数 1,862 1,827 1,860 1,792

 

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は6倍以上の成長をしていることがわかります。
一方、利益に関しては、売上と反比例するように赤字額が増え続けており、2019年6月期からは赤字額が100億円を突破しています。

決算年月(百万円) 2016年6月 2017年6月 2018年6月 2019年6月 2020年6月
売上高 12,256 22,071 35,765 51,683 76,275
経常利益 △97 △2,779 △4,741 △12,171 △19,391
当期純利益 △348 △4,207 △7,041 △13,764 △22,772
純資産額 8,395 4,416 54,422 50,936 35,368
総資産額 25,463 54,489 117,752 163,685 198,014
自己資本比率 33.0% 8.1% 46.2% 31.1% 17.6%

 

② 事業内容

②-1 メルカリとは?

メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションとして掲げ、スマートフォンに特化した個人間取引(CtoC)によって誰でもスマートフォン上で簡単に不用品を販売できるスマホアプリ「メルカリ」を軸としたサービスを運営しています。

メルカリは、アプリを利用して販売した商品代金に応じた手数料をユーザー獲得するビジネスモデルで事業を展開しており、このサービスは日本だけでなく米国でも「Mercari」として同様のビジネスモデルで展開されています。

さらに、メルカリはフリマアプリだけでなく、スマホ決済サービス「メルペイ」の運営も行っています。

メルカリで運営されている事業セグメントは、以下の3事業です。

  1. フリマアプリ「メルカリ」
  2. フリマアプリ「Mercari」(米国)
  3. スマホ決済サービス「メルペイ」

 

また、以下の図はメルカリのビジネスモデルと現行の運営サービスを中心とした中長期的なビジョンを図式化したものです。

メルカリのビジョン

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

メルカリが行う事業のセグメントは、収益別に2分すると、フリマアプリサービス「メルカリと」及びその米国版と「Mercari」、そして決済サービス「メルペイ」に3分されます。
以下で、それぞれのサービスについての詳細を説明します。

「メルカリ」

「メルカリ」は、2014年10月から開始されているスマートフォンに特化した不用品の個人間取引(CtoC取引)を行うためのアプリケーションです。
このアプリケーションはフリマアプリと呼ばれており、個人間で行うフリーマーケットをWeb上で実現させたサービスです。
また、このサービスは従来からあるネットオークションなどより手軽さを重視したサービスであるとされています。

収益のフローとしては、商品が購入された際に、購入された商品に対し原則10%の手数料をメルカリは出品者から獲得し、購入者が支払った商品代金から手数料を差し引いた金額を出品者に支払うフローとなっています。
会社の事業収益のほとんどの大部分は「メルカリ」による収益であり、3つのセグメントの中心的立ち位置のサービスであるといえます。

「Mercari」

「Mercari」は、フリマアプリ「メルカリ」を米国版です。
2016年10月から開始されており、収益フローやアプリ設計、ビジネスモデルなどは「メルカリ」と同様のサービスです。

「メルペイ」

「メルペイ」は、メルカリが運営するスマホ決済サービスであり、2019年2月から運営が開始されています。
スマホ決済サービスとは、バーコードなどを利用してスマートフォンで商品やサービスの料金支払いができるサービスです。
スマホ決済サービスは、キャッシュレス化を進めるための政府による政策の影響もあり、近年急速に拡大しています。
メルカリは、スマホアプリ「メルカリ」で培った技術力と膨大な顧客・情報基盤を基に「メルペイ」の提供を開始しました。
「メルペイ」の大きな特徴は、「メルカリ」のアプリをそのまま決済に使える点と、「メルペイ」で決済する料金を「メルカリ」の売上代金から支払うことができる点です。

②-3 売上構成比/セグメント別売上の見通し

売上の構成比に着目して、直近3期のクォーター別売上高を見ていきます。
売上を構成するセグメントについては前述した通りです。
売上自体は概ね右肩上がりに増加を続けています。
売上構成比を見ると国内の「メルカリ」事業が圧倒的な割合を占めており会社の中核をになっています。
一方で、国内版「メルカリ」以外の事業の成長は近年著しく、2020年6月期4Qは、売上の25%以上は「メルカリ」以外の事業による収益です。

セグメント別の売上

 

③ 主要KPIとその数値推移

③-1 「メルカリ」MAUとGWA

以下の図は、国内版「メルカリ」のGMVとMAUという指標の推移を表したグラフです。
GMVとは、「Gross Merchandise Value」の略語であり、「メルカリ」のアプリ内で行われた取引額の総額(流通総額)を表す指標です。
GMVが示す指標は、アプリ内での「流通額」を表した指標であり、メルカリは商品取引に応じた手数料を売上として獲得するため、売上額とは異なります。
GMVはECサイトを運営する上でのKPIとして大変重要な指標です。
一方、MAUは、「Monthly Active Users」の略語であり、ひと月あたりにログインしたユーザー数を示す指標です。
Webアプリは、実際にダウンロードされたとしても、実際にユーザーがログインして利用しなけければアプリとしての意味をなさず、収益にもつながりません。
MAUは、このようにどのぐらいのユーザーが実際にアプリを利用しているのかを計測する指標であり、Webアプリを運営する企業にとっては生命線となる値です。

MAUとGMV

メルカリは、GMV、MAUとも概ね右肩上がりでの推移を続けており、アプリ内での商品売上高・アプリの実際に利用者数共に増加していることを意味しています。
特に、2020年6月期4Qは、新型コロナウイルスに伴う巣篭もり消費などの影響を受け、GMV、MAU共に目立った伸長を見せています。

③-2 「メルカリ」の営業利益と営業利益率

以下の表は、国内版「メルカリ」の4期にわたる営業利益と営業利益率を表したグラフです。
2020年6月期は、営業利益が前期と比べ2倍近く大幅な増加を見せ、営業利益率も30%を超える水準へ大幅に成長しました。

営業利益の推移

③-3 取引品目別の割合

以下の図は、国内版「メルカリ」と米国版「Mercari」で取引される商品をカテゴリー別に分類したグラフです。

メルカリの品目別割合

 

メルカリ(US)の取引品目別割合

日本では、「エンタメ・ホビー」系の商品が最も多く取引されている一方、アメリカでは「レディース」に分類される商品が取引全体の30%を占めています。
また、アメリカの家電の取引割合は、日本のおおよそ2倍程度であり、全く同じビジネスモデルを採用していても、国別で取引商品の傾向が異なることがわかります。

④ コスト構造

④-1 「メルカリ」事業の販管費内訳

以下の図は、国内版「メルカリ」事業の販売管理費の内訳を割合別に表したグラフです。
販管費対営業利益に着目すると、期を追うごとにコストに対する営業利益率の割合が増加していることがわかります。
特に2020年6月期は、2Q以降その割合が30%以上で推移し、4Qには40%を突破しているため、この指標から経営効率が大幅に改善されたことが推測できます。
このグラフの数値を反映するように2020年6月期の国内版「メルカリ」事業における通期の営業利益率は30%を超える結果となっています。

コスト対営業利益のグラフ

 

④-2 メルカリの営業利益の推移

以下のグラフは、メルカリの連結の営業利益、粗利益、販管費の推移を表したグラフです。
これまでの記事からわかる通り、国内版「メルカリ」が収益化が成功しています。
しかし、連結の営業利益を見ると、マイナス推移を続けており、2020年6月期は営業利益が200億に迫っています。

この実態はメルカリの事業特性を反映しています。
「メルカリ」のような事業は、投資フェーズが終わると大きな収益を生み出す一方で、投資フェーズを終えるまでは断続的に赤字が続いてしまうのです。
現在では収益化に成功している国内版「メルカリ」も、過去しばらくの間は、赤字運営が続いていました。
現在は、「Mercari」と「メルペイ」の2事業が投資フェーズであるとされています。

粗利益、営業利益

 

⑤ 投資領域

⑤-1 NTTドコモとの業務提携

2020年6月期、メルカリはNTTドコモとの業務提携を行いました。
この業務提携は、両社の顧客基盤を統合することで、ドコモはメルカリの顧客基盤である若年層の強化を行い、メルカリはドコモの顧客基盤であるシニア層の獲得を図る狙いがあると言われています。
この提携により、「dアカウント」と「メルカリID」が連携することで、「メルカリ」での取引1回につき、取引額100円ごとに1ポイントのdポイントを還元するサービスをはじめとした複数の新サービスが開始されました。
以下URLは、この業務提携について詳細を報じた記事のURLです。

2020年2月に発表されたドコモとメルカリの業務提携に関する記事

⑤-2 メルペイによるOrigamiの買収

2020年1月、「メルペイ」を運営する株式会社メルペイは、スマホ決済サービス「Origami Pay」を運営する株式会社Origamiの全株式を取得し、Origamiはメルカリグループへ参画することになりました。

この買収の目的は、地方の個人店舗や中小事業者のネットワークを持つOrigamiの強みと、中規模の事業者に強みのあるメルペイの強みを相互に生かすことであるとされています。

以下URLは、この買収について詳細を報じた記事のURLです。

2020年1月のメルペイによるOrigamiの買収についての記事

メルペイ Origami

 

⑥ 株価・時価総額推移

以下の図は、メルカリの株価の変化を表したグラフです。

メルカリ株価推移

メルカリの2020年8月13日時点の株価は4,810円、時価総額は7510.8億円です。

会社情報

メルカリの基本情報を紹介します。
市場はマザーズで、決算月は毎年6月です。

メルカリの基本情報

会社名 株式会社メルカリ
設立日 2013年2月1日
市場 マザーズ
証券コード 4385
業種 情報・通信業
決算期 6月
ホームページアドレス https://about.mercari.com/
発行済株式総数 156,150,364(株)
普通株式数 156,150,364(株)
資本金 41,440,000,000円  (2020/6現在)
1単元の株式数 100株
従業員数 1,792 人
平均年齢 31.9 歳
平均年収 7,121,000 円

メルカリの沿革

メルカリは2013年に株式会社コウゾウとして東京都で設立され、2018年6月にマザーズへの上場を果たしました。

2013年2月 東京都港区六本木において、資本金20百万円で株式会社コウゾウを設立
2013年7月 CtoCマーケットプレイス「メルカリ」の提供を開始
2013年11月 社名を株式会社メルカリに変更
2014年1月 米国子会社Mercari,Inc.を設立
2014年4月 カスタマーサポートセンターを仙台市青葉区に設立
2014年9月 米国子会社Mercari,Inc.がCtoCマーケットプレイス「Mercari」の提供を開始
2014年10月 CTOCマーケットプレイス「メルカリ」(日本)において商品代金に応じた手数料徴収を開始
2015年4月 配送サービス「らくらくメルカリ便」開始
2015年9月 国内子会社株式会社ソウゾウを設立
2015年11月 英国子会社Mercari Europe Ltdを設立
2016年3月 クラシファイドアプリ「メルカリ アッテ」の提供を開始
2016年4月 英国子会社Mercari Ltdを設立
2016年10月 CtoCマーケットプレイス「Mercari」(米国)において商品代金に応じた手数料の徴収を開始
2017年2月 ザワット株式会社を100%子会社化
カスタマーサポートセンターを福岡市博多区に設立
2017年3月 英国子会社Mercari Europe LtdがCtoCマーケットプレイス「Mercari」の提供を開始
2017年4月 配送サービス「大型らくらくメルカリ便」開始
2017年5月 本・CD・DVD等に特化したCtoCマーケットプレイス「メルカリ カウル」の提供を開始
国内子会社ザワット株式会社はメルカリとの吸収合併により消滅
2017年6月 配送サービス「ゆうゆうメルカリ便」開始
2017年7月 ライブ動画配信機能「メルカリチャンネル」開始
2017年8月 ブランド品に特化したCtoCマーケットプレイス「メルカリ メンズ」の提供を開始
2017年11月 国内子会社株式会社メルペイを設立
即時買取サービス「メルカリNOW」開始
2018年2月 福岡市にてシェアサイクルサービス「メルチャリ」の提供を開始
2018年4月 スキルシェアサービス「teacha」の提供を開始
2018年6月 東証マザーズに上場
2018年7月 株式会社メルペイコネクトを設立
2019年4月 経済産業省「IT注目企業2019」に選定
2019年6月 メルカリUS,AI研究を行うボストンオフィスを設立
「メルカリチャンネル」提供終了
2019年10月 フリマアプリ「メルカリ」,「ゆうパケットプラス」の提供開始
2020年1月 株式会社Origamiがメルカリグループへ参画

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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