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【新規上場企業分析】HPCシステムズのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

HPCシステムズの概要

HPCシステムズの基本情報

はじめにHPCシステムズ株式会社の基本情報を紹介します。上場日は2019年9月26日、市場はマザーズ、想定時価総額は78.9億円、上場時の時価総額は76.5億円でした。

会社名 HPC システムズ株式会社
設立日 2006年3月3日
上場日 2019年9月26日(承認日:2019年8月21日)
市場 マザーズ
証券コード 6597
業種 電気機器
決算期 6月
ホームページアドレス https://www.hpc.co.jp/
発行済株式総数 4,040,000 株(2019 年 8 月 21 日現在)
上場時発行済株式総数 4,090,000 株
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 50,000 株
想定価格 1,930円
想定時価総額 78.9億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 1,870円
上場時時価総額 76.5億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 114.7億(2020年10月6日現在)
資本金 153,000 千円(2019 年 8 月 21 日現在)
1単元の株式数 100 株
監査人 太陽有限責任監査法人
主幹事証券会社 SMBC日興証券
引受幹事証券会社


SBI証券
みずほ証券
東海東京証券
むさし証券
岩井コスモ証券

HPCシステムズの沿革

HPCシステムズ株式会社は、2006年に東京都において有限会社ハンズオンとして創業しました。
研究機関や企業に向けてコンピューティングシステムを提供するで事業を展開し、複数回の組織変更を経て2019年9月にマザーズへ上場しています。

2006年3月 有限会社ハンズオンを東京都板橋区に設立
2006年7月 有限会社ハンズオンを株式会社へ組織変更
商号をHPCシステムズ株式会社に変更し、東京都江東区に移転
2006年9月 株式会社エッチ・アイ・ティー及びプロサイド株式会社から、分社型吸収分割により組織再編を行いHPC事業及びCTO事業を開始
2009年11月 西日本営業所を京都市下京区七条通に開設
2011年7月 西日本営業所を京都市下京区烏丸通に移転
2011年10月 本社を東京都港区に移転
2016年7月 台湾支店を新北市に開設
2017年6月 ヤフー株式会社へ納品したディープラーニング活用に特化した省エネ性能の高いスーパーコンピュータ( 以下、スパコン)「kukai( クウカイ)」が、スパコンの省エネ性能ランキング「GREEN500」において世界第2位を獲得
2019年9月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2020年3月 名古屋営業所を名古屋市中区に開設
2020年5月 現地法人 Intelligent Integration Company Limited をベトナム ハノイ市に設立(2020年7月より事業開始)(現、非連結子会社)

HPCシステムズの事業内容

HPCシステムズは「人とコンピューティングの力で世界平和に貢献する」の経営理念の下、「研究者には研究する力、開発者には製品を開発する力を提供すること」をミッションに掲げ、コンピューティングシステムの開発・提供を行うことによって、研究者や開発者の活動をサポートすることを目的とした事業を展開しています。

HPCシステムの事業セグメントは2つに分割されており、専門的な知見を求められる科学技術計算用コンピュータを取り扱う「HPC事業」と、安定的で信頼性の高い製品供給を求められる産業用コンピュータを取り扱う「CTO事業」の2つの事業を展開しています。

以下は、HPCシステムの主要な事業と事業セグメントを表した図です。

  1. HPC事業
  2. CTO事業
HBCシステムズの事業系統図

① HPC事業   

「HPC事業」は、主に大学などの研究機関を対象とした科学技術計算用コンピュータに関連するサービスの提供を行う事業セグメントです。

HPC事業で提供される科学技術計算用コンピュータは、特にライフサイエンス(生命科学)とマテリアルサイエンス(材料科学)分野に強みを持ち、コンピュータ上で高精度に計算されたデータベースやAIなどの技術をシステム開発に応用しています。

この事業セグメントで提供されるコンピューティングシステムは、従来の業務用のシステムとは仕様が異なり、科学技術計算、モノ作りにおける流体構造シミュレーション、創薬や材料開発に必要な計算化学、ディープラーニング、AI解析、ビッグデータ解析など専門的な知見が必要とされるサービスです。

また、最近では、計算用コンピュータの柔軟な利用環境を求めるユーザの増加などを受け、従来のサーバーを設置するタイプであるオンプレミス型だけでなく、インターネット上にサーバーを保有するクラウド型による提供も行われています。

HPC事業では、システムの開発・提供だけでなく、導入後の運用支援や研究コンサルティングなどがワンストップで提供されており、HPC事業が顧客に対して提供するサービス内容とそのフローを表した図は以下の通りです。

HPC事業のサービス概念図

② CTO事業  

「CTO事業」は、企業向けに産業用コンピュータの開発・販売を行う事業セグメントです。

また、CTO事業で提供される産業用コンピュータは、製造装置や工作機械、インフラシステムの監視制御、医療機器などに搭載されるタイプの組込コンピュータと呼ばれるシステムであり、さまざまな産業分野に活用されています。

産業用コンピュータの特徴の一つは、組み込まれたコンピュータにトラブルが起き、使用できない時間(ダウンタイム)が発生した場合、顧客企業にとっての操業ロスに直結してしまう点です。そのため、一般的な量産品であるコンピュータと比較して高い安定性が要求されます。

また、産業用コンピュータには、長期的な耐久性もシステムの安定性と同様に求められます。そのため、苛酷な温度、静電気、電波、振動、ノイズ、ほこり等設置環境に係る耐環境性、連続稼動や長期使用に耐える頑健性・信頼性、異常動作からの早期復旧力やメンテナンス性、省スペース性などのユーザーニーズに対応するためのシステム開発が進められています。

以下は、CTO事業におけるサービス内容とオペレーションフローを表した図です。

CTO事業のサービスフロー

有価証券報告書情報

経営指標(過去3期分)

第15期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:47.3億円(前年比△12.4%)
  • 経常利益:4.7億円(前年比+26.8%)
  • 当期純利益:3.1億円(前年比+40.1%)
第13期 第14期 第15期
決算年月 2018年6月 2019年6月 2020年6月 
売上高(千円) 4,053,088 5,395,799 4,725,289
経常利益(千円) 291,743 367,032 465,396
当期純利益(千円) 189,852 219,489 307,426
純資産額(千円) 832,636 1,053,464 1,455,331
総資産額(千円) 2,022,035 2,277,072 2,654,205
自己資本比率 41.2% 46.2% 54.8%
営業キャッシュフロー(千円) △190,575 536,941 341,513
投資キャッシュフロー(千円) △47,366 △47,772 △61,455
財務キャッシュフロー(千円) 19,085 △126,389 181,246
現金・現金同等物の期末残高(千円) 575,674 938,336 1,399,459
従業員数 81人 84人 85人

 

経営指標(過去5期分)

過去5期の業績を見ると、売上は4年間で約1.6倍の成長していますが、第14期に50億を超えた売上は、第15期には47億となりました。
他方、利益に関しては、断続的に右肩上がりの成長を続け、第15期は5期で経常益、純利益共に過去最高益となっています。

なお、HPCシステムズは、2019年7月10日付で普通株式1株につき500株の株式分割を実施しました。

第11期 第12期 第13期 第14期 第15期
決算年月 2016年6月 2017年6月 2018年6月 2019年6月 2020年6月 
売上高(千円) 2,895,869 3,900,793 4,053,088 5,395,799 4,725,289
経常利益(千円) 75,156 254,234 291,743 367,032 465,396
当期純利益(千円) 38,994 162,961 189,852 219,489 307,426
資本金(千円) 153,000 153,000 153,000 153,000 200,220
発行済株式総数 8,080 8,080 8,080 8,080 4,119,000
純資産額(千円) 479,822 642,784 832,636 1,053,464 1,455,331
総資産額(千円) 1,184,537 1,737,114 2,022,035 2,277,072 2,654,205
自己資本比率 40.5% 37.0% 41.2% 46.2% 54.8%
従業員数 63人 74人 81人 84人 85人

セグメント別業績

第15期のセグメント別経営成績は表の通りです。
売上構成比は以下の通りです。
主に研究機関などを顧客するHPC事業が、CTO事業の約2倍の売上構成を占める売上構成となっています。
また、第15期は、新型コロナウイルスなどのマイナス要因などが影響し、売上は両セグメントとも前年比で減少しました。

  • HPC事業:67.7%
  • CTO事業:32.3%
指標 全体 HPC事業 CTO事業
売上高(百万円) 4,725 3,198 1,527
売上高前年同期比 △12.4% △18.4% △5.4%

 

上場時の株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
TKTH投資事業有限責任組合 3,050,500 70.10% 180日間
菱洋エレクトロ株式会社 450,000 10.34% 180日間
ナラサキ産業株式会社 279,000 6.41% 180日間
小野 鉄平 133,000 3.06% 180日間
椎名 訓子 45,000 1.03%
株式会社ハイアテック 40,000 0.92%
長谷川 真樹 30,000 0.69% 180日間
関 浩行 28,500 0.65% 180日間
齋藤 正保 28,500 0.65% 180日間
廣石 昭彦 25,500 0.59%

上場時(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

公募価格は1,990、吸収金額(調達額)は61.7とされています。 また初値は、1,870となりました。

仮条件 1,930円 ~ 1,990円
公募・売出価格 1,990円
想定価格 1,930円
初値 1,870円 (公募価格比-6.0%)
公募株数 50,000 株
売出株数 2,731,400 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 417,100 株
吸収金額(調達額) 61.7億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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