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【新規上場企業分析】ティアンドエスのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

概要

基本情報

まずはティアンドエスの基本情報を紹介します。
上場日は2020年8月7日、市場はマザーズ、想定時価総額は46.4億円です。

会社名 ティアンドエス(T&S) 株式会社
設立日 2016年11月1日
上場日 2020年8月7日(承認日:2020年7月3日)
市場 マザーズ
証券コード 4055
業種 情報・通信業
決算期 11月
ホームページアドレス https://www.tecsvc.co.jp/
発行済株式総数 1,580,700 株(2020 年 7 月 3 日現在)
上場時発行済株式総数 1,750,700 株
※公募分を含む
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある
公募株数 170,000 株
想定価格 2,650円
想定時価総額 46.4億円
(※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金 74,120,000円(2020 年 7 月 3 日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 双葉監査法人
主幹事証券会社 いちよし証券
引受幹事証券会社 野村證券
SBI証券
極東証券
東洋証券
マネックス証券
岡三証券
楽天証券

沿革

ティアンドエスは、2016年に横浜市において設立したソフトウェア企業です。
顧客企業のシステム開発・運用保守の請負いをはじめ、インフラ構築やAI関連のソフトウェア開発など、ソフトウェア関連の業務を幅広く行っています。

2016年11月 神奈川県横浜市西区を本社、神奈川県横浜市神奈川区を横浜開発センターとして、株式会社テッ クジャパン、株式会社シナノシステムエンジニアリングの新設合併によりティアンドエス株式会 社を設立
2017年2月 メディク・クエスト株式会社(関連会社)の保有株式の全てを譲渡
2017年4月 株式会社ミクスウェイ(関連会社)の保有株式の一部を売却
2017年5月 株式会社ベイアット(関連会社)を清算
2017年11月 業務効率化を目的とし横浜開発センターを本社へ統合
2018年3月 ISO27001をティアンドエス株式会社本社にて取得
2018年6月 三重県四日市市に四日市事業所を開設
2019年7月 岩手県北上市に北上事業所を開設
東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターとの共同研究契約締結

事業内容

ティアンドエスは、「あらゆる産業において、ソフトウエア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足 そして豊かさを提供すると共に、社員を大切にし、株主様に貢献する」を企業理念として、主に法人向けソフトウェアの開発や運用、管理を行っています。

ティアンドエスの事業は、以下のように3つのカテゴリーに区分されており、主要事業のビジネスモデルは以下の通りです。

  1. ソリューションカテゴリー
  2. 半導体カテゴリー
  3. 先進技術ソリューションカテゴリー
ティアンドエスのビジネスモデル

① ソリューションカテゴリー

ティアンドエスでは、ソリューションカテゴリーを「相対的に安定したベースロード的な利益体質の事業基盤」として位置付けています。
ソリューションカテゴリーは、3つのカテゴリーの中で最も売上が多いカテゴリーであり、
会社の基盤となっている部門です。
また、顧客企業を業界特化させず、製造業、サービス業などあらゆる産業分野をターゲットとしています。

①-1 ソリューションカテゴリーのサービス

ソリューションカテゴリーでは、ユーザー企業へ技術や人材を提供する形でサービス提供を行っています。
ソリューションカテゴリーでは、システム開発だけでなく、システムの要件定義から、設計、コーディング、テスト・検証及びシステム運用・保守までのIT開発全般に対応した開発チームを提供しているのが特徴です。
また、ユーザー企業の要望に応じた対応ができるように、請負、派遣の2軸で開発チームを編成しています。

①-2 ソリューションカテゴリーのユーザー

ソリューションカテゴリーでは、幅広い産業分野のユーザー企業にサービス提供を行っていますが、特に大手企業が主要な顧客となっています。
また、大手企業が顧客の軸となっているため、その関係性を生かして大手企業の子会社や関連会社との取引を増加させることが、ソリューションカテゴリーの経営戦略です。

② 半導体カテゴリー

ティアンドエスでは、半導体カテゴリーを「半導体工場内システムの運用・保守を支援する安定分野」として位置付けています。
半導体産業は日本において20-30年ほど前に比べると縮小している分野です。しかし、NAND Flashメモリの領域においては、年に1工場の割合で増加しており、ティアンドエスでは安定的な分野であるとみなしています。

②-1 半導体カテゴリーのサービス

半導体カテゴリーでは、半導体工場へ人材を常駐させる形でサービス提供を行っています。
半導体工場において、ティアンドエスから派遣された技術者が担う作業は、工場内のシステム運用と、システム保守です。
システム運用サービスでは、工場内システムのスムーズな運用のためにデータ管理やセキュリティチェックの作業をサービスとして提供します。
一方、システム保守サービスは、工場内で稼働する生産システムや社内インフラシステム等の改良・改修や調整・修理を行うサービスです。
両サービスとも、工場が存続する限り安定的継続できる事業であることも、ティアンドエスが半導体カテゴリーを安定分野として位置付ける理由の一つです。

②-2 半導体カテゴリーのユーザー

半導体カテゴリーのユーザー企業は、半導体工場を保有する企業です。
特に、ティアンドエスでは、東芝グループやキオクシア(旧東芝メモリ)の半導体工場への技術者の派遣を行っています。

③ 先端技術ソリューションカテゴリー

ティアンドエスでは、第3のカテゴリーである先端技術ソリューションカテゴリーを「高度なソフトウエア技術により新市場を創出する成長分野」と位置付けています。
これまで培った高度なソフトウエア開発力を武器に、急成長が見込まれる産業領域(AI、画像処理・認識・ 機械学習、ロボット、自動運転、メモリ高速化等)に重点を置くカテゴリーです。

③-1 先端技術ソリューションカテゴリーのサービス

先端技術ソリューションカテゴリーで提供されるサービスは、ネットワーク・画像認識・ハードウエア制御・メモリ高速化等最新の高度技術を駆使して、ソフトウエアの高機能化や品質向上を目指すサービスです。また、現在ではAIテクノロージーを利用した業務も行っています。
このカテゴリーでは、非常に高度なソフトウェア開発技術が必要とされます。
そのため、ソフトウェア専門家の採用を行ったり、東北大学との間で共同研究開発を行っています。

③-2 先端技術ソリューションカテゴリーの現状と今後

先端技術ソリューションカテゴリーの事業は、他のカテゴリーとは異なり、現状では収益化に至っていません。
このカテゴリーの売上は、2019年11月期実績で売上高の4.8%でした。
そのため、事業規模の拡大を目指して、今後市場拡大が見込まれ、かつ高度なソフトウエ ア開発能力が必要とされる領域をターゲットに新規開拓を行っています。

有価証券報告書情報

経営指標(過去2期分)

第4期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:23億円(前年比+7.7%)
  • 経常利益:2.7億円(前年比+33.3%)
  • 当期純利益:1.8億円(前年比+25.6%)
第3期 第4期
決算年月 2018年11月 2019年11月
売上高(千円) 2,133,537 2,297,249 
経常利益(千円) 202,444 269,850
当期純利益(千円) 146,470 184,007
純資産額(千円) 271,126 455,133
総資産額(千円) 631,313 817,008
自己資本比率 42.9% 55.7%
営業キャッシュフロー(千円) 150,248 168,033
投資キャッシュフロー(千円) △12,601 △1,056
財務キャッシュフロー(千円) △76,276 △44,438
現金・現金同等物の期末残高(千円) 200,638 323,177
従業員数 232人 248人

経営指標(過去4期分)

4期の業績を見ると、売上高は3年で15倍以上の増加を記録しています。
また、売上の伸び率は1期から2期にかけて急上昇していることがわかります。
また、利益に関しては1期赤字であったものの、2期以降黒字の状態が続いており、利益額自体も伸び続けていることが読み取ることができます。

第1期 第2期 第3期 第4期
決算年月 2016年11月 2017年11月 2018年11月 2019年11月
売上高(千円) 134,473 1,905,323 2,133,537 2,297,249
経常利益(千円) △99,487 148,321 202,444 269,850
当期純利益(千円) △69,729 109,951 146,470 184,007
資本金(千円) 64,000 64,000 74,120 74,120
発行済株式総数 1,280 1,280 1,437 1,437
純資産額(千円) 4,584 114,535 271,126 455,133
総資産額(千円) 492,779 493,094 631,313 817,008
自己資本比率 0.9% 23.2% 42.9% 55.7%
従業員数 184人 223人 232人 248人

株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
武川 義浩 693,000 39.87% 90日
渡辺 照男 248,600 14.30% 90日
日下 理 187,000 10.76% 90日
遠藤 玲 122,100 7.03% 90日
日下 寛之 111,100 6.39% 90日
ティアンドエス従業員持株会 38,500 2.22% 継続保有
木村 実 37,400 2.15% 90日
福田 悦生 28,600 1.65% 継続保有
日下 藍子 25,300 1.46% 90日
渡辺 貴美子 22,000 1.27% 90日

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は2,650円、吸収金額(調達額)は7.3億円と予想されています。

仮条件 未発表
公募・売出価格 未発表
想定価格 2,650円
初値
公募株数 170,000 株
売出株数 77,000 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 30,000 株
吸収金額(調達額) 7.3億円
(※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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