目次
ステムリムの概要
ステムリムの基本情報
はじめに株式会社ステムリムの基本情報を紹介します。
上場日は2019年8月9日、市場はマザーズ、想定時価総額は1,533.6億円、上場時の時価総額は487.2億円でした。
会社名 | 株式会社ステムリム |
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設立日 | 2006年10月30日 |
上場日 | 2019年8月9日( 承認日:2019年7月5日) |
市場 | マザーズ |
証券コード | 4599 |
業種 | 医薬品 |
決算期 | 7月 |
ホームページアドレス | https://stemrim.com |
発行済株式総数 | 44,282,700 株(2019年7月5日現在) |
上場時発行済株式総数 | 52,382,700 株 ※公募分を含む。 ※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。 |
公募株数 | 8,100,000 株 |
想定価格 | 3,050円 |
想定時価総額 | 1,533.6億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算) |
初値 | 930円 |
上場時時価総額 | 487.2億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算) |
時価総額 | 496.5億円(2020年10月12日現在) |
資本金 | 812,475 千円(2019年7月5日現在) |
1単元の株式数 | 100 株 |
監査人 | EY 新日本有限責任監査法人 |
主幹事証券会社 | SMBC日興証券 |
引受幹事証券会社 | 大和証券 野村證券 みずほ証券 SBI証券 いちよし証券 岡三証券 楽天証券 西村証券㈱ |
ステムリムの沿革
株式会社ステムリムは、2006年に大阪大学大学院の玉井克人教授により設立されました。
その後、研究開発施設の拡大を続け、2019年8月にマザーズに上場しました。
2006年10月 | 大阪大学大学院医学系研究科の玉井克人教授らが同定した骨髄多能性幹細胞動員因子を医薬品として開発することを目的に会社設立。 |
2007年4月 | 大阪大学との共同研究を開始。以後、研究成果の知財化を進め、これまでに78件の特許を取得。(そのほか43件の特許を出願中) |
2008年10月 | 独立行政法人 科学技術振興機構(JST) 産学共同シーズイノベーション化事業に採択。 |
2009年12月 | 独立行政法人 科学技術振興機構(JST) A-STEP本格研究開発ハイリスク挑戦タイプに採択。 |
2010年4月 | 本社を彩都バイオインキュベータ(大阪府茨木市)に移転。彩都ラボ開設。 塩野義製薬株式会社と骨髄由来幹細胞動員因子に関する共同研究契約締結。 |
2011年11月 | 独立行政法人 科学技術振興機構(JST) A-STEP本格研究開発シーズ育成タイプに採択。 |
2012年6月 | 神戸ポートアイランド内に神戸ラボ(兵庫県神戸市)を開設。疾患モデル動物を用いた薬効試験の実施体制を強化。 |
2013年7月 | 彩都バイオインキュベータ内のラボを増床。加えて自社の動物飼育/実験施設を開設し、神戸ラボの機能を吸収。 |
2013年12月 | 独立行政法人 科学技術振興機構(JST) A-STEP本格研究開発シーズ育成タイプに採択。大阪大学の早期探索的臨床試験拠点整備事業と連携し、医師主導治験を支援。 |
2014年4月 | 大阪大学最先端医療イノベーションセンターの共同研究プロジェクトに採択(テーマは「体内再生誘導医薬開発のための非臨床試験及び新規候補物質の探索」)。大阪大学ラボ開設。 |
2014年5月 | 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 2013年度イノベーション実用化ベンチャー支援事業に採択。 |
2014年11月 | 塩野義製薬株式会社とHMGB1に関するライセンス契約締結。 |
2015年8月 | 国立大学法人大阪大学にてHMGB1に関する医師主導治験開始。 |
2017年3月 | HMGB1ペプチドに関する表皮水疱症を対象とした医師主導治験(第Ⅰ相試験)終了。 |
2017年8月 | 中小企業庁助成事業「戦略的基盤技術高度化支援事業」に採択。 |
2017年12月 | HMGB1ペプチドに関する表皮水疱症を対象とした医師主導治験(第Ⅱ相試験)開始。 |
2018年7月 | 株式会社ステムリム(StemRIM Inc.)に社名変更。 |
2019年4月 | HMGB1ペプチドに関する脳梗塞を対象とした企業治験(第Ⅱ相試験)開始。 |
2019年8月 | 東京証券取引所に株式を上場 |
ステムリムの事業内容
ステムリムは、「世界の健康と幸福の実現に貢献すること」を経営理念に掲げ、怪我や病気により損傷した生体組織の機能的再生・治癒を促進する医薬品である、「再生誘導医薬」の研究開発を行う企業です。
再生誘導医薬は、従来型の再生医療とは異なり、患者自身の体内に存在する細胞を活性化する方法で、より簡便かつ安全に、治療効果の高い再生医療を実現することを目指した医薬品です。
再生誘導医薬の開発によって、安定した品質による迅速な再生医療を実現する製品供給が可能となり、広く普及可能な新しい形の再生医療を実現することができます。
以下は、ステムリムの事業系統を表した図です。
① 再生誘導医薬とは?
「再生誘導医薬(Stem cell Regeneration-Inducing Medicine)」とは、生きた細胞や組織を用いることなく、医薬品(化合物)の投与のみによって、再生医療と同等の治療効果を得られる医薬品のことを示します。
これまでは、怪我や病気で身体の臓器や組織に大規模な損傷や不可逆的な病変による機能不全が生じた場合、一般的な医薬品による根治は難しく、回復には、正常な臓器と取り換える移植医療(臓器移植や輸血など)をおこなう他に方法がありませんでした。
一方で、このような移植医療は、臓器提供者(ドナー)の慢性的な不足と他人の臓器に対する拒絶反応、また倫理的な問題などから、すべての患者が享受できる、広く普及可能とはなり得ないという欠点を持つ治療法であるといえます。
このような移植医療の限界を突破する技術として、患者本人若しくは健常なドナー(提供者)から採取した細胞を、生体外で大量に培養することで、治療に必要な移植用細胞を確保したうえで患者に移植する再生医療/細胞治療が近年注目を集めています。
しかし、この医療方法も実用化に向けては数多くの解決すべき課題が存在する技術です。
このような背景のもと、ステムリムは、大阪大学との共同研究を通じて先駆的な概念を構築し生きた細胞を一切用いることなく、『物質(化合物)の投与によって、再生医療/細胞治療を実現する』をコンセプトとする、「再生誘導医薬」の開発を進めてきました。
以下は、従来型の移植医療や、再生医療/細胞治療に代わる医療である、「再生誘導医薬」医療のメカニズムを示した図です。
② 事業モデル
ステムリムは、医薬品の研究開発を主要な業務として運営しており、自社研究や大学などの研究機関との共同研究を通じて、医薬品を開発するための実験や研究を行うことが業務の中核となります。
自社や大学研究機関/パートナー企業と共同で、製造方法の開発、非臨床薬効薬理試験、安全性試験、初期臨床試験など医薬品開発で必要とされる試験を実施し、医薬品開発の成功可能性と知的財産価値を高めたうえで、国内外の製薬企業に対して、製品の開発権、製造権、販売権などをライセンスアウトします。
そして、ライセンスアウトした権利や、製品の売上をベースに計算されるロイヤリティ収益をはじめとした収益を計上することで売上を構築しています。
また、パートナー企業とは、ライセンス契約に至る前の比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提とした共同研究契約を締結することもあります。
この場合、パートナー企業から契約一時金や共同研究収入を得ることで、自社の費用負担を低減しつつ、パートナー企業の開発リソースも活用することで、研究開発を加速できるメリットを得ることが可能です。
有価証券報告書情報
経営指標(過去3期分)
第14期の業績は以下の通りです。
- 売上高:1.0億円(前年比△100.0%)
- 経常利益:7.2億円
- 当期純利益:7.2億円
期 | 第12期 | 第13期 | 第14期 |
決算年月 | 2017年7月 | 2018年7月 | 2019年7月 |
事業収益(千円) | 300,000 | 200,000 | 100,000 |
経常利益(千円) | △157,140 | △327,338 | △722,594 |
当期純利益(千円) | △123,936 | △323,822 | △721,209 |
純資産額(千円) | 991,156 | 1,872,163 | 2,595,904 |
総資産額(千円) | 1,043,521 | 1,924,782 | 2,687,861 |
自己資本比率 | 95.0% | 97.3% | 96.5% |
営業キャッシュフロー(千円) | △285,347 | △260,976 | △777,789 |
投資キャッシュフロー(千円) | △403 | – | △6,553 |
財務キャッシュフロー(千円) | – | 1,200,057 | 1,437,374 |
現金・現金同等物の期末残高(千円) | 904,319 | 1,843,404 | 2,496,422 |
従業員数 | 18人 | 20人 | 21人 |
経営指標(過去5期分)
過去5期の業績を見ると、事業収益、利益とともに下落傾向であることがわかります。
第11期のみ黒字計上されていますが、それ以外のタームは全て赤字の状態です。
ステムリムの開発医薬品が市場に出ていない段階であり、売上をベースに計算されるライセンス収益などは、収益として計上されていない状態であるといえます。
医薬品の開発は、一般的に莫大な研究開発費用や時間を費やすため、製品が実際に市場に出て収益化されるまでに時間がかかることが特徴の一つです。
なお、ステムリムは、2019年3月1日付で普通株式1株につき100株、2019年3月8日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施しました。
期 | 第10期 | 第11期 | 第12期 | 第13期 | 第14期 |
決算年月 | 2015年7月 | 2016年7月 | 2017年7月 | 2018年7月 | 2019年7月 |
事業収益(千円) | 268,719 | 596,777 | 300,000 | 200,000 | 100,000 |
経常利益(千円) | △125,625 | 239,600 | △157,140 | △327,338 | △722,594 |
当期純利益(千円) | △115,347 | 201,290 | △123,936 | △323,822 | △721,209 |
資本金(千円) | 90,000 | 90,000 | 90,000 | 90,000 | 812,475 |
発行済株式総数 | 118,167 | 118,167 | 118,167 | 131,554 | 44,282,700 |
純資産額(千円) | 913,802 | 1,115,093 | 991,156 | 1,872,163 | 2,595,904 |
総資産額(千円) | 987,982 | 1,256,857 | 1,043,521 | 1,924,782 | 2,687,861 |
自己資本比率 | 92.5% | 88.7% | 95.0% | 97.3% | 96.5% |
従業員数 | 8人 | 9人 | 18人 | 20人 | 21人 |
ステムリムは、2018年12月、複数のベンチャーキャピタルなどから総額14億円以上の資金調達を行いました。
調達された資金は、研究開発費として充当することが目的とされており、以下URLは、この資金調達時に発表された資料になります。
上場時の株主構成
上位10位までの株主は、以下の通りです。
株主 | 所有株式数 | 比率 | ロックアップ |
玉井 克人 | 10,500,000 | 19.78% | 180日間 |
玉井 佳子 | 5,400,000 | 10.17% | 180日間 |
冨田 憲介 | 5,025,000 | 9.47% | 180日間 |
大久保 俊幸 | 4,650,000 | 8.76% | 180日間 |
株式会社SMBC信託銀行 信託口08900027 | 2,850,000 | 5.37% | 180日間 |
山﨑 尊彦 | 2,700,000 | 5.09% | 180日間 |
みやこ京大イノベーション投資事業有限責任組合 | 2,443,200 | 4.60% | 継続保有 |
大阪バイオファンド投資事業有限責任組合 | 2,433,300 | 4.58% | 180日間 |
大和日台バイオベンチャー投資事業有限責任組合 | 2,333,100 | 4.40% | 継続保有 |
金崎 努 | 2,115,000 | 3.98% | 180日間 |
上場時(IPO)の募集・売出し情報
公募・売出し・調達額情報
公募価格は1,000円、吸収金額(調達額)は294.6億円とされています。 また初値は、930円となりました。
仮条件 | 1,000円 ~ 1,700円 |
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公募・売出価格 | 1,000円 |
想定価格 | 3,050円 |
初値 | 930円 (公募価格比-7.0%) |
公募株数 | 8,100,000 株 |
売出株数 | 300,000 株 |
オーバーアロットメントによる売出し株数 | 1,260,000 株 |
吸収金額(調達額) | 294.6億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算) |