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【新規上場企業分析】日通システムのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

日通システムの概要

日通システムの基本情報

はじめに、日通システム株式会社の基本情報を紹介します。
上場予定日は2020年10月13日、市場はマザーズ、想定時価総額は289.3です。

会社名 日通システム株式会社
設立日 1981年4月2日
上場日 2020年10月13日(承認日:2020年9月7日)
市場 マザーズ
証券コード 4013
業種 情報・通信業
決算期 12月
ホームページアドレス https://www.nittsusystem.co.jp/
発行済株式総数 7,545,000 株(2020年9月7日現在)
上場時発行済株式総数 10,045,000 株 
※公募分を含む。
公募株数 2,500,000 株
想定価格 2,880円
想定時価総額 289.3億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金 131,800 千円(2020年9月7日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 有限責任 あずさ監査法人
主幹事証券会社 野村證券
引受幹事証券会社

みずほ証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
東海東京証券
SBI証券
岩井コスモ証券
エース証券
豊証券

日通システムの沿革

日通システムは、ITソリューション企業として1981年に名古屋市で創業しました。
企業向けに業務管理システムを提供する企業として事業を創業期から運営しており、現在は東海エリアだけでなく、東京・大阪をはじめ全国で事業を展開しています。

1981年4月 顧客企業の立場に立った、通信とコンピューターの最適ソリューションサービスを提供することを目的として、名古屋市熱田区金山に日通システム株式会社(資本金6百万円)を設立 オフィスコンピューター・システム開発・通信機器の販売を開始
1982年4月 本店を名古屋市中区金山に移転
1990年4月 名古屋市中区伊勢山に流通センター開設
1990年6月 事業拡大につき本店を名古屋市中区伊勢山に移転
1992年4月 就業管理・給与計算パッケージシステムの開発を開始
1994年4月 ビルセキュリティ管理システムの販売を開始
PCパッケージソフト(給与・就業管理)及び「NR-1」(タイムレコーダー)の販売を開始
1995年4月 東京都千代田区外神田に東京営業所(現:東京支店)、大阪市淀川区宮原に大阪営業所(現:大阪支店)を開設
1998年3月 就業管理ソフト「勤次郎M」の販売を開始
2001年9月 らくらく給与システム「Q太郎」の販売を開始
IDカードタイプの就業情報端末「NRX-1」の販売を開始
2002年1月 非接触型ICカード/指紋照合タイプの就業情報端末「NRX-1」の販売を開始
2003年1月 非接触型ICカード/指紋照合タイプの就業情報端末「NRX-m」の販売を開始
2004年1月 統合ERPパッケージ「勤次郎Enterprise」の販売を開始
2005年4月 Linux就業情報端末「NRL-1」「NRL-m」(磁気カード/非接触型ICカード/指紋照合対 応)の販売を開始
2008年3月 エヌイーシステムサービス株式会社より通信機器の設置工事事業(現:営業本部コンサルティング部)を譲受
2008年5月 電波時計受信装置「勤次郎JustTime」の販売を開始
2009年4月 本店を名古屋市中区栄に移転
2009年6月 貸会議室事業を目的として、名古屋市中区栄に子会社ネット・カンファレンス株式会社を設立
2010年2月 Linux就業情報端末「NRL」シリーズにて静脈認証対応タイプの追加販売を開始
2010年7月 クラウドサービス「勤次郎Enterprise for SaaS」の販売を開始
2011年2月 GPS同期型NTP(注)2タイムサーバー「勤次郎JustTime Server」の販売を開始
2011年4月 株式会社テックユーよりシステム開発事業を譲り受け、名古屋市中区栄に子会社日通システムソ リューション株式会社を設立
2012年3月 子会社であったネット・カンファレンス株式会社(貸会議室事業)を吸収合併
2012年6月 ソフトウエアパッケージの開発及び販売業を営む株式会社ケーエスビーを子会社化
2012年9月 買収した株式会社ケーエスビーの製品をクラウドサービスで提供することを目的として、東京都 千代田区外神田に子会社KSB for SaaS株式会社を設立
2013年2月 GPS時刻補正装置「勤次郎JustTime-GPS」の販売を開始
2013年3月 子会社であった株式会社ケーエスビーと日通システムソリューション株式会社を吸収合併
2013年7月 福岡市博多区博多駅前に九州支店を開設
2014年4月 製品開発を目的として、ベトナム社会主義共和国ハノイ市に子会社日通システムベトナム有限会 社(現:連結子会社)を設立
「労務環境改善システム」(現:「ヘルス×ライフ」)の販売を開始
2014年5月 「労務コストマネジメントシステム」の販売を開始
2015年7月 「マイナンバーセキュリティ管理システム」の販売を開始
2015年9月 「ストレスチェック ワンストップソリューションサービス」の販売を開始
2016年3月 札幌市中央区北五条西に札幌支店を開設
2016年4月 仙台市若林区新寺に東北支店を開設
2016年12月 マルチブラウザ(Internet Explorer、Google Chrome、Microsoft Edge)対応可能な「勤次郎 (就業管理)」の販売を開始
2017年2月 ヘルスケアソリューション「ヘルス×ライフシステム」の販売を開始
健康管理アプリ「ヘルス×ライフ」iPhone版をリリース
2017年11月 健康管理アプリ「ヘルス×ライフ」Android版をリリース
2017年12月 子会社であったKSB for SaaS株式会社を吸収合併
2018年1月 妊活・母子手帳アプリ「ママケリー」をリリース
2018年7月 勤次郎Enterpriseの機能を絞り込んだ廉価版「勤次郎Smart」の販売を開始
2019年4月 名古屋市中区栄の拠点を名古屋本部・名古屋支店とし、本店を東京都千代田区外神田に移転
「勤次郎Enterprise」働き方改革関連法対応プログラムの販売を開始
2019年7月 電子カルテシステム「ヘルス×ライフカルテ」の販売を開始
2019年9月 周産期医療ネットワーク専用システム「周産期WEB」の販売を開始
2020年3月 健康経営・働き方改革・産業保健 遠隔支援サービス「ケリーオンラインサービスサポート」の 販売を開始

日通システムの事業内容

日通システムは、「想像から創造へ」を企業理念として掲げ、顧客企業に対し、就業管理、人事管理、給与管理、健康管理などを行うためのシステムを開発・提供する業務を中核に運営する企業です。
事業セグメントは、システムの開発・提供を業務とする「HRM事業」と、貸会議室事業を行う「その他事業」の2つのセグメントに分割されています。
以下は、日通システムの主要な事業セグメントと事業系統を表した図です。

  1. 「HRM事業」
  2. 「その他事業」
日通システム 事業系統図

① HRM事業 

「HRM事業」は、業務効率化や生産性向上を目的とした業務管理システムを主要なプロダクトとして開発・提供するための事業セグメントです。
業務管理システムとは、就業管理、人事管理、給与管理、健康管理などを自動で運用するツールのことを示し、日通システムは、これらの業務管理システムをクラウド型やオンプレミス型で提供しています。

クラウド事業

「クラウド事業」では、企業に対して業務管理システムをクラウド型で提供しています。

「クラウド」とは、従来ハードウェアとしてデータの保存などに使用されるサーバーをインターネット上の「クラウド」というサーバーを利用することによって保存することを可能にしたシステムです。

このクラウドが存在することで、クラウドシステムのユーザーはサーバーがなくてもインターネット環境さえあればいつでも保存しているデータにアクセスすることができます。
また、クラウドを利用することでサーバーやソフトウェアを導入する必要がなくなるため、ユーザーはデータの保存や管理を低コストで運用することができます。

現在、様々なシーンで勤怠管理、顧客管理、給与管理などがクラウドで運用されています。

日通システムの「クラウド事業」では、『クラウドサービス 統合ERP 「勤次郎Enterprise」』を主要プロダクトとして企業へ提供しています。
このシステムは、就業管理・人事管理・給与管理・健康管理・電子カルテ管理などを一括して行うことのできるクラウド型業務管理システムです。

また、クラウドサービスは月額課金などの期間をベースとした課金制で運用されており、日通システムはシステムを導入した顧客企業から経常的に収益を獲得することができます。

オンプレミス事業

日通システムでは顧客の要望に応え、より多くの顧客層から収益を獲得するため、業務管理システムを「オンプレミス事業」においてオンプレミス型で提供しています。

オンプレミスとは、クラウドのように情報をインターネット上ではなく、企業の施設内などに設置するサーバーやソフトウェアに保管するシステムのことを示します。

「オンプレミス事業」で提供される主要なプロダクトは、『統合ERPパッケージ 「勤次郎Enterprise」』という製品であり、その機能や料金体系は「クラウド事業」で取り扱われるサービスとほぼ同一のサービスです。

② その他事業 

日通システムでは、「その他の事業」として、スペースの有効活用を目的とした貸会議室事業を2つめの事業セグメントとして運営しています。

この事業は、イベント、セミナー、会議・打ち合わせなど、多目的な用途に応じて利用できるスペースや設備を一定時間で貸出提供することで利用料を収益として獲得するサービスです。

また、顧客の利便性を高めるため、各会議室(東京、大阪)をテレビ会議システムで接続し、会議室同士でのテレビ会議ができるような設備を整えています。

有価証券報告書情報

連結の経営指標(過去2期分)

第39期の連結の業績は以下の通りです。

  • 売上高:31.9億円(前年比+16.1%)
  • 経常利益:4.6億円(前年比+42.0%)
  • 当期純利益:3.3億円(前年比+40.2%)
第38期 第39期
決算年月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 2,747,114 3,188,571
経常利益(千円) 323,878 459,801
当期純利益(千円) 236,802 332,074
純資産額(千円) 1,277,148 331,750
総資産額(千円) 2,282,227 1,587,463
自己資本比率 56.0% 62.5%
営業キャッシュフロー(千円) 361,738 545,821
投資キャッシュフロー(千円) △302,052 △285,035
財務キャッシュフロー(千円) 53,378 △108,932
現金・現金同等物の期末残高(千円) 472,258 626,463
従業員数 197人 235人

 

単体の経営指標(過去5期分)

5期の業績を見ると、売上は1.6倍程度の増加を見せています。
また。利益に関しても、5期の間に1.5倍程度の増加を見せており、過去5期の間は全て黒字の状態で期を終えています。

また、この経営指標に関する主な注釈事項は以下の通りです。

  • 第37期は、決算期を3月31日から12月31日に変更した影響により、2017年4月1日から2017年12月31日までの9か月間となる。
  • 2017年3月10日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を実施。
第35期 第36期 第37期 第38期 第39期
決算年月 2016年3月 2017年3月 2017年12月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 1,985,467 2,121,417 1,614,542 2,747,114 3,188,571
経常利益(千円) 284,811 210,899 58,818 300,696 432,960
当期純利益(千円) 213,961 158,891 38,643 213,621 305,233
資本金(千円) 98,400 98,400 98,400 98,400 98,400
発行済株式総数 142,900 1,429,000 1,429,000 1,429,000 1,429,000
純資産額(千円) 927,180 1,071,755 1,108,558 1,307,752 1,591,561
総資産額(千円) 1,764,457 1,734,114 1,887,230 2,351,907 2,575,078
自己資本比率 52.5% 61.8% 58.7% 55.6% 61.8%
従業員数 163人 172人 176人 171人 197人

 

セグメント別業績

第39期のセグメント別販売実績は表の通りです。
ほぼ全ての売上構成は、クラウド型やオンプレミス型でのシステム提供を行うHRM事業の売上によって占められています。
また、売上の成長率を見ても、HRM事業でプラス計上された数値が、ほぼそのまま全体の数値へ反映されていることがわかります。

  • クラウド事業:99.0%
  • 事業:1.0%
指標 全体  HRM事業 その他事業
売上高(千円) 3,188,571 3,155,167 33,404
売上高前年同期比 +16.1% +16.8% △27.7%

 

株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
エヌイーシステムサービス株式会社 3,585,000 47.51% 90日間
日通システム持株会 1,473,700 19.53% 180日間
加村 稔 950,000 12.59% 90日間
MK株式会社 550,000 7.29% 90日間
三菱UFJキャピタル株式会社 450,000 5.96% 90日間
國井 達哉 183,500 2.43% 90日間
加村 光子 160,000 2.12% 90日間
加村 光造 46,800 0.62% 90日間
西垣 延夫 36,000 0.48% 90日間
鷲尾 康史 25,000 0.33% 90日間

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は2,880、吸収金額(調達額)は82.8と予想されています。

仮条件 未発表
公募・売出価格 未発表
想定価格 2,880円
初値
公募株数 2,500,000 株
売出株数 375,000 株
オーバーアロットメントによる売出し株数
吸収金額(調達額) 82.8億円 (※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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