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【新規上場企業分析】 AI inside(エーアイインサイド) のIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

AI inside(エーアイインサイド) の概要

AI insideの基本情報

はじめにAI inside株式会社の基本情報を紹介します。上場日は2019年12月25日、市場はマザーズ、想定時価総額は94.2億円、上場時の時価総額は446.0億円でした。

会社名 AI inside(えーあいいんさいど)株式会社
設立日 2015年8月3日
上場日 2019年12月25日(承認日:2019年11月21日)
市場 マザーズ
証券コード 4488
業種 情報・通信業
決算期 3月
ホームページアドレス https://inside.ai/
発行済株式総数 3,240,000 株(2019年11月21日現在)
上場時発行済株式総数 3,540,000 株 
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 300,000 株
想定価格 2,660円
想定時価総額 94.2億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 12,600円
上場時時価総額 446.0億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 1679.5億円 (2020年9月7日現在)
資本金 465,200 千円(2019年11月21日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 有限責任監査法人トーマツ
主幹事証券会社 野村證券
引受幹事証券会社 大和証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
SMBC日興証券
SBI証券
岩井コスモ証券
マネックス証券
いちよし証券
楽天証券

AI insideの沿革

AI inside株式会社は、2015年に東京都で創業し、手書き文字を認識するAIの開発・提供を創業期から運営してきました。
また、AI insideは、2019年12月に東証マザーズへ上場しています。

2015年8月 東京都渋谷区にAI inside株式会社設立、AI手書き文字認識サービスを提供開始
2016年12月 「NVIDIA Inception Program」のパートナー企業として認定
2017年10月 業務拡張のため、本社を東京都渋谷区渋谷三丁目の渋谷第一生命ビルディングに移転
2017年11月 「DX Suite」、AI-OCRサービス「Intelligent OCR」を提供開始
2018年9月 帳票の仕分けAIサービス「Elastic Sorter」を提供開始
2019年1月 東日本電信電話株式会社と「DX Suite」OEM製品「AIよみと〜る」を共同発表、提供開始
2019年3月 株式会社エヌ・ティ・ティ・データと、行政専用の閉域ネットワークであるLGWANを活用した「DX Suite」を、地方公共団体向けに提供開始
2019年6月 非定型帳票AI-OCRサービス「Multi Form」を提供開始
エッジコンピューティング用ハードウェア「AI inside Cube」をて今日開始
2019年12月 東証マザーズに上場

AI insideの事業内容

AI insideは、「世界中の人・物にAIを届け、豊かな未来社会に貢献すること」をミッションに掲げ、AIを利用したシステムを提供する企業です。
AI insideが、提供するシステムは、手書き文字の認識や伝票整理機能が備わっており、従来、企業が外注していた手書きデータの書き起こしなどの作業を代行することを目的としたシステムです。
「DX Suite」と「AI inside Core」の2つが主要な製品とされており、多くの企業や官公庁を中心に提供されています。

以下は、AI insideで提供される主要な製品と事業系統を表した図です。

  1. DX Suite
  2.  AI inside Core

AI inside ビジネスモデル

① DX Suite

「DX Suite」は手書き文字や複数のタイプの帳簿を読みとり、正確に分類し表示するためのシステムです。
「DX Suite」は、その内部に、以下3つの機能を持つアプリケーションを有しており、どのアプリケーションを取捨選択するかによってシステム利用料が異なる仕様になっています。

  • 「Intelligent OCR」
      手書きの文字を認識し「定型帳票」を読み取るアプリケーション。
  • 「Elastic Sorter」
    「Intelligent OCR」のオプションであり、順不同の複数種類の帳票を種類ごとに仕分けるアプリケーション。
  • 「Multi Form」
    「Intelligent OCR」のオプションであり、「非定型形帳票」の読み取り、また、それらを構造化しデータ化するアプリケーション。

「DX Suite」は、クラウド型のサービスです。
「クラウド」とは、従来ハードウェアとしてデータの保存などに使用されるサーバーをインターネット上の「クラウド」というサーバーを利用することによって保存することを可能にしたシステムです。

このクラウドが存在することで、クラウドシステムのユーザーはサーバーがなくてもインターネット環境さえあればいつでも保存しているデータにアクセスすることができます。
また、クラウドを利用することでサーバーやソフトウェアを導入する必要がなくなるため、ユーザーはデータの保存や管理を低コストで運用することができます。

また、料金体系は、基本料金となる「月額固定費用」、帳票の読み取り毎に発生する「月額従量費用」、システム導入のための「初期費用」によって構成されており、それぞれAI insideの収益となります。

DX Suiteの画像 AI inside 画像2

② AI inside Cube

「DX Suite」がクラウド型でユーザーへ提供されている一方、「AI inside Cube」は、官公庁や地方公共団体からの要望に応えオンプレミス型での提供を可能にしたシステムです。

オンプレミスとは、クラウドのように情報をインターネット上ではなく、企業の施設内などに設置するサーバーやソフトウェアに保管するシステムのことを示します。


「AI inside Cube」は、「DX Suite」をインストールするためのハードウェアであり、「AI inside Cube」の内部にAI処理に必要なチップなどを組込むことでクラウドを経由せずに「DX Suite」の機能を利用することを可能にした装置です。

なお、このシステムは月額定額の料金モデルが採用されています。

有価証券報告書情報

連結の経営指標(過去3期分)

第5期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:15.9億円(前年比+257.4%)
  • 経常利益:4.1億円
  • 当期純利益:4.2億円
第3期 第4期 第5期
決算年月 2018年3月 2019年3月 2020年3月 
売上高(千円) 279,435 445,264 1,591,454
経常利益(千円) △311,479 △182,914 409,000
当期純利益(千円) △340,533 △183,865 419,981
純資産額(千円) 313,875 605,210 2,305,788
総資産額(千円) 392,465 966,649 3,007,856
自己資本比率 80.0% 62.6% 76.7%
営業キャッシュフロー(千円) △321,554 34,172 580,459
投資キャッシュフロー(千円) △54,699 △12,256 △103,679
財務キャッシュフロー(千円) 480,000 575,200 1,258,241
現金・現金同等物の期末残高(千円) 201,998 799,069 2,534,089
従業員数 30人 36人 67人

 

単体の経営指標(過去5期分)

5期の業績を見ると、4年間で売上は172倍という驚異的な勢いで売上を増加させています。

一方で、利益に関しては、創業から4年間は赤字経営が続き、特に第3期は3億円以上の赤字を計上しましたが、第3期をピークに赤字は減少を続け、第5期は初の黒字転換に成功しました。

また、AI insideは、2018年7月19日付で株式1株につき1,000株の株式分割を行っています。

第1期 第2期 第3期 第4期 第5期
決算年月 2016年3月 2017年3月 2018年3月 2019年3月 2020年3月
売上高(千円) 9,259 41,553 279,435 445,235 1,591,454
経常利益(千円) △51,549 △140,645 △311,479 △182,914 409,000
当期純利益(千円) △51,654 △140,935 △340,533 △183,865 419,981
資本金(千円) 37,100 184,500 424,500 465,200 1,106,000
発行済株式総数 2,117 2,450 2,850 3,240,000 3,666,000
純資産額(千円) 20,545 104,209 313,875 605,210 2,305,788
総資産額(千円) 27,054 130,401 392,465 966,649 3,007,856
自己資本比率 75.9% 79.9% 80.0% 62.6% 76.7%
従業員数 6人 12人 30人 36人 67人

 

AI insideは、2018年8月に投資会社など複数の企業から総額5.3億円の資金調達を実施しました。
また、この資金調達の目的は、研究開発と事業拡大であると発表されています。
以下は、この資金調達に関する記事の詳細URLです。

2018年8月に実施された資金調達に関する記事

上場時の株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
渡久地 択 2,000,000 56.77% 90日間
アクサ生命保険株式会社 250,000 7.10% 90日間
UTEC4号投資事業有限責任組合 221,000 6.27% 継続保有
株式会社レオパレス21 200,000 5.68% 90日間
中沖 勝明 148,000 4.20% 90日間
日本郵政キャピタル株式会社 147,000 4.17% 継続保有
大日本印刷株式会社 100,000 2.84% 90日間
名井 将元 98,000 2.78% 90日間
レカム株式会社 58,000 1.65% 90日間
第一生命保険株式会社 50,000 1.42% 90日間

上場時(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

公募価格は3,600円、吸収金額(調達額)は20.7億円とされています。 また初値は、12,600円となりました。

仮条件 3,000円 ~ 3,600円
公募・売出価格 3,600円
想定価格 2,660円
初値 12,600円(公募価格比+250.0%)
公募株数 300,000
売出株数 200,000
オーバーアロットメントによる売出し株数 75,000
吸収金額(調達額) 20.7億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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