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【上場企業決算分析】Gunosy(グノシー)の最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

株式会社Gunosyは、「グノシー」、「ニュースパス」を中心とした情報キュレーションサービスを展開する企業です。

2012年に東京都で設立され事業を開始し、2015年4月に東証マザーズへ上場ています。
さらに、2017年には、東証1部へ市場変更を行いました。

①Gunosyの決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年5月(実績) 19年5月(実績) 前年比 20年5月(計画) 計画比
売上高 13,987 15,017 △6.9% 14,000 △0.1%
売上総利益
営業利益 859 2,302 △62.7% 1,000 △14.0%
経常利益 838 2,289 △63.4% 960 △12.7%
当期純利益 386 2,009 △80.3% 565 △31.6%

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、5期にわたるGunosyの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年5月期の通期の売上高は139.8億円、営業利益は8.6億円であり、営業利益率は6.1%です。

営業推移

①-3 連結の経営指標

2020年5月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:139.9億円(前年比-6.9%)
  • 経常利益:8.4億円(前年比-63.4%)
  • 当期純利益:3.9億円(前年比-80.8%)
決算年月 2019年5月期
2020年5月期
売上高(百万円) 15,017 13,987
経常利益(百万円) 2,289 838
当期純利益(百万円) 2,009 386
純資産額(百万円) 10,985 10,921
総資産額(百万円) 13,982 12,762
自己資本比率 77.7% 84.8%
営業キャッシュフロー(百万円) 2,067 △631
投資キャッシュフロー(百万円) 130 △986
財務キャッシュフロー(百万円) 192 △459
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 11,157 9,075

 

4Q業績ハイライト (2020年5月期)

以下は、2020年5月期の業績を4Qに分けた指標です。
2Q目で利益が赤字になっていることがわかります。
一方、4Q目は売上こそ2Q目に比べ下がっているものの、利益水準は回復しています。
2020年7月14日に発表された2020年5月期の決算資料では、4Q目の利益水準が回復した要因として、広告宣伝費を大幅に削減したことであるとの見解を示しています。

期間 2020年5月期
1Q
2020年5月期
2Q
2020年5月期
3Q
2020年5月期
4Q
売上高(百万円) 3,879 3,706 3,706 2,696
営業利益(百万円) 232 △76 344 359
経常利益(百万円) 218 △87 353 354
当期純利益(百万円) 195 △68 92 167
純資産額(百万円) 11,141 10,632 10,762 10,921
総資産額(百万円) 13,806 13,578 13,323 12,762
自己資本比率 80.1% 77.6% 80.0% 84.8%

 

経営指標(過去5年分)

売上の推移を見ると、毎年売上高を伸ばしていたものの、2019年5月期を境に売上が減少しています。
一方、利益に関しても、赤字にこそなっていませんが、2019年5月期をピークに2020年5月期は前年と比べ急激な減少を見せています。

また、Gunosyは、2017年12月にそれまで上場していた市場である東証マザーズから東証一部への市場変更を行っています。
以下、上場した際に発表された記事の参考URLです。

Gunosyの東証一部上場に関する記事

決算年月 2016年5月 2017年5月 2018年5月 2019年5月 2020年5月
売上高(百万円) 4,599  7,739  11,201  15,017 13,987
経常利益(百万円) 566  1,516 1,939 2,289 838
当期純利益(百万円) 605 1,126 501 2,009 386
純資産額(百万円) 6,745 8,017 8,719 10,985 10,921
総資産額(百万円) 7,587 9,609 11,555 13,982 12,762
自己資本比率 88.90% 83.23% 75.12% 77.69% 84.75%

 

②Gunosyの事業内容

②-1 Gunosyとは?

Gunosyは「情報を世界中の人に最適に届ける」を企業理念に掲げ、インターネット上に存在する膨大な量の情報の中から、ユーザーの興味・関心にあわせてパーソナライズ化された情報を配信する情報キュレーションサービスを中心としたメディア事業を行っています。

Gunosyの情報キュレーションサービスの特徴について解説します。
国内にはGunosyの他にも、いくつかキュレーションサービスを提供するメディアがありますが、キュレーションサービスの特徴は、アルゴリズムを利用することで個人の興味・関心に合わせた情報を発信するメディアであるという点です。

通常のニュースメディアであれば、ユーザー全員に同じ情報が発信されますが、キュレーションメディアの場合は、個人の見たニュースの履歴などをもとにそれぞれに興味・関心があるとされるニュースをピックアップして発信します。

結果として、Gunosyのようなキュレーションメディアを利用するユーザーは、自分の検索や視聴履歴に基づいたニュースを受け取ることができます。

このようなキュレーションメディアのメリットは、個人が好みや有用性に合わせた情報を効率よく受け取れるだけでなく、インターネット上の検索が苦手なユーザーであっても、効率よく必要な情報を得ることが可能である点です。

主要事業のビジネスモデルは、以下の図の通りです。

Gunosyのビジネスモデル

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

Gunosyの情報キュレーションサービスの概要

グノシーは、「グノシー」、「ニュースパス」「LUCRA(ルクラ)」という3つの情報キュレーションサービスを軸に事業展開を行っています。
また、直近では、「グノシースポーツ」、「オトクル」の2つの情報キュレーションサービスの配信も行われています。
情報キュレーションサービスは、iOSやAndroidを媒体としてアプリケーションをダウンロードする形で配信が行われています。
それぞれのサービス概要は、以下の通りです。

グノシー ネット上の様々な情報を独自のアルゴリズムで収集し、評価付けを行い、ユーザーに届ける情報キュレーションサービスです。
ニュースパス 独自の情報解析・配信技術を用いて、提携メディアから配信されるニュースの中から自動的に選定した情報をユーザーに届るニュースアプリです。
LUCRA(ルクラ) グノシーと同じく、独自のアルゴリズムで情報を収集し、ファッションやコスメ、エンターテインメント、恋愛など様々な情報をユーザーに届けるサービスです。
グノシースポーツ 「グノシー」を応用して生まれた、スポーツに特化した情報を配信する専門アプリです。
オトクル 「オトク」が集まって「クル」をコンセプトに、身近なお店で使えるクーポンを配信するサービスです。ユーザーの興味を分析して、よく利用するレストランやカフェで使えるクーポンを配信しています。

なお、主要サービスである「グノシー」、「ニュースパス」「LUCRA(ルクラ)」合計の国内累計DL数は5,786万DLとなっています。(2020年5月時点)

Gunosyの収益モデル

Gunosyの主な収益源は、広告サービスを顧客企業へ提供することで獲得する広告収益です。
「広告配信」、「アドネットワーク」、「マーケティングソリューション」が対企業向けのサービスとして展開されており、広告収益のビジネスモデルは、前述した、情報キュレーションメディアの利点やノウハウを利用したものです。

それぞれの広告サービスの概要と特徴

それぞれの広告サービスの概要と特徴は以下の通りです。

  • 広告配信
    • 広告配信サービスは、「Gunosy Ads」と呼ばれる広告主に提供する広告商品のことを示します。
      このサービスは、独自に蓄積されたユーザーデータを活用し、広告主の商品やサービスとの親和性が高いユーザーに情報キュレーションサービスを通じて広告配信を行うサービスです。
      ユーザーが顧客企業の広告をクリックすることで課金されるシステム等を利用し、広告主から広告収入を得ています。
  • アドネットワーク(ADNW)
    • アドネットワークは、上記の「Gunosy Ads」を応用したサービスです。
      「Gunosy Ads」の広告配信で用いるノウハウを、スマートフォンに特化したアドネットワーク(複数の広告配信可能なメディアを束ねて広告を一括して配信する仕組み)へ応用することで広告配信を行い、広告収入を得ています。
      アドネットワークの利点は、様々なWebサイトやソーシャルメディアなどを「ひとつの媒体」とした広告出稿を行うことができる点です。
  • マーケティングソリューション
    • 「広告配信」、「アドネットワーク」は、広告収益を獲得するビジネスモデルでしたが、グノシーは、ソリューションサービスを提供することでの収益も得ています。
      グノシーが運営する「マーケティングソリューション」は、顧客の商品やサービス等の販売を促進するために、顧客が抱える問題点を分析し、それを改善するために必要なシステムを提案・構築するサービスです。

②-3 Gunosyの売上構成比

売上の構成比に着目して、直近4期の売上高を見ていきます。
売上を構成するセグメントについては前述した通りです。
2020年5月期のは特に4Qでに著しく減少しました。
特に、売上の屋台骨となるGunosy AdsとADNWの売上高の減少が顕著です。
Gunosyは、決算説明において、新型コロナウイルスの影響と広告ガイドラインを刷新し、審査基準を厳しくしたことが原因であると説明しています。

セグメント別

③Gunosyの主要KPIとその数値推移

③-1 アクティブユーザー数(MAU)

下の図は、Gunosyの月間アクティブユーザー数(Monthly Active Users)の推移を示した値です。MAUとも略される指標ですが、月一回以上ユーザーがサイトやアプリを訪れているかどうかを表しており、GunosyのようなWebアプリを提供する企業にとって非常に重要なKPIです。
Gunosyの3つのアプリの数値を見ると、2020年5月期の3Qから4Qにかけての月間アクティブユーザーは若干減っていますが、一年を通して見た場合(YonY)のユーザーは、全体的に12%増という結果になっています。
また、デイリーアクティブユーザー(DAU)という1日あたりのアクティブユーザー数も2019年5月期4Qと2020年5月期4Qを比較すると15%増加していると報告がなされています。
アプリの内訳を見ると、グノシーのMAUの伸びが停滞気味である一方、ニュースパスのMAUは際立って伸長していることがわかります。

 

アクティブユーザー数

③-2 IMPとCRMの進捗

前述したMAUやDAUは、Gunosyのユーザーがどれだけサイトを訪れたかという観点に立ち、Gunosyとユーザーの関係性を表した数値でした。
一方、ipmやCRMという指標はGunosyの広告における収益性を表した指標です。
impは、impressionの略語であり、広告がユーザーに表示された回数を示します。
CRMは、「Cost Per Mille」の略語で、Web広告を1,000回表示するごとに発生する広告費を表しています。

IMP CRM

2020年5月期4Qでは、imp、CRM共に急激な下落を見せています。
これは、広告の表示回数と広告単価の下落を意味しているため、広告による収益が著しく低下していることがわかります。
Gunosyは、これらの低下要因として、新型コロナウイルスによる影響と、広告の審査を厳しくしたことによる競争力の低下に伴うシェアの減少であるとの見解を示しています。

下の図は、2020年5月期4QにおけるGunosy adsとADNWの広告主数の推移とそれ以降の予測数値です。
Gunosyは4月に広告主数が大きく減少したものの、それ以降は回復傾向であるとの見方を示しています。
広告主数

④Gunosyのコスト構造

④-1 コスト構造の推移

Gunosyの事業コストは、2020年4Qにおいて大きく下落しています。
特に、これまで一定割合でコストの内訳を占めていた広告宣伝費及びアドネットワーク原価の減少割合が顕著です。
Gunosyは、新型コロナウイルスの影響による市況悪化や、巣ごもりによるDAU上振れを踏まえ自社の広告宣伝費を大きく削減した旨を決算報告にて発表しています。
また、アドネットワーク原価の減少に関しては、前述したADNWの売上減少による影響によるものであると考えられます。

 

コスト構造

④-2 その他コスト削減について

Gunosyは来季に向けたコスト削減の取り組みとして、広告宣伝費の抑制と、固定費の削減の2軸をコスト対策における中心的な措置として掲げています。
広告宣伝費の削減に関しては、メディア事業の収益性向上にフォーカスするため、メディアの健全化に取り組み、規模拡大を目指すための投資の抑制を行う旨を発表しています。
また、固定費の削減に関しては、役員報酬の削減、リモートワーク期間中のオフィス運営費用の削減を中心的な措置として掲げています。

⑤Gunosyの投資領域

⑤-1 DX事業の強化

Gunosyは、今後の経営戦略として、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業の強化を打ち出しています。
DX事業とは、企業がデータとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルの変革を目指すことを目的としたサービスです。

DX強化

DX事業の強化に関連した取り組みにおいて、Gunosyは、2019年12月に博報堂DYメディアパートナーズとDX事業における協業を開始しました。
また、このDX事業における協業の第一弾として、2020年6月に「Guhack」というSaaSプラットフォームの提供におけるプレスリリースを発表しています。
「Guhack」は放送枠ごとのアプリダウンロードやサイト流入などのデータを可視化し、テレビCMにおける広告効果のモニタリングや可視化された情報の共有を主な目的とするサービスです。

2019年12月 博報堂DYメディアパートナーズとDX事業における協業についての記事

2020年6月の「Guhack」のプレスリリースに関する記事

⑤-2 その他の投資部門

Gunosyは新規事業の一環として、2019年にリリースしたオトクルのサービス強化を行い、新たな収益の柱とするための施策を行っています。
オトクルは、元々身近なお店で使えるクーポンを配信するサービスでしたが、Gunosyでは、現行のオトクルサービスに加え、ECサービスの実装を目指したテストが現在行われています。
オトクル

さらにGunosyでは、これまで培ったデータ活用のノウハウを生かすためのGunosy Tech Labという機関への投資を積極的に行う方針であることを発表しました。
Gunosy Tech Labは、データ活用の促進と情報推薦を研究する社内の専門組織です。
研究された成果は、自社サービスでの実装、外部企業への提供、論文発表などでアウトプットされます。

グノシーテックラボ

⑥Gunosyの株価・時価総額推移

以下の図は、Gunosyの株価の変化を表したグラフです。

グノシーの株価

Gunosyの2020年7月28日時点の株価は785、時価総額は187億円です。
2020年5月期の通期の営業利益8.6億円に対して21.7倍という評価を受けている計算となります。

⑦Gunosyの会社情報

Gunosyの基本情報

まずはGunosyの基本情報を紹介します。
市場は東証1部で、決算月は毎年5月です。

会社名 株式会社Gunosy(ぐのしー)
設立日 2012年11月14日
市場 東証1部
証券コード 6047
業種 サービス業
決算期 5月
ホームページアドレス https://gunosy.co.jp/
発行済株式総数 23,877,774株
普通株式数 19,563,060株
資本金 4,077,000,000円 (2020年5月現在)
1単元の株式数 100株
従業員数 170人
平均年齢 30.5 歳
平均年収 6,000,000 円

Gunosyの沿革

Gunosyは、2012年、東京都で設立されました。
情報キュレーションサービス「グノシー」を中心としたサービスを展開し、2015年4月に東証マザーズへ上場し、2017年12月に東証1部に市場変更を行っています。

2012年11月 東京都港区六本木において株式会社Gunosy設立
2012年12月 本社を東京都港区虎ノ門に移転
2013年1月 「グノシー」iOS版のサービス提供開始
2013年2月 「グノシー」Android版のサービス提供開始
2013年11月 広告配信システムを構築し、広告代理店を介した広告営業及び広告配信を開始
本社を東京都港区芝に移転
2014年4月 「グノシー」海外版のサービス提供を開始
2014年6月 アドネットワークを構築し、サービス提供を開始
2014年12月 本社を東京都港区六本木に移転
2015年4月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2015年12月 株式会社ゲームエイトを子会社化
2016年6月 KDDI株式会社との協業サービスである「ニュースパス」サービス提供開始
2016年7月 株式会社Kumar(現 株式会社digwell)を子会社化
2017年5月 「LUCRA(ルクラ)」サービス提供開始
2017年12月 東京証券取引所市場第一部に市場変更
2018年1月 東京証券取引所貸借銘柄に指定
2018年7月 株式会社サイバーエージェントとの合弁会社、株式会社VIDPOOLを設立
シンガポールにて、子会社Gunosy Capital Pte. Ltd.を設立
2018年8月 AnyPay株式会社との合弁会社、株式会社LayerXを設立
2018年12月 「グノシースポーツ」サービス提供開始
2019年3月 「オトクル」iOS版のサービス提供開始
2019年7月 「オトクル」Android版のサービス提供開始
2019年8月 株式会社LayerXの株式の一部を売却により、同社を連結子会社から除外
2019年10月 サニーサイドアップと共同で新会社「Grill」を設立
2019年12月 株式会社ゲームエイトが株式会社Smarpriseを子会社化
博報堂DYメディアパートナーズとDX事業における協業を開始

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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