ファイナンス

【上場企業決算分析】freee(フリー)の最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

freeeは、2012年にCFO株式会社として東京都で設立された企業です。
「クラウド会計ソフト freee」を中心としたビジネス展開を行っており、会計ソフトの他マイナンバー管理ソフトや人事労務ソフトなどを企業向けに提供しています。
freeeは、2019年12月にマザーズへ上場しました。

① 決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年6月(実績) 19年6月(実績) 前年比 20年6月(計画) 計画比
売上高 6,895 4,516 +52.7% 6,700 +2.9%
売上総利益 5,337 3,530 +51.2%
営業利益 △2,681 △2,830 -2,876
経常利益 -2,938 -2,850 -3,127
当期純利益 -2,972 -2,778 -3,135

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、3期にわたるfreeeの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年6月期の通期の売上高は69.0億円、営業利益は-26.8億円であり、営業利益率は-38.9%です。

フリーの営業利益推移

※2018年6月期のみ単体の業績指標となります。

①-3 経営指標

2020年6月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:69.0億円(前年比+52.7%
  • 経常利益:-29.4億円
  • 当期純利益:-29.7億円
決算年月 2019年6月期
2020年6月期
売上高(百万円) 4,516 6,895
経常利益(百万円) △2,850 △2,938
当期純利益(百万円) △2,778 △2,972
純資産額(百万円) 4,510 13,854
総資産額(百万円) 7,380 17,898
自己資本比率 56.8% 75.1%
営業キャッシュフロー(百万円) △1,726 △1,380
投資キャッシュフロー(百万円) △539 △1,306
財務キャッシュフロー(百万円) 6,484 11,970
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 5,852 15,136

 

4Q業績ハイライト (2020年6月期)

以下は、2020年6月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上、粗利益とも期末にかけて上昇していますが、連動して販管費も上昇しており軒並み赤字経営となっています。

期間 2020年6月期
1Q
2020年6月期
2Q
2020年6月期
3Q
2020年6月期
4Q
売上高(百万円) 1,491 1,580 1,815 2,007
粗利益(百万円) 1,191 1,207 1,357 1,581
販管費(百万円) 1,586 1,802 2,248 2,285
営業利益(百万円) -395 -595 -891 -704

 

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は12倍もの大幅な成長をしています。
利益に関しては、軒並み赤字の状態が続いていますが、2018年6月期以降は、一旦赤字額が減り、現在はやや横ばいの状態です。
なお、freeeは2020年6月期中にマザーズへの上場を果たしています。

決算年月(百万円) 2016年6月 2017年6月 2018年6月 2019年6月 2020年6月
売上高 568 1,202 2,414 4,516 6,895
経常利益 -2,129 -2,205 -3,399 -2,850 -2,938
当期純利益 -2,138 -2,257 -3,405 -2,778 -2,972
純資産額 692 4,510 13,854
総資産額 2,415 7,380 17,898
自己資本比率 19.4% 56.8% 75.1%

※2019年6月期以降は連結の業績指標となります。

② 事業内容

②-1 クラウド会計ソフト「freee」

freeeは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、中小企業や個人事業主を中心とした顧客へ「クラウド会計ソフト freee」を中心にサービス提供を行う会社です。

クラウドとは、従来ハードウェアとしてデータの保存などに使用されるサーバーをインターネット上の「クラウド」というサーバーを利用することによって保存することを可能にしたシステムです。
このクラウドが存在することで、クラウドシステムのユーザーはサーバーがなくてもインターネット環境さえあればいつでも保存しているデータにアクセスすることができます。
また、クラウドを利用することでサーバーやソフトウェアを導入する必要がなくなるため、ユーザーはデータの保存や管理を低コストで運用することができます。

近年は、数多くの企業が、会計管理や労務管理をクラウドを利用して行うようになりました。

電子申告数の推移
上の図は、2019年から2020年に国税庁に提出されたe-Tax(電子申告)の利用状況とfreeeのクラウドサービスを利用して電子申告を行った件数の上昇率を比較した図です。
この図から近年、従来紙ベースで行われていた税金の申告の電子化や、クラウド会計ソフトの導入が急速に進んでいることがわかります。

②-2 その他のクラウドサービス

freeeは、2013年クラウドを利用した会計ソフトの提供からビジネスをスタートしました。
その後、クラウド給与計算ソフトやクラウドマイナンバー管理など多数のクラウドソフトウェアをリリースし現在に至ります。
また、「クラウド会計ソフト freee」と、クラウド給与計算ソフトをアップデートして開発された「クラウド人事労務ソフト freee」は、現在国内シェアNo1のサービスです。

以下は、2020年時点でfreeeが提供するクラウドサービスの一覧です。

クラウドソフト一覧

③ 主要KPIとその数値推移

この章では、売上に直接影響を与える「顧客数」×「単価」の数値にフォーカスして解説を行います。「顧客数」に関する指標、「単価」に関する指標が事業を運営する上で重要なKPIとなるからです。
また、freeeのような定額サービスを提供する事業は「年間定額収益」という指標も成長性を見定める上で重要な指標です。
ここでは、freeeの「顧客数」と「単価」また「定額収益」に関わる指標を中心に解説していきます。

③-1 有料課金ユーザー企業数の推移

以下の図は、過去5期におけるfreeeの有料課金ユーザー数の推移を表したグラフです。
5期の間にfreeeの有料会員は約4倍に増加しています。
毎年前期比30%以上の会員増加に成功していますが、2020年6月期は前期と比較してプラス40%のユーザー数の増加を達成しました。
このことから、freeeは新規有料会員の数を毎年増やし続けていることがわかります。

有料課金ユーザー企業数

③-2 ARPUの推移 

ARPUとは、1有料課金ユーザーあたりの月額単価を示す指標です。
つまり、この数値を見ることでfreeeの顧客「単価」推移がわかります。
5期の間に、単価は2倍程度しています。
2020年は前期と比べ単価の上昇は7%とそれまでの指標よりは緩やかになっていますが、それでも顧客単価は伸び続けています。
顧客の単価向上の要因としては、会社規模の大きな企業がfreeeのシステムを導入したケース(◯名まで基本料金のみなどの制約があるため、従業員数の多い企業は高単価になる傾向があります。)や、より手厚いサービスを提供するプランへの変更や導入(スタンダードプランからプレミアムプランへの切り替え)などが考えられます。

APPU

③-3 ARRの推移

以下の図は、freeeの四半期末時点のARRの推移を表したグラフです。
ARRとは、Annual Recurring Revenueの略称であり、「年間定額収益」の推移を示しています。
これは、毎年決まって発生する収益であり、初期費用や追加購入費用、コンサルティング費用などを含まず各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出されています。
下記のグラフでは、四半期ごとに分けてARRを計上していますが、この指標はfreeeのようなSaaSやサブスクといわれる事業の成長性を示す重要な値です。
ARRは、顧客がサービスなどを解約した場合は減ってしまう値であるため、解約数が増えると伸び悩む、もしくは減少するという特性を持ちます。

 

ARR

下の図は、freeeのサービスの解約率の推移を示した指標です。2019年6月期以降は年平均2%を切っており、顧客の利便性やカスタマーサポートの改善を続けた成果であると考えることができます。
また、解約率の減少を反映するようにARRは右肩上がりに上がっていることがわかります。

解約率の推移

④ コスト構造

④-1 コスト構造と営業利益

以下の図は、freeeのコスト構造を表したグラフです。

コスト構造

freeeのコスト構造を見ると、売上の増加に伴ってコストが上昇していることがわかります。
特に、セールス・マーケティングのコストに対する比率と上昇が目立っており、コストの中で最も多くの割合を占め、3期の間に1.5倍以上セールス・マーケティングのコストが増加しています。
この指標は、赤字の主要な原因である一方、将来のための先行投資であるという見方ができる指標です。
また、freeeのようにSaaSやサブスクなどを事業とする企業の多くは、黒字に至るまでの一定期間の間は先行投資が影響して赤字経営が続いてしまうという特徴があります。

④-2 営業利益の推移

以下の図は、freeeの営業利益の推移と粗利益、販管費の関係性を表したグラフです。
粗利益よりも販管費が上回っているため、営業利益は3期とも赤字が続いており、前述したセールス・マーケティングへの先行投資が、販管費の大きな上昇要因となっていることが予想できます。
しかし、赤字額そのものは2期前と比較すると減少しており、2020年6月期は2期前と比較すると、およそ7.6億円赤字額が減少しています。

営利、粗利益、販管費

 

⑤ 投資領域

⑤-1 マザーズへの上場

2013年の創業依頼、会計ソフトからスタートし、様々なタイプのクラウドサービスをリリースするなど自社サービスの拡大に投資を続けてきたfreeeですが、2019年12月、マザーズへの上場を果たしています。
初日は公開価格2000円を上回る2700円で引け、株式時価総額は1259億円となり、2019年の上場ではクラウド名刺管理Sansanに次ぐ大型上場として大きな話題になりました。
また、調達した金額については、セールス・マーケティングや製品開発などに投じると発表されました。
以下URLは、freee上場に関する詳細記事です。

2019年12月のfreee上場に関する記事

⑤-2 LINE,三菱UFJ銀行からの資金調達

2018年7月、freeeはLINE株式会社、株式会社三菱UFJ銀行をはじめとした機関投資家や事業者から、約65億円の資金調達を行いました
資金調達の目的は、新サービス及びプロダクト開発への投資とされています。

2018年8月の資金調達に関する記事

⑥ 株価・時価総額推移

以下の図は、freeeの株価の変化を表したグラフです。

株価の推移

freeeの2020年8月17日時点の株価は5,280円、時価総額は2551.3億円です。

⑦ 会社情報

まずはfreeeの基本情報を紹介します。
市場はマザーズで、決算月は毎年6月です。

基本情報

会社名 フリー株式会社
設立日 2012年7月9日
市場 マザーズ
証券コード 4478
業種 情報・通信業
決算期 6 月
ホームページアドレス https://corp.freee.co.jp/
発行済株式総数 48,320,822(株)
普通株式数 48,320,822(株)
資本金 6,215(百万円)  (2020年6月現在)
1単元の株式数 100(株)
従業員数 506 人
平均年齢 32 歳
平均年収 6,530,000 円

沿革

freeeは2012年に東京都でCFO株式会社として設立されました。
2019年12月には、マザーズへの上場を果たしています。

2012年7月 東京都港区にCFO株式会社(現フリー株式会社)を資本金100万円で設立
2013年3月 「クラウド会計ソフトfreee」をリリース
2013年7月 商号をCFO株式会社からフリー株式会社に変更
2014年2月 「クラウド会計ソフトfreee iOS版」をリリース
2014年4月 「クラウド会計ソフトfreee Android版」をリリース
2014年8月 東京都港区から東京都品川区に本社移転
2014年10月 「クラウド給与計算ソフトfreee」をリリース
2015年5月 e-gov APIを利用した日本初の労働保険申告機能をリリース
2015年6月 「会社設立freee」をリリース
2015年9月 「マイナンバー管理freee」をリリース
2015年12月 金融機関向けプロダクトをリリースし、11行との連携を開始
2016年4月 大阪府大阪市北区に関西支社を開設
2016年6月 AI研究に特化したスモールビジネスAIラボを創設
2016年9月 福岡県福岡市中央区に九州支社を開設
2016年10月 「開業freee」をリリース
株式会社みずほ銀行とAPI連携(メガバンクのAPI連携は初)
「申告freee」をリリース
2017年3月 「クラウド会計ソフトfreee」において、上場会社(金融商品取引法監査)にも対応したエンタープライズプランをリリース
2017年5月 愛知県名古屋市中村区に中部支社を開設
2017年7月 事業用クレジットカード「freee」カードを開発
2017年8月 「クラウド給与計算ソフトfreee」をリブランドし、「人事労務freee」をリリース
2018年10月 子会社フリーファイナンスラボ(現、連結子会社)を設立
2019年1月 アプリケーションプラットフォーム「freeeアプリストア」をリリース
2019年6月 フリーファイナンスラボ株式会社が「資金繰り改善ナビ」をリリース
2019年12月 東証マザーズに上場

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
ブロックを追加