目次
①Amazonの決算データ
①-1 最新期の売上/営業利益/EBITDA/当期純利益
決算年月(百万ドル) | 19年12月(実績) | 18年12月(実績) | 前年比 |
売上高 | 280,522 | 232,887 | +20.5% |
営業利益 | 14,541 | 12,421 | +17.1% |
EBITDA | 36,330 | 27,762 | +30.9% |
当期純利益 | 11,588 | 10,073 | +15.0% |
※EBITDAとは、営業利益に減価償却費を加えて計算された指標です。
①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移
以下の図は、5期にわたるAmazonの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年5月期の通期の売上高は2805.2億ドル、営業利益は145.4億ドルであり、営業利益率は5.2%です。
①-3 経営指標
2019年12月期の通期業績は以下の通りです。
- 売上高:2805.2億ドル(前年比+20.5%)
- EBITDA:363.3億ドル(前年比+30.8%)
- 当期純利益:115.9億ドル(前年比+15.0%)
決算年月(百万ドル) | 2018年12月期 |
2019年12月期 |
売上高 | 232,887 | 280,522 |
EBITDA | 27,762 | 36,330 |
当期純利益 | 10,073 | 11,588 |
株主資本額 | 43,549 | 62,060 |
総資産額 | 162,648 | 225,248 |
営業キャッシュフロー | 30,723 | 38,514 |
投資キャッシュフロー | △12,369 | △24,281 |
財務キャッシュフロー | △7,686 | △10,066 |
現金・現金同等物の期末残高 | 41,250 | 55,021 |
4Q業績ハイライト (2019年12月期)
以下は、2019年12月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上が右肩上がりで上昇する一方、利益は売上に比例せず、最も売上の低い1Q目に最も高い利益であることがわかります。
期間 | 2019年12月期 1Q |
2019年12月期 2Q |
2019年12月期 3Q |
2019年12月期 4Q |
売上高 | 59,700 | 63,404 | 69,981 | 87,437 |
営業利益 | 4,420 | 3,084 | 3,157 | 3,880 |
当期純利益 | 3,561 | 2,625 | 2,134 | 3,268 |
経営指標(過去5年分)
5期の間に売上高は2.5倍以上の上昇をしています。
また、純利益に関しては5期の間に20倍に迫る勢いで増加をしています。
どの指標も右肩上がりであり、期を追うごとに成長し続けていることが読み取れます。
決算年月(百万ドル) | 2015年12月 | 2016年12月 | 2017年12月 | 2018年12月 | 2019年12月 |
売上高 | 107,006 | 135,987 | 177,866 | 232,887 | 280,522 |
EBITDA | 8,514 | 12,302 | 15,584 | 27,762 | 36,330 |
当期純利益 | 596 | 2,371 | 3,033 | 10,073 | 11,588 |
株主資本額 | 13,384 | 19,285 | 27,709 | 43,549 | 62,060 |
総資産額 | 64,747 | 83,402 | 131,310 | 162,648 | 225,248 |
②Amazonの事業内容
②-1 Amazonの理念・スローガン
理念
Amazonの理念
「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」
創業者ジェフ・ベゾスの理念
「顧客は常に正しい」
スローガン
Amazonのスローガン
「biggest selection in the earth」
(世界最大のセレクション)
②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル
Amazonの年間を通しての売上は2805億ドルにのぼり、主な収益構造は以下の6つの事業に区分されています。
オンラインストアの直販サービスが、52.8%と全体の売上の約半数を占めています。
各事業ごとの数値や展開しているサービスは、以下の通りです。
- オンラインストアの直販 : 52.8%
- オンラインストアで、商品を顧客へ直販するサービスの売上が全体の売上の半数程度を占めています。
オンラインストアでの直販サービスは、Amazonの屋台骨となるサービスです。
- オンラインストアで、商品を顧客へ直販するサービスの売上が全体の売上の半数程度を占めています。
- マーケットプレイスの第三者販売サービス : 18.4%
- オンラインストアでの直販サービスに次ぐ規模の収益源は、マーケットプレイスの第三者販売サービスです。全体の売上のおおよそ2割程度を占めています。
マーケットプレイスでは、Amazonではない第三者である販売者が新商品や中古品をAmazonが運営するプラットホームで販売できるサービスです。
販売者は、アマゾンの販売プラットホームを使用することで、Amazonの顧客層にアクセスすることができます。また、マーケットプレイスで商品が売れた場合、顧客への配送やカスタマーサービスはAmazonが請け負います。
一方、Amazonは、自社サイト上での販売を在庫の追加投資をせずに拡大することができます。
Amazonは、マーケットプレイスで販売を行う顧客から手数料などを収益として獲得します。
- オンラインストアでの直販サービスに次ぐ規模の収益源は、マーケットプレイスの第三者販売サービスです。全体の売上のおおよそ2割程度を占めています。
- Amazon Web Service(AWS) : 11.0%
- Amazonの売上の中で3番目の規模を誇るのがAmazon Web Serviceです。
このサービスは、クラウドコンピューティングというインターネットにアクセスするだけで使うことのできるサーバーを提供するサービスです。従来のサーバーに比べ、低コストで運用できるため、多くの企業で導入されています。
このサービスは、Amazonが自社商品の在庫管理やデータ分析を行うため、 ITを駆使して構築したシステムを一般ユーザーにも公開したことで始まりました。
クラウド市場にはMicrosoftやGoogleも参入していますが、市場シェアはAmazonがナンバー1です。
- Amazonの売上の中で3番目の規模を誇るのがAmazon Web Serviceです。
- サブスクリプション : 6.1%
- Amazonのサブスクリプションは、Amazonが消費者である顧客向けに提供する「定額サービス」です。
Amazon Primeが特に有名なサブスクリプションサービスですが、Amazonでプライム会員登録を行うことで、会員は様々なサービスを受けることができます。
- Amazonのサブスクリプションは、Amazonが消費者である顧客向けに提供する「定額サービス」です。
- 実店舗 : 7.4%
- 日本ではあまり馴染みがありませんが、AmazonはECだけでなく、リアル店舗でのビジネスも行っています。
無人店舗として「Amazon Go」などが有名です。
- 日本ではあまり馴染みがありませんが、AmazonはECだけでなく、リアル店舗でのビジネスも行っています。
- その他 : 4.3%
- Amazonが展開するその他のサービスは、広告やクレジットカード契約などのサービスです。広告収益やクレジットカードの手数料収入はこのカテゴリに分類されます。
以下の図がAmazonの収益構造をグラフ化したものです。
- Amazonが展開するその他のサービスは、広告やクレジットカード契約などのサービスです。広告収益やクレジットカードの手数料収入はこのカテゴリに分類されます。
以下の円グラフはアマゾンの2019年12月期の収益の内訳を表したグラフです。
また、以下の図はAmazonの3期にわたる売上をセグメント別に色分けしたグラフです。
売上高は右肩上がりであり、それぞれのセグメントも売上の増加に伴い右肩上がりの増加を続けています。
③Amazonの主要KPIとその数値推移
③-1 EC事業とEC以外の事業の推移
以下の図は、過去3年間のAmazonのセグメントをEC系のセグメントとそれ以外に分けてグラフ化した図です。
「EC系の事業」はオンラインによる直販とマーケットプレイスの第三者販売サービスの総計であり、「その他」はEC系以外のセグメントの売上を足し合わせた数値です。
また、折れ線グラフは総売上に占めるEC系以外の売上の割合を表しています。
どのセグメントの売上も上昇傾向にあるためわかりにくいですが、グラフ化してみると3期の間に総売上あたりのEC系以外に該当するセグメントの売上割合が10%近く伸長していることがわかります。
2019年12月期にはEC系以外の事業が全体の30%以上を占めるようになりました。
このグラフからAmazonが、EC以外の領域を拡大する、もしくはEC依存のビジネスモデルから徐々に脱却することを目指していることが推測できます。
③-2 EC以外の売上推移
下の図は、AmazonのEC系以外の事業のセグメント別の売上推移を示したグラフです。
このセグメントの中で頭一つ抜ける存在感を見せている事業は青い棒グラフのAWSです。
3期連続で右肩上がりの成長を続けており、2017年12月期と比較すると2020年12月期は2倍以上にまで成長しており、AmazonのEC以外の事業における牽引役となっていることがわかります。
③-3 EC市場の推移
上の図は、eMarketerという海外のリサーチメディアによる2017年から2023年までのEC市場の展望を示したグラフです。
EC市場自体の成長が止まるという見通しではないものの、4%前後の横ばいの成長が続く見通しが立てられており、急激な成長が見込まれる市場ではないことがわかります。
このようなデータから、仮にAmazonがECのみにフォーカスしたビジネスモデルを続けた場合、持続的な成長をこれまでのペースで続けることは難しいことが推測されます。
④Amazonのコスト構造
④-1 Amazonの販売管理費
以下の図は、Amazonのコスト構造の内訳と3期にわたる推移を示したグラフです。
売上原価が最も割合としては多く、フルフィルメント費用2番目に高いコストとなっています。
フルフィルメントとは、ECで発注された商品のピッキング、梱包、発送などに費やされるコストをまとめて計上した費用で、主にロジスティック業務に関連する費用を示しています。
また、あまり知られていませんが、Amazonは世界一研究開発費を投資する企業であり、インターネット企業として知られるGoogleやマイクロソフトをも上回る研究開発費用を毎年投下しています。
2019年12月期に研究開発費として投資された金額は359億ドルにのぼり、日本円に換算すると3.8兆円もの数値です。
日本を代表する企業であるトヨタ自動車の研究開発費が1.1兆円であるため、Amazonの研究開発費がいかに膨大な数値であるかがわかります。
研究開発費用に関しての詳しいデータや情報については後述します。
④-2 Amazonの営業利益の推移
以下の図は、Amazonの営業利益の推移と粗利益、販管費の関係性を表したグラフです。
2018年12月期を境に営業利益が大幅に増加しており、粗利益と販管費を示す折れ線グラフに着目すると、販管費の上昇曲線が、2018年12月期付近を境に粗利益の上昇と比較して緩やかになっていることがわかります。
⑤Amazonの投資領域
⑤-1 Amazonの買収戦略
以下の図は、Amazonがこれまで1億ドル以上で買収した企業の一覧です。
特に2009年に行った靴専門のEC企業Zapposの買収や2017年に買収した高級スーパーWhole Foods Marketの買収はメディアでも注目され大きな話題となりました。
2017年8月 Whole Foods Marketの買収に関する記事
⑤-2 AWSと知られざる研究機関「Amazon science」
この章でもう一度AmazonのEC以外の領域について注目していきます。
上のグラフは一度登場したグラフですが、このグラフを出す前後でAmazonの売上あたりのEC系以外の事業が増加傾向であることやEC市場の成長が鈍化すること、そしてEC以外の事業ではAWSが顕著な成長を見せていることについて説明しました。
Amazon AWSとは
Amazon AWSとはAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。
クラウドとは、従来ハードウェアとしてデータの保存などに使用されるサーバーをインターネット上の「クラウド」というサーバーを利用することによって保存することを可能にしたシステムです。
このクラウドが存在することで、クラウドシステムのユーザーはサーバーがなくてもインターネット環境さえあればいつでも保存しているデータにアクセスすることができます。
また、クラウドはシステムを利用した分だけ課金する仕組みとなっているため、必要以上の容量に対して費用がかかることがありません。
- サーバーを購入するなどの初期投資が不要
- インターネットに繋がっていればいつでもアクセスして利用することができる
- 必要な容量のみ購入して使用できる
上記のようなメリットがあるため、現在多くの企業や個人によってクラウドサーバーが利用されています。
また、AmazonのAWSを利用することで、ユーザーはAWSに付属されているAmazonが保有するAIシステムやメーリングサービスを同時に利用することができます。
クラウドコンピューターシステムは、Googleの「Googleクラウド」やマイクロソフトの「Azure」のように他のインターネット企業も提供していますが、クラウドサービスの世界シェアナンバーワンはAmazonのAWSとなっています。
興味深いことに、Amazonは自社の膨大な在庫管理をするシステムの空き容量を有効活用する目的でAWSを一般向けに公開したといわれています。
AWSは2002年から提供されており、現在では世界のクラウドサービスの30%以上のシェアを占めるサービスとなっています。
下の円グラフは2019年の世界のクラウドサービスのシェア割合を示した図です。
Amazonの研究開発費
以下の図は、2016年からのAmazonとAlphabet(Google)の研究開発費用の推移です。
現在、Alphabetは、Amazonに次ぎ世界で2番目に研究開発費を投資している企業ですが、AmazonはそのAlphabet100億ドル近く上回る圧倒的な研究開発費を投入しています。
では、この莫大な研究開発費をAmazonはどこでどのように費やしているのでしょうか?
詳しい内訳については公表されていませんが、そのヒントがAmazonの成長株である事業「AWS」と知られざるAmazonの研究所「Amazon science」に隠されています。
「Amazon science」とは
Amazon scienceとは、Amazonが所有する研究機関で先端技術の研究や、世界トップレベルの大学とタッグを組んだ研究などが行われています。
Amazon scienceのミッションは、「Customer-obsessed science」とされており「顧客へこだわる科学」です。
研究所にまで世界一顧客を大切にする企業であるという思想が浸透しています。
AIや自動運転など様々な研究がなされていますが、主な研究プロジェクトとその概要は下の表にまとめている領域です。
Cloud and systems | より大きなデータベース、より高速な接続、より高い利便性を達成するためのコンピューター技術の開発を行う研究。(AWSなど) |
---|---|
Computer Vision | 人々が情報を可視化し、視覚情報をより理解できるようにするためのヴィジュアルデバイスを開発する研究。 |
Conversational AI and Natural language processing | 家族や友人とコミュニケーションをとるように、人々がコンピュータと自然にコミュニケーションをとることができるようなソフトウェアやシステムを開発する研究。(Alexaなど) |
Economics | 最もリーズナブルなサービスやプロダクトを人々が選択できる洗練されたシステムを開発する研究。 |
Information and knowledge management | 人々が、より豊富なソースから情報を選択できるようにする機械学習技術の開発を行う研究。(AI系) |
Machine Learning | 明確な指示がなくてもアルゴリズムや統計モデルに基づいたパターンや推論によって的確に作業ができるラーニングマシーンを開発する研究。(AI系) |
Operations research and optimization | より早く、より便利に、より経済的に注文品を運ぶために最適化されたシステムの開発する研究。(ロジスティックセンターの合理化など) |
Robotics | 言語認識、物体認識、機械学習など様々な技術を集積して便利で顧客体験に沿ったアプローチができるロボットの開発を行う研究。(ロジスティックセンターでのロボットの運用など) |
Search and information retrieval | 高度な分析能力を組み合わせ、顧客にとって最適な商品やサービスを的確に提案できる検索技術の開発を行う研究。 |
Security,privacy,and abuse prevention | ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスの安全なスイートを作成し、プライバシーを確保しながら、自分の情報をコントロールすることができます。 |
Sustainability | 2040年までにCO2排出ゼロを達成するめの研究。 |
ジェフ・ベゾスが株主宛に公表した手紙
AmazonCEOジェフ・ベゾスは、2020年1月に株主宛に中長期的なAmazonの方針などを示した手紙を宛てています。
その中で、「Amazon science」の研究に関連した内容が8項目記されており、Amazonの未来やジェフ・ベゾスの思想をこの手紙を通して知ることができます。
以下で「Amazon science」の研究に関連した今後のAmazonの方針について紹介します。
- ジェフ・ベゾスは、世界中のAmazon関係者を保護するため、新型コロナウイルスの感染に関するテスト定期的に実施するかもしれないと公表しています。世界規模でのテストを実施することで、人々の安全保護や経済の立て直しに役立つと考えているからです。
既に各チームから専門家を集め、専任チームを組織しています。 - ジェフ・ベゾスは、AmazonがWHOに対し、新型コロナウイルスに関する情報を提供するためのクラウド技術を提供すると発表しました。
この取り組みは、WHOがAmazonのクラウドを活用し、新型コロナウイルスに関するデータ構築や医療トレーニングの多言語化を行う取り組みです。
この取り組みによって、世界規模で医療従事者が患者をより良く治療できるようになることが期待されています。
また、「AWS COVID-19」のデータを公開することも発表しています。
「AWS COVID-19」のデータベースは、専門家がウイルスについて最新の情報にアクセスして分析することができるようにしたシステムです。 - また、ジェフ・ベゾスは「AWS 診療開発イニシアチブCOVID-19」というプログラムを立ち上げについて公表しています。
このプログラムは、新型コロナウイルス関連の診断ソリューションを提供することを検討している顧客を支援するプログラムです。
診断に使用される機器やシステムを提供する顧客をクラウドを活用してバックアップする取り組みであり、ジェフ・ベゾスはこのプログラムに2,000万ドルを投資することを約束しています。
また、このプログラムは今回、新型コロナウイルスに対応するために設立されたものですが、これを機会に、将来的に発生する感染症に対するプロジェクトに資金を提供する方針を示しています。 - ジェフ・ベゾスは、Amazonがアメリカ疾病予防管理センターのガイダンスに従い、AlexaのヘルスチームがAlexaがコロナウイルスの症状や感染の可能性について回答ができるようなサービスを開発したことを発表しました。
このサービスは、Alexaに新型コロナウイルスに関する質問をすると自動的に回答してくれるサービスです。
また、日本でも厚生労働省のガイダンスに基づいて、同様のサービスが作成されています。 - ジェフ・ベゾスは、昨年、「The Climate Pledge」という2050年までに実質CO2の排出をゼロにするというパリ協定を10年早送りし、2040年までにCO2排出ゼロを目標とする誓約に署名したことを発表しています。
Amazonは、この誓約に関する取り組みとして、ミシガン州に本拠地を置く電気自動車メーカーであるRivian社から10万台の電気配送バンを購入することで、この誓約の一部を達成する予定です。
このような取り組みは環境に対して良い影響を与えるだけでなく、グローバルな企業が低炭素経済への移行するための後押しをすることにも繋がるとジェフ・ベゾスは考えています。 - ジェフ・ベゾスは、2024年までに自社のエネルギーの80%を再生可能エネルギーに切り替えることを約束したと発表しました。
さらに、2030年までには自社で使用するエネルギーの100%を再生可能エネルギーに代替する予定です。
さらに、Amazonは世界中に年間630万MWh以上のエネルギーを提供する能力を持つ太陽光発電と風力発電のシステムを所有していると発表しており、このエネルギーは、米国の家庭58万戸以上の消費電力に相当します。 - また、ジェフ・ベゾスは、3年渡る研究によって、オンラインショッピングは店舗に車で行くよりも二酸化炭素の排出量が少ないことがわかったと発表しています。
この研究では、オンラインでの食料品の配達は、店舗での買い物に比べて1品目あたりの二酸化炭素排出量が43%少ないことがわかりました。 - 最後に、ジェフ・ベゾスは、AWSはエネルギー効率の向上に成功している事実を公表しました。
例えば、一部のデータセンターでは従来の空調ではなく、より効率的な蒸発冷却を使用するなど、施設や設備のエネルギー効率を向上させています。
AWSのインフラは、米国にある通常のデータセンターと比較して3.6倍もエネルギー効率が高く、再生可能エネルギーを併用することで、従来のデータセンターと同等の作業を、二酸化炭素排出量を88%削減して行うことが可能にしています。
ジェフ・ベゾスの手紙から読み取れること
- 短期では新型コロナウイルス関連の対応にクラウド、AWSのリソースを中心に注力する。
- 中長期的では、AWSを応用した将来的に発生する感染症のリスクや気候変動問題の解決に取り組む。
- 「クラウド」、「AWS」というワードが何度も出てきたことから、AWS事業の研究開発と短期及び中長期的なビジョンが強くリンクしている。
まとめ
このように中長期的な未来を見据えて毎年膨大な投資を行っているAmazonですが、AWS関連の投資は、手紙で公表されていたヘルスケアや気候変動問題の解決に関するもの以外にも、
- 広告
- 農業
- 自動運転
- 教育
- 金融サービス
- メディア、エンターテイメント
など多岐に渡り、Amazonの最もホットな投資分野であり成長の起爆剤であることが推測できます。
また、「Amazon Echo」や、無人店舗「Amazon Go」、「ドローンによる空飛ぶ宅配」などAWS領域以外の投資も積極的に行われており、世界一研究開発費用を使う企業「Amazon」の投資は世界中が目を離せないトピックです。
⑤-3 最新の投資情報
Amazonは、2020年1月に2025年までにインドの中小企業向けに10億ドル(約1100億円)を投資することを表明しています。
インドの中小企業のデジタル化を後押しすることで、インドで生産された商品を世界中へ販売することがこの投資の主な目的です。
Googleも2020年7月にインドへ大規模な投資を行うことを発表しており、革新的企業のインド投資に注目が集まっています。
2020年1月 Amazonのインド投資についての発表に関する記事
⑥Amazonの株価・時価総額
Amazonの株価・時価総額
Amazonの株価と時価総額を見ていきます。
下の図を見ると、2012年頃を境に株価が急激に上昇しはじめていることがわかります。
2018年にはAppleに次ぐ2番目の時価総額1兆ドル突破という驚異的な記録を成し遂げています。
現在では時価総額が1兆円を突破するモンスター企業に成長したAmazonですが、2010年頃までは株価の横ばいが続き、市場からの評価は決して高くありませんでした。
また、創業から初の黒字化までは7年もの月日を要しています。
Amazonの2020年8月7日時点の株価は3,225ドル(340,536円)、時価総額は153.4億ドル(1.62兆円)です。
Amazonの初期のファイナンス
Amazonが創業初期に行ったファイナンスの流れを簡単に解説します。
Amazonを創業する際、ジェフ・ベゾスは60回投資家に会い、22人から100万ドルの出資を受けました。
創業当初、インターネットはまだ普及しておらず、インターネットで書籍を売るビジネスモデルはなかなか受け入れて貰えませんでした。
そのことから、出版業界について詳しい人ほどAmazonへの投資は行いませんでした。
その後、1997年にNASDAQへ上場したものの時価総額は5億ドル(株価2ドル)未満でした。また、上場後も4年半黒字化しなかったため、株式市場での評価は高いものではなかったといえます。
しかし、時を経てAmazonの株価は急上昇しました。
仮に、AmazonのIPO時に100万円分株を購入していれば、現在、約13億円の価値になっています。
⑦Amazonの会社情報
Amazonの基本情報を紹介します。
市場はNASDAQで、決算月は毎年12月です。
Amazonの基本情報
会社名 | Amazon.com Inc |
---|---|
設立年月 | 1994年7月 |
上場年月 | 1997年5月 |
市場 | NASDAQ |
証券コード | AMZN |
業種 | サービス |
決算期 | 12月 |
ホームページアドレス | www.amazon.com |
発行済株式総数 | 500,889,651株(2020年8月現在) |
最高経営責任者 | ジェフ・ベゾス(CEO) |
従業員数 | 798,000人 |
Amazonの歴史
Amazonは、1994年に創業者であるジェフ・ベゾスが前身サイトであるCadabra.comをガレージで創業し、事業をスタートさせました。
EC事業を中心としたビジネスを展開し、驚異的なスピードで世界トップクラスの時価総額1兆円以上の企業へと成長しました。
1994年 | ジェフ・ベゾスが前身サイトCadabra.comを開始し、ガレージで事業をスタートさせる。 |
1995年 | Amazon.comに名称変更し正式にサービスを開始。 |
1996年 | デラウェア州で再登記し、「Amazon.Inc」が誕生。 |
1997年 | NASDAQに上場。上場時の金額は5億ドル。 |
1998年 | ミュージックストアを開設し、音楽配信事業に参入する。 英国とドイツでAmazonのサービスを開始する。 |
1999年 | ユーザーが累計1000万人に達する。 「ワンクリック(1-Click)」が特許を取得する。 Alexaを2.5億ドルで買収する。 |
2000年 | 日本でのサービスを開始する。 航空宇宙企業ブルーオリジンを設立。 |
2001年 | 上場4年半で初の黒字を達成。 Amazonアソシエイトプログラムを開始する。 |
2002年 | Amazon Web Service(AWS)を開始。 Amazonマーケットプレイスを導入する。 |
2003年 | 売上高10億ドルを突破。 商品の割引や無料配送サービスを拡充する。 |
2004年 | 年間全ての4半期において黒字に転換したと発表する。 |
2005年 | サブスクリプションサービス「Amazon Prime」開始。 |
2006年 | 「お急ぎ便」の提供を開始。 Amazon e託販売サービスを開始する。 |
2007年 | 電子書籍リーダー「Amazon Kindle」と、電子書籍販売「Kindleストア」を発表。 |
2008年 | 在庫管理・商品配送代行サービス「フルフィルメント by Amazon」の提供を開始。 |
2009年 | 靴のネット販売大手「ザッポス」を買収。 「当日お急ぎ便」の提供を開始する。 |
2010年 | 配送料を完全無料化。 iPhoneアプリの提供を開始する。 |
2011年 | 時価総額1000億ドルを突破する。 電子書籍リーダー「Kindle Fire」を発表。 |
2012年 | ロボットメーカーKiva Systemsを買収。 日本向けのKindleストアが開設する。 |
2013年 | ジェフ・ベゾスが、個人で老舗メディアのワシントンポストを2.5億ドルで買収する。 |
2014年 | スマートフォン「Fire Phone」を発表する。 ゲーム動画配信Twitchを9.7億ドルで買収する。 |
2015年 | 「プライム・ビデオ」「Prime Now」の提供を開始する。 |
2016年 | 年間売上が15兆円を突破し、日本での売上も1兆円を突破する。 |
2017年 | 高級スーパー、Whole Foods Marketを137億ドルで買収する。 |
2018年 | Appleに続く2社目の時価総額1兆ドル突破を達成する。 |
2019年 | AWSの四半期収益が初の100億ドル(1兆円強)を突破する。 |