経営者として、源泉徴収に関する知識はしっかりとおもちですか?
税金関係は全て専門家に任せている!という経営者の方であっても、従業員に直接関係する源泉徴収に関する知識は必ずもっていなければなりません。
しかし、源泉徴収のシステム自体が難しく、また対象となる所得や範囲などが煩雑で難しいですよね。
そこで今回は、源泉徴収に関する基礎知識を、わかりやすく全てまとめました!
この記事を読めば、源泉徴収に関する基本的な知識が全て身に付きますよ!
目次
- 1 1.源泉徴収とは?
- 2 2.源泉徴収の対象
- 3 3.源泉徴収の範囲
- 3.1 (1)原稿料や講演料など
- 3.2 (2)弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
- 3.3 (3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- 3.4 (4)プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
- 3.5 (5)映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
- 3.6 (6)ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
- 3.7 (7)プロ野球選手の契約金など、役務(サービス)の提供を約することにより一時に支払う契約金
- 3.8 (8)広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
- 4 4.源泉徴収の納付時期および方法
- 5 5.源泉徴収と年末調整
- 6 6.まとめ
1.源泉徴収とは?
まずは、源泉徴収の仕組みと目的について説明します。
源泉徴収はどういった仕組みで、何を目的とした制度として行われているのでしょうか?
(1)源泉徴収の仕組み・目的
源泉徴収とは、従業員が支払うべき所得税及び復興特別所得税を従業員の給与から予め預かっておき、事業者が従業員の代わりに国に納税を行うことです。
さらに、税理士、弁護士、司法書士などに対する報酬も源泉徴収の対象となります。
所得税は年単位で支払うものですが、これを毎月少しずつ納めていきます。
たとえば、当月のドライブ株式会社ではA、B、C従業員の給与を60万円と計算され、この60万円に所得税が15万円課税されると算定されました。
この場合、60万円のすべてをA、B、C従業員に支払うのではなく、60万円から15万円を差し引いた45万円が支払われます。
支払われなかった15万円は会社が「預り金」として会計上処理され、会社が従業員の代わりに所得税の納付をする時にここから支払われます。
給与明細では、基本給、諸手当、超過勤務時間手当などの合計が「総支給額」(いわゆる「額面」)と記されていると思います。
また、所得税(実際は福利厚生費や退職給付費用なども引かれます)を引いた後の45万円がいわゆる「手取り」と言われる額です。
いわずもがなと思いますが、ドライブ株式会社が預かった15万円が源泉徴収として預かった額であり、A、B、C従業員は本来自分で所得税を納付するはずでしたが、ドライブ株式会社に納税してもらったのでその必要はなくなりました。
次に、源泉徴収の目的についてですが、まず源泉徴収される所得税は、所得を受けとった額を国に申告し、それに応じた適切な額を支払います。
しかし、従業員として働く人すべてが税務署に申告に行きますと、税務署がパンクしてしまいます。
そこで、従業員に給与を支払っているもの、たとえば会社がその従業員の所得を申告し、納税することで税務局の事務手続きの簡便さと迅速さ申告漏れをなくす事などを実現します。
実際、トーゴーサンピン問題と呼ばれる、税務署の所得の把握率が従業員などの給与所得者では10割、自営業者では5割、農家などの農林水産業者では3割、政治家1割しか把握できていないといわれています。
源泉徴収制度による申告漏れをなくす目的は、給与所得者は10割把握とその効果は絶大といえるでしょう。
(2)源泉徴収義務者
源泉徴収を行わなくてはいけない対象者はどのような範囲なのでしょうか?
会社、法人格のない社団や個人であっても、従業員に給与を支払うのであれば、源泉徴収を行う必要があります。
ただし、常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与を支払っている個人は、源泉徴収をする必要はありませんし、給与所得のある人が税理士等を雇って報酬を支払った場合、税理士等の報酬について、源泉徴収をする必要はありません。
また、国内において会社が、新たに給与の支払を始めて、源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を所管の税務署長に提出する必要があります(所得税法230条、所得税法施行規則第99条)。
提出期限は給与支払事務所等を開設してから1か月以内となっています。
なお、個人の給与支払者が事務所の開設、移転や廃止を行った場合には、「個人事業の開業・廃業等届出書」(所得税法229条)を所管の税務署所長に提出する必要があります。
2.源泉徴収の対象
ここまで、源泉徴収とは税務局の事務処理の迅速化・簡便化のために、従業員の所得税を会社等が従業員の代わりに納税することであると紹介してきました。
次に、源泉徴収の対象となる所得について説明していきます。
源泉徴収の対象は主に給与、賞与、退職金の3つがあります。
(1)給与
給与の源泉徴収の計算は、国税庁による「給与所得の源泉徴収税額表」によって行います。
まず、源泉徴収の対象となる者が「甲」となるのか、「乙」となるのかによって計算が変わります。
甲は副業をしていない、1つの会社から報酬を受けているものを指します。
反対に、乙は副業をしており、2つ以上の会社から報酬を受けている場合や「扶養控除等(異動)申告書」が提出されていないときは乙になります。
当該月の給与所得から社会保険料と非課税である通勤費を控除した額により、甲、乙に該当する箇所を参照し源泉徴収金額を算出します。
(2)賞与
賞与の源泉徴収の計算は、国税庁による「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」によって行います。
対象の従業員の当該月の給与から社会保険料等を控除した額を計算します。
そして、その額をもとに「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめることによって源泉徴収額を計算します。
(3)退職金
退職金の源泉徴収の額は、国税庁による「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法」によって行います。
まず、勤続年数を計算し、その勤続年数に応じて数式をあてはめ退職金から控除される額を算定します。
控除後の退職金額を1/2することによって課税退職所得金額を算定します。
最後に、課税退職所得金額を「退職所得の源泉徴収税額の速算表」にあてはめ、退職金の源泉徴収額が計算されます。
3.源泉徴収の範囲
源泉徴収は給与所得に関するものに限定されると思われがちですが、給料、賞与、退職金以外のその他の源泉徴収の必要なものもあります。
それらは源泉徴収が必要な報酬等の範囲は、報酬を受ける者が、個人であるか法人であるかによって異なります。
報酬を受けるものが法人の場合には競馬の賞金のみが源泉徴収の対象となりますので、ここでは個人の場合を中心に説明します。
(1)原稿料や講演料など
作家に原稿料を支払うときや、大学教授などに講演料を支払う報酬が具体例です。
ただし、懸賞応募作品等の1人に対して支払う賞金については、1人に1度に支払う額が5万円を超える場合のみ対象となります。
(2)弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
謝金、調査費、日当、旅費などの名目で支払われるものも含み、弁護士や税理士などに支払う報酬が対象となります。
(3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
社会保険診療報酬支払基金とは保険医療機関(薬局)からの診療に係る医療費の請求が正しいか審査したうえで、健康保険組合(保険者)などへ請求し、健康保険組合から支払われた医療費を保険医療機関へ支払いをする基金のことです。
(4)プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
外交員とはいわゆるセールスマンのことですが、当該セールスマンと会社の間に雇用関係がなかった場合でも、仲介手数料を支払った場合などには源泉徴収の必要があります。
(5)映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
上述のとおりです。
(6)ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
上述者たちに与えられる報奨金や衣装代、深夜帰宅するためのタクシー代等も報酬に含まれます。
(7)プロ野球選手の契約金など、役務(サービス)の提供を約することにより一時に支払う契約金
雇用契約を行う時の契約金も報酬として源泉徴収の対象となります。
(8)広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
広告宣伝のために与えられた賞品なども賞金に含まれます。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁 (nta.go.jp)
4.源泉徴収の納付時期および方法
源泉徴収を行わなくてはいけない対象は給料、賞与、退職金だけではないとおわかりいただけたでしょうか。
次に、源泉徴収の納付時期や納付方法についてみていきましょう。
期日を守らなくては追加で課税されかねず、注意が必要です。
(1)源泉徴収の納付時期
原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。
この納付期限の日が、日曜日、祝日などの休日や土曜日に当たる場合には、その休日明けの日が納付期限となります。
この納付期限までに納付されない場合には、源泉徴収義務者は延滞税や不納付加算税などが課されますので注意してください。
また、従業員が常に10人未満の場合は、半年に1度にまとめての納付ができます。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出する必要がありますが、1~6月に支払った額から源泉徴収した場合は7月10日、7~12月に支払った額から源泉徴収した場合は翌年の1月20日が納付期限となります。
ちなみに、源泉徴収をする時期は実際にそのお金を支払ったときに源泉を徴収します。
「源泉徴収日=報酬の支払日」と考えてよいでしょう。
(2)源泉徴収の納付方法
源泉徴収の納付方法はe-Taxによる方法と税務署や金融機関で払う方法の2つに大別できますが、どの方法においても、納付書(所得税徴収高計算書)を源泉徴収者が作成する必要があります。
#1:e-Tax(国税電子申告・納税システム)による方法
e-Taxによる方法では納付書(所得税徴収高計算書)をウェブ上で作成できるほか、金融機関等へ行くことなくウェブ上で源泉所得税の納税が行えます。
支払方法は3つにあり、ネットバンキングによる納付、クレジットカードによる納付、ダイレクト納付から選ぶことができます。
ダイレクト納付以外は読んで字のごとくなのですが、ダイレクト納付はネットバンクを所有していない人が個人や会社の口座から税金をオンラインで支払うことができます。
e-Taxのホームページはこちら【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス) (nta.go.jp)
#2:金融機関や税務署で支払う方法
納付書を手書きで書く必要があります。
金融機関や税務署に直接行く、伝統的な方法です。
5.源泉徴収と年末調整
源泉徴収をされている場合でも、年末調整を行う必要がある場合もあります。
というのも、源泉徴収は1か月ごとのあくまで仮払いであり、本来払うべき金額は1年単位で計算されるからです。
ただし、これは事業主ではなく報酬を支払われている者つまり従業員によって行わなくてはなりません。
年末調整を行う必要がある場合とは、たとえば、出産により扶養控除が発生した場合や、あるいは昇任し、給料が上昇した場合などがあります。
源泉徴収で多く支払っていれば税金が年末調整によって還付されますし、少なければ追加で税を支払う必要があります。
6.まとめ
昨今では、会計系計算ソフトによって計算が簡略化され事務手続きは簡潔、迅速に行えるかもしれません。
しかし、実際にどういった仕組みで源泉徴収が行われているのかは正確に納税額を計算するためにもとても重要です。
また、謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります。
しかし、報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっている等、実務上判断がし難いケースもあるかと思われます。
もしお悩みであれば、専門家へのご相談をお勧めいたします。
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