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【新規上場企業分析】ChatWork(チャットワーク)のIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

チャットワークの概要

チャットワークの基本情報

はじめにチャットワーク株式会社の基本情報を紹介します。上場日は2019年9月24日、市場はマザーズ、想定時価総額は587.4、上場時の時価総額は541.7でした。

会社名 Chatwork(チャットワーク)株式会社
設立日 2004年11月11日
上場日 2019年9月24日
市場 マザーズ
証券コード 4448
業種 情報・通信業
決算期 12月
ホームページアドレス https://corp.chatwork.com/ja/
発行済株式総数 36,000,000 株(2019 年 8 月 15 日現在)
上場時発行済株式総数 36,600,000 株
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 600,000 株
想定価格 1,605円
想定時価総額 587.4億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 1,480円
上場時時価総額 541.7億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 769.9億(2020年10月7日現在)
資本金 914,138 千円(2019 年 8 月 15 日現在)
1単元の株式数 100 株
監査人 有限責任監査法人トーマツ
主幹事証券会社 大和証券
引受幹事証券会社 みずほ証券
SMBC日興証券
SBI証券
マネックス証券
楽天証券
松井証券

チャットワークの沿革

チャットワーク株式会社は、大阪府において、2000年に企業向けのホームページ集客を支援するサービスの提供を目的としたEC studio として創業しました。
2011年からは、ビジネスチャット「Chatwork」をリリースしサービスとして成長させ、
2019年9月に東証マザーズへ上場しました。

2000年7月 企業向けのホームページ集客を支援するサービスの提供を目的として、大阪府吹田市にEC studio を創業
2004年11月 有限会社EC studioを設立し、大阪府吹田市に大阪オフィスを開設
2005年12月 株式会社に組織変更し、株式会社EC studioを設立
2006年6月 東京都世田谷区三軒茶屋に東京オフィスを開設
2008年4月 キヤノンITソリューションズ株式会社とESET製品のダウンロード権の販売代理店契約を締結し、セキュリティ事業を開始
2011年1月 東京オフィスを東京都世田谷区池尻に移転
2011年3月 ビジネスチャット「Chatwork」をリリースし、Chatwork事業を開始
2012年4月 ChatWork株式会社に社名変更
2012年5月 KDDI株式会社と業務提携契約を締結し、ChatworkのOEM提供開始
2012年8月 米国カリフォルニア州に子会社、ChatWork,inc.を設立
2014年3月 東京オフィスを東京都台東区松が谷に移転
2017年10月 東京オフィスを東京都港区芝公園に移転
2017年12月 本店所在地を神戸市北区に変更
これに伴い大阪府吹田市の大阪本店を大阪本社に名称変更
2018年7月 ChatWork,inc.を清算
2018年11月 Chatwork株式会社に社名変更
2019年9月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2020年3月
本店所在地を大阪府大阪市北区に変更

チャットワークの事業内容

チャットワークは、「働くをもっと楽しく、創造的に」をミッションに掲げ、自社開発のビジネスコミュニケーションツールを提供する「Chatwork事業」、セキュリティソフトの販売代理を行う「セキュリティ事業」の2つを主要な事業として運営する企業です。
事業セグメントは、「Chatwork事業」及び「セキュリティ事業」の2つに分割されており、主要な事業と事業系統を表した図は以下の通りです。

  1. Chatwork事業
  2. セキュリティ事業

チャットワークの事業系統図

① Chatwork事業   

サービス概要

「Chatwork事業」では、ビジネスチャットツール「Chatwork」開発及び提供、「Chatwork」をプラットフォームとした広告サービスを中心とした事業が展開されています。

近年、労働人口減少の見通しや政府主導の働き方改革の推進などの影響により、企業経営において労働生産性の向上が必要不可欠な課題となっています。
このような背景を受け、チャットワークでは、業務時間の多くを占めるコミュニケーションの効率化が業務効率及び労働生産性の向上に貢献するという考えのもと、チャットサービスを提供するチャットワーク事業を運営しています。

このチャットサービスは、コミュニケーションの基本となる「チャット」機能に加えて、「タスク管理」、「ファイル共有」及び「音声又はビデオ通話(会議)」といったビジネスコミュニケーションに必要とされる機能をワンストップで提供している点がサービスとしての特徴です。
また、通信データの暗号化等によるセキュリティ対応や、管理機能の提供により、高い機密性及び安全性が要求されるビジネス利用に対応したサービスとして設計されています。

なお、チャットワークは2019年12月末時点で約24.6万社、約308万人のユーザー(登録ID数)を持つサービスとなっています。

ビジネスモデル

「ChatWork事業」では、ユーザーからサービス利用料を定額で獲得する「サブスクリプション型課金モデル」、KDDI株式会社との提携による「OEM提供」、チャットワークをプラットフォームとして収益化につなげる「その他」の主に3つの経路で収益を計上しています。

 

  • サブスクリプション型課金モデル

    「Chatwork」サービスでは、インターネット経由で機能を利用するSaaS形式と呼ばれるサービス形態によりサービスを提供しています。
    SaaSとは、Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)の略称であり、利用者がソフトウェアを直接インストールして利用するのではなく、 インターネット上のクラウド経由で利用するサービスのことです。
    「Chatwork」サービスは、ストレージ容量やグループチャットの作成数などに一定の制限を設けたプランを「無料プラン」として提供していますが、ストレージ容量を拡大したりユーザー管理機能を追加する場合は、有料プランへの移行を必要とする「フリーミアム」形態でサービス運営を行っています。
    「サブスクリプション課金モデル」では、有料プランの利用者数に応じた定額利用料を獲得する形で収益を計上しています。

  • OEM提供

    「OEM提供」のビジネスモデルは、KDDI株式会社に対して、「Chatwork」サービスを業務委託によって提供がする収益モデルです。
    業務委託に基づいて提供された「Chatwork」サービスは、
    「KDDI Chatwork」の名称でKDDIによって提供されており、主にエンタープライズ領域(大企業や官公庁向け)等を中心とした顧客に向けて販売されています。
    「OEM提供」によって
    、KDDIは、「Chatwork」サービスを自社製品として販売することが可能となり、チャットワーク社はKDDIの持つ販売網を生かすことでサービスを普及させることができます。
    チャットワーク社は、KDDIから利用料の一部とシステム運用にかかる業務委託料を収益として計上しています。

  • その他

    「chatwork」サービスを利用した「その他」の収益モデルには「広告サービス」と「プラットフォームサービス」が該当します。
    広告サービスは、無料プランのユーザーのチャットワーク上に広告を掲載・
    表示するサービスであり、チャットワーク上に広告を出向した広告主や広告事業者から掲載料を獲得することで収益化を行う事業モデルです。
    一方、「プラットフォームサービス」は提携先との協業によるサービスを「Chatwork」を通じて提供するサービスであり、バックオフィス業務の受託・提供を行う「Chatwork アシスタント」や、電話代行業務を行う「Chatwork 電話代行」が該当します。

② セキュリティ事業

「セキュリティ事業」は、セキュリティ対策ソフトウェアの仕入販売業務を行うチャットワーク社が運営する第2の事業セグメントです。

この事業セグメントでは、ESET社が提供するセキュリティ対策ソフトウェア「ESET」を日本国内総販売代理店(一次代理店)であるキヤノンITソリューションズの二次代理店としてインターネット通販によって販売しています。

有価証券報告書情報

経営指標(過去3期分)

第16期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:18.2億円(前年比+39.3%)
  • 経常利益:6.2億円
  • 当期純利益:6.1億円
第14期 第15期 第16期
決算年月 2017年12月 2018年12月 2019年12月 
売上高(千円) 968,294 1,301,836 1,815,079
経常利益(千円) △230,222 △163,146 62,343
当期純利益(千円) △232,965 △110,800 61,421
純資産額(千円) 639,852 529,051 1,478,473
総資産額(千円) 979,271 995,430 2,008,982
自己資本比率 65.3% 53.1% 73.6%
営業キャッシュフロー(千円) △158,183 △66,349 98,376
投資キャッシュフロー(千円) △87,481 △25,447 △48,781
財務キャッシュフロー(千円) △91 △90 870,885
現金・現金同等物の期末残高(千円) 703,174 611,287 1,531,768
従業員数 85人 91人 107人

 

経営指標(過去5期分)

過去5期の業績を見ると、売上は4年間で約3.2倍の成長しています。
また、利益に関しては第15期まで断続的にマイナスで計上されていましたが、第16期には黒字転換に成功しています。
なお、チャットワークは、2015年1月31日付で株式1株につき500株、2019年6月19日付で株式1株につき200株の株式分割を実施しました。

第12期 第13期 第14期 第15期 第16期
決算年月 2015年12月 2016年12月 2017年12月 2018年12月 2019年12月 
売上高(千円) 559,408 695,052 968,294 1,301,836 1,815,079
経常利益(千円) △366,796 △627,062 △230,222 △163,146 62,343
当期純利益(千円) △367,525 △630,838 △232,965 △110,800 61,421
資本金(千円) 164,138 914,138 914,138 914,138 1,358,138
発行済株式総数 150,000 180,000 180,000 180,000 36,600,000
純資産額(千円) 3,656 872,817 639,852 529,051 1,478,473
総資産額(千円) 204,230 1,111,864 979,271 995,430 2,008,982
自己資本比率 1.8% 78.5% 65.3% 53.1% 73.6%
従業員数 53人 72人 85人 91人 107人

セグメント別業績

第16期のセグメント別経営成績は表の通りです。
売上構成比は以下の通りであり、売上の9割近くはchatwork事業の収益で構成されています。
第16期は、両セグメントともに前年比でプラス計上されており、全体の売上は約40%増加しました。

  • chatwork事業:88.2%
  • セキュリティ事業:11.8%
指標 全体 chatwork事業 セキュリティ事業
売上高(百万円) 1,814 1,600 214
売上高前年同期比 +39.3% +42.9% +17.6%

※セグメント別の業績は、百万円以下切り捨てで表記しています。

上場時の株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
株式会社EC studioホールディングス 24,244,400 60.64% 90日間
ジャフコSV4共有投資事業有限責任組合 3,640,000 9.10% 90日間
GMO Venture Partners4 投資事業有限責任組合 2,184,000 5.46% 90日間
山口 勝幸 1,686,000 4.22% 90日間
山本 正喜 1,651,000 4.13% 90日間
新生企業投資株式会社 1,176,000 2.94% 90日間
SMBCベンチャーキャピタル2号投資事業有限責任組合 800,000 2.00% 90日間
井上 直樹 560,000 1.40% 90日間
鈴木 陽三 423,000 1.06% 90日間
春日 重俊 322,000 0.81% 90日間

上場時(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

公募価格は1,600円、吸収金額(調達額)は156.9とされています。 また初値は、1,480となりました。

仮条件 1,440円 ~ 1,600円
公募・売出価格 1,600円
想定価格 1,605円
初値 1,480円 (公募価格比△7.5%)
公募株数 600,000 株
売出株数 7,900,000 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 1,275,000 株
吸収金額(調達額) 156.9億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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