目次
SRE(エスアールイー)ホールディングスの概要
SREホールディングスの基本情報
はじめにSREホールディングス株式会社の基本情報を紹介します。上場日は2019年12月19日、市場はマザーズ、想定時価総額は450.1億円、上場時の時価総額は374.4億円でした。
会社名 | SREホールディングス株式会社 |
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設立日 | 2014年4月14日 |
上場日 | 2019年12月19日(承認日:2019年11月14日) |
市場 | マザーズ |
証券コード | 2980 |
業種 | 不動産業 |
決算期 | 3月 |
ホームページアドレス | https://sre-group.co.jp |
発行済株式総数 | 13,728,000 株(2019年11月14日現在) |
上場時発行済株式総数 |
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公募株数 | 1,400,000 株 |
想定価格 | 2,975円 |
想定時価総額 | 450.1億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算) |
初値 | 2,475円 |
上場時時価総額 | 374.4億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算) |
時価総額 | 425.6億(2020年9月10日現在) |
資本金 | 1,822,450 千円(2019年11月14日現在) |
1単元の株式数 | 100株 |
監査人 | PwCあらた有限責任監査法人 |
主幹事証券会社 | SMBC日興証券 |
引受幹事証券会社 |
大和証券 |
SREホールディングスの沿革
SREホールディングス株式会社は、2014年にソニー不動産株式会社として東京都で設立されました。
「テクノロジー×不動産」をコンセプトとした事業を運営し、2019年に商号を「ソニー不動産株式会社」から「SREホールディングス株式会社」へ変更しています。
その後、SREホールディングスは、2020年2月に東証マザーズへ上場しました。
2014年4月 | ソニー不動産株式会社を設立 |
2014年8月 | 東京都中央区銀座において営業開始 |
2015年7月 | ヤフー株式会社(2019年10月1日よりZホールディングス株式会社に商号変更)に対して第三者割当増資を実施し、業務提携契約を締結 |
2015年10月 | AI技術を利用して不動産売買推定価格を算出する「不動産価格推定エンジン」の提供を開始 |
2015年11月 | 「おうちダイレクト」サービスを開始株式会社マネーフォワードとの連携を開始 |
2017年7月 | 株式会社マネジメント・シェルパ・ソリューション(現持分法適用関連会社)に出資 |
2018年5月 | AI技術を活用してマンション価格情報を独自の切り口で紹介する「マンションAIレポート」を公開 |
2018年10月 | 大阪府宅地建物取引業協会(加盟不動産業者数約8,500社)と業務提携を結び、同協会加盟業者への「不動産仲介業務支援機能」の提供を開始 「おうちダイレクト」サービスの一環として「不動産仲介業務支援機能」の提供を開始 不動産事業者向けに不動産成約価格データを蓄積・算出する不動産AIソリューション事業を開始 IoT環境を備えたスマートホーム「AIFLAT(アイフラット)」シリーズの提供を開始 AIソリューション事業に特化した100%子会社であるSRE AI Partners株式会社(現連結子会社)を設立 |
2019年1月 | 吸収分割の方法により、SRE AI Partners株式会社にAIソリューション事業を承継 |
2019年4月 | 本社を東京都港区北青山へ移転 |
2019年5月 | 東京都宅建協同組合(加盟不動産業者数約16,000社)と業務提携を結び、同組合加盟業者への「不動産仲介業務支援機能」の提供を開始 |
2019年6月 | 商号を「ソニー不動産株式会社」から「SREホールディングス株式会社」へ変更 SRE AI Partners株式会社、株式会社マネジメント・シェルパ・ソリューションとともに「テレプレゼンス システム(4K超解像技術、最適化した視認性制御技術やステレオエコーキャンセルを始めとする高音質化技術を駆使し、”あたかも同じ空間にいるかのような自然なコミュニケーション” ができる隔地間におけるコミュニケーションツール)のホテル向けビジネス導入に向けたトライアルを開始 機械学習を用いた「AIによる将来予測ツール」の導入コンサルティング及びサポートサービスを開始 |
2019年9月 | 三井住友信託銀行株式会社が実施する「不動産ビジネスにおける情報の蓄積と活用を促進するためのデジタル技術(ブロックチェーン)を活用した実証実験」に参加 |
2019年11月 | ジオパーク支援コンサルティング事業をおこなう北海道地図株式会社(以下「北海道地図」)と共同で、北海道地図の事業拠点と対象となる全国各地のジオパーク施設同士を「テレプレゼンス システム」でつなぎ、より効果的で質の高いコンサルティングを提供する新規ソリューション事業を開始することを前提に、実際のジオパーク関連施設におけるトライアル導入を開始 |
2019年12月 | 東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場 |
2020年1月 | 一人一人のお客様の希望に沿って、AIにより自動的にパーソナライズされたマーケティングメールを発送できるマーケティング支援ツールの提供を開始 |
2020年3月 | 第二種金融商品取引業者として登録 |
2020年5月 | 不動産売買契約書類の作成業務効率を大幅にアップさせることが可能なサービスである「不動産売買契約書類作成クラウド」の提供を開始 |
SREホールディングスの事業内容
SREホールディングスは、「今の先鋭が10年後の当たり前を造る」というスローガンを掲げ、「AIクラウド&コンサルティング事業」と「不動産事業」の2軸でビジネスを展開する企業です。
SREホールディングスは、元々「ソニー不動産」という企業名であり、現在でもソニー株式会社やZホールディングス(旧 ヤフー株式会社)と非常に深い繋がりを持っています。
以下は、SREホールディングスの主要なセグメントと事業系統を表した図です。
SREホールディングスは2021年3月期から、それまで単一セグメントで運営されていた事業を2つの事業セグメントに分割しました。そのため、2020年3月期の通期決算報告はセグメントを分けた形で決算説明が行われています。
この記事では、最新期の決算説明資料の形式に従い、セグメントが分割された状態での解説を行います。
- AIクラウド&コンサルティング事業
- 不動産事業
① AIクラウド&コンサルティング事業
「AIクラウド&コンサルティング事業」は、不動産仲介会社、証券会社などの企業に対しAIの技術を利用したシステムを提供する事業セグメントです。
このシステムは、顧客企業の業務効率の改善やサービス品質の向上を目的としており、この事業セグメントでは、「AIクラウドサービス」と「AIコンサルティングサービス」の2種類のシステムが提供されています。
それぞれのサービス概要は以下の通りです。
- AIクラウドサービス
「AIクラウドサービス」は、クラウドを通じてパッケージ化されたAIツールを法人向けに提供するサービスです。
このサービスは、主に不動産会社向けに提供されており、不動産の価格査定やその周辺情報の表示機能、見込み客への自動メール送信機能などが備わっているため、不動産会社で働く人の営業効率や作業効率の向上に役立ちます。
顧客企業は、システムを利用する場合、SREホールディングスと月額固定価格契約を締結するため、毎月の月額利用料金がSREホールディングスの収益として計上されます。 - AIコンサルティングサービス
AIコンサルティングサービスは、AIを利用した将来予測ツールの作成・提供を行うサービスです。
このツールは、主に証券会社などを対象としたサービスであり、これまでの取引データから将来的に金融商品を購入する見込みが高い顧客を推定したり、顧客にマッチした商品を機械学習によって特定することで、証券会社の業務効率化や営業サポートなどに活用されます。
① 不動産事業
「不動産事業」は、SREホールディングスの強みであるAIやITを活用して、不動産分野へ応用した事業セグメントです。
SREホールディングスでは、不動産仲介サービスや不動産売却サービスなど、様々な不動産業における様々なシーンにAIやITの技術を応用しているため、一般的な不動産業とかなり異なるタイプのサービスが運営されています。
以下は、この事業セグメントで展開されている代表的なサービスです。
- AIFLATサービス
AIFLATサービスでは、IoTマンション「AIFLAT」の販売が行われています。
IoTとは、Internet of Thingsの略称であり、家電製品、生活環境などの情報を取得する各種のセンサーなど、さまざまな”モノ”をインターネットに接続する技術のことを意味します。「AIFLAT」に備え付けられている家電には、MANOMAスマートホームサービスというソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社が提供するプロダクトが組み込まれていることが特徴です。
このプロダクトは、室内コミュニケーションカメラなどIoTによるセキュリティやオートメーションを実現したプロダクトです。
- 「おうちダイレクト」を利用したセルフ売却(C2C)サービス
SREホールディングスが提供する「おうちダイレクト」を利用したC2Cサービスは、個人が自らインターネット上で不動産を売却することを可能にしたサービスです。
C2Cサービスには、「おうちダイレクト」というZホールディングスと共同で提供するプラットフォームサービスが使用され、このサービスには、AIを利用して不動産の価格を推定するツールが組み込まれているため、専門的な知識無しで売手は不動産の見積もりをすることができます。
また、「おうちダイレクト」を利用した場合、業者を仲介しないため販売手数料が発生せず、顧客に対して不動産売買における大きなメリットがあります。なお「おうちダイレクト」は、B2B領域でも利用されており、以下の図はC2C領域、B2B領域の「おうちダイレクト」の位置付けを表しています。
有価証券報告書情報
連結の経営指標(過去2期分)
第6期の業績は以下の通りです。
- 売上高:38.5億円(前年比+32.9%)
- 経常利益:7.2億円(前年比+64.9%)
- 当期純利益:4.7億円(前年比+82.4%)
期 | 第5期 | 第6期 |
決算年月 | 2019年3月 | 2020年3月 |
売上高(千円) | 2,896,438 | 3,850,353 |
経常利益(千円) | 435,049 | 717,467 |
当期純利益(千円) | 259,568 | 473,442 |
純資産額(千円) | 3,179,486 | 7,090,951 |
総資産額(千円) | 4,115,804 | 8,054,693 |
自己資本比率 | 77.2% | 88.0% |
営業キャッシュフロー(千円) | 313,839 | △2,348,146 |
投資キャッシュフロー(千円) | △207,027 | △351,441 |
財務キャッシュフロー(千円) | 761 | 3,398,482 |
現金・現金同等物の期末残高(千円) | 2,483,489 | 3,182,384 |
従業員数 | 121人 | 114人 |
単体の経営指標(過去5期分)
5期の業績を見ると、売上高は4年間で約3倍成長していることがわかります。
また、利益に関しては、第3期までは赤字を計上していましたが、第4期以降は黒字に転換し、その後黒字の状態を続けています。
また、第6期は売上、利益共に5年間で最高の水準となっています。
また、発行済株式総数の変動等についての注釈は以下の通りです。
- 2018年7月5日付で普通株式1株につき100株の株式分割を実施。
- 2019年8月20日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施。
- 2019年12月18日付で1,400,000株の追加発行。
- 2019年12月19日から2020年3月31日まで新株予約権を行使。
期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 | 第5期 | 第6期 |
決算年月 | 2016年3月 | 2017年3月 | 2018年3月 | 2019年3月 | 2020年3月 |
売上高(千円) | 1,168,369 | 2,067,361 | 2,597,370 | 2,853,923 | 3,482,043 |
経常利益(千円) | △427,005 | △90,069 | 196,019 | 380,287 | 386,187 |
当期純利益(千円) | △485,334 | △227,505 | 300,340 | 220,650 | 252,696 |
資本金(千円) | 1,822,450 | 1,822,450 | 1,822,450 | 1,822,450 | 3,539,855 |
発行済株式総数 | 45,760 | 45,760 | 45,760 | 4,576,000 | 15,138,200 |
純資産額(千円) | 2,846,140 | 2,618,634 | 2,918,804 | 3,118,376 | 6,809,095 |
総資産額(千円) | 3,329,863 | 3,240,258 | 3,568,691 | 4,022,47 | 7,609,991 |
自己資本比率 | 85.4% | 80.8% | 81.8% | 77.5% | 89.4% |
従業員数 | 115人 | 135人 | 119人 | 117人 | 110人 |
セグメント別業績
第6期のセグメント別経営成績は表の通りです。
収益構造としては、
- AIクラウド&コンサルティング事業:20.8%
- 金融サービス事業:84.4%
となっていますが、営業利益を見ると売上の少ないAIクラウド&コンサルティング事業の売上が圧倒的に上回っていることがわかります。
利益率に関しては、「不動産事業」の営業利益率が4.3%であるのに対し、「AIクラウド&コンサルティング事業」の営業利益率は76.2%と非常に高い利益率となっています。
このように、セグメントごとに売上と利益の関係性が大きく異なる点が、SREホールディングスの経営数値の大きな特徴であるといえます。
指標 | 全体 | AIクラウド& コンサルティング 事業 |
不動産事業 |
売上高(百万円) | 3,850 | 799 | 3,205 |
営業利益(百万円) | 746 | 609 | 138 |
経常利益(百万円) | 717 | – | – |
当期純利益(百万円) | 473 | – | – |
※売上高の数値のズレは、主にセグメント変更の影響に起因すると考えられます。
上場時の株主構成
上位10位までの株主は、以下の通りです。
株主 | 所有株式数 | 比率 | ロックアップ |
ソニー株式会社 | 7,727,400 | 53.01% | 180日間 |
Zホールディングス株式会社 | 6,000,000 | 41.16% | 180日間 |
西山 和良 | 380,100 | 2.61% | 180日間 |
角田 智弘 | 63,000 | 0.43% | 180日間 |
河合 通恵 | 51,000 | 0.35% | – |
青木 和大 | 42,000 | 0.29% | 180日間 |
喜志 武弘 | 32,100 | 0.22% | 180日間 |
清水 卓 | 30,000 | 0.21% | 180日間 |
上出 昇 | 30,000 | 0.21% | 180日間 |
久々湊 暁夫 | 18,000 | 0.12% | – |
上場時(IPO)の募集・売出し情報
公募・売出し・調達額情報
公募価格は2,650円、吸収金額(調達額)は136.7億円とされています。
また初値は、2,475円となりました。
仮条件 | 2,550円 ~ 2,650円 |
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公募・売出価格 | 2,650円 |
想定価格 | 2,975円 |
初値 | 2,475円 (公募価格比△6.6%) |
公募株数 | 1,400,000 株 |
売出株数 | 3,084,600 株 |
オーバーアロットメントによる売出し株数 | 672,600 株 |
吸収金額(調達額) | 136.7億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算) |