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【上場企業決算分析】メディカルネットの最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

株式会社メディカルネットは、歯科医業界を中心としたマーケティング支援や経営サポート、メディア運営などを行う企業です。

メディカルネットはは2000年4月事業を開始し、2001年6月に株式会社化しました。
また、2010年12月にマザーズへ上場しています。

①メディカルネットの決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年5月(実績) 19年5月(実績) 前年比 20年5月(計画) 計画比
売上高 2,917 2,236 +30.5% 3,000 △2.7%
売上総利益 972 882
営業利益 106 176 △39.6% 100 +6.4%
経常利益 103 182 △43.1% 101 +2.2%
当期純利益 79 102 △22.4% 64 +22.7%

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、5期にわたるメディカルネットの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年5月期の通期の売上高は29.2億円、営業利益は1.06億円であり、営業利益率は3.6%です。

営業利益推移

①-3 連結の経営指標

2020年5月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:29.2億円(前年比+30.5%)
  • 経常利益:1.03億円(前年比△76.7%)
  • 当期純利益:0.79億円(前年比△29.1%)
決算年月 2019年5月期
2020年5月期
売上高(百万円) 2,236 2,917
経常利益(百万円) 182 103
当期純利益(百万円) 102 79
純資産額(百万円) 1,642 1,006
総資産額(百万円) 2,051 1,736
自己資本比率 79.7 57.4
営業キャッシュフロー(百万円) 22 78
投資キャッシュフロー(百万円) △145 △14
財務キャッシュフロー(百万円) △21 △497
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 1,028 595

 

4Q業績ハイライト (2020年5月期)

以下は、2020年5月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上高はおおよそ右肩上がりである一方、営業利益は一定のラインを描いておらず、売上高と営業利益が比例していないことがわかります。

期間 2020年5月期
1Q
2020年5月期
2Q
2020年5月期
3Q
2020年5月期
4Q
売上高(百万円) 703 738 731 743
粗利益(百万円)
販管費(百万円)
営業利益(百万円) 36 29 44 -3
従業員数 105 113

 

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は約2倍の成長を達成しています。
一方、売上高が最も高い2020年5月期は、利益が最も低い期となっています。

決算年月(百万円) 2016年5月 2017年5月 2018年5月 2019年5月 2020年5月
売上高 1,482 1,481 1,741 2,236 2,918
経常利益 177 125 155 183 104
当期純利益 186 82 88 102 79
純資産額 1,451 1,515 1,553 1,642 1,006
総資産額 1,668 1,771 1,885 2,051 1,737
自己資本比率 85.6 84.4 82.0 79.7 57.4

 

②メディカルネットの事業内容

②-1 メディカルネットとは?

メディカルネットは「インターネットを活用し、健康と生活の質を向上させることにより笑顔を増やします。をミッションとして掲げ、歯科をはじめとした医療機関と個人ユーザーを繋いだり、医療機関のビジネスをサポートするサービスを提供しています。

中心となるビジネスは、医療機関の広告宣伝をサポートし、個人顧客に対して情報を届けるメディア・プラットフォーム事業が事業運営の中核となるサービスです。
例えば、飲食業界では「食べログ」、美容業界では「ホットペッパービューティー」などがその業界の代表的なメディアプラットフォームですが、メディカルネットは、特に歯科業界に特化した形のメディアプラットフォームを運営しています。
そして、このようなサービスが機能することで、メディカルネットは、医療機関のマーケティングと個人顧客の情報アクセスに貢献しています。

また、メディカルネットは、メディア運営だけでなく、そこで得た知見や業界との関係性を生かしてメディア以外の事業も行っています。
このようなメディア以外の事業は主に2事業運営されています。
1つ目は、医療機関経営⽀援事業という事業で、このセグメントでは、医療関係機関の機材調達や、経営、人材確保などを支援が行われています。
2つ目の事業は、医療BtoB事業という事業で、このセグメントでは、歯科医療関係者の専門メディアなどが運営されています。

メディア・プラットフォーム事業を中心としたメディカルネットの全体的なビジネスモデルは、以下の図の通りです。

メディカルネット

 

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

メディカルネットが行う事業のセグメントは、収益別に3分されます。
BtoCメディアを運営するメディア・プラットフォーム事業、医療機関に必要なサービスやプロダクトの調達を支援する医療機関経営支援事業、さらに歯科医向けBtoBサービス事業展開する医療BtoB事業です。

以下で、それぞれのセグメントについての詳細を説明します。

メディア・プラットフォーム事業

メディア・プラットフォーム事業は、歯科業界をメインとしたBtoCサービスです。
個人顧客向けのメディアを運営することで、顧客である歯科のマーケティング活動を支援します。
具体的なサービスの名称としては、「インプラントネット」 「矯正⻭科ネット」などでオススメの歯科医をサイトで紹介し顧客に紹介するサービスです。
このサービスによって、歯科医側は効果的に集客ができるようになり、個人顧客も歯科医をより選びやすくなります。
また、メディア・プラットフォーム事業ではメディア運営だけでなく、歯科医向けのホームページの作成を支援するという形でも歯科医のマーケティングに関するサポートを行っています。

医療機関経営支援事業

医療機関経営支援事業は、医療機関向けに医院の内装や医療機材の提供、経営支援、採用支援などを行うサービスです。
医療機関で必要とされる財やサービスを幅広く提供しています。
また、このセグメントはメディカルネット全体の収益の70%以上を担うセグメントであり、売上への貢献度が高い事業です。

医療BtoB事業

医療BtoB事業は、歯科医療従事者向けの専門メディアを運営するサービスです。
歯科医向けのセミナーや歯科経営などの歯科業界に関わる専門的な情報を提供するプラットフォームとしてのメディアとなっています。
「Dentwave.com」と、「Dental Tribune」の2メディアが軸となって運営されており、特に「Dental Tribune」は世界90ヶ国で65万人の読者を持つ世界最大級の歯科メディアとなっています。

②-3 売上構成比/セグメント別売上の比較

以下の円グラフは2020年5月期のセグメント別の売上高を表した図です。
売上の約70%は医療機関経営支援事業によって占められており、約27%はメディア・プラットフォーム事業で構成されています。
このことからメディカルネットはその売上の大部分を個人顧客向けメディア運営と医療経営サポートから獲得していることがわかります。

 

セグメント別の売上

また、以下の図は2019年5月期におけるセグメント別の売上と2020年5月期のセグメント別売上の見通しを示したグラフです。

セグメント別売上昨年度比較

売上高の合計値は、2020年5月期は前期と比較して大幅に増加していることがわかります。
特に、医療機関経営支援は1.5倍以上の成長を見せるなど、最も収益の大きなセグメントの売上増加が全体の数値の増加につながったことが考えられます。
メディアカルネットは、このセグメントの数値増加の主要な要因として、期中に連結子会社化したオカムラの業績が通期の売上に大きく貢献したと決算報告にて発表しています。
一方、2番目に大きい収益源であるメディア・プラットフォームは前期比-6.4%の下落となっています。
メディカルネットは、この要因として検索順位の影響がメディアに対して不利に働いたという見解を示しています。

③メディカルネットの主要KPIとその数値推移

③-1 売上推移1(メディア・プラットフォーム事業)

以下の図は、メディア・プラットフォーム事業の歯科領域の直近6期にわたる売上高と利益の推移です。
メディア・プラットフォーム事業では、美容領域における運営も行われていますが、売上高が歯科領域に比べ圧倒的に過少であるため、ここでは歯科領域の数値のみにフォーカスして説明を行います。

歯科領域の数値

メディア・プラットフォーム事業の歯科領域では、売上や利益は2018年を境に下落傾向にあります。
特に直近の下落要因としては、前述した通り、検索順位の変化が大きな要因の一つとして考えられます。
ただし、メディカルネットの発表によると、売上自体が下落している一方で、メディアからの予約率は向上している(コンバージョン率の向上)や検索順位も回復傾向にあるという見解を示しています。
コンバージョン率と検索順位の上昇は、WEBメディアにとって大変重要な指標であり、両者の情報はメディアとしての価値に大きな影響を及ぼします。

③-2 医療機関経営⽀援 

以下の図は、医療機関経営支援事業の歯科領域の直近6期にわたる売上高と利益の推移です。
前述したメディア・プラットフォーム事業とは対照的に、オカムラの子会社化などが売上の大幅な増加に繋がっているようです。

医療機関支援

医療機関経営支援事業は、医療機関で使用されるツールやサービスを幅広く提供するサービスです。
メディカルネットの売上の7割以上を占めるセグメントですが、メディア・プラットフォームなどと比較すると、利益率が非常に低いことがわかります。
また、このセグメントは、売上の上昇に利益が必ずしも比例しない事業であることがグラフから読み取ることができます。

④メディカルネットのコスト構造

④-1 メディカルネットの売上原価/販売管理費  

以下の図は、メディカルネットの売上原価/販売管理費の内訳を示したグラフです。
全体的には、売上原価、販管費共に上昇しています。
特に、売上原価は全体で前年比1.4倍以上の大幅な拡大をしています。
メディカルネットは、原価率の上昇要因として、子会社化したオカムラの業績が原価へ強く影響をおよぼしたと説明しています。

メディカルネットのコスト構造

 

⑤メディカルネットの投資領域

⑤-1 株式会社オカムラの子会社化

メディカルネットは、2019年11月、⻭科医療を取り巻く幅広い需要に対して課題解決を⾏うため、株式会社オカムラの全株を所得し完全子会社化すると発表しました。
オカムラは、⻭科医院に対する器材や器具・薬品などの販売を行っている会社です。
以下は、オカムラの子会社化に関する記事URLです。

2019年11月 株式会社オカムラの完全子会社化に関する記事

⑤-2 その他の業務提携や新規リリース

また、メディカルネットは2019年3月に株式会社識学と共同で、「識学トレーニングDental Clinic Edition」の提供を開始するため業務提携を行いました。
この業務提携の目的は、相互の強みを生かし、⻭科医療業界向けのセミナーの共同開催を行ったり、⻭科医療業界向けトレーニングサービスの開発・実施を行うことです。
以下が、業務提携に関する参考記事のURLです。

2019年3月 株式会社識学との業務提携に関する記事

識学との提携

さらに、メディカルネットは2019年10月に医療BtoB事業の拡大を目的に、連結子会社であったブランネットワークス株式会社を吸収合併しました。
ブランネットワークスは、歯科医療従事者と歯科関連の企業をつなぐポータルサイトの運営を中心に行っている会社です。

2019年10月のブランネットワークスの吸収合併についての記事

 

ブランネットワークスの吸収合併

⑥メディカルネットの株価・時価総額推移

以下の図は、メディカルネットの株価の変化を表したグラフです。

メディカルネット 株価推移

メディカルネットの2020年7月31日時点の株価は392、時価総額は21.1億円です。
2020年5月期の通期の営業利益1.06億円に対して19.9倍という評価を受けている計算となります。

⑦メディカルネットの会社情報

まずはメディカルネットの基本情報を紹介します。
市場はマザーズで、決算月は毎年5月です。

メディカルネットの基本情報

会社名 株式会社メディカルネット
設立年月 2001年6月
市場 マザーズ
証券コード 3645
業種 情報・通信業
決算期 5月
ホームページアドレス https://www.medical-net.com/
発行済株式総数 5,386,500株(2020年5月現在)
普通株式数 5,386,500株
資本金 286,034(2020年5月現在)
1単元の株式数 100株
従業員数 79 人
平均年齢 37.9歳
平均年収 5,062,000 円

メディカルネットの沿革

メディカルネットはは2000年4月事業を開始し、2001年6月に株式会社化しています。
また、2010年12月にマザーズへの上場を果たしました。

2000年4月 日本インターネットメディアセンター創業
ポータルサイト運営事業・ホームページ制作事業開始
2000年9月 ポータルサイト「インプラントネット」リリース
2001年6月 日本メディカルネットコミュニケーションズ株式会社を設立
2005年4月 ポータルサイト「矯正歯科ネット」・「審美歯科ネット」リリース
2002年2月 ポータルサイト「エステ・人気ランキング」リリース
2005年4月 西日本支社開設(現大阪支社)
2006年10月 SEM事業開始
2007年9月 東証一部上場ソネット・エムスリー株式会社(現エムスリー株式会社)と業務資本提携
2008年5月 ポータルサイト運営事業モバイルサイトの運営開始
「モバイル!インプラントネット」リリース
2008年6月 「モバイル!矯正歯科ネット」・「モバイル!審美歯科ネット」リリース
2008年9月 ソネット・エムスリー(株)(現エムスリー(株))に対し第三者割当増資を実施し、同社の持分法適用関連会社となる
2008年12月 「エステ・人気ランキング携帯版」リリース
2009年3月 「モバイル!歯医者さんネット」リリース
2009年8月 オーバーチュア(現Yahoo! リスティング広告)正規代理店に認定される
2010年1月 インプラントネットUS版「Dental Implants Net」リリース
2010年11月 第8回「デロイト・トウシュ・トーマツ Fast50」受賞
東京証券取引所マザーズへの上場承認
2010年12月 第9回「アジア太平洋地域テクノロジー Fast500」受賞
東京証券取引所マザーズへの上場
2011年8月 株式会社ガイドデント設立
2012年2月 有料職業紹介事業許可取得、人材紹介サービス開始
2012年11月 ブランネットワークス株式会社を連結子会社化、医療BtoB事業を展開
2013年4月 歯髄細胞バンクを運営する株式会社再生医療推進機構と業務提携基本契約締結
2014年9月 ヘルスケア情報サイト「4healthcare」リリース
2014年10月 美容情報サイト「美LAB.」リリース
2015年1月 ママ向け子育て情報サイト「まんまみーあ」リリース
2015年9月 株式会社ミルテルとの資本・業務提携及び無担保転換社債型新株予約権付社債の引受け
2016年5月 株式会社ガイドデントの全株式のうち90%を譲渡
2016年12月 「株式会社メディカルネット」に商号変更
2017年4月 公開育児アプリ「Moopen(モープン)」リリース
2017年5月 デンタルトリビューンインターナショナル社と業務提携基本契約締結
2017年9月 Success Sound Co.,Ltd の株式取得し子会社化(タイ王国での歯科医院運営事業を開始)
2017年10月 日本の総代理店として「デンタルトリビューン日本版」リリース
2017年12月 Medical Net Thailand Co., Ltd.「ゆたかデンタルクリニック」をリニューアルオープン
2018年2月 福岡支社開設
2018年12月 株式会社オカムラの株式取得し完全子会社化(歯科ディーラー事業を開始)

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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