0.事案の概要
この裁判例は、第三者に告発文を送った社員に対する懲戒解雇に関し、解雇としては有効であるとして、解雇の効力が生ずるまでの間の賃金請求だけを認めた事案です。実務上のポイントとして特に注目している点は1点あります。
1.2つの解雇制度
一方で解雇は合理的である、というのは、会社代表者の息子である専務が、レンタルビデオ店で他人名義の不正な会員カードでDVDを借りて逮捕された、という事実を、同業者の協会にFAXしたため、会社の名誉や信頼が害されたことが主な理由です。
他方で懲戒解雇は無効である、というのは、会社に目に見える金銭的な損害は生じていないことが主な理由です。
普通解雇と懲戒解雇の間には、多くの会社で退職金が支給されない、などの金銭的な差があるほか、不名誉な退職であり、転職などに影響が出る、などの差があり、両者の間に、相当な差があります。
この裁判例は、普通解雇と懲戒解雇の境界線を示しているのです。
2.裁判例の問題点
なお、公益通報者保護法による保護を受けるべき事案かどうかについての議論はされていませんが、本件のような独善的な従業員による公益通報の悪用を防止するためにも、本事案では公益通報者保護法による保護はない旨を明確に判示してくれれば良かった、と思われます。
※ JILA(日本組織内弁護士協会)の研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
その中から、特に気になる判例について、コメントします。
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