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資金調達する前に絶対知っておくべき!スタートアップの資本政策のイロハ

スタートアップ企業においては、社長が一人株主で、かつ、最初の資金調達として創業融資という方法を用る場合も多いと思います。
一方、ベンチャーキャピタルなどの投資家から出資による資金調達を行う場合もあるでしょう。
資本政策は、一度実行してしまうと基本的には後戻りができません
以下では、スタートアップ企業の資本政策の基本について見ていきます。

1.会社設立時の資本政策とは?

スタートアップ企業における資本政策とは、「株式公開(IPO)」や「企業買収(M&A)」などによる「イグジット(EXIT)」までの、資金調達と経営陣の持株比率維持のための政策のことを指しています。

また、株式公開や企業買収などのイグジットを目的としない場合であっても、会社内部の役員や従業員が株主になったり、会社外部の投資家が出資することにより、複数人で株式を保有することも考えられます。
このような会社においては、資本政策を考えておく必要があるといえるでしょう。

発行株式数や株価の関係においては、一般的に以下の式が成り立ちます。


時価総額=株価×発行株式数

時価総額とは、株価×発行済株式数で計算される企業価値のことです。
設立時においては、設立時の資本金以外は会社の財産がありませんので、設立時の資本金が時価総額となります。
よって、会社設立時においては、以下の式が成り立ちます。


(設立時の時価総額)
資本金=時価総額=株価×発行株式数

上式より、三つの要素のうち、二つの要素が決まれば、残りの一つの要素の金額が決まることになります。
設立時は、資本金が決まった時点でまず一要素が決まり、次に設立時の株式数を決めてもう一要素が決まり、最後に、三つ目の要素である株価が決まる、という流れになるでしょう。

発行株式数の多い少ないで、資金調達額が多くなったり少なくなったりはしません
上式からもわかる通り、設立時に発行株式数を多くすれば、株価はその分下がりますし、設立時に発行株式数を少なくすれば株価はその分上がりますが、時価総額には影響がないからです。

発行株式数については、設立時の株式数が少なすぎると、後のち、株式数を増やすために株式分割などの手続きを行うことが必要となる場合もあります。
そうなった場合、余計な手間とコストがかかってしまうことになるので、最初から、ある程度の株式数にしておいた方がいいでしょう。

2.時価総額とは?

資金調達の際の「時価総額」には、「Preの時価総額(プレバリュー)」と「Postの時価総額(ポストバリュー)」という考え方があります。
Preの時価総額(プレバリュー)とは資金調達をする「前」の時価総額で、Postの時価総額(ポストバリュー)とは資金調達をした「後」の時価総額です。


Postの時価総額(ポストバリュー)=資金調達額+Preの時価総額(プレバリュー)

となり、次のように表すこともできます。


株価×(調達時の発行株数+調達前の発行済株数)=株価×調達時の発行株数+株価×調達前の発行済株数

調達前の発行済株数は、調達前にすでに決まっています。
ここで、「資金調達額=株価×調達時発行株数」とし、必要な資金調達額を一定とすると、株価が高い方が調達時発行株数が少なくて済む、ということが分かります。

株価については、非上場の場合は市場で株価が決まるわけではありません。
そのため、会社が資金調達する際は、その都度、適正な株価を算定しなければなりません。
この株価算定のことを、企業価値評価(バリュエーション)と呼ぶことがあります。

3.資金調達の際の資本政策とは?

会社設立後は、増資などにより、外部の投資家などから資金調達を行うことが考えられるでしょう。
その場合、設立時株主の出資比率というのは、基本的には減っていくだけで、後から修正することはできませんので、その点をよく理解した上で、資本政策を進めていく必要があります。

例えば、投資家などからの資金調達前に、創業初期からの主要な役員・従業員などが株主に加わる場合、上式で算定された設立時の株価に近い株価で増資を行うことを検討します。
また、設立時から、役員・従業員などのを株主に迎え入れることが決まっているのであれば、設立時の資本金を共同で出資することも考えられるでしょう。

持株比率は、会社が成功すればするほど、大きな意味を持ってきます。
誰が何%を持つのかを、あらかじめ明確に決めることが重要になってくるでしょう。
スタートアップではスピード感のある意思決定が求められるため、経営権を確保しつつ、株主総会特別決議の要件をクリアできる程度に社長が株式を保有しておく必要があります。
一般的には、社長が70~80%などのある程度の比率を持っていた方がうまくいくと言われています。

また、ベンチャーキャピタルなどの外部の投資家からの資金調達の場合は、どうでしょうか。
投資家からの資金調達においては、「シリーズA」、「シリーズB」、「シリーズC」などと呼ばれています。
「シリーズA」などの言葉については、厳密な定義はありませんが、一般的に、「シリーズA」はサービスリリース前後、「シリーズB」はサービス成長期、「シリーズC」はサービス拡大期における資金調達のことを指しています。

しかし、早い段階で黒字化した会社などの場合、「シリーズA」の次が「株式公開」ということもあるため、全ての会社が各ステージで資金調達をするわけではありません。また、資金調達の際の企業価値評価(バリュエーション)については、非常に難しく、実際にはケース・バイ・ケースとなります

このように、資本政策は各社の事情により異なりますが、比較的コントロールがしやすい創業初期の段階で、決めることが重要となってくるでしょう。

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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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