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特許と意匠の違いとは?適切な選択のケースや手続きを丁寧に解説。

特許と意匠は、どちらも権利を扱うので混同しやすい概念です。しかし、その内容には多くの差異があります。今回はそんな特許と意匠について、適切な選択のケースや手続きについて丁寧に解説しました。

1.特許とは

まずは特許の保護対象と存続期間について見ていきたいと思います。

(1)特許の保護対象は?

特許はどのようなものを保護対象とするのでしょうか。

そもそも特許とは新規性や進歩性のある発明を一定期間保護する制度のことを言います。発明と言うと曖昧としていますが、技術的なアイデアや従来にはない新しい科学技術を保護するシステムが特許です。この特許権を得るためには特許庁に出願し、審査をクリアしないといけません。

それでは、発明や技術的なアイデアとは言っても、実際にどのようなものを特許は保護するのでしょうか。

例えば、布の特殊な凹凸によって、水分をよく含むタオルを開発したとしましょう。そのタオルは、布の特殊な凹凸という科学的な根拠に基づいてその性能を発揮します。よってこれは、新しい発明、つまり特許によって保護され得る対象になるのです。

(2)特許の存続期間

特許はどのくらいの期間存続するのでしょうか。

特許権は、特許出願の日から20年間で終了します。ですが、特許権の始期は、特許権の設定登録日となっています。まぎらわしいので、しっかりと覚えておくようにしましょう。

また、特許の存続期間は例外的に延長することもできます。

特許法67条2項では、特許庁の不合理な審査によって登録査定が遅れた期間について、その不合理な審査に要した期間を上限として延長登録を認めています。

また、医薬品の分野においては、安全性確保のために法律の規定によって、一定の処分を受けないと特許発明の実施が行えないというケースがあります。よって、以上のような理由で特許発明ができなかった場合には延長登録を出願することによって5年を限度として存続期間を延長することができます。

2.意匠とは?

続いて、意匠がどのようなものかを見ていきたいと思います。

(1)意匠の保護対象は?

意匠は開発した商品のデザインを保護します。斬新な新しい工業デザインで、科学的な技術を含まないものを意匠は保護するのです。また、その新しいデザインと新規性のある科学的な技術が密接な関係にある場合は意匠で保護されるケースもあります。

特許で例にとった、特殊な凹凸を持つタオルで考えてみましょう。

このタオルにおいては特殊な布の凹凸というデザインと新しい科学技術が密接な関係にあることがわかります。そして、この凹凸のデザインを変更してしまうと、効果が得られなくなってしまうと考えられます。よって、このような場合は意匠登録をすると間接的にその商品の科学的な技術も保護されることになります。

(2)意匠の存続期間

意匠の存続期間は、出願日から25年間です。この際、出願から登録までの期間は存続期間に換算されません。特許権とは違い、権利期間と存続期間が同じなので注意が必要です。

3.特許と意匠の違いとは?

それでは、特許と意匠は具体的にどのように違うのかを見てみましょう。

(1)保護するものの違い

特許と意匠でもっとも大きな違いは保護するものです。特許は、発明や新規性のある科学技術を保護し、意匠は工業デザインを保護します。簡単に言うと、真似されたくないものがアイデアなら特許、真似されたくないものがデザインなら意匠を取るようにすれば良いのです。

また、特許の審査では新規性が無いと判断されても、意匠の審査では新規性があると判断されることもあり、そしてその逆もあります。

特許が保護する対象 発明、新規性のある科学技術など
意匠が保護する対象 工業デザインなど

※表1、保護対象の違い

(2)手続きの違い

一般的に、特許と意匠では、特許の方が手続きが煩雑であり、審査期間が長いと言われています。意匠においては、権利範囲が図面で表現されているので、権利内容の把握が迅速に行われるということも理由の1つとして挙げられます。

意匠登録手続きの流れ 特許登録手続きの流れ
①意匠出願 ①特許出願
②方式審査 ②方式審査
③実体審査 ③出願公開
④拒絶理由通知 ④出願審査請求
⑤意見書・補正書 ⑤実体審査
⑥拒絶査定 ⑥拒絶理由の通知
⑦登録査定 ⑦意見書・補正書
⑧登録料納付 ⑧拒絶査定
⑨設定登録 ⑨特許査定
  ⑩特許料納付
  ⑪設定登録

※表2、意匠登録・特許登録の手続き流れ

意匠登録、特許登録どちらも拒絶理由の通知が無ければ、実体審査ののちに登録査定・特許査定となります。

以上見てみると、出願公開や出願審査請求があるので、特許登録の方が一般的には手続きが煩雑になることが多いです。出願公開とは出願の内容が公開されることを言い、出願公開されると公的文献の役割を有します。出願審査請求とは、特許庁の審査官による実体審査を受けるための請求のことを言います。

 

(3)費用の違い

特許と意匠は費用の面でどのように違うのでしょうか。

最低限の費用を、表3と4にまとめてみました。

この表に載っているものは最低限の費用なので、弁理士などに依頼をする場合は別途料金がかかります。

基本的に、特許と意匠においては、特許のほうが費用が多くかかると言えます。

特許出願 14000円
外国語書面出願 22000円
電子化手数料 1200円+700円×ページ数
出願審査請求 138000円+(請求項の数)×4000円
3年目までの特許料 2100円/1年 1請求項につき200円

※表3、特許出願費用

意匠出願 16000円
登録料 8500円

※表4、意匠出願費用

4.特許で保護するのが適切なケース

続いて、特許で保護するのに適切なケースを見てみたいと思います。

   <h3>デザインのバリエーションが多い場合

商品のデザインのバリエーションが多い場合、バリエーションの各所について意匠申請をして、真似を防止することはできます。しかし、そうすると意匠申請の件数が多くなってしまうため、費用がかかり手続きが煩雑になってしまいます。このようなケースの場合、デザインに共通する機能について特許を取得すれば、1つの特許ですべてのバリエーションを保護することが可能になります。

5.意匠で保護するのが適切なケース

それでは意匠で保護するのが適切なケースとはいったいどういったものなのでしょうか。

(1)デッドコピー(そっくり真似をされる)の可能性があるデザイン

まず、そっくりそのまま真似される可能性があるデザインだったら意匠で保護するのが適切と言えます。例えば、車だったら車両全体について意匠を取得することで、真似される可能性を排除することができます。

(2)特殊なデザイン

例えば、製品の顔となるようなデザインがその商品にある場合は、意匠を取得することが適切と言えます。あるデザインを見たら、そこのブランドとわかるようなデザインは意匠を取得して、真似されることを防いでおくと良いでしょう。

6.まとめ

今回は特許と意匠についてその違いをまとめてみました。

似ている概念と思われがちですが、保護対象などさまざまな点で大きな差異があることが分かっていただけたと思います。

また、特許と意匠、どちらも申請をする際には専門的な知識が要求されます。費用はかかりますが、弁理士などの専門家に依頼して作業をすることを強くおすすめします。


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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