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【上場企業決算分析】日本プロセスの最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

日本プロセス株式会社は、東京都品川区に本社を構える独立系のソフトウェアシステム開発会社です。
自動車や鉄道のような運輸機器や機械製品などに搭載されるソフトウェアの開発業務を主力事業としています。

創業は1967年であり、1992年にJASDAQへ上場しました。

①日本プロセスの決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年5月(実績) 19年5月(実績) 前年比 20年5月(計画) 計画比
売上高 7,770     7,215 +7.7% 7,620 +2.0%
売上総利益 6,027 5,683
営業利益 727 615 +18.3% 635 +14.6%
経常利益 785 665 +18.1% 685 +14.7%
当期純利益 558 501 +11.5% 470 +18.8%

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、5期にわたる日本プロセスの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年5月期の通期の売上高は77.7億円、営業利益は7.3億円であり、営業利益率は9.4%です。

営業利益率の推移

①-3 連結の経営指標

2020年5月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:77.7億円(前年比+7.7%)
  • 経常利益:7.9億円(前年比+18.0%)
  • 当期純利益:5.6億円(前年比+11.4%)
決算年月 2019年5月期
2020年5月期
売上高(百万円) 7,215 7,770
経常利益(百万円) 665 785
当期純利益(百万円) 501 558
純資産額(百万円) 8,822 9,396
総資産額(百万円) 10,628 11,295
自己資本比率 83.0% 83.2%
営業キャッシュフロー(百万円) △217 246
投資キャッシュフロー(百万円) 385 476
財務キャッシュフロー(百万円) △359 △425
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 1,596 1,991

 

4Q業績ハイライト (2020年5月期)

以下は、2020年5月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上高、営業利益とも、期末に向かうごとにおおよそ右肩上がりで増加しています。

期間 2020年5月期
1Q
2020年5月期
2Q
2020年5月期
3Q
2020年5月期
4Q
売上高(百万円) 1,836 1,836 1,930 2,167
粗利益(百万円)
販管費(百万円)
営業利益(百万円) 172 169 179 205

 

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は1.4倍程度の成長をしていることがわかります。
また、利益に関しても5期で1.6倍程度の増加となっており、2020年5月期は売上、利益とも過去5期で最高収益です。

決算年月(百万円) 2016年5月 2017年5月 2018年5月 2019年5月 2020年5月
売上高 5,618 5,567 6,289 7,215 7,770
経常利益 479 464 579 665 785
当期純利益 304 306 314 501 558
純資産額 8,011 8,308 8,308 8,822 9,396
総資産額 9,146 9,682 10,066 10,628 11,295
自己資本比率 87.6% 85.8% 84.6% 83.0% 83.2%

 

②日本プロセスの事業内容

②-1 日本プロセスとは?

日本プロセスは「情報通信技術を応用した新しい価値創造で顧客とともに社会に貢献します。」を経営理念として掲げ、ソフトウェア開発技術を事業の核として、自動車や交通機関への制御システムの提供や衛星画像の解析技術の提供、ITサービスなどを行っている会社です。

スマートフォンやパソコンなどのインターネットに関わる製品以外でも、IT技術は多くのシーンで使用されています。
例えば、電車や新幹線、自動車など搭載されている制御システム、画像解析、駅などにある自動券売機などはIT技術が欠かせないプロダクトとなっています。

日本プロセスは、そのような制御システムやオペレーションシステムをNECや東芝、日立などの大手機械メーカーに提供する事業を運営しています。

事業分野としては、新幹線や自動車に搭載する制御システムの開発・提供から、企業のクラウド運用サポートまで多岐に渡り、主に6つの主要セグメントに事業領域が分割されています。

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

日本プロセスが行う事業のセグメントは、カテゴリ別に以下の6セグメントに分割されます。

  • 制御システム事業
  • 自動車システム事業
  • 特定情報システム事業
  • 組込システム事業
  • 産業・公共システム事業
  • ITサービス事業

以下で各事業の詳細について説明していきます。

制御システム事業

制御システム事業は、公共交通機関や発電所などの公共インフラを対象として制御システムのソフトウェアを提供する事業です。
日本プロセスの主なサービス提供先は、発電所とJR在来線や新幹線などの公共交通機関です。

具体的には、プラントの起動や停止などを管理する制御システムを発電所へ提供したり、過密ダイヤ下おいても正確な列車運行を可能する運行管理システムを公共交通機関向けに開発しています。

また、日本プロセスが公共交通機関向けに開発するシステムは、台湾新幹線など海外においても導入されています。

自動車システム事業

自動車システム事業は自動車に搭載するソフトウェアを開発するセグメントであり、日本プロセスは、自動車メーカーへ提供するサービスとして「CASE」という概念に即したシステム開発を行っています。
「CASE」とは、

  • 近距離無線技術をベースとした社会とつながる自動車通信システム(Connected)
  • 高度な画像処理技術を活用した自動運転システム(Autonomous)
  • カーシェアなどのシェアリングを推進するシステム(Shared/Service)
  • 電気自動車やハイブリッド自動車などの電動化(Electric)

の頭文字を表したものであり、次世代の自動車開発には不可欠な要素です。

日本プロセスでは、「CASE」の概念の即して、エンジンやブレーキなどの制御機能の他に、自動運転で必要不可欠とされるカメラやレーダー、センサーなどの画像解析や周辺環境の把握に利用されるシステムの提供を行っています。

特定情報システム事業

特定情報システム事業は、異常気象や災害などの防災・危機管理に関するシステムを提供する事業です。

この事業では、日本プロセスが持つ画像解析技術とリモートセンシング技術の2つの技術が主に応用されています。

リモートセンシング技術とは、対象物に直接触れることなく遠隔から物体の形質や性質を把握することを可能とする技術です。
この2つの技術を組み合わせることで、遠隔から、気象状況や地表の状態などを把握することができます。

組込システム事業

組込システム事業では、家電製品や機械などに組み込まれるコンピューターシステムを開発しています。
このシステムが組み込まれていることにより、家電製品や機会は、指示に対して的確に動作することが可能となります。
日本プロセスでは、主に半導体装置や医療機器、自動車などに組み込まれるコンピューターシステムを組込システムとして提供しています。

産業・公共システム事業

産業・公共システム事業は、エネルギー領域や自動車領域、公共交通機関などの領域で、より先端技術に特化したシステム開発を行っている事業です。

従来の制御システムや組込システムの基盤となるソフトウェア開発技術のノウハウを利用し、AI、ロボッティックス、ディーブラーニングなどのより先進的な技術を導入することで、システムを進化させることを目的としています。

日本プロセスでは、このセグメントにおいて人工衛星や気象観測などの航空・宇宙関連の事業や、医療画像分野やフォトイメージング分野などのシステム開発を行っています。

ITサービス事業

ITサービス事業は、クラウドシステムをはじめとした、企業内で運用されるシステム効率的な運用や管理のサポートを行う事業です。

クラウド技術は、近年急速にそのシェアを高め多くの企業で導入されていますが、それに伴うセキュリティリスクの増大やマネジメントの低下に伴う問題解決には、多くの労力やコストがかかり、企業内ですべて解決するのは難しいとされています。

日本プロセスは、このような企業に対し、システムのセキュリティ管理サポートや拡張サポートなどを行う事業です。

②-3 売上構成比/セグメント別売上の比較

売上の構成比に着目して、直近4期の売上高を見ていきます。
売上を構成するセグメントについては前述した通りです。
2020年5月期は、過去4期に比べ売上高は最高額となっています。

売上構成比

 

 

 

 

 

 

 

また、以下の図は2020年5月期におけるセグメント別の売上と2019年5月期のセグメント別売上を比較したグラフです。
「産業・公共システム事業」が大幅に上昇を示しており、かつ最も収益が高い事業セグメントとなっています。
一方、「ITサービス事業」のセグメント売上は全セグメントの中で、唯一売上が前年と比較して減少しています。
また、後述しますが、「産業・公共システム事業」と「ITサービス事業」は、2021年5月期に統合される予定です。

セグメント別の売上推移

 

③日本プロセスの主要KPIとその数値推移

③-1 過去5期の売上実績と売上計画

以下の図は、過去5期にわたる売上実績と売上計画を比較したグラフです。
2017年5月期以外は、計画を上回る実績を残しており、全体としては、毎年増収増益を続けています。
営業利益率も概ね右肩上がりで推移しており、2020年5月期は初めて9%を上回る営業利益率となっています。

実績と計画

 

③-2 2021年5月期の計画指標との比較

日本プロセスは、2021年5月期の売上や利益の計画指標を2020年5月期の実績と比較して低く設定しています。
決算説明書では、2021年5月期は投資フェーズであるとの説明がなされており、事業セグメントの再編なども行われる予定です。

 

計画と20年実績

④日本プロセスのコスト構造

④-1 日本プロセスの販売管理費

以下の図は、日本プロセスの売上原価と販管費及び売上あたりの原価率を示したグラフです。
日本プロセスは、2期とも77%以上の原価率であり、産業としては比較的原価率が高いビジネスモデルであることがわかります。

原価、販管費、原価率

 

④-2 過去2期の利益推移

以下のグラフは、2020年5月期と前期の営業利益、粗利益、営業利益率を比較したグラフです。
粗利益と営業利益の推移は概ね連動していることがわかります。
また、2020年5月期は、営業利益率が9%を超えるなど、日本プロセスの過去の数値と比較すると、非常に利益率が高いタームでした。

営利、粗利、営業利益

⑤日本プロセスの投資領域

⑤-1 株式会社アルゴリズム研究所の買収

日本プロセスは、2018年5月にアルゴリズム研究所を完全子会社化しました。
アルゴリズム研究所は、社会インフラ分野におけるシステム開発を行っており、買収額は1億6千万円です。
日本プロセスは、中長期的な計画として、IoT、自動車、環境・エネルギーを中核としたビジネスへシフトすることを目標としており、インフラ部門のシステム開発に強みを持つアルゴリズム研究所の子会社化を行いました。
買収の詳細に関する記事は以下のURLです。

2018年5月のアルゴリズム研究所の買収に関する記事

⑤-2 その他の業務提携や新規リリース

日本プロセスは、2020年5月期の決算報告で、これまで異なるセグメントであった「産業・公共システム事業」と「ITサービス事業」を2021年5月期に統合することを発表しています。
理由としては、システム開発部門である「産業・公共システム事業」と、システム構築や管理のサポートを行う「ITサービス事業」を統合することで、ビジネスの拡大を目指すことが目的であると表明しています。
統合された事業として発足する「産業・ICTソリューション事業(仮)」ですが、事業内容を見ると、社会インフラや先端技術に関する事業が中心となっており、前述したアルゴリズム研究所の子会社化した事例からも推測できるように、日本プロセスがインフラや先端技術に注力していく方針であることを読み取ることができます。

セグメント統合について

 

⑥日本プロセスの株価・時価総額推移

以下の図は、日本プロセスの株価の変化を表したグラフです。

日本プロセス 株価

日本プロセスの2020年8月4日時点の株価は735円、時価総額は78.2億円です。
2020年5月期の通期の営業利益7.3億円に対して10.7倍という評価を受けている計算となります。

⑦日本プロセスの会社情報

まずは日本プロセスの基本情報を紹介します。
市場はJASDAQスタンダードで、決算月は毎年5月です。

日本プロセスの基本情報

会社名 日本プロセス株式会社
設立日 1967年6月20日
市場 JASDAQスタンダード
証券コード 9651
業種 サービス
決算期 5 月
ホームページアドレス http://www.jpd.co.jp/
発行済株式総数 10,645,020(株)
普通株式数 10,645,020(株)
資本金 1,487,000,000円(2020年5月時点)
1単元の株式数 100(株)
従業員数 657 人
平均年齢 37.7 歳
平均年収 6,416,588 円

日本プロセスの沿革

日本プロセスは1967年に日本プロセスコンサルタント株式会社として東京都で設立され、1992年にジャスダックへの上場を果たしました。

1967年 日本プロセスコンサルタント(株)設立
プロセス工業向けエンジニアリング、システム開発及びコンサルティング業務開始
1970年 プロセス制御・自動化システム開発開始
1971年 日本プロセス(株)に商号変更
1975年 言語プロセッサ、教育システム開発開始
1977年 日立事務所開設
原子力、エネルギー関連システム開発開始
1978年 プロコン用通信制御システム開発開始
1981年 自動車工業用CADシステム開発開始
海外向け石油パイプライン制御システム開発開始
1982年 地震・気象観測システム開発開始
1983年 AI用ツール開発開始
1985年 設備診断用エキスパートシステム開発開始
1986年 海外向け電縫管(パイプ)製造プラントシステム開発開始
1987年 印刷・出版自動化システム開発開始
1988年 防衛訓練システム開発開始
1992年 ジャスダック上場
電力系統システム開発開始
1993年 新幹線運行管理システム開発開始
1995年 車載制御システム開発開始
JR貨物分散型ネットワークシステム開発開始
1997年 衛星画像処理システム開発開始
1998年 災害対策ナビゲーションシステム開発開始
介護システム開発開始
1999年 ディジタル複合機システム開発開始
2000年 川崎事業所開設
携帯電話システム開発開始
2002年 木材加工ロボット制御システム開発開始
2004年 川崎事業所を京浜事業所に改称
2005年 車載情報システム開発開始
2008年 中国(大連)現地法人開設
2010年 横浜事業所開設
半導体記憶装置関連組込システム開発開始
2012年 システムの開発環境・運用環境構築サービス開始
2016年 ADAS(先進運転支援システム)開発開始
2017年 勝田事業所開設
IoT建設機械クラウド基盤システム開発開始
2018年 (株)アルゴリズム研究所を完全子会社化
2020年 本社を東京都品川区に移転

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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