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【上場企業決算分析】アイスタイル(istyle)の最新決算・事業内容・業績・歴史を徹底解説

株式会社アイスタイルは、2000年に東京都で設立された日本No1.のコスメ・美容の総合サイト「@cosme」を運営する企業です。
また、「@cosme」を中核とした関連サービスの運営も複数行っています。

アイスタイルは、2012年にマザーズへ上場し、その後東証1部へ市場変更を行いました。

アットコスメ

① 決算データ

①-1 最新期の売上/売上総利益/営業利益/経常利益/当期純利益

決算年月(百万円) 20年6月(実績) 19年6月(実績) 前年比 20年6月(計画) 計画比
売上高 30,564 32,193 △5.1 39,000 △21.6
売上総利益 13,993 15,175 △7.8
営業利益 △2,325 476 △1,240
経常利益 △2,438 380
当期純利益 △5,020 △519

 

①-2 売上・営業利益・営業利益率の推移

以下の図は、5期にわたるアイスタイルの売上高、営業利益及び営業利益率をグラフ化したものです。2020年6月期の通期の売上高は305.6億円、営業利益は-23.3億円であり、営業利益率は-7.6%です。

アイスタイルの営業利益の推移

①-3 連結の経営指標

2020年6月期の通期業績は以下の通りです。

  • 売上高:305.6億円(前年比△5.1%
  • 経常利益:△24.4億円
  • 当期純利益:△50.2億円
決算年月 2019年6月期
2020年6月期
売上高(百万円) 32,193 30,564
経常利益(百万円) 380 △2,438
当期純利益(百万円) △519 △5,020
純資産額(百万円) 10,761 5,413
総資産額(百万円) 22,003 24,157
自己資本比率 47.1% 21.5%
営業キャッシュフロー(百万円) 154 △202
投資キャッシュフロー(百万円) △4,096 △2,399
財務キャッシュフロー(百万円) 1,176 6,026
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 3,184 6,584

 

4Q業績ハイライト (2020年6月期)

以下は、2020年6月期の業績を4Qに分けた指標です。
売上高、営業利益とも概ね右肩下がりの数値を示しています。
特に、4Q目の売上高は70億円以下となっており、決算報告では、新型コロナウイルスによる売上減が原因であるとの説明がなされています。

期間 2020年6月期
1Q
2020年6月期
2Q
2020年6月期
3Q
2020年6月期
4Q
売上高(百万円) 7,901 8,041 7,667 6,955
粗利益(百万円)
販管費(百万円) 3,911 4,540 3,978 3,890
営業利益(百万円) △205 △952 △241 △927

 

経営指標(過去5年分)

5期の間に売上は2倍以上の成長をしていていますが、2019年6月期をピークに最新期は減少しました。
一方、利益に関しては、2018年をピークに大きな減少を見せ、2020年6月期は経常・当期純利益どちらも大きくマイナスとなりました。

決算年月(百万円) 2016年6月 2017年6月 2018年6月 2019年6月 2020年6月
売上高 14,282 18,888 28,470 32,193 30,564
経常利益 1,657 1,299 2,147 380 -2,438
当期純利益 1,274 1,076 1,184 -519 -5,020
純資産額 5,690 11,013 12,008 10,761 5,413
総資産額 9,663 18,141 21,911 22,003 24,157
自己資本比率 58.4 59.4 53.0 47.1 21.5

 

② 事業内容

②-1 アイスタイルとは?

アイスタイルは、「Beauty × IT で世界No.1企業へ」をミッションとして掲げ、日本No1.のコスメ・美容の総合サイト「@cosme」の運営を中心とした事業展開を行っています。

アイスタイルの中心となるサービス「@cosme」は、女性にとって楽しく役に立つ情報を提供する化粧品・コスメ情報専門ポータルサイトです。
「@cosme」には、化粧品のクチコミランキングをチェックしたり、オリジナル商品の企画に参加できたり、スキンケアやメイクの疑問を質問できたりする機能が備わっています。
また、その他にも美容に関するお仕事や、化粧品店からのお得な話題など、ビューティについてあらゆる角度からさまざまな情報を受け取ることができるため、「@cosme」は、単なる化粧品の口コミサイトとは異なり、美容関連の全てを網羅したプラットフォームであるといえます。

「@cosme」は、日本の20代~30代の女性の3人に2人が毎月なんらかの形で利用するサイトであり、この年齢層の女性にとっては非常に身近なサービスです。

アイスタイルは、この「@cosme」の運用を基軸として、以下4つのセグメントの運営を中心に行っています。

  1. On Platform事業(メディア・広告)
  2. Beauty Service(小売)

  3. Global(海外)

  4. Others(その他)

各セグメントの立ち位置を示した図は、以下の通りです。

事業系統図 アイスタイル

 

②-2 セグメント別の事業内容/ビジネスモデル

アイスタイルは、「@cosme」の運用そのものや、運用を通じて得たデータやノウハウをもとにECや店舗販売、マーケティング支援や人材ビジネスなど様々な領域へビジネス展開を行っています。
また、これらの多様なビジネスは、事業特性ごとに4つのセグメントに分類されています。
以下で、それぞれのセグメントについての詳細を説明します。

「On Platform」事業(メディア・広告)

On Platformは、日本No1.のコスメ・美容の総合サイト「@cosme」の運営や、化粧品ブランド向けの広告サービス、SaaS型のマーケティング支援サービスなどを展開するセグメントです。
このセグメントの売上は、全体の2位ではありますが、全てのサービスの中核をなす「@cosme」を運営するセグメントであるため、アイスタイルの中心的な事業セグメントであるといえます。
このセグメントで運営されている主なサービスは以下の通りです。

  • 美容系総合サイト「@cosme」
    国内外3万以上のブランド、30万点以上ものコスメの商品データベースと、クチコミ検索機能や新商品情報などを備えた日本最大のコスメ・美容の総合サイトであり、日本の20代~30代の女性の3人に2人が毎月なんらかの形で利用するサービスです。
    1999年のオープン以来、会員数・クチコミ件数・ページビュー数ともに伸び続け、累計クチコミ数は1,400万件を突破しています。
    有料サービスである、プレミアム会員制も導入されており、課金された会費はOn Platformの収益となります。
  • ブランドオフィシャル
    ブランドオフィシャルは、対企業向けに設計された、企業のマーケティング活動をサポートするサービスです。「@cosme」のデータベースを利用されており、企業はそのデータから「@cosme」のユーザー動向の分析や、「@cosme」内で情報発信を行うことができるため、自分たちの提供する商品に対してより親和性のあるユーザーの分析や、効率的な広告発信につなげることができます。
    現在、このサービスは、月額50万円の年間契約で提供されており、導入企業からの契約金がOn Platformの収益となります。

    ブランドオフィシャル

 

「Beauty Service」事業(小売)

Beauty Serviceは、「@cosme」のデータを活用し、日本No.1の化粧品専門ECサイト「@cosme SHOPPING」、日本No.1の化粧品専門店「@cosme STORE」の運営を中心とするセグメントです。
アイスタイルのセグメントの中で最も大きな売上を持つセグメントであり、収益の中心をなす事業であるといえます。

このセグメントで運営されている主なサービスは以下の通りです。

  • 化粧品専門EC「@cosme SHOPPING」
    「@cosme SHOPPING」は、「みんなの欲しいを叶える」化粧品専門ECとして、2002年にオープンしたECサービスです。「@cosme」のデータベースを活用し、幅広いタイプの商品を揃えてEC運営を行っています。
    2015年のリニューアル以降は、取り扱いブランド、取り扱い商品数共に日本最大の化粧品専門ECへと成長しました。

  • 化粧品専門店「@cosme STORE」
    「@cosme STORE」は、「試せる・出会える・運命コスメ」をテーマにしたリアル店舗で運営されている化粧品専門店です。「@cosme」のデータベースを活用し、「生活者が求めている商品」をセレクトすることで、消費者に本当に求めれている商品を提供できることを強みとしています。
    2007年にサービスを開始した「@cosme STORE」は、現在、化粧品小売チェーンとして、日本で最大規模の店舗展開数(26店舗/2018年11月現在)と売上高(約100億円/2018年6月期)に成長しました。

    アットコスメストア

「Global」事業(海外)

Globalは、アイスタイルのビジネスモデルを、国内だけでなくグローバルに展開することを目的とした事業セグメントです。地域としては、東アジア全域、タイ、マレーシア、北米への進出が中心に行われています。
2018年6月期には、海外売上高がアイスタイル全体の売上高の約26%(約76億円)を占めるまで伸長しました。

このセグメントで運営されている主なサービスは以下の通りです。

  • 「UrCosme (@cosme TAIWAN)」
    2004年にオープンした、台湾で最大級の化粧品クチコミサイトであり、「@cosme」の台湾版といえるサービスです。
    2017年3月にアイスタイルグループへ参画しました。

  • 越境EC「@cosme官方海外旗艦店」
    中国のネット通販最大手、アリババ・グループ・ホールディングのBtoCオンラインショッピングモール「Tmall Global」内に、2015年に出店したサービスです。
    ECサイトではありますが、商品販売だけでなく、「@cosme」のノウハウや現地ユーザーへの商品体験機会なども併せて提供することで、「Tmall Global」内の化粧品店舗カテゴリでは最多となる129万人のフォロワーを獲得(2018年現在)するまでに成長しました。
    2018年には、Tmallの女性ユーザー約1億人が、過去1年間のネットショッピングで最も参考になったクチコミランキングを提供する企業として「年度権威口碑排行榜賞2018」(最も権威のあるクチコミランキング賞)を受賞しています。

越境ECの画像

「Others」事業(その他)

Othersでは、化粧品小売店へ美容部員を派遣する人材派遣事業や、幅広いステージの企業に投資する投資育成事業を展開されています。

このセグメントで運営されている主なサービスは以下の通りです。

  • 「@cosme CAREER」
    「@cosme CAREER」は、化粧品業界に特化した人材サービスです。
    このサービスは、美容部員を中心に多くの人材需要がある背景から、アイスタイルが2015年に開始したサービスです。

②-3 売上構成比/セグメント別売上の見通し

売上の構成比に着目して、直近2期の売上高を見ていきます。
売上を構成するセグメントについては前述した通りです。
2020年6月期の4Qの売上高は、前年に比べ大幅に減少しました。
また、セグメント別に見ても売上トップのセグメントである「Beauty Service」をはじめ軒並み売上は、減少傾向にあります。
アイスタイルは、決算説明において、新型コロナウイルスの影響による減収が原因であると説明しています。

アイスタイルの売上構成比

 

また、以下の図は2020年6月期におけるセグメント別の売上と2021年6月期のセグメント別売上の見通しを示したグラフです。
アイスタイルは、EC分野での成長が期待される「Beauty Service」を中心に2020年6月期比でプラス21.7%の増収を計画しています。

 

セグメント別の売上の見通し

 

③ 主要KPIとその数値推移

③-1 「@cosme」のUU数(ユニークユーザー)の推移

以下の指標は、「@cosme」のUU数を示したグラフです。
UUとは、特定の期間内にサイトを訪れたユーザーの数を表す指標のことです。 期間内であれば、同じユーザーが何度サイトを訪問してもUU数は1となります。そのため、サイトを訪れた回数や見たページ数などに関係なく、サイトを訪れたユーザーの数だけがカウントされます。
UU数を見ることで、サイトがどれぐらいの数の人に使われているかを分析することができるため、Webサイトの運営する上で大変重要な指標となります。
「@cosme」のUU数は、定期的に行われるGoogleによるアルゴリズム変更の影響で、その都度UU数が増減しますが、基本的には時間経過とともにUU数を取り戻しています。

アットコスメのUU数

 

③-2 「@cosme」会員数の推移

以下の表は、「@cosme」の会員数の推移を表したグラフです。
前述したように、「@cosme」は、現在の日本最大級の美容系総合メディアプラットフォームですが、会員数の推移を見ても、常に右肩上がりで上昇を続けており、アイスタイルの基盤を支える存在であることがわかります。

アットコスメ会員数

 

③-3 Beauty Serviceの売上高

Beauty Serviceは、アイスタイルの事業セグメントで最も多くの売上を占める部門であり、その売上の増減は会社全体の数値に大きな影響を与えます。
2020年6月期は、新型コロナウイルスの影響を受け、リアル店舗は時短営業や営業自粛を余儀なくされた為、大きな打撃を受けました。
一方で、年間の売上自体は前年と比較しても増加しています。
これは、リアル店舗とは逆にECの売上が大きく成長した影響であり、この推移からBeauty ServiceのEC部門は強い成長力を持つことが予測できます。

 

店舗、ECの合算

 

④ コスト構造

④-1 販売管理費

以下の図は、アイスタイルの販売管理費の内訳を示したグラフです。
概ね横ばいですが、イベント等によるプロモーションコストが計上されたタームは販管費が大きく伸長しています。
2020年6月期 4Qは、新型コロナウイルスによる店舗休業などの影響で販管費が減少しました。

コスト構造 アイスタイル

 

④-2 営業利益の推移

以下の図は、アイスタイルの営業利益の推移と粗利益、販管費の関係性を表したグラフです。
5期の推移を見ると、粗利益の緩い伸長や減少に対して販管費が急激に伸長している為、2019年6月期以降営業利益が大きく減少し、2020年6月期は赤字に転じています。

 

営業利益の推移

 

⑤ 投資領域

⑤-1 LiME株式会社への出資

アイスタイルは、2019年3月に美容師とお客様のコミュニケーションツール「LiME(ライム)」を提供するLiME株式会社へ2.2億円の出資を行いました。「LiME」は、登録者数17000人以上の美容師向けアプリであり、美容師の口コミを通じた価値の向上や顧客とのカルテを通じたコミュニケーションに利用されるサービスです。
また、この出資は「@cosme」との事業における提携を目的としたものであるとされています。

2019年3月のLiME株式会社への出資に関する記事

 

ライムへの出資

 

⑤-2 2019年12月に行った資金調達

アイスタイルは、2019年12月に20億円の金融機関からの借入を行っています。
また、借入の目的は原宿駅前における大型路面店「@cosme TOKYO」に関する投資費用充当のためとされています。
この借入についての詳細に関しては、以下のURLをご参照ください。

2019年12月に行われた借入に関する記事

⑥ 株価・時価総額推移

以下の図は、アイスタイルの株価の変化を表したグラフです。

アイスタイル株価

アイスタイルの2020年7月27日時点の株価は313円、時価総額は213億円です。

⑦ 会社情報

まずはアイスタイルの基本情報を紹介します。
市場は東証1部で、決算月は毎年6月です。

基本情報

会社名 株式会社アイスタイル
設立日 1999年7月27日
市場 東証1部
証券コード 3660
業種 情報・通信業
決算期 6 月
ホームページアドレス http://www.istyle.co.jp/
発行済株式総数 68,043,800(株)
普通株式数 68,043,800(株)
資本金 3,703(百万円)  (2020/6現在)
1単元の株式数 100(株)
従業員数 1,175名
平均年齢 33.7 歳
平均年収 5,731,000 円

沿革

アイスタイルは1999年7月にとして有限会社アイ・スタイルとして東京都で設立され、2000年4月に株式会社化しました。
2012年にはマザーズへの上場を果たし、同年東証1部への市場変更を行っています。

1999年7月 有限会社アイ・スタイル設⽴
1999年12月 コスメ情報ポータルサイト「@cosme」をオープン
2000年4月 株式会社アイスタイルへ組織変更
2002年11月 化粧品オンラインショッピングサイト「cosme.com(現 @cosme SHOPPING)」をオープンし、EC事業の運営を開始
2007年3月 株式会社コスメネクストがルミネエスト新宿に「@cosme STORE」第1号店がオープン
2008年1月 転職・求人サイト「@comes CAREER」をオープン
2010年9月 株式会社コスメネクストを完全子会社化
2012年3月 東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場
2012年5月 海外展開の本格化を目的として、istyle Global (Hong Kong)Co., Limited(現 istyle International Trading (Hong Kong) Co., Limited)を設⽴ 「ispot」を運営する株式会社サイバースター(株式会社アイスタイルビューティソリューションズ)を連結子会社化(2017年7月に、当社が吸収合併)
2012年8月 シンガポールにistyle Global (Singapore) Pte. Limitedを設⽴
2012年10月 中国にistyle China Co., Limitedを設⽴
2012年11月 東京証券取引所市場第一部へ市場変更
2014年7月 「GLOSSYBOX(現 BLOOMBOX)」を運営するビューティー・トレンド・ジャパン株式会社の全株式を取得
2014年11月 投資育成事業の開始に伴い株式会社アイスタイルキャピタルを設⽴
2014年12月 海外向け化粧品卸売事業の開始に伴い、株式会社アイスタイルトレーディングを設⽴し、翌1月より、海外向けEC・卸売を開始
2015年7月 化粧品・美容業界専門の人材サービス会社、株式会社アイスタイルキャリアを設⽴
2015年9月 化粧品に特化したPR会社、株式会社メディア・グローブの株式を取得し子会社化(2018年6月に株式交換により完全子会社化)
2016年 3月 株式会社ISパートナーズを設⽴
2016年7月 株式会社istyle makers設⽴準備会社(現 株式会社アイメイカーズ)を設⽴
2016年9月 食と健康に関するサービスを展開する株式会社Eat Smartの株式を取得し子会社化 化粧品⼩売店を運営する株式会社ユナイテッド・コスメの株式を取得し子会社化(2018年7月に株式会社コスメネクストが吸収合併)
2016年10月 istyle Retail (Hong Kong) Co., Limitedを設⽴
2017年5月 マレーシアで美容・化粧品のECサイトを運営するHermo Creative (M) Sdn. Bhd.の株式を取得し子会社化 台湾で美容系ポータルサイトを運営するi-TRUE Communications Inc.の株式を取得し子会社化 米国でistyle USA Inc.を設⽴し、7月に同社を通じて、米国で美容系ポータルサイトを運営するMUA Inc.の株式を取得し子会社化
2017年6月 海外募集による新株式の発⾏により、約36億円の資⾦調達を実施

 


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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