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【新規上場企業分析】グッドパッチのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

グッドパッチの概要

グッドパッチの基本情報

はじめにグッドパッチの基本情報を紹介します。 上場日は2020年6月30日、市場はマザーズ、想定時価総額は43.8億円、上場時の時価総額は197.8億円でした。

会社名 株式会社グッドパッチ
設立日 2011 年 9 月 1 日
上場日 2020 年 6 月 30 日 (承認日:2020年05月27日)
市場 マザーズ
証券コード 7351
業種 サービス業
決算期 8月
ホームページアドレス https://goodpatch.com/
発行済株式総数 6,864,360 株(2020年5月27日現在)
上場時発行済株式総数  7,173,260 株
※公募分を含む
※新株予約権の権利行使により増加する可能性あり
公募株数 308,900 株
想定価格 610円
想定時価総額 43.8億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 2,757円
時価総額(上場時) 197.8億(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 181.0億(2020年8月20日現在)
資本金 455,754 千円(2020 年 5 月 27 日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 有限責任監査法人トーマツ
主幹事証券会社 大和証券
引受幹事証券会社 SBI証券

グッドパッチの沿革

グッドパッチは、2011年9月、UI/UXデザイン支援を目的とした会社として設立されました。
創業期から「デザイン」を軸として事業展開を進め、現在に至るまで広く事業展開を行っています。
 グッドパッチは2020年6月に東証マザーズに上場しました。

2011年9月 企業のUI/UXのデザイン支援を目的として、東京都千代田区において株式会社グッドパッチを資 本金5,000千円で設立。UI/UXデザイン支援を開始
2014年1月 プロトタイピングツール「Prott」をリリース
2014年5月 東京都渋谷区に本社移転
2015年5月  ヨーロッパ市場への事業展開を図るためドイツ・ベルリンに子会社 Goodpatch GmbHを設立し、 ベルリンスタジオを開設
2015年9月  「Prott」が公益財団法人日本デザイン振興会主催のグッドデザイン賞を受賞
2017年9月 Goodpatch GmbHにてVR/ARを活用したデザインツール「Athena」の開発を開始
2018年5月 デザイナー特化型キャリア支援サービス「ReDesigner」を開始
2018年8月  遠隔地からインターネットを通じてプロジェクトに参加し、顧客にUI/UXデザイン支援を提供す るフルリモートのデザインチーム「Goodpatch Anywhere」を開始
2018年8月  Goodpatch GmbH、ミュンヘンスタジオを開設
2019年6月  キャリア支援プラットフォーム「ReDesigner for Student」をリリース
2020年6月 東証マザーズに上場

グッドパッチの事業内容

グッドパッチは、「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンのもと、「デザインの力を証明する」というミッションを掲げ、「デザイン」を通じて人々の生活がより便利になり、より暮らしやすくなることを事業の目的としています。

また、「デザイン」という言葉を、問題の本質を掘り下げ、解決のための設計を行い、設計に基づいた見た目(ビジュアル表現)を作り上げ、問題解決へと導くことと定義しています。
このように定義された「デザイン」の考え方をもと、Web・スマートフォンサービス等のデジタルプロダクトに関わる様々なデザインについて提案を行い、サービスの提供を行っています。

デザインの事業セグメントは、「デザインパートナー事業」と「デザインプラットフォーム事業」の2つのセグメントで構成されており、事業系統は以下の図の通りです。

  1. デザインパートナー事業
  2. デザインプラットフォーム事業

    グッドパッチのビジネスモデル

①デザインパートナー事業

デザインパートナー事業とは、顧客である企業のWebサイトやアプリケーション、ブランドのデザイン支援を行う事業です。

この事業において、グッドパッチはデザインパートナーとして、顧客企業のプロダクトの開発、新規事業の立ち上げ、ブランド構築、組織支援などを行います。

「デザインソリューション」「デザインサポート」という2つの枠組みで顧客に対してサービスが提供され、プロダクトのデザイン開発だけではなく、デザイン支援による体験を通じて組織そのもののランクアップを目指していることが特徴です。

この事業では、デザイン支援を行うサービスを提供し、その対価としてサービス使用料を報酬として顧客企業から受け取ります。

 

デザインパートナー事業

 

 

①-1 デザインソリューション

「デザインソリューション」では、消費者である顧客にとってのプロダクトの利便性や企業ブランドをどのようにデザインとして表現するかという点に軸が置かれています。
また、「デザインソリューション」に区分されるサービスは以下の3つです。

  • デジタルプロダクト&サービスデザイン(UI/UXデザイン)
    デジタルプロダクト&サービスデザインは、顧客企業が行う新規プロダクトの開発や既存プロダクトのUI/UX改善にスポットが当てられるサービスです。
    つまり、このサービスでは、消費者であるユーザーにとってのプロダクトの利便性の向上がテーマであると言えます。
    制作されたデザインは、Web/iOS/Android/IoTなどを通してユーザーに提供されます。

  • ブランド・エクスペリエンス・デザイン
    ブランド・エクスペリエンス・デザインでは、顧客企業のブランドのコアを内側からデザインすることに焦点が当てられるサービスです。
    企業や事業の成り立ち、原体験を紐解き、デザインとして言語化・可視化します。
    企業ブランドは、ビジョン、ミッション、ロゴデザイン、プロダクトデザインなどに姿を変え表現されます。

  • 組織デザイン支援
    組織デザイン支援は、デザインの力を利用して組織構築を支援するサービスです。
    デザイン組織の立ち上げ、仕組み作り、教育、評価制度、採用施策など、クライアントの規模やニーズに併せて柔軟にサービス提供を行います。

①-2 デザインサポート

「デザインソリューション」がデザインを通じてプロダクトの開発や、組織の構築に焦点が当てられているサービスであった一方、「デザインサポート」は顧客企業の教育的な要素を持つサービスです。
「デザインサポート」を利用することで、ワークショップなどを通し、顧客企業の人材はデザイン手法や分析手法などを学ぶことができます。

  • デザインスプリント
    デザインスプリントは、顧客企業のメンバーとチームを組み、新規事業や既存事業の改善アイデアを形にしていくことを目的としたサービスです。
    ユーザーリサーチからユーザテストまでを短期間で行うことで、素早く価値検証を行うことができます。

  • ワークショップ・トレーニング
    ワークショップ・トレーニングは、アプリデザイン・サービスデザインの現場で培われたデザインプロセスを1日で体験できるワークショップです。
    顧客企業は、新規事業・事業改善に欠かせない、UXリサーチ・サービスデザイン・UI/UXデザインなどの実践的な手法を学ぶことができます。

  • UI/UXフィードバック
    UI/UXフィードバックでは、ユーザーインターフェース(UI)とユーザー体験(UX)の専門家が、サービスの課題を分析してレポートします。
    このサービスを利用することで、顧客企業の人材は、定量分析だけでは発見しきれない、使いやすさや分かりやすさの改善点を発見できます。

デザインサポート事業

②デザインプラットフォーム事業

デザインプラットホーム事業は、デザインパートナー事業によって行われるデザイン支援を様々な側面からバックアップするサービスです。

前述した「デザインソリューション」事業では、デザインを通じてプロダクトの質を改善することや、組織を構築すること、実践的なデザイン分析の手法の提供などに軸が置かれていました。

一方、デザインプラットフォーム事業では、簡単にデザインを制作できるツールの提供や、人的リソースの提供に軸が置かれています。

デザインプラットフォーム事業は、ソフトウェアなどのツールの提供を行う「デザインITツールを提供するサービス」と「人的リソースを提供するサービス」に二分されます。

ビジネスプラットフォーム事業

②-1 デザインITツールを提供するサービス

デザインプラットフォーム事業において、「デザインITツールを提供するサービス」は2つあります。
また、このカテゴリでは、ユーザーが専門知識がなくても簡単にデザインを製作できる点にスポットが当てられています。

  • Prott
    「Prott」は2014年にリリースしたプロトタイピングツールであり、Web、iOS、Androidで利用することができます。  
    Prottはデザイン設計を簡単に行うことを目的としたツールであり、プログラミングなどの専門知識がなくても、画像のつなぎ合わせやアニメーションなどを製作することができます。
    また、ツールを通じて作成したデザインをメンバー間で共有できるため、フィードバックや改善プロセスをスムーズに進めることが可能であり、デザインより効率化されたデザイン制作を進めることができます。
    Prottの有料アカウントユーザー登録は1300件以上です。(2020年4月時点)
  • Athena
    「Athena」は、カーデザインをVR環境で行うことができるソフトウェアです。
    「Athena」の開発は、連結子会社であるGoodpatch GmbHで進められています。
    このソフトウェアでは、実際に車を運転している状況をシミュレーションしながら、より簡易的に3Dデザインを行うことができるように開発が進められています。

②-2 人的リソースを提供するサービス

デザインプラットフォーム事業において展開されているもう一つのカテゴリは、「人的リソースを提供するサービス」です。
このカテゴリでは、デザイナーの就職支援や、企業におけるデザイナー人材の確保を支援することがサービスの軸となります。

  • ReDesigner/ReDesigner for Student
    ReDesignerは、デザイナー向けのキャリア支援サービスであり、ReDesigner for Studentはデザイナー志望の学生向けの就職支援サービスです。
    どちらのサービスも、デザイナーや学生と企業の間をグッドパッチが仲介することで、求職者と企業のベストマッチを図ります。
    求職者はサービスに登録し、グッドパッチは紹介手数料などを企業から獲得します。
  • Goodpatch Anywhere
    Goodpatch Anywhereはデザイナーの自由な働き方を支援するサービスです。フリーランスとして全国各地に居住するデザイナーは、このサービスに登録し、グッドパッチが紹介する顧客企業の仕事を請け負う形で案件を受注します。
    グッドパッチは、顧客企業の案件やニーズに応じて登録者の中からデザイナーを選定し、該当者は顧客企業のデザイン業務を担当します。
    114名のデザイナーがサービス登録していて、そのうち29名が稼働しています。(2020年4月時点)

有価証券報告書情報

経営指標(過去2期分)

8期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:16.8億円(前年比+22.8%)
  • 経常利益:0.8億円
  • 当期純利益:0.6億円
第7期 第8期
決算年月 2018年9月 2019年9月
売上高(千円) 1,371,260 1,683,269
経常利益(千円) △11,726 83,678
当期純利益(千円) △22,219 57,389
純資産額(千円) 411,024 463,396
総資産額(千円) 775,274 821,642
自己資本比率 53.0% 56.4%
営業キャッシュフロー(千円) △29,704 126,880
投資キャッシュフロー(千円) △33,032 △20,812
財務キャッシュフロー(千円) 13,330 △64,388
現金・現金同等物の期末残高(千円) 473,565 508,908
従業員数 118人 158人

経営指標(過去5期分)

業績を見ると、売上高は4年で4倍の増加を見せています。
一方で、利益に関しては、赤字が続いたものの、第8期には黒字転換をしています。

また、グッドパッチは4億円規模の資金調達を過去2度にわたり行っています。
以下が資金調達に関する参考記事のURLです。

2016年2月の資金調達に関する記事

2017年4月の資金調達に関する記事

第4期 第5期 第6期 第7期 第8期
決算年月 2015年8月 2016年8月 2017年8月 2018年8月 2019年8月
売上高(千円) 345,931 522,580 643,694 1,163,040 1,401,731
経常利益(千円) △56,379 △105,694 △257,912 △40,072 93,693
当期純利益(千円) △56,321 △106,224 △275,284 △50,528 68,507
資本金(千円) 55,000 255,003 455,754 455,754 455,754
発行済株式総数 125,000 146,053 162,994 162,994 162,994
純資産額(千円) 45,418 339,200 465,418 414,889 483,397
総資産額(千円) 157,378 544,333 826,057 760,039 800,328
自己資本比率 28.9% 62.3% 56.3% 54.6% 60.4%
従業員数 59人 77人 92人 101人 135人

 

上場時の株主構成

上位10位までに該当する株主は以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
土屋 尚史 3,181,840 42.43% 180日
DG Lab 1号投資事業有限責任組合 792,920 10.57% 90日
株式会社 DGベンチャーズ 792,920 10.57% 90日
株式会社ブルーローズ 618,160 8.24% 180日
FinTechビジネスイノベーション 投資事業有限責任組合 594,320 7.93% 90日
Salesforce Ventures LLC 231,000 3.08% 90日
MSIVC2016V 投資事業有限責任組合 198,080 2.64% 90日
實方 ボリス 160,200 2.14(% 180日
SMBCベンチャーキャピタル 2号投資事業有限責任組合 121,520 1.62% 90日
松岡 毅 69,200 0.92% 180日

上場(IPO)時の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格1800円に対し、初値は2,757、吸収金額(調達額)は5.2となりました。

仮条件 610円 ~ 690円
公募・売出価格 690円
想定価格 610円
初値 2,757円 
公募株数 308,900 株
売出株数 350,900 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 98,900 株
吸収金額(調達額) 5.2億円 (※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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