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【新規上場企業分析】 freee(フリー)のIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

freee(フリー)の概要

freee(フリー)の基本情報

はじめにfreee株式会社の基本情報を紹介します。上場日は2019年12月17日、市場はマザーズ、想定時価総額は、839.5、上場時の時価総額は1166.0でした。

会社名 freee(フリー)株式会社
設立日 2012年7月9日
上場日 2019年12月17日(承認日:2019年11月7日)
市場 マザーズ
証券コード 4478
業種 情報・通信業
決算期 3月
ホームページアドレス https://corp.freee.co.jp/
発行済株式総数 41,204,691 株(2019年11月7日現在)
上場時発行済株式総数 46,639,891 株
※公募分を含む。
公募株数 5,435,200 株
想定価格 1,800円
想定時価総額 839.5億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 2,500円(公募価格比+25.0%)
上場時時価総額 1166.0億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 2858.1億円 (2020年9月14日現在)
資本金 100,000 千円(2019年11月7日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 有限責任 あずさ監査法人
主幹事証券会社 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
大和証券
引受幹事証券会社


メリルリンチ日本証券
SBI証券
野村證券
みずほ証券
岩井コスモ証券
東洋証券
楽天証券
いちよし証券
エース証券
ちばぎん証券
東海東京証券
松井証券
丸三証券
水戸証券

 

 

freeeの沿革

freeeは2012年に東京都でCFO株式会社として設立されました。
創業期からクラウド会計システムの提供を軸とする事業を展開しており、近年ではサービスの幅をより拡大しています。
また、2019年12月に、マザーズへの上場を果たしています。

2012年7月 東京都港区にCFO株式会社(現フリー株式会社)を資本金100万円で設立
2013年3月 「クラウド会計ソフトfreee」をリリース
2013年7月 商号をCFO株式会社からフリー株式会社に変更
2014年2月 「クラウド会計ソフトfreee iOS版」をリリース
2014年4月 「クラウド会計ソフトfreee Android版」をリリース
2014年8月 東京都港区から東京都品川区に本社移転
2014年10月 「クラウド給与計算ソフトfreee」をリリース
2015年5月 e-gov APIを利用した日本初の労働保険申告機能をリリース
2015年6月 「会社設立freee」をリリース
2015年9月 「マイナンバー管理freee」をリリース
2015年12月 金融機関向けプロダクトをリリースし、11行との連携を開始
2016年4月 大阪府大阪市北区に関西支社を開設
2016年6月 AI研究に特化したスモールビジネスAIラボを創設
2016年9月 福岡県福岡市中央区に九州支社を開設
2016年10月 「開業freee」をリリース
株式会社みずほ銀行とAPI連携(メガバンクのAPI連携は初)
「申告freee」をリリース
2017年3月 「クラウド会計ソフトfreee」において、上場会社(金融商品取引法監査)にも対応したエンタープライズプランをリリース
2017年5月 愛知県名古屋市中村区に中部支社を開設
2017年7月 事業用クレジットカード「freee」カードを開発
2017年8月 「クラウド給与計算ソフトfreee」をリブランドし、「人事労務freee」をリリース
2018年10月 子会社フリーファイナンスラボ(現、連結子会社)を設立
2019年1月 アプリケーションプラットフォーム「freeeアプリストア」をリリース
2019年6月 フリーファイナンスラボ株式会社が「資金繰り改善ナビ」をリリース
2019年12月 東証マザーズに上場

 

freeeの事業内容

freeeは、「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、中小企業や個人事業主を中心とした顧客へ「クラウド会計ソフト freee」を中心にサービス提供を行う会社です。

クラウドとは、従来ハードウェアとしてデータの保存などに使用されるサーバーをインターネット上の「クラウド」というサーバーを利用することによって保存することを可能にしたシステムです。
このクラウドが存在することで、クラウドシステムのユーザーはサーバーがなくてもインターネット環境さえあればいつでも保存しているデータにアクセスすることができます。
また、クラウドを利用することでサーバーやソフトウェアを導入する必要がなくなるため、ユーザーはデータの保存や管理を低コストで運用することができます。

以下は、freeeの主要サービスと事業系統を表した図です。

フリーの事業系統図

① 主要なサービス

freeeは、2013年クラウドを利用した会計ソフトの提供からビジネスをスタートしました。
その後、クラウド給与計算ソフトやクラウドマイナンバー管理など多数のクラウドソフトウェアをリリースし現在に至ります。
また、「クラウド会計ソフト freee」と、クラウド給与計算ソフトをアップデートして開発された「クラウド人事労務ソフト freee」は、現在国内シェアNo1のサービスです。

以下は、2020年時点でfreeeが提供するクラウドサービスの一覧です。

クラウドソフト一覧

② 主要なKPI

freeeのサービスは、SaaSやサブスクと言われるサービスに分類されるサービスです。
このタイプのサービスを運営する場合、顧客である会員から毎月定額で入金されるサービス利用料が非常に重要なKPIとなります。
以下の2つの指標は、freeeのビジネスモデルを運営する上で特に重要な2つの指標とその推移を示したグラフです。

有料課金ユーザー企業数の推移

以下の図は、過去5期におけるfreeeの有料課金ユーザー数の推移を表したグラフです。
5期の間にfreeeの有料会員は約4倍に増加しています。
毎年前期比30%以上の会員増加に成功していますが、2020年6月期は前期と比較してプラス40%のユーザー数の増加を達成しました。
このことから、freeeは新規有料会員の数を毎年増やし続けていることがわかります。

有料課金ユーザー企業数

ARRの推移

以下の図は、freeeの四半期末時点のARRの推移を表したグラフです。
ARRとは、Annual Recurring Revenueの略称であり、「年間定額収益」の推移を示しています。
これは、毎年決まって発生する収益であり、初期費用や追加購入費用、コンサルティング費用などを含まず各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出されています。
下記のグラフでは、四半期ごとに分けてARRを計上していますが、この指標はfreeeのようなSaaSやサブスクといわれる事業の成長性を示す重要な値です。
ARRは、顧客がサービスなどを解約した場合は減ってしまう値であるため、解約数が増えると伸び悩む、もしくは減少するという特性を持ちます。

 

ARR

 

有価証券報告書情報

連結の経営指標(過去3期分)

第8期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:69.0億円(前年比+52.7%
  • 経常利益:△29.4億円
  • 当期純利益:△29.7億円
第7期 第8期
決算年月 2019年6月 2020年6月 
売上高(百万円) 4,516 6,895
経常利益(百万円) △2,850 △2,938
当期純利益(百万円) △2,778 △2,972
純資産額(百万円) 4,510 13,854
総資産額(百万円) 7,380 17,898
自己資本比率 56.8% 75.1%
営業キャッシュフロー(百万円) △1,726 △1,380
投資キャッシュフロー(百万円) △539 △1,306
財務キャッシュフロー(百万円) 6,484 11,970
現金・現金同等物の期末残高(百万円) 5,852 15,136
従業員数 388人

 

単体の経営指標(過去5期分)

5期の間に売上は約12倍の成長をしています。
利益に関しては、軒並み赤字の状態が続いていますが、2018年6月期以降は、一旦赤字額が減り、現在はやや横ばいの状態です。

また、freeeは、は2019年9月25日付で普通株式1株につき3株の割合で株式分割を実施しています。

第4期 第5期 第6期 第7期 第8期
決算年月 2016年6月 2017年6月 2018年6月 2019年6月 2020年6月 
売上高(百万円) 568 1,202 2,414 4,579 6,928
経常利益(百万円) △2,129 △2,205 △3,399 △2,764 △2,852
当期純利益(百万円) △2,138 △2,257 △3,405 △2,692 △2,886
資本金(百万円) 100,000 100,000 100,000 100,000 100,000
発行済株式総数 11068152 12223269 12223,269 48,320,822 48,320,822
純資産額(百万円) 2,879 4,041 682 4,596 14,027
総資産額(百万円) 3,492 5,013 2,415 7,464 18,078
自己資本比率 81.8% 77.3% 19.4% 57.3% 75.3%
従業員数 151人 243人 355人 388人

2018年7月、freeeはLINE株式会社、株式会社三菱UFJ銀行をはじめとした機関投資家や事業者から、約65億円の資金調達を行いました。
資金調達の目的は、新サービス及びプロダクト開発への投資とされています。

2018年8月の資金調達に関する記事

上場時の株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
佐々木大輔 1,1790,000 24.90% 360日間
DCM VI, L.P. 5,520,087 11.66% 360日間
A-Fund, L.P. 3,239,712 6.84% 360日間
IVP Fund II A, L.P. 2,388,000 5.04% 180日間
株式会社リクルート 2,277,267 4.81% 360日間
横路隆 2,250,000 4.75% 360日間
LINE株式会社 2,093,022 4.42% 180日間
Palace Investments Pte. Ltd. 1,760,796 3.72% 180日間
株式会社SMBC信託銀行 1,500,000 3.17% 180日間
東後澄人 1,488,000 3.14% 180日間

上場時(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

公募価格は2,000円、吸収金額(調達額)は371.3億円とされています。 また初値は、2,500円となりました。

仮条件 1,800円 ~ 2,000円
公募・売出価格 2,000円
想定価格 1,800円
初値 2,500円(公募価格比+25.0%)
公募株数 5,435,200 株
売出株数 1,2041,100 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 1,089,700 株
吸収金額(調達額) 371.3億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)


この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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