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【新規上場企業分析】 フォースタートアップスのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

概要

基本情報

はじめにフォースタートアップス株式会社の基本情報を紹介します。上場日は2020年3月13日、市場はマザーズ、想定時価総額は47.6億円、上場時の時価総額は51.0億円でした。

会社名 フォースタートアップス株式会社
設立日 2016年9月1日
上場日 2020年3月13日(承認日:2020年2月6日)
市場 マザーズ
証券コード 7089
業種 サービス業
決算期 3月
ホームページアドレス https://forstartups.com/
発行済株式総数 2,934,000 株(2020年2月6日現在)
上場時発行済株式総数 3,134,000 株 
※公募分を含む。
公募株数 200,000 株
想定価格 1,520円
想定時価総額 47.6億円 (※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
初値 1,628円
上場時時価総額 51.0億円(※上場時発行済株式総数×初値で計算)
時価総額 57.4億(2020年9月2日現在)
資本金 15,000 千円(2020年2月6日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 三優監査法人
主幹事証券会社 野村證券
引受幹事証券会社

SBI証券
マネックス証券
丸三証券
岩井コスモ証券
極東証券
いちよし証券
岡三証券
エース証券 

沿革

フォースタートアップス株式会社は、現 株式会社ウィルオブ・ワークから分割する形で2016年に東京都で創業しました。
スタートアップ企業の支援を業務として運営し、2020年3月に東証マザーズへ上場しました。

2016年9月 スタートアップ企業に対する人材支援サービスの提供を目的として株式会社セントメディア (現 株式会社ウィルオブ・ワーク)のネットジンザイバンク事業部を会社分割し、分割会社を株式会社ネットジンザイバンク(現 フォースタートアップス)(東京都中野区本町)として新設
2018年3月 フォースタートアップス株式会社に商号変更
業務拡張のため、本社を東京都港区六本木一丁目に移転
2018年5月 成長産業領域に特化した統一データベース「STARTUP DB」をリリース
2019年4月 オープンイノベーションを中心としたアクセラレーションサービスを開始
2019年7月 Crunchbase, Inc.(米国)との業務提携を開始
2020年3月 東証マザーズに上場

事業内容

フォースタートアップスは、日本No.1の成長産業支援プラットフォームをテクノロジーで実現するというミッションを掲げ、新たな産業を創出させることを目指した事業を行っており「成長産業支援」事業としてビジネスを展開しています。

フォースタートアップスにおいて展開されるサービスは、「タレントエージェンシー」と「アクセラレーション」の2軸で展開されています。
「タレントエージェンシー」は、主にスタートアップ企業に対して行う人材支援サービスであり、「アクセラレーション」は主に大手企業に対し、オープンイノベーションサービスを提供するサービスです。

フォースタートアップスで展開されるサービスと主な事業系統は、以下の図の通りです。 

  1. タレントエージェンシー
  2. アクセラレーション フォースタートアップス 事業系統図

① タレントエージェンシー

タレントエージェンシーサービスは、スタートアップ企業に対して提供される人材支援サービスであり、具体的には、①人材紹介サービス、②採用支援サービス、③起業支援サービスの3つの事業に区分されるサービスです。

人材紹介サービス

人材紹介サービスは、スタートアップ企業に対して、人材を紹介するサービスです。
このサービスでは、フォースタートアップスのスタッフが、スタートアップ企業の求人情報を獲得し、求人にフィットする人材を発掘し企業とのマッチングを行います。
このタイプのサービスはハンティング型と呼ばれ、求人情報に合致する人材に対し紹介会社側から接触を図るビジネスモデルを示し、顧客が求人ニーズに合致した人材を効率的に獲得するために効果的なモデルであるといえます。
また、フォースタートアップスで運営される人材紹介サービスは、以下の2点が大きな特徴です。

  • ベンチャーキャピタル・起業家との連携によるタイムリーな情報キャッチアップ
    一般的に、スタートアップ企業は、大企業と比較した場合、ビジネスの変動が大きく、その変動に伴い人材に対するニーズも変化します。
    そのため、スタートアップ企業を顧客とする紹介会社は刻々と変動する顧客企業のニーズを常に把握しておく必要があります。

    フォースタートアップスは、このような課題を解決するために、スタートアップ関連の多くの情報を有しているベンチャーキャピタルた起業家などとタッグを組み、変動するスタートアップ企業の人材ニーズをリアルタイムで把握できるような取り組みを行っています。

  • 独自アルゴリズムに基づくスタートアップデータベースの活用
    スタートアップマーケットの課題は、スタートアップ企業に関する客観的な情報の不足であるとされています。

    この課題を解決するため、フォースタートアップスでは、スタートアップの資金調達やニュースなどを保有するデータベース「STARTUP DB」を無料公開しています。
    「STARTUP DB」は、掲載企業数は11,000社以上(2020年2月現在)であり、フォースターとアップスは、このデータベースの情報を利用して独自のアルゴリズムを用いて各スタートアップ企業を数値化を行い、そのデータをもとに、特に成長性の高いと考えるスタートアップ企業に対して優先的に人材紹介サービスを提供しています。

    このような高い成長ポテンシャルを持つスタートアップ企業は、人材ニーズが高く、市場へのインパクトが強いため、優先的に支援することが産業化の活性化に繋がるからです。

採用支援サービス

採用支援サービスは、スタートアップ企業の採用活動のコンサルティングを行うサービスです。
このサービスでは、具体的には、毎月一定数の候補者の紹介を行ったり、企業のニーズをヒアリングした上でどのようにターゲット人材を獲得するかなどの戦略をアドバイスしています。

起業支援サービス

企業支援サービスでは、以下2つのプログラムが展開されています。

  • ベンチャーキャピタルと連携した起業家創出プログラム
    このプログラムは、ベンチャーキャピタルと起業希望者をマッチングさせるサービスです。
    投資先を探しているベンチャーキャピタルと、資金調達先を探している起業希望者をマッチングさせることで、新しいビジネスの創出をサポートすることがサービスの目的となります。
  • 研究機関と連携した起業家創出プログラム
    国内の研究機関(大学や研究所)には、高い技術力をベースにした優れたアイディアや人材が多く存在していますが、そのようなアイディアをビジネスとして実行できるケースは多くありません。

    フォースタートアップスは、国内の優れたアイディアを成長産業へ発展させるために、研究機関に対する起業サポートを行っています。

    具体的に行われる施策は、大学系ベンチャーキャピタルと連携して経営陣と研究機関をマッチングさせることで、研究機関初ベンチャーなどの起業を促進する取り組みなどです。

② アクセラレーションサービス

アクセラレーションサービスは、主に大手企業向けに人材支援以外のサービスを提供するフォースタートアップスの新規事業です。
このサービスでは、①オープンイノベーションサービス、②採用ブランディングサービス、「STARTUP DB」の運営などが行われています。

オープンイノベーションサービス

オープンイノベーションサービスは、「STARTUP DB」でデータベース化された情報などをもとに、大手企業に対し、スタートアップ企業に関する情報提供や顧客紹介のコンサルティングなどを行うサービスです。

大手企業は、イノベーションを創出を目的として、スタートアップ企業との提携や、スタートアップ系の人材採用を検討することがあります。
しかし、スタートアップマーケットは、情報が不足していることが多いため、フォースタートアップスは大手企業に向けて、スタートアップ関連の情報提供や、人材紹介のサポートなどを行っています。

採用ブランディングサービス

採用ブランディングサービスは、企業や組織の魅力をアップさせることで、採用に関わるブランドイメージの向上を目的としたコンサルティングサービスです。

このサービスでは、フォースタートアップスが企業支援を行うことで吸収したノウハウや提携クリエイターのノウハウを利用した採用施策のコンサルティングなどが行われています。

有価証券報告書情報

経営指標(過去3期分)

第4期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:12.6億円(前年比+20.8%)
  • 経常利益:2.9億円(前年比5.0%)
  • 当期純利益:2.0億円(前年比+5.7%)
第2期 第3期 第4期
決算年月 2018年3月 2019年3月 2020年3月 
売上高(千円) 747,813 1,045,083 1,262,890
経常利益(千円) 196,156 274,010 287,797
当期純利益(千円) 126,900 192,102 203,096
純資産額(千円) 161,004 353,109 882,591
総資産額(千円) 333,531 576,612 1,130,624
自己資本比率 48.1% 61.1% 78.0%
営業キャッシュフロー(千円) 117,104 258,708 209,827
投資キャッシュフロー(千円) △64,138 △43,857 △48,952
財務キャッシュフロー(千円) 661 116 313,725
現金・現金同等物の期末残高(千円) 126,782 341,749 816,350
従業員数 41人 49人 67人

 

経営指標(過去4期分)

4期の業績を見ると、売上高は、第1期から6倍近く伸長していることがわかります。
また、利益に関しては、3年間で経常利益が約45倍、純利益は約60倍に増加しており、急速な成長を遂げています。
また、創業期から一貫して黒字経営を行っており、毎年利益を出し続けています。

また、発行済株式総数の変動についての注釈は以下の通りです。

  • 2017年10月5日付で普通株式1株につき8.15株の株式分割を実施。
  • 2019年11月5日付で普通株式1株に つき600株の株式分割を実施。
第1期 第2期 第3期 第4期
決算年月 2017年3月 2018年3月 2019年3月 2020年3月 
売上高(千円) 219,081 747,813 1,045,083 1,262,890
経常利益(千円) 6,390 196,156 274,010 287,797
当期純利益(千円) 3,442 126,900 192,102 203,096
資本金(千円) 15,000 15,000 15,000 178,192
発行済株式総数 600 4,890 4,890 3,137,000
純資産額(千円) 33,442 161,004 353,109 882,591
総資産額(千円) 146,898 333,531 576,612 1,130,624
自己資本比率 22.8% 48.1% 61.1% 78.0%
従業員数 21人 41人 49人 67人

また、フォースタートアップスは、2020年8月にSMBCグループとの業務提携を行ったことについて発表しています。
業務提携の目的は、成長産業支援事業を推進するフォースタートアップスと、日本の金融インフラとして産業を支えるSMBCグループ双方の強みを生かし、スタートアップの成長を加速させることであるとされています。

上場時の株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
株式会社ウィルグループ 2,699,400 77.97% 90日間
志水 雄一郎 325,800 9.41% 90日間
小原 健 75,000 2.17% 90日間
清水 和彦 46,800 1.35% 90日間
杉本 容啓 37,200 1.07% 90日間
恒田 有希子 34,200 0.99% 90日間
六丸 直樹 34,200 0.99% 90日間
戸村 憲史 34,200 0.99% 90日間
中村 優太 28,200 0.81%
寺田 裕也 21,600 0.62%

上場時(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

公募価格は1,770円、吸収金額(調達額)は16.3とされています。
また初値は、1,628円となりました。

仮条件 1,700円 ~ 1,770円
公募・売出価格 1,770円
想定価格 1,520円
初値 1,628円 (公募価格比△8.0%)
公募株数 200,000 株
売出株数 600,000 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 120,000 株
吸収金額(調達額) 16.3億円(※オーバーアロットメントを含む株数×公募価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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