ファイナンス

【新規上場企業分析】 ファンベップのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

ファンペップの概要

ファンペップの基本情報

はじめに、株式会社ファンペップの基本情報を紹介します。
上場予定日は2020年12月25日、市場はマザーズ、想定時価総額は137.3億円です。

会社名 株式会社ファンペップ
設立日 2013年10月11日
上場日 2020年12月25日(承認日:2020年11月20日)
市場 マザーズ
証券コード 4881
業種 医薬品
決算期 12 月
ホームページアドレス https://www.funpep.co.jp/
発行済株式総数 14,007,000 株(2020 年 11 月 20 日現在)
上場時発行済株式総数 16,746,700 株
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 2,739,700 株
想定価格 820円
想定時価総額 137.3 億円(※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金 1,388,240 千円(2020 年 11 月 20 日現在)
1単元の株式数 100 株
監査人 EY 新日本有限責任監査法人
主幹事証券会社 SBI証券
引受幹事証券会社 SMBC日興証券
いちよし証券
エース証券
藍澤證券
岩井コスモ証券
東海東京証券
東洋証券
極東証券
水戸証券

ファンペップの沿革

ファンペップは、2013年に東京都において設立され、機能性ペプチドの研究開発を中心とした事業を運営してきました。
現在は、複数の企業と提携し、臨床試験段階での研究開発が業務の中心となります。

2013年10月 東京都渋谷区において株式会社ファンペップ(資本金1百万円)を設立
2015年3月 アンジェスMG株式会社(現アンジェス株式会社)との間で機能性ペプチド(SR-0379及びキュアペプチン等)の知的財産権の移転を伴う現物出資契約を締結
2015年4月 東京都港区に東京オフィスを新設
2015年6月 大阪府茨木市に大阪オフィスを新設
2015年7月 大阪大学との間で抗体誘導ペプチドに関する共同研究を開始
2015年10月 塩野義製薬株式会社との間で機能性ペプチドSR-0379に関するライセンス契約を締結
2016年1月 本店登記地を大阪府茨木市(大阪オフィス)に変更
東京都渋谷区に東京オフィスを移転
2016年2月 株式会社メディパルホールディングスとの間で抗体誘導ペプチドの研究開発支援に関する提携基本契約を締結
2016年9月 大日本住友製薬株式会社との間で標的タンパク質IL-17Aに関する抗体誘導ペプチドの共同研究を開始
2018年3月 大日本住友製薬株式会社との間で抗体誘導ペプチドFPP003に関するオプション契約を締結
2018年7月 塩野義製薬株式会社が機能性ペプチドSR-0379の皮膚潰瘍を対象とする日本での第Ⅱ相臨床試験を開始
2019年4月 抗体誘導ペプチドFPP003の尋常性乾癬を対象とするオーストラリアでの第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を開始
2019年5月 大阪府吹田市に千里オフィスを開設
大阪オフィスを彩都オフィスに改称

ファンペップの事業内容

ファンペップは、「ペプチドが医療を変える『最先端の医療を身近なものへ』」をスローガンとして掲げ、大阪大学などと共同で機能性ペプチドの一種である「抗体誘導ペプチド」の研究開発・創薬事業を運営する企業です。

以下は、ファンペップの事業系統を表した図になります。

ファンペップの事業系統図

 

① 研究・開発領域 

ファンペップは、医薬品領域において「機能性ペプチド」という区分に分類される「抗体誘導ペプチド」についての創薬技術を保有する企業です。

以下は、「機能性ペプチド」の概要と、ファンペップの専門領域である「抗体誘導ペプチド」の概要です。

機能性ペプチド

初めに、機能性ペプチドについての説明を行います。


ペプチドとは、アミノ酸2~50個程度が結合した物質です。
また一般的には、50個以下のアミノ酸が鎖状に結合した物質をペプチドと呼び、それ以上の数のアミノ酸が結合した物質はタンパク質と定義されます。


このペプチドの中には、生体内等で機能を発揮するものがあり、それらは「機能性ペプチド」と呼ばれ、医薬品、化粧品、食品など幅広い事業分野で実用化されています。
例えば、生体内のペプチドには、体内の器官の働きを調整するための情報伝達を担うホルモン等(インスリン、グルカゴン、カルシトニンなど)があり、これらは、タンパク質のように生体内で機能を担う物質です。


また、これらのホルモン由来の機能性ペプチドは、がんや糖尿病領域の医薬品や特定保健用食品、スキンケアやヘアケア商品として利用されています。

抗体誘導ペプチド

ファンペップの事業の特徴は、新しい創薬技術である「抗体誘導ペプチド」の研究成果を実用化するための創薬プラットフォーム技術を保有している点です。


 抗体誘導ペプチドは、人体内で「抗体」産生を誘導して治療効果を示すペプチドワクチンです。
現在、先進国では高齢化社会を迎え医療財政問題が深刻化していますが、高額な抗体医薬品の市場が拡大していることが要因の一つとしてみなされています。
このような状況下において、ファンペップは、高額な抗体医薬品に対して医療費を抑制できる代替医薬品として抗体誘導ペプチドを開発し、医療財政問題の解決に貢献することを目指した事業を展開しています。


また、従来の抗体医薬品は「体外で製造する抗体」であるのに対し、抗体誘導ペプチドは、元々生体に備わった能力を利用して「体内で抗体を産生させる」ペプチドであるため、抗体医薬品と比較して製造コストを低く抑制することが可能です。
抗体誘導ペプチドは、従来型の投薬手法よりも薬剤投与頻度が少ないため、体内における負担が少ないとされます。

 

抗体誘導ペプチドの強み

② ビジネスモデル

ファンペップは、抗体誘導ペプチドの創薬プラットフォーム技術を強みとして、様々な疾患に対する抗体誘導ペプチドの探索研究を行っており、主に臨床試験段階での研究開発を実施しています。

主な提携先は、大阪大学をはじめアンジェス株式会社や塩野義製薬であり、複数のプロジェクトが市場での実用化に向けて進行中です。

ファンペップの中心的なビジネスモデルは、製薬会社を中心とした企業から契約一時金、開発マイルストーン、また製品が市場に出回った後に計上される販売額に応じたロイヤリティーや販売マイルストーン、製品供給に関する収入をを計上するモデルです。

ファンペップは第7期時点で、契約一時金と一部の開発マイルストーンを既に受取り、事業収益として計上しています。



以下は、医薬品の開発プロセスと提携会社から受け取る一般的な収入を図式化した図です。

医薬品のビジネスモデル

ファンペップは、製薬領域以外の領域においても、機能性ペプチドを含有するシャンプーの発売やアルコール除菌スプレーが発売を他社と提携のもと行ってきました。
なお、これらの商品販売によって、ペプチド原薬販売収入を計上しています。

有価証券報告書情報

経営指標(過去2期分)

第7期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:30.1億円(前年比△18.1%)
  • 経常利益:△2.3億円
  • 当期純利益:△2.6億円
第6期 第7期
決算年月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 355,866 301,417
経常利益(千円) △8,744 △232,293
当期純利益(千円) △11,937 △235,183
純資産額(千円) 1,165,906 930,723
総資産額(千円) 1,377,016 1,016,683
自己資本比率 84.67% 91.55%
営業キャッシュフロー(千円) △11,736 △345,895
投資キャッシュフロー(千円) △2,134 △1,005
財務キャッシュフロー(千円) 459,247
現金・現金同等物の期末残高(千円) 1,239,307 892,406
従業員数 11人 10人

 

経営指標(過去5期分)

過去5期の業績を見ると、売上高は増加傾向ですが、利益に関しては、第3期・4期は黒字で計上されていましたが、第5期以降は赤字での計上となりました。


赤字の原因としては、ファンペップの開発医薬品が未だに市場に出ていない段階であり、売上をベースに計算されるライセンス収益などは、収益として計上されていない状態であることが要因の一つであることが考えられます。
医薬品の開発は、一般的に莫大な研究開発費用や時間を費やすため、製品が実際に市場に出て本格的な収益化が継続するまでに多くの時間的コストを要する点が特徴です。


また、ファンペップは、2017年1月13日付で普通株式1株につき5,000株の株式分割を実施しました。

第3期 第4期 第5期 第6期 第7期
決算年月 2015年12月 2016年12月 2017年12月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 175,000 463,768 101,179 355,866 301,417
経常利益(千円) 21,998 151,765 △193,706 △8,744 △232,293
当期純利益(千円) 11,322 102,232 △204,061 △11,937 △235,183
資本金(千円) 278,907 403,907 403,907 634,540 634,540
発行済株式総数 2,105 2,235 11,175,000 11,614,300 11,614,300
純資産額(千円) 568,408 920,641 1,165,906 1,165,906 930,723
総資産額(千円) 614,801 1,141,110 1,377,016 1,377,016 1,016,683
自己資本比率 92.45% 80.68% 83.90% 84.67% 91.55%
従業員数 8人 10人 10人 11人 10人

 

2020年8月、ファンペップは、複数のファンドなどを引受先として第三者割当増資を実施し、総額約15億円の資金調達を実施しました。
なお、資金調達の目的は新規抗体誘導ペプチドの創薬研究により研究開発パイプラインの拡充とされています。

第三者割当増資による資金調達実施のお知らせ

株主構成

上位10位までの主要な株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
森下 竜一 2,200,000 13.53% 180日間
平井 昭光 1,775,000 10.92% 180日間
SBI4&5投資事業有限責任組合 1,190,400 7.32%
三好 稔美 1,160,000 7.13% 180日間
塩野義製薬株式会社 1,095,200 6.74%
有限会社アドバンステクノロジー 1,000,000 6.15% 180日間
New Life Science 1号投資事業有限責任組合 793,600 4.88% 90日間
株式会社SOLA 750,000 4.61% 180日間
株式会社レックスウェル 650,000 4.00% 180日間
株式会社メディパルホールディングス 595,200 3.66% 90日間

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は820円、吸収金額(調達額)は 25.8と予想されています。

仮条件 未発表
公募・売出価格 未発表
想定価格 820 円
初値
公募株数 2,739,700 株
売出株数
オーバーアロットメントによる売出し株数 410,900 株
吸収金額(調達額) 25.8 億円 (※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
ブロックを追加