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【新規上場企業分析】モダリスのIPO・時価総額・業績・事業内容・有価証券報告書を徹底分析

概要

基本情報

まずはモダリスの基本情報を紹介します。
上場日は2020年8月3日、市場はマザーズ、想定時価総額は223億円です。

会社名 株式会社モダリス
設立日 2016年1月14日
上場日 2020年8月3日 (承認日:2020年 6月26日)
市場 マザーズ
証券コード 4883
業種 医薬品
決算期 12月
ホームページアドレス https://www.modalistx.com/jp/
発行済株式総数 25,100,000 株(2020 年 6 月 26 日現在)
上場時発行済株式総数 27,200,000 株
※公募分を含む。
※新株予約権の権利行使により増加する可能性がある。
公募株数 2,100,000 株
想定価格 820円
想定時価総額 223.0億円
(※上場時発行済株式総数×想定価格で計算)
資本金  1,300,000 千円(2020 年 6 月 26 日現在)
1単元の株式数 100株
監査人 有限責任 あずさ監査法人
主幹事証券会社 みずほ証券
引受幹事証券会社 SBI証券
SMBC日興証券
いちよし証券
エース証券

沿革

モダリスは、2016年東京でエディジーン株式会社として誕生したバイオテックスタートアップ企業です。
遺伝子治療におけるゲノム編集技術分野で先進的な取り組みを行っています。
ゲノム編集技術とは、遺伝子の切断、追加、削除のことを意味し、遺伝子治療薬の探索等に利用される技術です。

2016年1月 東京都中央区にエディジーン株式会社(現 株式会社モダリス)を設立
2016年4月 米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に連結子会社EdiGENE Inc.(現 Modalis Therapeutics Inc.)を設立
2017年4月 アステラス製薬株式会社との間で「GRISPR-GNDM」を用いた共同研究契約を締結
2017年12月 富士フィルム株式会社、他数社を引受先とする出資契約を締結
アステラス製薬株式会社との間で拡大共同研究契約を締結
2018年6月 経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成プログラム「J-Startup」に選定
2019年1月 東京都中央区内へ移転
2019年3月 アステラス製薬株式会社との間で遺伝子治療開発のライセンス契約を締結
米国子会社を米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市内で移転・拡張
2019年8月 商号を株式会社モダリス(英語表記:Modalis Therapeutics Corporation)へ変更
同時に米国子会社EdiGENE Inc.の社名をModalis Therapeutics Inc.へ変更
2019年9月 アステラス製薬株式会社との間で遺伝子治療薬開発の2例目となるライセンス契約を締結
2019年11月 エーザイ株式会社との間で「CRISPR-GNDM」を用いた共同研究契約を締結
2020年4月 Editas Medicine,Inc.との間でCRISPR/Cas9特許の非独占的実施の許諾を受けるライセンス契約を締結

事業内容

モダリスは「Every life deserves attention (すべての命に、光を)」を企業理念として掲げ、病気のために希望を失わなくてすむ社会の実現に貢献することをミッションとしています。
主要な事業としては、独自のプラットフォーム技術である「CRISPR-GNDM技術」を用いて、遺伝子疾患に対応する治療薬の開発に貢献しています。

モダリスは、「CRISPR-GNDM技術」という独自の技術を製薬開発の土台として提供し、創薬事業の初期段階を担う事業を行っており、この技術を活用して行う事業は以下2つに区分されています。
主要事業のビジネスモデルは図の通りです。

  1. 協業モデルパイプライン
  2. 自社モデルパイプライン
モダリスのビジネスモデル

CRISPR-GNDM技術とは

はじめに、モダリスの事業の核となる技術である「CRISPR-GNDM技術」について説明します。
モダリスは、遺伝子疾患を治療する領域での開発を行っていますが、「CRISPR-GNDM技術」はゲノム編集という遺伝子疾患の治療法に分類されます。
ゲノム編集とは、間違った遺伝子を切り取り、正しい遺伝子に置き換えることで正常な遺伝子が出るようにする遺伝子治療の中でも新しい治療方法です。
従来のゲノム編集では、異常な遺伝子を切り取り、正常な遺伝子へ切り替えるという方法で遺伝子の置き換えを行っていましたが、この方法を用いた場合、遺伝子を切り取ることによるガンの発生リスクが伴います。
一方、モダリスの独自技術である「CRISPR-GNDM技術」は、ターゲットとなる遺伝子のスイッチのオン/オフを切り替えることで、遺伝子をコントロールする技術です。
「CRISPR-GNDM技術」は、従来の方法とは異なり、遺伝子を切り取らないため、ガン発生のリスクを抑えることができます。

② ビジネスモデル

次に、モダリスのビジネスモデルに関する解説を行います。
上記で説明した通り、モダリスは「CRISPR-GNDM技術」を中核として創薬事業を行っていますが、創薬事業が実際の収益に繋がるまでは多額の研究開発費用と長い時間を費やします。
そのため、モダリスでは製薬会社等のパートナー企業と「CRISPR-GNDM技術」を使って共同開発を行う「協業モデルパイプライン」と、自社で「CRISPR-GNDM技術」を使った開発を行う「自社モデルパイプライン」の2軸で事業展開を行っています。

②-1 協業モデルパイプライン

創薬事業を実際に市場での収益に繋がるまでには、多額の研究開発費用と長い時間が必要です。
そのため、モダリスのように製薬開発の初期段階を担う企業は、自己資金以外での研究開発を進める必要があります。
協業モデルパイプラインでは、製薬会社などのパートナーの資金を研究開発費用として使用することができます。
モダリスはパートナー企業と共同研究開発契約を締結し、「CRISPR-GNDM技術」を開放することで契約金を収益として獲得します。
また、協業モデルパイプラインでは、共同開発の進捗に応じて収入を獲得したり、将来の製造販売権をライセンスとして譲渡することで収益を獲得することが可能です。
このように協業モデルパイプラインでは、早期の収益獲得を目的としています。

②-2 自社モデルパイプライン

協業モデルパイプラインが、早期の収益獲得を目的とする一方、自社モデルパイプラインは、開発した新薬が将来的に市場に出回った後の収益獲得を目的としています。
自社モデルパイプラインにおいてモダリスは、自社内で「CRISPR-GNDM技術」を用いて検証・臨床試験など一定の段階まで開発を進め、その後、製薬会社などのパートナーとライセンス契約を締結します。
パートナーは、契約によってモダリスが進めた開発以降の開発や販売を引き継ぐことになります。
モダリスは、パートナーが行う開発の進捗に応じた収入や、市場での売上に応じてライセンスのロイヤリティを収益として獲得することができます。

モダリスのハイブリッドモデルの強み

・2種類の収益モデルのを組み合わせによって連続的な創薬が実現できる
・収益モデルが複数あることで事業計画の選択肢が増える
・経営基盤の安定と成長領域への投資を両立することができる

有価証券報告書情報

連結の経営指標(過去2期分)

4期の業績は以下の通りです。

  • 売上高:6.4億円(前年比+887.0%)
  • 経常利益:14.6億円(前年比+145.8%)
  • 当期純利益:14.1億円(前年比+155.1%)
第3期 第4期
決算年月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 65,297 644,500
経常利益(千円) △213,390 146,351
当期純利益(千円) △217,909 140,528
純資産額(千円) 1,201,779 3,842,542
総資産額(千円) 1,224,508 3,938,428
自己資本比率 98.2% 97.6%
営業キャッシュフロー(千円) △212,608 224,148
投資キャッシュフロー(千円) △6,996 △61,769
財務キャッシュフロー(千円) △250 2,490,603
現金・現金同等物の期末残高(千円) 1,205,143 3,857,235
従業員数 10人 16人

単体の経営指標(過去4期分)

4期の業績を見ると、売上高は3年で35倍以上の急激な増加を見せています。
一方で、利益に関しては、3期までは赤字経営であったものの、4期には黒字化を達成しています。

モダリスは2019年4月に東大IPCから5億円の出資を獲得しました。
また、2019年12月の段階でベンチャーキャピタルなどからの資金調達額が40億円以上に達しています。
以下が参考記事のURLです。

2019年4月 東大IPCがモダリスへ5億円の出資

2019年12月 モダリスの資金調達について

第1期 第2期 第3期 第4期
決算年月 2016年12月 2017年12月 2018年12月 2019年12月
売上高(千円) 17,921 65,297 644,500
経常利益(千円) △45,948 △141,200 △228,981 128,822
当期純利益(千円) △46,214 △142,150 △229,932 127,899
資本金(千円) 55,100 360,000 50,000 1,300,000
発行済株式総数
※A種優先株式を含む
126,000 201,000 201,000 25,100,000
純資産額(千円) 63,885 1,421,735 1,191,802 3,819,701
総資産額(千円) 67,648 1,434,334 1,208,442 3,897,549
自己資本比率 94.4% 99.1% 98.6% 98.0%
従業員数 3人

株主構成

上位10位までの株主は、以下の通りです。

株主 所有株式数 比率 ロックアップ
株式会社ライフサイエンスイノベーションマネジメント 5,000,000 17.86% 180日
濡木 理 4,500,000 16.07% 180日
富士フイルム株式会社 2,350,000 8.39% 90日
ファストトラックイニシアティブ2号投資事業有限責任組合 2,350,000 8.39% 90日
SBIベンチャー投資促進税制投資事業有限責任組合 1,050,000 3.75% 90日
協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合 1,000,000 3.57% 継続保有
片山 晃 800,000 2.86% 継続保有
SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合 750,000 2.68% 90日
Sosei RMF1投資事業有限責任組合 750,000 2.68% 90日
みずほ成長支援第2号投資事業有限責任組合 725,000 2.59% 90日

新規上場(IPO)の募集・売出し情報

公募・売出し・調達額情報

想定価格は820円、吸収金額(調達額)は22.5億円と予想されています。

仮条件 未発表
公募・売出価格 未発表
想定価格 820円
初値
公募株数 2,100,000株
売出株数 600,000 株
オーバーアロットメントによる売出し株数 405,000 株
吸収金額(調達額) 22.5億円
(※オーバーアロットメントを含む株数×想定価格で計算)

この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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