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M&A必須過程!デューデリジェンス(DD)の意味や内容を解説します!

デューデリジェンスという言葉はご存じでしょうか?

聞いたことはあっても、よく知らないという方も多いかと思います。

しかし、スタートアップ経営者で将来的にM&Aによるイグジットを考えているのであれば、必ず通過する必要があるのがこのデューデリジェンスです。

デューデリジェンスはM&Aを行う上で非常に重要なステップですが、なぜ重要なステップなのか、また、実際にどういう流れで行われるのかについては、わかりにくい所が多々あり
ます。

そこでこの記事では、よく知らないという方にもわかりやすく、基本的なところからデューデリジェンスについて解説していきます!

1.デューデリジェンスとは?

デューデリジェンスは、後述するように、様々な種類のものがあります。

それぞれの意味を理解するためにも、まずはデューデリジェンスを行う意味や目的についてしっかりと理解しておく必要があります。

そこで以下からは、デューデリジェンスの基本的な知識を説明していきます。

(1)デューデリジェンスの意味

そもそも、デューデリジェンスとはどのようなものなのでしょうか。

Due Diligence直訳すると「義務・努力」であり、具体的にはМ&A成立前に買い手企業が売り手企業について調査することを指します。

「企業の資産価値」「買収企業が受けるリスク」「予想される収益性」などを、状況に合わせて適性に査定・評価する一連の義務的活動を、M&Aにおけるデューデリジェンスと呼びます。

調査の内容は多岐に亘りますが、主に売り手側企業の企業価値の査定や資産について調査がなされます。

会社の規模により異なりますが、1~2か月程かけて、専門家による念入りな調査が行われます。

このように、デューデリジェンスとは、買収の意思決定や、判断する際の情報や材料収集のために、努力して行なう当然の義務活動、または作業と解釈することができるでしょう。

(2) デューデリジェンスの目的

デューデリジェンスの目的は、専門家による調査を行い、取引のリスクを軽減させる事にあります。

売り手側企業の総体的な安定性や、M&Aによって起こり得るリスク・リターンの把握を事前に行います。

通常、M&Aのマッチングは専門業社やエージェントによって行われるため、買い手側企業にとって、売り手側企業は見ず知らずの相手です。

貴重な資金を投じるかもしれない相手を、表層的な情報やイメージだけで判断することはできません。

それはなぜかを踏まえながら、デューデリジェンスの目的について3つのポイントに分けて解説してきます。

#1:リスクの把握

一見、魅力的に見える会社であったとしても、表面には出てこない何らかの問題、リスクを抱えている可能性があります。

例えば、簿外債務が後で発覚したり、売り手側企業の申告した内容と事実が違っていたりすれば、買い手企業側としては損な取引をしてしまったことになります。

また、売り手側企業の業績が悪化している事実を、事前に把握できなかったという事もありえるでしょう。

売り手側企業が意図的に問題点を隠す事は無いと仮定しても、経営規模が小さい状況では発現しないような、自分たちでも気づいていない障害が、会社の中に埋もれている可能性もあります。

したがって、見かけの経営状況等に捉われず、どのような会社なのか専門家による客観的な分析・判断を行うことが必要になります。

#2:リターンの把握

リスクの把握ができた後は、リターンの把握です。

M&Aとは本来、収益の拡大を目論んで行われるものであって、リスクを抑えた安全な取引ができればそれでよいというわけではありません。

その向こう側にある買収の成果が、どれほどあるのかを知る事がリターンの把握です。

このリターンとは、単に新事業が加わることでの収益増加だけではありません。

既存事業との間でどれだけのシナジー効果があり、それによって、それぞれの事業が大きくなりうるのか、また、どれほど大きくなるのかの予測を行います。

多少のリスクを抱えている企業であったとしても、リターンのほうが大きい(=期待値が上回る)場合には、M&A成約の可能性は高まります。

また、想定されるリターンの大きさによってM&A成約時の買収額も左右されます。

この点を考えると、売り手側企業としても、デューデリジェンスへの積極的な協力、つまりは情報開示を行う必要があります。

#3:ビジネススキームや経営方針の決定

M&Aの目的は売買契約の締結ではありません。

先程も述べた通り、収益の拡大こそがM&Aの目的ですから、買収の成立はスタート地点に過ぎません。

デューデリジェンスによって明らかになったM&Aによるリスクとリターン、また、既存事業とのシナジー効果等それら全ての情報を用いて、M&A後のビジネススキームや経営方針を定め、実行し収益の拡大を図ります。

買い手企業側は、マッチング前からある程度の方針が存在した上でM&Aを企図する場合がほとんどです。

しかしながら、これから買収する企業の詳細な情報をデューデリジェンスによって明らかにすることによって、さらに具体的なビジネススキームや経営方針を決定することが出来るようになります。

また、M&Aを実行する場合、買い手側企業の経営陣には、株主を筆頭とするステークホルダー(利害関係者)への説明責任が生じます。

その場面でも、デューデリジェンスで得た情報は有効に機能するのです。

2.基本的なデューデリジェンス

ここまでは、デューデリジェンスの意義や必要性について紹介してきました。

ここからは、実際に行われる具体的なデューデリジェンスの種類について見ていきましょう。

まずは、通常「デューデリジェンス」と呼ばれるうちでも基本的な内容となる6種類から説明していきます。

(1) ビジネスデューデリジェンス

ビジネスデューデリジェンスとは、市場におけるその企業の立場や、企業が扱う商品やサービスを調査するものです。

対象企業の経営実態を把握し、事業の将来性を見極める為に行われます。

営業戦略、軸となるビジネスモデル、市場でのポジション、業界全体の動きなどを含め評価をすることで、市場におけるその企業のポジションやポテンシャルを確認することができます。

これらを調査することにより、M&Aによるシナジー効果について推測する材料にもなります。

企業内部だけではなく外部要因である市場全体や市場におけるポジションが査定対象となるのが特徴です。

(2) リーガルデューデリジェンス

リーガルデューデリジェンスとは、対象企業が締結した契約や取引行為が法的かつ適正に遵守されているかどうかを調査するものです。

所有権や技術特許などの事業に関する権利が訴訟対象となっていないかどうか、許認可・登記関係は適切なものであるかどうかといった法的なリスクを事前に把握することが目的です。

法的なリスクが顕在化した場合、訴訟や和解、任意整理などにおいて莫大なコストと時間が浪費され、社会的評価を著しく低下させるとともに、会社の存続さえ危うくなることが考えられます。

リーガルデューデリジェンスは法律上の権利関係に潜むリスクを精査する点で、他のデューデリジェンスとは異なります。

後述する知財デューデリジェンスや不動産デューデリジェンスと併せて、弁護士によって一括して行われることもあります。

(3) ファイナンシャルデューデリジェンス

ファイナンシャルデューデリジェンスとは、決算時の財務データをもとに、過去の業績動向、設備投資高、債務、収益性の有無、資金などの視点から調査するものです。

財務情報に関する企業価値評価を調査することで、

  • 債務や負債が適正範囲内であるかどうか
  • キャッシュ・フロー分析
  • 収益性に関する過去の実績および将来の見込み
  • グループ会社やオーナーに関連する取引内容
  • 不正な経理処理の存在確認

等を確認することが出来ます。

調査結果によっては、組織再編や買収後の状況が現状より悪化することも考えられますので、しっかりとした調査が必要になります。

(4) 税務デューデリジェンス

税務デューデリジェンスは、法人税や法人事業税などが適正に申告納税されているかどうかを調査するものです。

また、合併するにあたり繰越欠損金の特例が考慮されるかどうかを換算します。

欠損金とは法人税法上の赤字のことで、繰越欠損金制度を利用することで納める法人税を低くおさえることができます。

合併することそのものが目的ではなく、欠損金を消滅させることが目的となっている合併は不正行為となるため、繰越欠損金制度を利用するためには厳しい要件をクリアする必要があります。

税務デューデリジェンスを実行することで厳しい要件をクリアできるかどうか、またすべてクリアできなかった状態で合併した場合の欠損金予測を立てることができます。

税務リスクを見落とした結果、重加算税のペナルティといった思わぬ損失を被ることも考えられますので注意が必要です。

(5) ITデューデリジェンス

ITデューデリジェンスとは、対象企業の有する情報システム・管理システムなどを調査するものです。

現代の企業であれば、それぞれが管理システムを運用していることが多く、M&Aを行う場合には双方のシステムを統合できるのか、またはいずれかに移行できるのかを調査する必要があります。

管理システムは、一般的で普遍的な内容のものから、企業毎に自社内で特化した専用の管理システムなど幅広く、統合の可否を調査するためには高度の専門性が求められます。

併せて、統合に掛かる経費や新規システムの必要性などの調査も行われます。

(6) 人事デューデリジェンス

人事デューデリジェンスとは、人事や労務について調査するものです。

組織再編後の社員の年金や退職金がカバーできるかどうかや、有能な人材を確保し続けることができるかどうかを確認します。

経営統合や組織再編は、異なる企業文化が統合されることによる摩擦、報酬や評価システムの変更における社員のモチベーション低下、有能な人材の流出などのリスクが伴います。

買収側は組織や人員も含めた投資としてM&Aを実行することが多く、役員等の続投を確保するためにも、上記のようなリスクは避ける必要があります。

これらの調査は、数値や金額によっては査定する事ができない分野も多く含まれるため、判断の難しい調査となります。

また、人事デューデリジェンスでは上記以外にも、M&A実施後に増えることになる人件費や社会保険費用、将来の退職金費用の算定なども調査内容となっています。

3.その他デューデリジェンス

スタートアップ企業は専門分野に特化した企業も多く、また、昨今では企業に求められる社会的責任も重くなっていることから、さらに専門的なデューデリジェンスが行われる場合もあります。

今回は、より専門性の高いデューデリジェンスを3つ紹介します。

これらの他にも専門的なデューデリジェンスは多く行われているため、各企業の特性に合わせて、どのような調査が必要なのかあらかじめ把握しておくようにしましょう。

(1) 知財デューデリジェンス

対象企業が特許や著作権などの知的財産を保有している場合、その知的財産は今後の事業展開を左右する資産にもなりえます。

特に大きな資本を持たないスタートアップ企業の場合には、こうした知的財産そのものが会社の生命線となっている場合も少なくなく、その知的財産が他の企業の権利を侵害していないか、または、他の企業に侵害されるおそれがないかを調査する必要があります。

(2) 不動産デューデリジェンス

不動産デューデリジェンスは、対象企業の所有する不動産の分析と調査を行います。

物理的面(建築物)、法的側面(所有権利)、経済面(収益性)などの観点から行う不動産鑑定業務です。

老舗の中小企業などの場合、建物の所有権が相続によって曖昧となっていることが多々あるため、特に注意が必要とされます。

(3) 環境デューデリジェンス

環境デューデリジェンスは、土壌・地下水汚染等の環境問題に関する調査です。

環境問題への注目が高まっており、対象企業の環境汚染対策や、関連法令の遵守について査定が行われることがあります。

従来は製造業などの公害を発するおそれのある業種に限って行われていましたが、SDGsやサスティナブルな事業活動が求められる近年では、広い業種で行われるデューデリジェンスです。

4. デューデリジェンスの流れ

ここまではデューデリジェンスの意義や主な内容について説明しました。

以下からは、デューデリジェンスが実際にどのような流れで行われるのかについて紹介します。

上述したように、デューデリジェンスはM&A双方にとって重要なプロセスであることから
、実際の調査は専門家に依頼するにしても、大まかな流れはしっかりと把握しておく必要があります。

各デューデリジェンスの専門家へ依頼した後のおおまかな流れは、以下の通りです。

(1) 調査範囲の確定

まずは、調査を行う範囲を確定させます。

調査の範囲を無制限に広げてしまうと、あまりに時間的・金銭的コストが膨らんでしまうため、まず最初に範囲の確定させる必要があります。

さらに、効率よく調査を行う為には、調査内容に優先順位を付けて考えなくてはいけません。

(2) 調査

実際にデューデリジェンスを実行していきます。

売り手側企業は、自ら情報を開示するための資料作成を行います。

デューデリジェンスのなかで、多くの場合には、売り手側企業の経営陣へのインタビューも実施されます。

また、調査を進めていく中で、デューデリジェンス実行範囲の変更・追加が必要になる場合があります。

(3) 調査結果の分析

調査の結果得た情報を精査して、懸念されるリスクや、シナジー効果の想定を行います。

追加で情報が必要になる事もあります。

(4) 質疑応答

分析の中で追加の情報が必要となった場合は、売り手側企業に情報開示を求めます。

M&A合意の為にも、売り側企業は積極的に情報開示する必要があります。

(5) 最終報告

調査にあたって専門家から最終的な報告が行われ、デューデリジェンスは完了となります。

企業規模や事業内容によっても異なりますが、開始から完了までで、およそ1~2か月程の期間を要する事が多いようです。

M&A交渉の段階で、双方が事前に資料等を準備した上でデューデリジェンスに臨めば、調査自体は短期間で行うことが出来ます。

買い手側企業は、専門家からの報告をもとに、M&A実施の可否、また、最終的に提示する価額を決定するための意思決定を行います。

5.まとめ

デューデリジェンスについての解説は以上です。

M&Aにおけるリスクの回避だけでなく、より大きなシナジー効果を発揮するためにも、買い手側企業は売り手側企業の事を多く知る必要があります。

そのため、デューデリジェンスは簡易的に行うべき事ではありませんが、今回解説した全てのデューデリジェンスを行うことは、費用的にも時間的にも非現実的です。

そこで、どのような調査を、どのような範囲で行うかについては、M&Aに特化した専門的な知識が必要不可欠となります。

デューデリジェンスを実施する際には、その範囲等についても、専門家にあらかじめ相談することをお勧めします。

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この記事の監修者

赤堀弁護士
赤堀 太紀 FAST法律事務所 代表弁護士

企業法務をはじめ、債務整理関連の案件、離婚・男女トラブルの案件、芸能関係の案件などを多数手がける。

この記事の筆者
浜北 和真株式会社PALS Marketing コンテンツディレクター

2017年から法律メディアに携わりはじめる。離婚や債務整理など、消費者向けのコンテンツ制作が得意。
監修したコラムはゆうに3000を超える。
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