判例

労働判例の読み方「同一労働同一賃金」【日本郵便(時給制契約社員ら)事件】東京高裁平30.12.13判決(労判1198.45)

0.事案の概要

 この事案は、当連載でもしょうかいした大阪高裁平31.1.24判決(労判1197.5)の事案と同様の事案で、裁判所は、大阪高裁と同様、Xの請求の一部を認容していますが、ここでは大阪高裁と異なる部分を中心に検討しましょう。

1.年末年始勤務手当など

 特に注目されるのは、年末年始勤務手当などです。
 大阪高裁は、①一般的に契約社員は忙しいときの労働力の補充のために、実際、短期間採用されるもので、むしろ年末年始にこそ働いてもらうものだから、年末年始勤務手当がないことは、一般的に合理的である、という趣旨の説明をしています。そのうえで、②とは言うものの、5年を超えて雇用される場合には、それが無期契約に転換されることも考慮すれば、(短期の戦力補充とは言えないので)合理性が無い、と判断しました。
 これに対し、本判決は、①年末年始だけの戦力補強とは言えない、と評価し、そのうえで、②全額について不合理、と判断しました。
 この点は、大阪高裁の一部認容に比較すると、程度の差のようにも見えますが、特に①の理由を見ると、両者の違いは、年末年始勤務手当などの位置付けに関し、全く逆であることがわかります。特に、本判決の1審では、会社の責任を8割としていたところ、2審では全額と変更していることから、一層顕著でしょう。すなわち、1審であれば、年末年始の戦力補強というYの言い分にも、2割程度の合理性を認めたように評価できますが、2審はYの言い分に全く耳を貸さない判断をした、と評価できるからです。

2.実務上のポイント

 郵便局の年賀状配送業務のために、年末年始の有期契約者を多く採用する、という運用が、大阪では実態として認められるのに対し、東京では認められないのでしょうか。あるいは、実態として同じだが、同じ裁判官でも評価が分かれるほど微妙な問題なのでしょうか。
 いずれも最高裁に上告されていますので、両者の違いが整理されることを期待します。
 しかし、現時点で言えることは、勤務条件の違いの合理性は、各手当の趣旨に照らし、その規定や制度の建前だけでなく、実際の運用を個別的具体的に検証して判断する点で、両者は共通しています。勤務条件の違いについて、運用の実態まで掘り下げて説明できることを、確認しておく必要があるのです。

※ JILAの研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
 その中から、特に気になる判例について、コメントします。

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芦原 一郎
芦原 一郎
弁護士法人キャスト パートナー弁護士/NY州弁護士/証券アナリスト 東弁労働法委員会副委員長/JILA(日本組織内弁護士協会)理事 JILA芦原ゼミ、JILA労働判例ゼミ、社労士向け「芦原労判ゼミ」主宰
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