0.事案の概要
この裁判例は、勤務態度が著しく不良である従業員を解雇した事案で、裁判所がこれを有効と判断したものです。
1.特徴
本事案では、既に従前から勤務態度が著しく不良であるだけでなく、会社側も継続的に教育指導していたのに改善しない状況にあった従業員が、平成25年2月9日(土)に無断で休日出勤して、職場で転倒して左足を骨折したため、その後、本来欠勤すべき状況にあった、したがって同5月29日の解雇は「療養のために休職すべき期間」での解雇を禁ずる労基法19条1項に違反する、と主張したものです。
裁判所は、原告の主張を退け、解雇を有効と判断しました。
労基法19条1項の適用については、以下の点がポイントとなります。
1つ目は、無断での休日出勤の位置付けです。
上司がこれを明確に意識していなかったものの、これまでも事前承認を得ずに休日出勤してきたことなどを考慮し、裁判所は、この時の出勤も「許容」していた、と評価しています。
2つ目は、労基法19条1項の適用や類推適用の可能性です。
裁判所は、解雇当時、従業員が休業していなかったことを理由に、この適用や類推適用を認めませんでした。
2.実務上のポイント
ここでは、無断の休日出勤を業務と認定した点の評価の甘さが気になります。
しかし、この裁判例は極めて長文の判決です。休日出勤を業務と認定した部分の記載だけでは窺い知れない背景があるかもしれません。また、別の理由で労基法19条1項の(類推)適用が否定されていますので、休日出勤が業務であったかどうかは、重要な論点ではありません。検討する必要性すらなかったはずです。
したがって、少なくとも、判決文が直接の根拠とする記載だけで、業務と認定することについては疑問がある、という点だけを指摘します。
ところで、実務上のポイントは、解雇事案で会社側が勝訴するために必要な、当該従業員の悪質な言動のエピソードの量です。
労働判例の該当箇所は、23字×48行×2段が1頁ですが、争点に対する裁判所の判断が示される以前の、裁判所の認定事実部分だけで、11頁以上、24,300字以上となっています。そこでは、当該従業員の問題行動を、その日時や詳細な業務内容まで含めて丁寧に認定されています。
すなわち、抽象的な「あの人は使えない」等の評価ばかりいくら集めても全く意味がなく、具体的なエピソードを詳細に記録にしておく必要があるのです。
※ JILAの研究会(東京、大阪)で、毎月1回、労働判例を読み込んでいます。
その中から、特に気になる判例について、コメントします。
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